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税理士の仕事は将来性が無い?活躍し続けるポイント

2024/08/09

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インタビュー
まとめ

IT技術の発達に伴い、税理士の仕事が失われるのではないか、との声も挙がっています。

確かに、誰でも簡単に使える会計ソフトが普及したことで自計化が進んでいますし、申告書の作成だけなら税理士は不要になるかもしれません。では、今後税理士はどうなるのでしょうか?生き残るためにはどうすれば良いのでしょうか? 本記事では 税理士の将来性と、今後活躍するためのポイントについて解説いたします。

結論から申しますと、従来通りの仕事は減少し、新たな業務を担うことが求められています。

税理士の仕事が将来なくなると言われている理由

税理士の仕事がなくなると言われている大きな理由は、IT技術の発達により高度な専門知識があまり必要とされなくなったこと、そして中小企業数が減少していることです。

IT技術の発達

IT技術の発達により、誰でも簡単に仕訳入力や給与計算等ができるようになりました。 もちろん最低限の会計知識は必要ですが、簿記3級程度の知識があれば仕訳程度ならできます。したがって毎月の仕訳入力や月次決算を税理士に任せずに自社内で完結できるのです。 これにより税理士法人や会計事務所における業務が大幅に削減されることになりました。

とはいえ、記帳代行を依頼したいという要望もいまだに根強く、自計化する企業と記帳代行を依頼する企業との二極化が進みつつあります。 自計化を希望する顧問先が増えれば、当然税理士法人内での業務は減ります。人員削減にもつながるでしょう。 一方で、自計化を望まない顧問先が多いならば、記帳代行における業務は変わりません。

また自計化が可能になったとはいえ、企業内でできることは仕訳入力や税額の計算等にとどまります。最新の税制改正や利用できる特例等の提案を行い、顧問先企業特有の節税や申告書作成を税理士が担うことは今後も変わりません。

中小企業数の減少

日本の企業の90%以上は中小企業で占められているため、税理士のクライアントは中小企業が中心です。 その中小企業数は、年々減少しています。 中小企業庁「2020年度版 中小企業白書」によると、1999年には483.7社だったものが、2016年には357.8社まで減少しています。 中小企業数の減少には、経営者の高齢化と少子化が大きく影響していると考えられます。

高齢の経営者は後継問題を抱えており、黒字であったとしても存続が難しいケースも少なくありません。これまでは、経営者の子どもや親族が後継者となることが通例でした。ところが子どもがいない、子どもがいても継ぐ意思がない、価値観の変化等により、後を継ぐ人材がおらず廃業するのです。 中小企業数が減少するということは、税理士のクライアントが減少することに他なりません。クライアントが減れば当然仕事も減ります。 そのため税理士の仕事がなくなると言われているのです。 ただし、見方を変えれば、1社あたりに費やせる時間が増えることを意味しています。付加価値を高めて報酬額を上げる例として、経営コンサルティングや事業承継のアドバイスといったサービスを提供することが考えられます。これにより収入を維持・向上させることは可能です。
引用:中小企業庁「2020年度版_中小企業白書

税理士の業務内容の変化

これまでは中小企業の法人税申告がメインだったという税理士でも、これからは求められるレベルが上がります。例えば、クラウド会計ソフトやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった具体的なIT技術が登場し、比較的簡単な業務はIT技術でカバーできるようになりました。そのため、専門家である税理士には、より高度な業務遂行が求められているのです。

その例として現在需要が高まっているのは、事業承継(M&A含む)、相続税や贈与税、国際税務の分野です。 また訪問や通信手段に関しても変化が起きています。 まだ記憶に新しい世界規模の感染症拡大をきっかけに、税理士の訪問業務がオンラインに切り替わりつつあります。 訪問の往復時間が削減され、税理士は時間に余裕が生まれます。またクライアント側にしても、応接室の片付けやお茶だしといった雑務が不要になるため、オンラインは歓迎される傾向にあります。とはいえ訪問業務が完全になくなったわけではありません。

