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税理士の実務経験はどこで積める?税理士事務所以外でもOK?

2024/12/23

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税理士になるためには、原則として税理士試験に合格することと2年以上の実務経験を積むことが求められます。
多くの場合は税理士事務所等で働きながら従事時間を積み上げるのですが、それ以外の職場でも認められるケースがあります。

本記事では、実務経験が積める職場や、そもそもどのような業務が認められるのか、またその計算の方法等についてまとめました。
一般企業で働きながら税理士を目指している人や、パート・アルバイトで税理士業界に従事している人、科目合格者等、ぜひ本記事にて知識を身につけてください。

税理士になるには2年以上の実務経験が必要

まず、税理士になるための条件を確認しましょう。
次のいずれかに該当すると、税理士になる資格が得られます。

1.税理士試験の合格者
2.税理士試験の免除者
3.弁護士または弁護士となる資格を有するもの
4.公認会計士または公認会計士となる資格を有するもの

このうち1と2の人は、試験合格だけでなく2年以上の実務経験が必要になります。

一方で、3または4つまり弁護士や公認会計士の資格があれば、試験を受けることも実務経験を充足することもなく税理士になれます。

税理士の実務経験が積める職場

実務経験が積める主な職場をまとめました。
他にも該当する職場はありますので、これらは参考としていただければ幸いです。

税理士事務所等

多くの人から選ばれている職場です。
選択するメリットが多いことが一因でしょう。

・税理士になった後の働き方が理解できる
・同じ道を歩んだ先輩が在籍しているので、試験や登録の仕方等について質問しやすい
・税理士になった後の実務に活かせる
・職歴としてもカウントされる

実務経験を積みながらこのようなメリットも享受できるため、志願者の多くが税理士事務所等を選択しています。

一般企業の経理部

一般企業の経理部や財務部等でも実務経験は積めます。
業務によっては勤務時間のすべてが従事時間とは認められないかもしれませんが、時間をかければ充足可能です。
ただし業務内容が実務経験に該当しないケースも考えられますので、下記で業務内容を比較し、必要なら部署異動や業務の変更等を願い出ましょう。

市役所の税務課

市役所の税務課では、住民税や固定資産税等を正しく徴収する仕事をしています。
ただし税務課でも実務経験と認められない業務に従事している恐れもありますので、下記にて業務内容が該当するかを確認しておきましょう。

税務署の国税専門官

税務署の国税専門官も、実務経験が積める業種です。
税のスペシャリストとして、国税調査官、国税徴収官、国税査察官として活躍しています。
国税専門官は、勤務年数によって税理士試験科目の一部が免除されます。
そのため、定年後に「国税OB税理士」として活躍する人も少なくありません。

<国税従事者における税理士試験科目免除>
対象者 免除内容
10年または15年以上税務署に勤務した国税従事者 税法に属する科目が免除される
23年または28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者 会計学に属する科目が免除される

税理士の実務経験としてカウントできる業務

該当する業務は税理士法第三条で「租税に関する事務又は会計に関する事務で政令で定めるもの」と明記されており、国税庁からは下記のように通達されています。

簿記に関連する事務内容
簿記上の取引について、簿記の原則に従い取引仕訳を行う事務
仕訳帳等から各勘定への転記事務
元帳を整理し、日計表又は月計表を作成して、その記録の正否を判断する事務
決算手続に関する事務
財務諸表の作成に関する事務
帳簿組織を立案し、又は原始記録と帳簿記入の事項とを照合点検する事務
国税庁 第2条《税理士業務》関係

上記に該当する事務ならば、短時間労働であっても正社員でなくとも、勤務先が複数に跨っていても、実務経験として認められるとされています。

なお、実務経験に該当するかどうかを判断するのは税理士会です。
税理士登録をする段階で実施される調査によって、個別に判断されます。

実務経験の要件を満たさない業務

上記通達より、「特別な判断を要しない機械的事務」は、実務経験として認められないとされています。
これは、簿記会計の知識がなくてもできる単純な事務をいい、電子計算機を使用して行う単純な入出力作業も含むとされています。

