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国際税務の基礎知識と実務を解説!スキルアップに必要な資格とは?

2024/08/09

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インタビュー
まとめ

 

国際税務の基本知識

現在、経済のグローバル化に伴い、国際税務の必要性が高まりつつあります。これは企業や個人が海外への展開を行う際の消費課税や所得課税のほか、海外にて収益が発生した場合に生じる税金が日本と現地国の両方で課税されてしまう二重課税についての認識が甘く損をしてしまうケースや、税務調査の対象となってしまう場合が多いため、国際税務が重要になっていると言えます。

今回は、国際税務の基礎知識から、国際税務に特化した税理士になるために必要な資格について詳しく解説していきます。

国際税務とは何か

国際税務とは、企業や個人が国境を越えて事業を行う際の税務面での取り扱いに関する税務のことを指します。国際取引が増える中で、異なる税制度を持つ国々との取引により生じる二重課税の問題を避けるための国際的な枠組みや、海外進出をする企業が把握しなければならない税務リスクなどを扱い、国際税務専門家はその知識と経験を活かして企業のグローバル展開を支えています。

国際税務が重要な理由

経済のグローバル化が進む現代で、企業や個人が各国の税制を理解し、適切に対応することは非常に大切です。しかしグローバル化が進むにつれて、国際税務に対する知識不足から税務調査の対象となるケースも年々増加しております。 以下の表では、国際税務に関連する主要な税の種類別にその重要性を説明しています。

税の種類 重要である理由
法人税 多国籍企業は各国の法人税率や課税ルールに従う必要があります。適切な税務計画は、税負担を最小限に抑え、競争力を維持するために重要です。
源泉徴収税 国際取引において、受取側の国での源泉徴収税が課されることがあります。適切な理解と対応は、二重課税の回避や税務リスクの管理に不可欠です。
移転価格税制 多国籍企業の関連会社間の取引価格設定に関する税制です。公平な取引価格を設定しないと、課税当局からの調査やペナルティを受ける可能性があります。
消費税・付加価値税 商品やサービスの国際取引に関連する消費税や付加価値税は、各国の税率や税制の違いを理解し、適切に申告・納税することが重要です。
関税 輸入品に対して課される税であり、国際貿易においては不可避です。関税の適切な管理は、コストの予測や価格競争力の維持に直結します。
個人所得税 国際的に働く個人は、滞在国と本国の両方での課税対象となることがあります。適切な税務計画は、二重課税の回避や税務コンプライアンスの確保に役立ちます。
デジタルサービス税 デジタル経済の拡大に伴い、各国で導入が進んでいる税制です。国際的なデジタルビジネスにおいては、新しい税制の適用範囲や影響を理解することが重要です。

【企業向け】国際税務の対策ポイント

国ごとに異なる税制を理解し、適切な税務対策を行うことは企業の利益を最大化する上で極めて必要な要素となります。
ここでは、企業が留意すべき国際税務とその内容について詳しく解説します。

海外子会社の設立と運営

海外子会社の設立と運営を行う際は国ごとの税制の違いを鑑みる必要があるため、国際税務は極めて複雑です。 以下は海外子会社の設立と運営において、抑えるべき国際税務のポイントと内容です。

ポイント 内容
法人の最適化 ・現地法人税率の確認
・タックスヘイブン規制への対応
移転価格税制の尊守 ・関連会社間取引の市場価格設定
・移転価格文書の作成と提出
二重課税の回避 ・二重課税防止条約(DTA)の適用
・外国税額控除の活用
源泉徴収税の理解 ・配当金、利子、ロイヤルティの源泉徴収税
・税務調整と免税条件の確認
現地の税制とコンプライアンス ・現地税法の遵守
・定期的な監査と報告
現地の経済・政治リスクの評価 ・経済状況の評価
・政治リスクと法改正の影響の考慮

