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仮想通貨・暗号資産に強い税理士になるには

公開日:2025/05/30

最終更新日:2025/05/30

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仮想通貨取引を行う納税者が年々増え、税理士にも対応力が求められる時代になりました。
一見シンプルな売買に見えても、実は「交換」「使用」「報酬受取」など多様な課税タイミングが存在します。

取得原価の算定方法や、円換算レートの選定・記録の有無が、申告の精度を大きく左右します。
海外取引所やウォレットの使用も一般化しており、履歴の整理と証拠資料の保存は必須です。
雑所得に該当する場合は、損益通算・繰越控除ができず、相談者の納税負担にも影響します。

近年ではNFTやDeFi、ステーキング報酬といった新しい取引形態の税務判断も求められています。
申告書を正確に作成するだけでなく、税務調査に備えたロジックと証拠づくりが欠かせません。
本記事では、仮想通貨申告の現場で押さえるべき実務対応ポイントを整理して解説します。

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仮想通貨に関する税務の基本

仮想通貨の定義と種類

定義(税務上の位置づけ)

仮想通貨は、税務上「資産」として取り扱われ、所得税基本通達によって「物品等の対価の支払に使用でき、かつ法定通貨と交換可能な電子的データ」と定義されています

種類

仮想通貨には以下のような分類があります:

分類 内容
汎用型(決済通貨型) 通貨的な用途に使われる ビットコイン(BTC)、ライトコイン(LTC)など
プラットフォーム型 スマートコントラクトなどの開発基盤 イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)など
ステーブルコイン型 法定通貨と価値を連動 USDT(テザー)、USDCなど
トークン型(ユーティリティ型) サービス利用権など特定用途に限定 AXS、MATICなど
NFT(非代替性トークン) コンテンツやアートの所有証明 各種NFTアート・ゲーム内資産

これらはいずれも原則として譲渡益課税の対象になります。

仮想通貨に関する法的な位置づけ

■ 資金決済に関する法律(資金決済法)

仮想通貨(暗号資産)は、「通貨」ではなく「資産」として取り扱われます。日本では資金決済法第2条で以下のように定義されています

 不特定の者に対して代価の弁済に使用でき、かつ、法定通貨との交換が可能な財産的価値

この定義に該当する暗号資産は、金融庁への登録を受けた暗号資産交換業者が取り扱うことが義務づけられています。

税法上の取り扱い(所得税法)

・個人が仮想通貨を売却、交換、商品購入に利用した場合の利益は「雑所得」に分類され、総合課税の対象となります。
・法人が保有・取引する場合は、法人税の課税対象(原則として収益認識に基づく)となります。

消費税との関係

2017年7月以降、仮想通貨の譲渡は非課税取引とされており、消費税は課されません

実務上の留意点(税務処理)

・仮想通貨の取得価格は、移動平均法または総平均法で計算することが原則です(任意選択制)。
他の仮想通貨との交換(例:BTC→ETH)も課税対象になります。
・マイニング報酬やステーキング報酬も雑所得扱いになります。
・含み益段階では課税されず、実現時課税(売却・交換など)となります。
・NFTやDeFiの活用も含め、取引の実態によって課税関係が複雑化しているため、逐次の記録が重要です

仮想通貨の税金がかかるケース

売買による利益の発生

定義と課税タイミング

仮想通貨を「売却」または「他の仮想通貨・商品・サービスと交換」したときに課税対象になります。

税区分と税率
・所得区分:雑所得(総合課税)
・税率:所得税+住民税(最大55%)

課税対象となる利益の計算式
譲渡価額 − 取得価額 = 利益(雑所得)

課税対象となる代表的な取引例

取引内容 課税対象
BTCを日本円に売却
BTCでETHを購入 〇(BTCを売却したとみなす)
BTCで商品を購入 〇(消費と同時に課税)

実務上の留意点
複数回取引している場合は取得原価の算出(移動平均法 or 総平均法)が必須
損益計算に対応した取引履歴の管理ツール活用が推奨されます

マイニングによる所得

定義と課税対象
自らコンピューターで演算処理を行い仮想通貨を得た「マイニング」、保有通貨を預けて報酬を得る「ステーキング」はいずれも課税対象です。

課税タイミング
報酬を受け取った時点での時価を基に雑所得として認識します。

税区分と税率
所得区分:雑所得(総合課税)
税率:最大55%(所得税+住民税)