たとえばレシートや領収書の内容を会計ソフトに入力するだけの作業や、社員の旅費交通費精算業務等は、従事時間から省かれる恐れがあります。

実務経験のカウント方法

実務経験は2年以上が必要とされていますが、2年相当の従事時間は3,696時間とされており、計算方法も明確な基準が設けられています。

合算OK

複数の企業での従事時間は合算できます。
たとえば一般企業で半年間、税理士事務所に転職して1年半、該当する業務に従事した場合、これらの従事時間は合算可能です。

試験前でも後でもOK

実務経験を積んだ時期は、税理士試験合格の前でも構いません。
たとえば実務経験を2年以上積んだ後に試験合格を果たした場合、合格前の従事時間も認定されます。

一方で試験合格後に2年間の実務経験を積んだ場合でも認められます。
また、試験合格前後の従事時間を合算することも可能です。

時短勤務OK

アルバイトやパート等の時短勤務であっても、該当する業務に従事していれば実務経験としてカウントできます。
この場合は、勤務日数や勤務時間等の実態に応じて、従事時間を積み上げて計算することになります。

たとえば、アルバイトとして2時間/日に従事していた場合を考えてみましょう。 2年相当の従事時間は3,696時間とされているので、1,848日継続すると、2年相当になります。 勤務時間の積み上げ計算書という書類に記載することになりますので、毎月の勤務時間や勤務内容をメモで残しておくことをおすすめします。

従事時間の制限あり

1日あたりの従事時間と1月当たりの従事時間には上限が定められています。

区分 上限時間
1日あたりの上限 7時間
1月あたりの上限 154時間
たとえば、1日の従事時間が8時間だとしても、上限7時間を超えて計算することはできません。
また1月154時間を超えて積み上げることもできません。
これらのことから2年未満に従事時間を充足することはなく、必ず2年以上従事しなければならないように設定されています。

2年より少し多めに申請する

実務経験に該当するかどうかは、日本税理士会連合会による審査で決まります。
そのため、自分では該当すると思っている従事時間が、審査で差し引かれる恐れがあるのです。
1度の申請で要件を確実にクリアするために、2年ちょうどよりも少し多めに経験を積んでから申請することをおすすめします。

実務経験を証明する在職証明書とは

本記事における在職証明書とは、日本税理士会連合会が指定する書式か、官公庁が発行する職歴証明書です。
在職証明書は、企業や官公庁の担当者が発行してくれます。担当部署は企業により異なりますが、人事部や総務部等が多いようです。
在職証明には、在職期間や所属、職務内容等が記されます。これをもって2年以上の実務経験をクリアしているか判断されるのです。

なお実務経験とみなされない業務にも従事している場合や、短時間勤務の場合等には、勤務時間の積み上げ計算書も必要になります。
在職証明書の発行には時間がかかりますので、税理士登録申請の準備を進めるうえで、早めに手配しておきましょう。

在職証明書がもらえない時の対処法

廃業や所長の死亡等で在職証明書が発行されない場合は、税理士会に問い合わせてください。
ただし、特段の理由なく在職証明書を発行してくれない場合は、税理士会に相談しても救済措置が取られないかもしれません。
実務経験として従事している期間は、できる限り所長や同僚と友好な関係を築いておきましょう。

税理士登録した後のキャリア

税理士になった後のキャリアは大きく5つに分かれます。
あなたの理想とする働き方がどれにあたるのかをぜひご検討ください。

在籍している税理士事務所等で引き続き活躍する

所属している税理士事務所や税理士法人で、引き続き働き続けるキャリアです。
現職に満足しており、税理士となってからの働き方も理解している場合におすすめです。
特別なことをせずとも資格手当てがつきますので、今までより高収入になるでしょう。