これからは新しい通信手段を駆使しつつ、必要ならば訪問もこなす、という方向にシフトしています。

税理士の業務内容

税理士が担う業務には独占業務と非独占業務があります。 それぞれ以下のとおりです。

<独占業務>
  • 1. 税務代理
    クライアントに代わり、税務に関する申告や申し立て等を行う業務です。 法人税申告や税務調査の立ち合い、税務署の更生や決定に不服がある場合の申し立て等が該当します。
  • 2. 税務書類の作成
    クライアントに代わり、税務書類を作成する業務です。 確定申告書や贈与税申告書、税務署に提出するその他の書類を代理で作成します。
  • 3. 税務相談
    税務相談を受け、アドバイスをする業務です。 顧問契約を締結しているクライアントに定期的なアドバイスを行うこともあれば、スポットで相談に乗ることもあります。

<非独占業務>
独占業務以外でも税理士が必要とされるシーンはいくつもあります。 下記はその一例です。
  • 1. 記帳代行
    クライアントに代わり、記帳を行います。 通常は税理士法人等の事務所内で、専用会計ソフトを使用して入力します。 主に自計化していないクライアントが対象です。
  • 2. 給与計算
    給与計算は税理士独占業務ではありませんが、源泉所得税や住民税、年末調整等が絡んでくるので税理士が代行するケースもよくあります。
  • 3. 経営コンサルティング
    クライアントからの要望があれば、税務相談の範疇を超えた相談にも対応します。 経営コンサルティングは報酬が高く設定できる反面、高度な知識が要求される業務です。

税理士業界の現状

続いて税理士業界全体について確認しましょう。

税理士の人口は増加している

税理士は一度その資格を取得すれば、生涯有効となる資格です。 そのため税理士となってから長く続ける人が多く、税理士人口は増加の一途を辿っています。 国税庁による税理士人数の推移は以下のとおりです。
引用:国税庁_税理士人数の推移

平成22(2010)年度 72,039人
平成27(2015)年度 75,643人
令和2(2020)年度 79,404人
令和3(2021)年度 80,163人
令和4(2022)年度 80,692人

また日本税理士連合会によると、令和6年3月末時点での税理士の登録者数は81,280人でした。 上記のように、税理士の人数は徐々に増加しています。 税理士の人数が増加しているということはライバルが増えてきていることを示しています。 しかしながら後述の理由もあり、顧問先の取り合いになっているとは言い切れない状況です。
引用:日本税理士連合会_税理士登録者数

高齢化・跡継ぎ問題が発生している

本税理士連合会の調査結果によると、平成26年1月1日時点における税理士の年齢構成は以下のとおりです。
引用:日本税理士連合会_年齢構成調査結果

20代 0.6%
30代 10.3%
40代 17.1%
50代 17.8%
60代 30.1%
70代 13.3%
80代 10.4%

60歳以上の税理士が50%以上を占めていることが分かります。 税理士の高齢化が発生している大きな原因は「税理士試験の受験要件が厳しい」「定年がない」「国税OBが税理士に転職する」という3つが挙げられます。 税理士試験の一部の試験科目については、基本的に大学卒業以上でなければ受験できません。さらに税理士試験は数年をかけて合格する試験なので、20代前半で税理士となれることは極めて稀です。 また一度税理士資格を取得すると生涯有効です。そのため通常の企業が諦念と定める60歳以降であっても、長く働き続けられます。 最後に、税理士となるルートには、国税従事者として長く勤めた人も含まれます。税務署で働き、定年退職後に税理士に転職する人も少なくないのです。

このような理由から、高齢の税理士が多いのが現状です。 なお税理士の他の一般企業同様に、後継者問題に悩まされています。税理士試験は3大難関資格ともいわれるほど合格が難しい資格です。前途広がる若い人材が税理士の資格試験に挑戦すると決断するのは容易ではありません。 逆に捉えるならば、後継者問題を抱えている税理士事務所等は多いので、親類でなくとも後継として迎えられる可能性もあるのです。

