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2025/01/01
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税理士になるためには、原則として税理士試験5科目に合格しなければなりません。 それでは途中である「1科目合格」や「3科目合格」等は評価されないのでしょうか?
実は税理士業界において、科目合格も非常に優遇されます。
税理士になる前から評価されるものですので、ぜひ1科目でも合格を勝ち取ってください。
今回は税理士試験の科目合格について解説いたします。
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税理士の科目合格とは
科目合格とは、税理士試験に1〜4科目に合格している状態を指します。
5科目に合格した場合は「税理士試験合格」と表現するのが一般的です。
税理士科目は合格すれば一生涯有効
税理士試験の科目合格は、一生涯有効です。
たとえば所得税法で科目合格した場合、所得税法の合格は一生涯無くなることはありません。何度も受験しなおす必要がないのです。
しかし税理士試験は1科目ごとのボリュームが広く難易度も高いものです。
仕事をしながらの受験では、1科目すら合格できない恐れもあります。生涯有効だからといって気楽に構えず、計画的にコツコツと学習を進めてください。
科目選択制
税理士試験の科目は下記11科目です。その中から5科目に合格することが求められます。
必須科目が2科目設定されていますので、実際は選択科目から3科目を選び受験することになります。
必須科目 | 簿記論 |
---|---|
財務諸表論 | |
選択科目 | 所得税法 |
法人税法 | |
相続税法 | |
消費税法 | |
酒税法 | |
国税徴収法 | |
住民税 | |
事業税 | |
固定資産税 |
-
1. 所得税法または法人税法
選択科目のうち、所得税法または法人税法のいずれか1科目は必ず選択しなければなりません。両方選択することも可能ですが、どちらも難易度が高いため、多くの受験生はどちらか一方を選択しています。 -
2. 消費税法または酒税法
消費税法または酒税法のいずれか一方しか選択できません。
たとえば消費税法を選択した場合、酒税法は選択できなくなります。
両方とも選択せず、別の科目で合格することも可能です。 -
3. 住民税または事業税
住民税または事業税のいずれか一方しか選択できません。
たとえば住民税を選択した場合は、事業税を選択できなくなります。
両方とも選択しないことも可能です。
科目合格は履歴書に書ける
科目合格は転職で有利に働きますので履歴書にも記載できます。
記載箇所は「免許・資格」欄です。
合格した年次と合格科目を記載しましょう。
複数の科目合格を果たしている場合は、1行ずつ科目ごとに書き記してください。
1科目でも優遇される・3科目だと転職先がさらに広がる
1科目合格でも科目合格者として転職時には優遇されますが、3科目合格以上になるとさらに評価が高くなる傾向にあります。
必須条件が「3科目合格以上」とされている求人も見受けられます。3科目合格が小さな境目になっているのです。その理由は「税理士試験合格目前だから」。
税理士試験は難関であり、何年も仕事と勉強を両立させなければ合格できません。そのため1〜2科目合格したものの税理士になることを諦めてしまう人も少なくないものです。
しかし、3科目に合格しているならば、これまで勉強を継続できた証明にもなりますので、残り2科目も合格できるだろうと判断されるのです。また免除制度を使用して、税理士試験に合格することも考えられます。
このような理由から、3科目以上に合格している場合は転職の際に優遇されるのです。
ただし、必ずしも3科目以上合格していないと優遇されないというわけではありません。増員のための募集をかけている事務所では、1〜2科目合格でも歓迎されます。
一方、5科目合格を果たしてから転職するのはあまり得策とは言えません。
5科目に合格するまで長い年月がかかりますので、求人募集の年齢制限に引っかかる恐れがあるためです。
実務経験が全くない場合、税理士事務所への転職は35歳程度が上限と言われています。
早く合格するに越したことはありませんが、年齢やライフプランを十分検討した上で転職時期を検討してください。
税理士の科目合格は転職市場で価値が高い
税理士試験の科目合格者は、税理士資格はまだ持っていないものの、非常に高い市場価値を持っています。特に、税理士事務所や企業の経理・財務部門で、その知識とポテンシャルが高く評価される傾向があります。以下に、税理士試験の科目合格者が転職市場で評価される理由を詳しく説明します。
税理士になる見込みがある
税理士試験は3大難関資格の1つと呼ばれるほどに難しい試験です。
そのため5科目に合格し税理士となるまでには、学習を開始してから最低でも数年かかるため、継続的な努力が求められます。この数年の間に挫折して税理士を諦めてしまう人は非常に多いものです。
その点、1科目でも合格科目があれば、科目合格0の人よりも税理士になれる見込みがあると判断されます。
多くの事務所では、将来的に税理士資格を取得する意欲があることが重要視されるため、科目合格者は実務を通してさらなる知識と経験を積みながら、税理士試験の残り科目に挑戦できる環境が整っています。
税務の基礎知識が高い証明になる