注意したいのは、今より高く評価してくれる事務所があるかもしれないことです。
転職活動が面倒でなければ、一度求人情報を確認してみてはいかがでしょうか。
もし現在よりも高待遇な職場があるならば、面接を受けるだけでも世界が広がるかもしれませんよ。

税理士法人等に転職する

現職を退職し、より魅力的な別の税理士法人等に転職するキャリアです。
なお一般企業から税理士法人等に転職する場合、働き方が一気に変わりますのでご注意ください。
税理士事務所から転職するケースでも、事務所によって若干働き方が変化します。
求人票や公式サイトをよく読み、転職後の働き方を想像しておきましょう。

在籍している一般企業で引き続き活躍する

現在在籍している一般企業で、税理士資格を活用して働き続けるキャリアです。
一般的に、税理士資格が活かせるのは、経営コンサルティング会社や金融機関、大手一般企業です。
このような企業に勤めているのならば、税理士資格が大いに役立つでしょう。

注意したいのは、資格手当てが設定されていないことです。 多くの税理士事務所等では、税理士資格取得者には資格手当てが上乗せされます。 しかし一般企業の場合、税理士資格の資格手当が設定されていないケースが多く、資格の有無と給与の増減は関連しません。

一般企業の企業内税理士として転職する

現職から一般企業の企業内税理士に転職するキャリアです。
企業内税理士とは、企業に所属する税理士のことで、身分としては会社員です。
しかし税理士登録をすれば税理士と名乗ることはもちろん、独占業務も遂行できます。
企業内税理士を求める企業は大企業が中心なので、年収アップや福利厚生の充実が見込めます。ただし前述のとおり、資格手当の上乗せは期待できません。

独立開業する

税理士として独立開業する道もあります。
事務所を自宅にすれば、融資なしの低リスクで開業できるでしょう。
しかも、税理士は試験が難関であるために人数が限られています。

そのため、仮に独立開業がうまくいかなかったとしても、所属税理士として容易にやり直せるのです。
失敗しても取り返しがつきます。興味のある人は、一度独立開業してはいかがでしょうか。

実務経験なしで税理士になれるのか

弁護士資格や公認会計士資格を有する人に関しては、実務経験なしで税理士になれます。
一方で、税理士試験に合格した人や試験免除を受けた人に関しては、実務経験がなければ税理士とはなれません。充足しない間はあくまでも「税理士試験合格者」であり、税理士とは名乗れないのです。

実務経験は転職に影響するのか

たとえば実務経験を積んだ職場が、一般企業の経理部と税理士事務所であった場合、転職活動に影響するのでしょうか。
結論としては、職歴として検討される余地はあるものの、従事時間それ自体は評価の対象になりません。 実務経験は職歴となりますので、履歴書や職務経歴書に記載できることになります。採用担当者がその内容を読み、合否を決定することはあるでしょう。

一方、職歴のどの期間が実務経験に該当するかは、求職者から申し出ない限り採用担当者には伝わりません。
そのため、実務経験をどの職場でどのように積んだのかが採用に影響することはないと言えます。

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税理士の実務経験はどこで積める?-まとめ

税理士になるための実務経験を積める職場は、税理士事務所や一般企業の経理部等です。
「租税に関する事務又は会計に関する事務で政令で定めるもの」に該当する業務に携わっているならば、職場は限定されません。
ただし、上記以外の業務は従事時間として認められないため、たとえ税理士事務所で働いていたとしても、全従事時間が該当するとは限らないのです。
判断するのは税理士会ですので、もし迷うようでしたら税理士会に相談しましょう。

また、現在の職場環境では実務経験が積めないことが明確ならば、部署異動や転職を検討してください。
基本的に、実務経験を満たさず税理士になることはできません。コツコツと従事時間を積み上げて、知識・経験共に身につけた素晴らしい税理士としてご活躍ください。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。