エントリーする

INDEX

おすすめインタビュー

インタビューを全て見る

AIに税理士の仕事が奪われる?税理士が知っておくべきAIの活用法をご紹介

2024/08/09

INDEX

summary

インタビュー
まとめ

近年、AI(人工知能)の普及により、税理士の仕事が奪われるのではないかという懸念が広がっています。しかし、AIがすべての業務を代替することは不可能と言われています。

むしろ、AIを活用することで税理士の仕事がより充実し、効率的になる可能性があるのです。 この記事では、 AIにより税理士の仕事が奪われると言われる理由やAIにできない業務、税理士が活躍するポイントについて詳しく解説していきます。 参考までに、是非ご一読ください。

AIの進化で税理士の仕事がなくなると言われる理由

現在、AIの進化により、従来人間が行っていた多くの業務がAIに取って代わられています。 一部では、 AIの進化で税理士の仕事がなくなるとも囁かれていますが、なぜそう言われているのでしょうか。

その理由を3つ解説します。

AI研究者が論文を発表

2013年、オックスフォード大学のマイケル・オズボーンが発表した論文「THE FUTURE OF EMPLOYMENT」(雇用の未来)によると、 AIが導入されれば、702職種はAIにより代替すると発表されました。その702職種に、税務・会計に関する次の業務も含まれていたのです。

業務内容 詳細説明
確定申告代行者 納税者に代わって所得税の確定申告書を作成・提出する業務。必要な書類の収集、所得や控除の計算、税額の算定など、税務に関する全ての手続きの事を指します。
データ入力係 会計システムに財務データを入力する担当者です。取引明細や領収書などの情報を正確に入力し、データの整合性を保つことが求められます。
簿記、会計、監査の担当者 企業や個人の財務記録を管理し、正確な会計帳簿を作成する専門家です。月次決算や年次決算の作成、財務諸表の作成、内部監査を実施し、財務状況を正確に把握することが求められます。
給与支払い業務の担当者 社員の給与計算と支払いを管理する担当者です。労働時間の集計、各種手当や控除の計算、給与明細の発行、税金や社会保険料の控除・納税を行います。

発表された当時、会計ソフトは普及していたものの、入力作業は手作業が一般的であったため、「AIに務まるはずがない」と言われていました。 しかし現在は、クラウドソフトの普及によりオンラインにて入力作業や決算、仕訳業務が行えるようになり、 「AIに税理士の仕事が奪われる」未来が現実味を帯びてきています。

税理士の仕事がなくなったエストニアの事例

実際に、デジタル政府の先駆者として知られるエストニアでは、AI技術の導入により税理士の仕事がなくなると言われています。エストニアでは、 AIが納税者のデータを自動的に分析し、税務申告書を作成するシステムが導入されています。

このシステムにより、従来の税理士が手作業で行っていた多くの業務が自動化され、迅速かつ正確に処理されるようになりました。

また、リアルタイム監査機能も備わっており、不正やミスを即座に調査できます。これにより、エストニアでは 税理士の業務が大幅に削減され、税理士はコンサルティング業務や高度な財務アドバイスにシフトしています。

この事例は、AIの活用が税理士業務をどのように進化し得るかを示しており、他国にとっても重要な示唆を与えています。

会計・税務業務のクラウド化

近年、会計や税務業務のDX化が進み、AIによる自動化が可能となりつつあります。 これは、データの入力、整理、分析といった日常業務を効率化し、時間とコストを削減するための手段です。 クラウド化によって、情報は一元管理され、リアルタイムでの更新や共有が可能となり、リモートワークやテレワークの推進にも寄与しています。

さらに、AIの進化により、税金の計算や申告書の作成など、従来人間が行っていた作業の自動化が進展しています。これらの技術の進歩は、一部で税理士の仕事がなくなるという声を生んでいます。

しかし、 AIが自動化できる範囲は限られており、税理士が持つ専門知識や経験を必要とする業務も多く存在します。

AIにできない税理士業務とは

現在、AIの進化により税理士の仕事が奪われるのではないかと言われています。しかし、 AIには得意・不得意な作業があります。では、AIに代替できない税理士業務とは何があるのでしょうか。

クライアントの特殊事項を考慮した業務

クライアントの特殊事項を考慮した処理は、AIが不得意とする業務の1つです。 具体的には、 個々の企業の業態や業界特有の税制、企業の事業戦略や経営状況に応じた税務処理など、様々な要素を総合的に判断し、クライアントにとって最善な税務処理を行うことが求められます。

このような複雑な判断は、クライアントの状況を理解し、深い知識と経験を持つ税理士でなければ難しいと言われています。また、特定の業界や企業の特性を理解するためには、人間の観察力や洞察力が必要となり、これらは現状のAIではまだ実現できていません。