税理士試験の1科目ごとの内容は非常に高度なため、科目合格はその分野の知識が優れている証明になります。
たとえば法人税で科目合格できたならば、法人税に関する知識が豊富な人だとみなされるのです。税理士は専門知識を駆使してクライアントの利益向上や節税等に寄与します。つまり税理士資格がない段階でも、試験勉強で得られた知識が実務で役立つのです。
この知識は税理士事務所だけでなく、企業の経理や財務部門でも大いに活用できます。特に企業内の税務申告や決算業務においては、法人税法や消費税法などの科目合格者が中心的な役割を担い、企業の税務戦略に貢献することが期待されます。企業が税務リスクを適切に管理し、コスト削減を図る上で、こうした専門知識を持つ科目合格者は非常に重宝されます。
税理士になる志が感じられる
税理士試験は合格までに最低でも数年かかる試験です。そのため多くの人が人生設計と学習計画を綿密に立てて挑みます。
科目合格を果たしているのならば、今後税理士になり、税理士業界で長く働くことを真剣に考えていることの証明になります。
そのため科目合格をしていない人よりも、高く評価されるのです。
税理士試験の科目ごとの合格率
税理士試験は上記11科目から5科目に合格することが求められます。
試験は年1回で、合格基準は各科目とも満点の60%です。
しかしながら実際には、上位得点者の15%程度が合格できる試験とも言われています。
合格しやすい科目
令和5年度(第73回)税理士試験結果によると、科目別合格率は以下のとおりでした。
引用:令和5年度(第73回)税理士試験結果
科目名 | 令和5年度合格率(%) | 令和4年度合格率(%) |
---|---|---|
財務諸表論 | 28.1 | 14.1 |
簿記論 | 17.4 | 23.0 |
固定資産税 | 17.3 | 18.4 |
事業税 | 16.4 | 14.1 |
住民税 | 14.7 | 17.2 |
法人税法 | 14.0 | 12.3 |
国税徴収法 | 13.9 | 13.8 |
所得税法 | 13.8 | 14.1 |
酒税法 | 12.7 | 13.2 |
消費税法 | 11.9 | 11.4 |
相続税法 | 11.6 | 14.2 |
合格率で比較すると、財務諸表論や簿記論が合格しやすく、消費税法や相続税法が難しいことが示されています。
この表に沿って合格しやすい科目を選択するならば、下記5科目になるでしょう。
- ・財務諸表論
- ・簿記論
- ・事業税
- ・法人税
ただし年度によって試験内容も合格率も左右されますので、あくまでも目安としてお考えください。
試験免除要件
税理士試験は原則として5科目に合格しなければなりません。
しかしながら指定された要件を満たした場合、試験の一部が免除されます。
引用:税理士法
学位による免除
免除要件 | 免除の内容 |
---|---|
平成14年3月までに大学院に進学し、修士または博士の学位を取得した人 | 取得学位が商学:簿記論、財務諸表論が免除される 取得学位が法学または財政学:税法系科目 |
平成14年4月以降に大学院に進学し、修士の学位を取得した上で下記2点のいずれかを満たした人 1.会計系あるいは税法系の修士論文を執筆し学位を取得している 2.税理士試験に会計系または税法系の1科目以上に合格している |
取得学位が会計学:残りの会計科目が免除される 取得学位が税法:残りの税法科目が免除される |
平成14年4月以降に大学院に進学し、博士の学位を取得した人 | 取得学位が会計学:会計科目が免除される 取得学位が税法:税法科目が免除される |
国税従事者における免除
免除要件 | 免除の内容 |
---|---|
10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者 | 税法に属する科目が免除される |
23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者 | 会計学に属する科目が免除される |
弁護士・公認会計士となる資格を有する者の免除
免除要件 | 免除の内容 |
---|---|
弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。) | 全科目免除 試験を受けずに税理士になれる |
公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。) *公認会計士法第16条第1項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち、財務省令で定める税法に関する研修を修了した公認会計士に限定される |
全科目免除 試験を受けずに税理士になれる |
税理士資格と科目合格の違い
税理士と科目合格者の違いについて知っておきましょう。
基本的に業務内容は税理士とほとんど変わりませんが、給与で差がつくことが多いようです。
業務内容
税理士同様に、クライアントの巡回監査や税務コンサルティング業務等を行います。
ただし実務経験が浅い場合は、まず事務所内で書類作成等を経験してから税理士に同行し仕事を覚えることもあるようです。しかし税理士のみが巡回監査を行う等、勤務先によってかなり違いが見られます。
また一般企業に勤めた場合は経理部や財務部に所属することになり、科目合格者の場合は税理士というよりも経理のエキスパートとして扱われるケースが散見されます。
年収
税理士と科目合格者では、給与に差をつけている事務所が多い印象です。