ポイントの詳細説明

法人税の最適化

現地法人税率:
子会社設立国の法人税率を事前に調査し、税負担を最小限に抑える計画を立てる。

タックスヘイブン規制:
タックスヘイブンとみなされる国に子会社を設立する場合、追加の規制や税制が適用されるため、これに対する対応策を講じる。

移転価格税制の遵守

関連会社間取引:
親会社と子会社間の取引価格は市場価格に基づき設定されるべきであり、これを証明するための移転価格文書を作成する。

移転価格文書:
現地の税務当局に対する提出義務がある場合、適時に提出し、ペナルティを回避する。

二重課税の回避

二重課税防止条約(DTA):
親会社所在国と子会社設立国の間で締結されているDTAを適用し、所得の二重課税を防ぐ。

外国税額控除:
現地で支払った税金を親会社所在国で控除することにより、全体の税負担を軽減する。

源泉徴収税の理解

配当金、利子、ロイヤルティ:
これらの支払いに対する源泉徴収税の適用を確認し、税率や免税条件を理解する。

税務調整:
源泉徴収税の適用を最小限に抑えるため、現地の税務当局との協議や調整を行う。

現地の税制とコンプライアンス

現地税法の遵守:
子会社設立国の税法を正確に理解し、全ての税務申告義務を遵守する。

定期的な監査と報告:
現地の税務当局による監査や報告義務に対応するため、内部監査を実施し、正確な財務記録を維持する。

現地の経済・政治リスクの評価

経済状況の評価:
子会社設立国の経済状況や税制の安定性を評価し、長期的な運営計画を立てる。

政治リスクと法改正の影響:
政治的なリスクや法改正の影響を考慮し、リスク管理の戦略を策定する。

海外への展開を検討している経営者や担当者は、上記ポイントを押さえる必要があります。

国際取引と税務調査

近年、国際取引を行う際に、消費税や源泉徴収等について課税しなくてはいけない取引を免税として集計してしまうことなどから、税務調査の対象となるケースが多発しています。 国税庁が発表している令和4年度の海外取引に係る申告漏れ所得は、総額2,259億円とされており、そのうち海外取引等に係る源泉徴収漏れに対する追徴課税は約40億円とされています。このように、海外取引法人等に対する取組を掲げるほど、国税庁は国際取引について目を光らせていることが分かります。

そのため、国際税務の基礎知識を身につけ、税務調査の対象になった場合にも対応できる力を身につける必要があります。

海外投資や輸出入取引を行う場合、税務面で様々な項目を検討する必要がありますが、その際に重要視すべきなのが、税務調査のリスクになります。 税務調査は、納税者から提出された税務申告内容に不審点が見つかった場合に、国税庁や税務署によって行われる調査のことです。

税務調査が入ることで、追徴課税が課される可能性があったり、税務署とのやり取りを都度行わなければいけなくなり、時間がとられ業務が進まなくなるといったデメリットがあります。

このような事態を防ぐためにも、移転価格税制やタックスヘイブン対策税制についてきちんと理解することが大切です。

【個人向け】国際税務のポイント

個人であっても海外で収入がある場合や、海外に資産を保有しているといった場合は、国際税務が発生する場合があります。

海外駐在員の税務対策

海外で働くということは、単に働く場所が変わるだけでなく、税務に関しても新たな課題が生じます。特に、税金の二重課税を避けるための国際税務の知識は必要不可欠です。

まず、海外での所得に対する税金は、原則として働いている国で納税することが求められます。しかし、日本人であれば、日本の税法に基づく居住者として、日本でも所得全体に対する税金が課せられる可能性があります。これを二重課税と言います。これを防ぐためには、日本と働く国との間で結ばれている租税条約の存在を確認し、その条約に従う必要があります。

さらに、海外での生活や仕事により、海外での資産形成が進んだ場合には、相続税や贈与税についても考慮する必要があります。

海外投資とその税務処理

海外投資にて収益を得ると、日本と現地国の両方の税金がかかる、「二重課税」となる場合があります。 海外投資を行う際には、以下の税務上のポイントに注意する必要があります。 源泉徴収税の確認:
投資先国で源泉徴収税が適用される場合、その税率を確認し、日本での外国税額控除の適用を検討します。これにより、二重課税を避けることができます。