したがって、 特殊事項を考慮した処理は、AIが代替するのが難しい税理士業務と言えます。

コンサルティング業務

コンサルティング業務もまた、AIが不得意な業務であると言われています。 クライアントのビジネス状況や業界特性、税制の変動など、多種多様な要素を総合的に考慮し、最適な税務戦略を提案するための専門的知識と経験を必要とするからです。

特に、 新規ビジネスモデルや未知の課題に対する解決策を提案する場合、あるいは複雑な税務問題を解決するための戦略を策定する場合、税理士の経験と知識が必要となります。また、クライアントとの信頼関係を築くための コミュニケーション能力も、AIが置き換えられない要素です。

実際にAIにより税理士の仕事が奪われたと言われているエストニアでも、コンサルティング業務は税理士が担当してる状況から、コンサル業務は今後も税理士の重要な役割となり続けるでしょう。

法のアップデート

税法は国や地域により異なるだけでなく、政策変更や経済状況の変動に応じて頻繁に税制改正されます。 これらの 法改正をリアルタイムで把握し、その影響を正確に予測し、クライアントに適切な対策を提案するためには、税理士の専門知識と経験が不可欠です。

また、新たな税法が導入された際には、それがクライアントのビジネスにどのような影響を及ぼすかを評価し、最適な戦略を立案することも税理士の役割です。

これらはAIが単にデータを処理するだけでは達成できず、クライアントに対する深い知識と経験に基づく判断が必要となります。

したがって、税法のアップデート対応は、AIには難しい税理士の業務です。

AIがあっても税理士が活躍する3つのポイント

AIが進化し、多くの業務が自動化される中、 税理士が活躍するためには以下の3つのポイントが鍵となるでしょう。

AIやITツールを使いこなす

税理士が活躍できる最初のポイントは、AIやITツールを使いこなす能力を持つことです。

例えば、AIは大量のデータを迅速に処理する能力を持ち、複雑な計算やルーチンワークを効率よくこなすことができます。これらを活用し、 AIと共存することで、税理士は時間を有効に使い、人間にしか対応できない、より高度な業務に専念することが可能となり業務時間の短縮につながります。

しかし、これらのツールを使いこなすには、ITスキルや最新知識のインプットが必要不可欠です。そのため、税理士自身が学び続け、スキルを磨く必要があります。

このように、 AIやITツールを使いこなすことは、税理士がAI時代でも活躍するためのポイントとなります。

専門性を高める

AIに仕事を奪われない税理士になるには、 特定の業界や分野への専門性を高めることも大切です。 税理士が手掛ける専門的な業務は、事業継承や組織再編、M&A関連業務、IT業界特化や国際税務などがあります。

自身が得意とする分野を持つことで、クライアントからの需要が高まることはもちろんのこと、AIに代替できない税理士となることができるでしょう。

コミュニケーション力を強化する

コミュニケーション力を強化することは、AIが進化しても税理士が活躍するための鍵となります。

AIはデータを解析し、結果を出すことが得意ですが、その結果をクライアントに伝え、理解してもらうことはできません。また、クライアントの事業に対する理解や、その背景にある事業戦略を理解することもAIには難しいです。

これらの情報を元に、 最適な税務戦略を提案するためには、税理士とクライアントとのコミュニケーションが必要です。

さらに、税法の変更や新たな制度の導入など、常に変化する税務環境をクライアントに理解してもらうためにも、明確で分かりやすいコミュニケーションが求められます。また、クライアントの信頼を得るためにも、円滑なコミュニケーションは必要不可欠です。

これらの理由から、 税理士はコミュニケーション力を強化することで、より価値あるサービスを提供することができます。

まとめ

AIの進化により、税理士の業務が自動化される可能性が増していますが、その一方で、 AIにはまだ対応できない業務も存在します。そして、そのギャップを埋めるのが現代の税理士の新たな役割と言えるでしょう。 AIやITツールを使いこなし、専門性を高め、コミュニケーション力を強化することで、税理士はAIと共存し、その存在価値を高めることが可能になります。

この記事では、AIの進化により税理士の仕事がなくなると言われる理由、AIにできない税理士業務、そしてAIがあっても税理士が活躍するポイントについて詳しく解説しました。これらの情報を基に、税理士はAIとの共存戦略を立て、自身の専門性を強化することが求められます。

最後に、 AIと税理士の共存は、単なる業務効率化だけでなく、より高度なコンサルティング業務やクライアントの特殊事項を考慮した業務など、人間特有のスキルアップを図るためのチャンスでもあります。これらの視点から、AIを最大限に活用し、共存できる税理士になることの重要性を再認識していただければ幸いです。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。