一般的な事務所では、資格手当が「5,000円〜1万円/月×合格科目数」程度支給されます。
税理士試験に合格している場合は5科目合格ですから、2.5万円〜5万円が上乗せ額です。
したがって年収ベースで最大30万円〜60万円の差がつくことになります。
もちろん実力主義や売り上げ主義の事務所の場合は、税理士よりも高収入を得ている科目合格者もいますので、一概に税理士の年収の方が高いとは言い切れません。
また一般企業ですと、資格手当がなく、ほぼ年功序列で年収が決定するケースも珍しくありません。このような場合は税理士と大差ない給与に落ち着きます。
しかしながら、長時間勉強し高度な専門知識を習得している税理士の方が高収入になりやすいのは確かです。
他難関資格と比較した税理士資格の取得難易度は以下の記事で詳細に解説しておりますので、合わせてご覧ください。
税理士試験の難易度は?資格取得までの学習の仕方
税理士の科目合格が評価される職場
税理士試験の科目は11科目あり、勤務先によって評価される科目に違いが見られます。
これから税理士試験を受験するならば、転職先を見越した科目選びを行いましょう。
迷うようでしたら、まずは必須科目である簿記論と財務諸表論から学習を進めてください。
会計事務所
地域密着型の会計事務所では、簿記論や財務諸表論、法人税法が有利です。
小規模な税理士事務所は、地域企業の記帳代行や法人税申告等を中心とした財務サービスを提供しています。
そのため、会計知識や法人税法に詳しい科目合格者は優遇される傾向にあります。
しかし専門分野特化型事務所の場合は、特化している分野での科目合格が特に評価されます。たとえば相続税特化型事務所では、相続税法の科目合格が非常に優遇されます。
大手税理士法人
どの科目でもあまり評価は変わりません。
BIG4をはじめとする大手税理士法人では、税務業務を幅広く提供しています。
どの科目の知識も実務で活かせるため、突出して評価の高くなる科目というのはありません。
しかしあなたが希望する部署に配属されるかどうかは、合格した科目に左右される可能性があります。
たとえば起業サポートに従事したいのならば、簿記論や財務諸表論、所得税法等を勉強すべきでしょう。一方で国際相続の分野で活躍したいならば、相続税法を先に勉強するべきです。
一般企業の経理部や財務部
簿記論や財務諸表論が有利です。
一般企業で働く場合、経理部や財務部といった部署内で経理のエキスパートとして活躍できる頻度が高くなります。
そのため簿記や財務諸表の専門知識が高く評価されるのです。
また自社内で法人税等の計算を行っている企業の場合は、法人税法も高く評価されます。
コンサルティング会社
相続税法や法人税法等が有利です。
コンサルティング会社では、M&Aを筆頭に高度な税務知識が要求されます。
そのため科目合格は非常に優遇されます。現在は少子高齢化の影響で事業承継や相続の業務が増加していることから、相続税や法人税等に詳しいと転職で有利になるのです。
このように税理士試験の科目合格者は、多くの業界や職種で専門的なスキルを活かすことができます。次に、税理士試験の科目選択がどのようにキャリアプランに影響を与えるかを見ていきます。
税理士試験の科目選択とキャリアプランの関係性
税理士試験は、5科目の合格が必要ですが、その科目選択が将来のキャリアに大きな影響を与えることがあります。受験生がどの科目を選ぶかは、単に合格しやすさだけではなく、将来の自分のキャリアプランや目指す業界に直結するため、慎重な選択が求められます。
法人税法の選択と企業内税務のキャリア
法人税法は、企業の税務に携わるキャリアを目指す場合に非常に重要な科目です。法人税申告は企業にとって毎年必須の業務であり、その知識がある科目合格者は、経理部門や財務部門で重宝されます。企業内での税務戦略の立案や、経営判断に必要な税務情報の提供に携わることができ、企業内税務スペシャリストとしてのキャリアパスを歩むことができます。
所得税法の選択と個人顧客向けサービス
所得税法に合格していると、個人事業主や富裕層の顧客に対して税務サービスを提供するキャリアを築くことができます。特に、個人の確定申告や資産管理に関わる業務においては、所得税法の知識が不可欠です。税理士事務所や会計事務所では、所得税の専門家として高額所得者や個人事業主をクライアントに持つことができ、その信頼を得ることで高収入を目指すことも可能です。
相続税法の選択と資産承継コンサルティング
相続税法に合格している場合、資産承継や相続税対策に関するコンサルティング業務でのキャリアを目指すことができます。富裕層や企業オーナーをクライアントに持つ場合、相続税の知識が非常に重要であり、節税対策や資産分割のアドバイスを行うことで、信頼される専門家としての地位を確立することが可能です。また、相続税法に特化することで、特定分野の専門家として他の税理士との差別化を図ること
税理士試験の科目合格-まとめ
科目合格は1科目でも高く評価されます。
転職時には税理士事務所以外であっても有利になりますので、必ず履歴書に記載し武器の1つとしてください。
税理士資格以上に評価されることはありませんが、転職先によっては税理士とあまり変わらない待遇が得られます。税理士事務所に転職するならば科目合格数が給与に反映されますので、勉強のモチベーションにもつながるでしょう。
科目合格は税理士資格にたどり着くまでの途中です。コツコツと勉強を続けて、数年後には税理士資格を取得しましょう。
城之内 楊
株式会社ミツカル代表取締役社長