顧客企業が減少している

前述したとおり、顧客となり得る中小企業数が減少しています。 また、これまでクライアントであった企業も、後継者がおらず黒字倒産することもあるでしょう。新規顧客が獲得できなければ顧客企業数は減少の一途を辿ります。 すでにクライアント減少を感じている税理士法人等では、1社あたりの報酬額を増額する方向に動いているか、製販分離を進めて営業に注力しています。 税理士の人数自体は増加傾向にありますので、税理士の平均受け持ち企業数は今後も減っていくでしょう。その中でどれだけ報酬額を確保できるか、どれほど多くのクライアントから選ばれるかで、税理士としての力量が試されます。

税理士として活躍するためのポイント

税理士業界は過渡期にあるといっても過言ではありません。 この激しい変化に乗り遅れず、できる税理士として活躍していくポイントを紹介いたします。

専門性を高める

税理士と一括りにしても、その業務内容は様々です。 法人税を中心にしている税理士もいれば、相続税中心、国際税務中心とそのジャンルはバラバラ。 そこで、得意分野を突き詰めて「○○ならあの税理士」と言われるようになりましょう。 もちろん、地域密着型でクライアントから依頼があればなんでもこなす税理士も求められています。しかし現在の大きな流れは特化型税理士です。 税務という大きなくくりの中の1つに特化している税理士となれば、その分野におけるクライアントからの信頼は絶大なものになりますし、クライアントから探してくれるようになるため営業の手間も省けます。 どの分野に絞ればいいのかと悩むならば、現在のクライアントからの要望が高い分野から極めてはいかがでしょうか。

ITツールを使いこなす

ITツールの使用は避けて通れません。 クラウド会計に限らず、チャットワークやSlackといった通信手段、RPA等、税理士業界や会計業務に進出しているITツールを積極的に使いこなす必要があります。 税理士の業務効率化に一役買ってくれることも理由の1つですが、クライアントから利用を求められるケースも増えてきました。 ITツールにより税理士の仕事が奪われると危惧する声もありますが、使いこなせば仕事が奪われる心配などないのです。ITツールを駆使して効率的に業務を遂行し、税理士でしかできない仕事に時間を費やしてください。

コミュニケーション力を強化する

ITツールに置き換えられない業務の1つが、クライアントとのコミュニケーションです。 主に経営者に対して企業の財務状況や、今後の指針やアドバイス等を行います。 またクライアントの不安や悩みを聞き取り、提案・解決することも重要な仕事です。 このような「コミュニケーション」を主体とする業務は、ITツールではできません。税理士のコミュニケーション力にかかっています。 コミュニケーション力が高ければ、クライアントの悩みを聞き、適切なアドバイスや新たな業務の締結へと結びつけられます。 コミュニケーションに苦手意識を持っているならば、今のうちから練習・強化しておきましょう。

業務範囲を広げる

特に小規模な税理士事務所の場合、受注する業務を制限していることも少なくありません。 たとえば法人税の申告業務と年末調整のみ受け付けており、相続税や贈与税等については受注しない、というパターンです。 割ける人員が限られているからこそ、受ける業務を選別することは大切ですが、今後はクライアント数が減少していくことが予想されます。業務範囲を広げるならば、今がチャンスとも言えます。 依頼される業務をすべて受ける必要はありません。1つだけ増やす、あるいは少しずつ増やしていけば良いのです。 上記の例ならば、経営者の相続問題を解決するため相続税や贈与税を受ける、M&Aを進める、といった広げ方が考えられます。 現職の税理士事務所では業務範囲を広げられないという場合は、転職もご検討ください。

税理士としての可能性を広げるためには、幅広い業務経験が必要です。あなたの理想の将来を実現するにふさわしい業務ができる税理士法人は必ずあります。 まずは転職情報を定期的に確認するところから始めましょう。すぐに応募する必要はありません。理想的な職場が見つかった際に、本格的に動き出せば良いのです。

まとめ

税理士業界は過渡期を迎えています。将来性が不透明だと不安に感じる人もいるでしょう。しかし税理士の仕事がなくなることはありません。考え方次第では、専門性の高い業務に挑戦するチャンスとも言えます。 これからは業務範囲の選定や専門性の向上、技術の活用方法等によって活躍できる税理士と、そうでない税理士に二極化します。本記事の内容を元に、ぜひ活躍できる税理士の地盤を固め、クライアントから選ばれる税理士を目指しましょう。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。