実務上の注意点
・着金時の時価把握が必須(ウォレットに反映された日時のレートで評価)
・継続的・営利的な活動と見なされると事業所得になる可能性もあり

仮想通貨の贈与や相続

贈与の場合

仮想通貨を無償で他人に譲渡した場合、贈与を受けた側に贈与税が課されます。
年間110万円を超える贈与は申告が必要です
相場変動が激しいため、贈与時のレート記録が重要です

相続の場合

仮想通貨を相続する場合、相続開始時点の時価で評価し、相続税の課税対象となります。

実務的な課題
・ウォレットのアクセス権やパスワードの引き継ぎが明確でないと、相続人による把握が困難になる可能性があります
・相場急騰により評価額が高騰し、相続税負担が増えることがあります

まとめると、以下の通りです。

ケース 税目 課税対象者 タイミング 所得区分
売却・交換 所得税 売却した本人 実現時 雑所得
商品購入 所得税 購入した本人 購入時 雑所得
マイニング・ステーキング報酬 所得税 報酬受取者 着金時 雑所得 or 事業所得
贈与 贈与税 受贈者 贈与時 時価評価
相続 相続税 相続人 相続開始時 時価評価


仮想通貨の税金計算方法

取得価格と売却価格の計算

仮想通貨を売却または使用したときの所得は、次のように計算されます。

所得金額(雑所得)= 売却価格 − 取得価格 − 必要経費

取得価格の計算方法

仮想通貨の取得価格の計算は以下のいずれかの方法で行います(継続適用が必要)。

方法 概要 特徴
移動平均法 購入のたびに平均単価を更新 より厳密だが計算が複雑
総平均法 年間で取得した総量と総額から平均単価を算出 簡便だが、変動が激しい場合はズレが出やすい

 ※ 税務上は、明確に方法を選定・記録することが重要です。

売却価格の考え方

売却価格とは、「仮想通貨を売却・使用したときの時価(円換算)」です。

取引の種類 売却価格の例
日本円への売却 実際に得た日本円
仮想通貨同士の交換 取得した仮想通貨の時価(円換算)
商品購入に使用 購入した商品・サービスの対価相当額(円)


必要経費の計上方法

仮想通貨の所得計算において、関連する費用を「必要経費」として控除できます。
ただし、その費用が所得を得るために直接関連していることが要件です。

経費として認められる可能性があるもの

費用項目 内容 経費としての扱い
取引手数料 仮想通貨売買時の取引所手数料 控除可能
入出金手数料 送金・出金時のブロックチェーン手数料等 控除可能
会計ソフト利用料 損益計算や記録保持の目的で使用したもの 条件付きで可能
マイニング用機材・電気代 マイニング収入がある場合 一定の按分計算により控除可能(事業的規模が必要)


経費計上時の注意点

私的利用と明確に区分することが必要です(100%経費にできない場合は按分)。
・雑所得の場合、青色申告ができないため、赤字の繰越や損益通算も不可です。
・書類(領収書・契約書・取引履歴)などを必ず保存しておくことが重要です。

計算例(雑所得)

例:BTCを1BTC=300万円で取得 → 400万円で売却、取引手数料2万円

仮想通貨・暗号資産に強い税理士になるには

1. 税務知識のアップデート(国内外)

・仮想通貨は税制改正の影響を受けやすい分野のため、常に最新の法令・通達・FAQに目を通す習慣が必要です。
・以下の知識を重点的に深めると強みになります:

分野 内容
所得税 雑所得・事業所得の判定、取得原価の計算方法、必要経費の扱いなど
消費税 非課税取引の範囲、課税事業者との関係
贈与税・相続税 時価評価の方法、遺産分割や贈与のタイミングによる課税リスク
国際税務 海外取引所やウォレット使用時のレート換算、国外財産調書制度への対応

2. 実務ツール・取引知識を持つ

一般的な仮想通貨取引(売買・送金)だけでなく、以下のような新興の分野にも理解が必要です

分野 解説
DeFi(分散型金融) 利用報酬(利息収入)やLP提供時の課税関係
NFT 売却益、無償配布、二次流通に伴うロイヤリティ課税
ステーキング・マイニング 雑所得の認識タイミング、電気代・機器の経費処理
DAO・IEO トークン報酬の税務、法人格がない団体との関係性の整理

・税務相談を受ける際、クライアントのウォレットや取引履歴を見て、すぐに仕訳・課税判断ができることが信頼につながります。

3. 専門性の発信・実績づくり

ブログ・SNS・YouTube等で「仮想通貨税務の専門家」として情報発信・事例解説を行うと、認知と相談案件が増えやすくなります。
・実際に取り扱った事例(個人確定申告、法人会計、NFTアート売却など)を匿名加工して紹介すると、実力をアピールしやすいです。
・専門書やWebメディアへの寄稿も効果的です。