外国税額控除:
日本では、外国で支払った税金を一定の範囲で控除できる制度があります。これは、日本国内での納税額を減らすための重要な手段です。正確な控除額を計算するためには、現地の税金の支払い証明書を適切に保存しておく必要があります。

税務報告義務:
海外投資に関連する収入や資産については、日本の税務当局に報告する義務があります。特に、海外に5000万円以上の資産を保有する場合、「国外財産調書」の提出が必要となります。これを怠ると、重い罰則が課される可能性があります。

タックスヘイブン対策税制:
特定の低税率国に投資を行う場合、この税制の対象となることがあります。これは、税負担を不当に軽減する行為を防ぐためのもので、一定の条件下では、現地での所得を日本で課税されることがあります。

税務処理の実務

海外投資における税務処理は、国ごとの税法や条約、投資形態によって異なります。 実務では、以下の手順を踏むことが一般的です。

現地税法の調査:
投資先国の税法を調査し、適用される税率や申告義務を確認します。

国際税務アドバイザーの活用:
複雑な税務処理を正確に行うためには、国際税務に詳しい税理士などのアドバイザーから助言を受けることが重要です。

適切な帳簿管理:
海外投資に関連する取引を正確に記録し、証拠書類を適切に保管します。

定期的な見直し
税制は頻繁に変更されるため、定期的に税務処理を見直し、最新の法規制に適合させる必要があります。

国際税務の仕事内容とは

具体的な仕事内容としては、海外進出を考える企業の税務リスクの評価、税務戦略の策定、海外の子会社や支店の税務監査の対応、二重課税の解消などがあります。また、国際税務のプロフェッショナルは、国際税務条約の理解はもちろん、移転価格税制やBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)対策など、国際税務に関連する様々な規制についての深い知識を持つ必要があります。

これらの知識を活かし、顧客がグローバルなビジネス展開をする際の税務面での最適な解決策を提供することが、国際税務の仕事です。

国際税務の年収は?

国際税務の専門家として活躍するためには高度な知識と経験が必要となり、その報酬は高いと言われており、平均年収は500万から1,000万円です。キャリアを積むことで1,000万以上の年収を得られる可能性が高くなります。そのほか、大手監査法人や国際的な税務コンサルティングファームなどで働くことにより、さらに年収は上がる傾向にあります。

ただし、高収入を得るためには、国際税務の専門知識だけでなく、英語力や交渉力、プレゼンテーション力などのビジネススキルも求められます。 国際税務専門家として成功するためには、これらのスキルを磨くことが重要となります。

国際税務に特化した税理士になるには

国際税務に特化した税理士になるためには、基本的な税務知識とともに、国際的な税制度や税法についての深い理解が必須となります。

語学力アップ

国際税務に特化した税理士になるためには、ただ税法を理解するだけでなく、語学力の向上も求められます。国際的なビジネスを展開する企業の相談に乗るためには、英語や中国語などの外国語を習得していることが大切です。また、各国の税法や国際的な税務トラブルについて理解しているだけでなく、それを相手の言語で適切に伝える力も必要となります。

さらに、国際的なビジネスマナーや文化の違いを理解するためにも、語学力の向上が必要です。語学学習は時間と労力を必要としますが、それだけに価値があるスキルです。語学力を身につけることで、より広い視野で税務を考えることができ、国際税務に特化した専門家としての地位を確立することが可能となります。

外国の税制に対する専門的な知識を身につける

税法の基本的な理解の上で、外国の税制について学ぶことで、国際的な視点を持つことが可能となります。具体的には、外国の所得税法や消費税法、相続税法など、その国の税制の特性を理解することが必要です。また、それぞれの国の税務当局との交渉経験も重要なスキルとなります。