4. 会計ソフト・APIツールへの対応力

・仮想通貨取引の損益計算には専用ツール(Cryptact、Gtax、クリプタクトなど)の導入と使いこなしが必須です。
・ツールの出力をExcel・申告書へ正しく落とし込む力や、計算精度の検証スキルも実務では重宝されます。

5. クライアント層の把握とターゲティング

クライアント層 税理士に求められる役割
個人投資家(兼業・副業) 雑所得の計算、税務署対応、利益管理のアドバイス
法人(Web3関連) トークン報酬の処理、法人化・経費計上、会計処理
NFTクリエイター 売上計上タイミング、契約に応じた源泉や消費税の確認
海外在住者・日本非居住者 国際課税ルール、租税条約、国外財産調書などの対応


仮想通貨・暗号資産の申告を行う上での実務上の注意点は?

1. 所得区分の判断(雑所得か事業所得か)

個人の仮想通貨取引による利益は原則「雑所得(総合課税)」として取り扱われます。 ただし、継続的かつ営利的に行っていると判断される場合(例:マイニング事業、法人化を前提とした活動)は「事業所得」に分類される可能性があります。

誤った区分で申告すると、青色申告控除の誤用や損益通算の誤適用により、後日否認されるリスクがあります

✓ 一般的な売買は「雑所得」で処理
✓ 年間の収益が高額で、複数ウォレット・設備・人的関与がある場合は事業性を検討

2. 売却・交換・使用すべてが課税対象

仮想通貨を売却したときだけでなく、以下のような取引も課税対象になります。

取引行為:仮想通貨同士の交換(例:BTC→ETH)
取引行為:仮想通貨による商品・サービスの購入
取引行為:エアドロップや報酬として無償で受け取った場合

いずれも「時価評価」によって所得として計上する必要があります。

3. 取得原価の管理と計算方法の選定

所得計算には取得価格の把握が不可欠です。取得価格の算出方法は「移動平均法」または「総平均法」のいずれかを選び、継続して適用する必要があります。

✓ 方法を選定し、変更せずに一貫適用しているか確認
✓ 複数取引所・複数ウォレットを利用している場合も通貨単位で一元管理が必要

4. 損益通算・繰越控除が原則不可(雑所得の場合)

雑所得は、株式・FX・不動産など他の所得と損益通算できず、赤字の繰越控除も認められていません

✓ 他の所得との通算を誤って行っていないか確認
✓ 赤字であっても、翌年以降に控除できない点に注意

5. 外貨建て・海外取引のレート管理

海外取引所を利用する場合、所得計算には「円換算」が必要です。 このとき使用する為替レートは、取引時点のTTSなど合理的な方法に基づき、継続的に採用されている必要があります。

✓ 換算レートの出典を明記し、記録している
✓ 同一基準・一貫したレート採用を行っている

6. 取引履歴と証拠資料の保管

仮想通貨の取引内容は税務調査でも確認対象となります。
特に海外取引所やウォレットを使用している場合、税務署は情報把握が困難なため、申告者側の記録と証拠が非常に重要です。

✓ 各取引所のCSV、履歴のバックアップがある
✓ 為替レート、ウォレット間の送金証拠も保存している

7. 経費計上・按分の合理性

仮想通貨取引に伴う必要経費として認められるのは、直接関係する費用に限られます(例:取引手数料、送金手数料、損益計算ツール利用料など)。

✓ 私用との区分が明確か
✓ 電気代・機材費等を按分して計上しているか(マイニング等に限る)

8. 贈与・相続・譲渡時の評価と記録

仮想通貨の贈与や相続では、受贈者・相続人側に税務申告義務が発生します。時価評価が必要となるため、客観的な価格情報(例:CoinMarketCapの価格履歴やスクリーンショット)を残しておくことが重要です。

✓ 評価時点の価格データを記録しているか
✓ 受贈・相続日が明確か

9. 専門ツールやサービスの活用

取引件数が多い場合、手作業による損益計算はミスの元です。
Cryptact、Gtax、クリプタクトなどの損益計算ツールの導入により、正確な集計が可能になります。

✓ 自動取得・API接続によるデータ管理ができているか
✓ 計算根拠を第三者に説明できる形式で保存しているか

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まとめ

この記事では仮想通貨について取り上げました。

この記事がお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

税理士 平川 文菜(ねこころ)

税理士|熊本出身|2018年京都大学卒業| 在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。