さらに、国際税務の専門家になるためには、国際的なビジネスや投資の知識も必要となります。企業が国際的な取引を行う際や、個人が海外に資産を持つ際には、その国の税制だけでなく、二重課税を避けるための税条約の理解も必要となります。

専門的な知識を身につけるためには、税理士試験の勉強だけでなく、国際税務に関するセミナーや研修を活用することもおすすめします。また、実際の案件を通じて経験を積むことで、理論だけでなく実践的な知識も身につけることができます。

国際税務に特化した税理士になるためには、国内外の税制に対する深い理解と、広範なビジネス知識が求められます。そのため、常に最新の税制改正やビジネストレンドに目を向け、自己啓発を怠らないことが重要となります。

コンサルティングの実績をつける

コンサルティングの実績をつけることは、税理士としての信頼性や専門性を証明するために不可欠です。具体的には、国際税務に関連した具体的な案件での成功体験や、顧客からの高評価などが求められます。 国際税務における課題やニーズは、クライアントのビジネスモデルや業界特性により大きく変わるため、それぞれのクライアントに合わせた最適なアドバイスを提供することが求められます。

さらに、国際税務の規定や税制度は常に変わり続けています。そのため、最新の情報をキャッチアップし、それをクライアントのビジネスに活かすことも、コンサルティングの実績をつけるための大切なスキルとなります。

最後に、コンサルティングの実績をつけるためには、コミュニケーション能力も必要です。クライアントの要望を的確に理解し、自身の専門知識をわかりやすく伝えることで、クライアントの信頼を勝ち取り、長期的な関係を築くことが可能となります。

国際税務に有利な資格

国際税務に特化した税理士になるために、資格を所持することでより広範な業務に対応でき、求人市場でも優位に立つことができます。

TOEIC

国際税務における業務をスムーズに進めるためには、専門的な知識やスキルはもちろん、適切な資格が必要となります。その中でも、特に有利な資格としてTOEICが挙げられます。TOEICは英語のビジネスコミュニケーション能力を測る試験で、国際税務の現場では多くの国や地域との対話が必要になるため、高い英語力が求められます。TOEICの高得点は、その能力を証明する一助となり、業務における信頼性を高めるために有効です。

業務では、英語にて国際的な規則や税法を読み解いたり、英語で顧客とコミュニケーションをとることが求められるため、どのような状況でも支障なく意思疎通ができる英語レベルであるTOEIC700点以上を取得しておくと良いでしょう。

EA(米国税理士)

EA(米国税理士)とは、アメリカの内国歳入庁が認可する米国の国家資格です。 受験資格は18歳以上となっており、学歴・職歴に関係なく受験することが可能です。

また、EAの合格率は約64%と、日本の税理士資格に比べて高い傾向にあります。 EAの資格を取得することで、企業や個人の米国連邦所得税の申告や相談を行うことが出来る知識・技術の証明をすることができます。

USCPA(米国公認会計士)

USCPA(米国公認会計士)は、米国の会計原則や税法、監査基準などを網羅的に学ぶことができ、その知識は国際的なビジネスシーンで非常に有用となります。 USCPAの試験は英語で出題されるため、その資格を持つことで、英語で監査業務が行えるといった証明になります。

この資格を持つことで、さらに広範な監査法人やコンサルティングファームへの就職・転職が可能となります。

まとめ

この記事では、国際税務の基礎知識から仕事内容や必要な知識・スキルについて詳しく説明しました。

国際税務に特化した税理士になるには、語学力や国内外の税制に対する専門的な知識を身につけることが求められます。また、EA、USCPA、TOEICの税理士資格を持つことで、国際税務にも対応可能な市場価値の高い税理士として、就職や転職を優位に立って行うことができます。

国際税務の専門家として活躍することで、年収アップやキャリアアップの実現が可能となり、国内外のビジネスチャンスを広げることができるでしょう。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。