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税理士と行政書士の違いやダブルライセンスのメリットを解説

2024/08/29

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税理士と公認会計士の違いを示す記事は複数見かけますが、税理士と行政書士の違いについて示す記事はあまりみかけません。
実は、税理士の資格を保有していると、行政書士の資格も取得できるのです。
知っていましたか?税理士と行政書士は実は共に独占業務が指定されている国家資格です。

今回は税理士と行政書士の違いの詳細、そして両方取得するダブルライセンスのメリットについて解説いたします。

税理士と行政書士の違い

税理士と行政書士は、業務内容と平均収入に違いがあり、資格試験の難易度も大きく異なります。

税理士の仕事

税理士は通常、税理士事務所に勤めて税務業務を行います。AIの発達により自計化が促進された現在では、付加価値性の高い業務を行う方々も増えてきました。
税理士の勤務先は主に下記の6つです。

  • ・税理士法人
  • ・税理士(会計)事務所
  • ・コンサルティング会社
  • ・銀行や信用金庫などの金融機関
  • ・一般企業

多くの方の勤務先は税理士法人や税理士事務所です。
税理士法人と税理士事務所の違いは税理士の人数です。税理士法により、税理士法人には少なくとも2人以上の税理士が必要ですが、税理士事務所は1人でも問題ありません。

コンサル会社でも税理士は活躍できます。税務知識と経営数値の分析は相性が良いので、経営知識を増やしていくことで、経営コンサルタントとして活躍することは可能です。金融機関でも税理士の資格は活かせます。中小企業を中心に事業承継や事業再生支援に取り組んでいるため、税理士事務所で付加価値業務として行っていた方であれば、延長線上で活躍できるケースがあります。一般企業でも税理士の方は重宝されます。特に財務部や税務部という部署を設けている大企業では、税理士の知識と資格が大変役立ちます。

業務内容

税理士の独占業務である「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」と、その周辺業務を行います。

<税理士の独占業務>
税務代理 税金の申告や申請を代理で行う
・法人税の申告、個人の確定申告、相続税や贈与税等の申告
*電子申告を含む
・税務調査の立ち合いや、税務署の処分に不服があった場合の申し立ての代理
税務書類の作成 ・法人や個人の決算書
・法人税や所得税
・消費税等の確定申告書等の作成
税務相談 ・節税方法の提案や今後の納税額の試算等
・税務関係の相談に関する業務
<税理士のその他の業務>
税理士が行う周辺業務は、所属する法人等で大きな差があります。
下記はその一例です。
記帳代行 ・企業の売上表や領収書等を預かり、仕訳を入力
給与計算 ・毎月支払う社員の給与や賞与、退職金の計算
・源泉所得税の納付書の作成、年末調整、法定調書の作成
コンサルティング業務 ・経営コンサルティング業務
*すべての税理士がコンサルティング業務を行うわけではない
補助金や融資の支援 ・小規模事業者持続化補助金や事業承継補助金等の補助金サポート
・金融機関からの融資サポート
*補助金の申請書作成アドバイス、金融機関に提出する財務諸表作成や融資面談の立ち合い等

年収・待遇

厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、令和4年の税理士の平均年収は746.6万円でした。尚、71.2%が従業員、独立開業している税理士は32.7%になります。当然ながら、年収1,000万円を超える税理士も多数存在します。

資格試験の難易度

資格試験の難易度について解説いたします。

<税理士試験>
総合難易度 ★★★★★
合格率目安 15%前後 *科目合格率
学習時間目安 3,000〜5,000時間 3年〜
試験概要と合格基準 全11科目のうち5科目に合格。科目合格は生涯有効。
試験科目 会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)と、税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税)のうち受験者の選択する3科目(所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択)
受験資格 税法に属する科目のみ学歴等の受験資格必須。

行政書士の仕事

行政書士は主に行政書士事務所に勤めて許認可申請等の手続きを行います。

主な勤務先は以下のとおりです。

  • ・行政書士事務所
  • ・法務事務所
  • ・一般企業

行政書士事務所での主な仕事は、個人や企業が行政に対して許認可や証明書を申請する際の手続きを代行することで、その他にも事業計画の策定や運用、法律に基づく書類の作成などを行います。また、行政書士は行政書士事務所だけでなく、法務事務所や一般企業でも活躍しています。法務事務所では、法律に関するアドバイスを提供したり、権利義務や事実証明に関する書類の作成などを手掛けます。

一方、一般企業では、労働法や商法など企業活動に関連する法律問題を解決するための内部チームの一員として働くことが多いです。例えば、契約書の作成や法的なアドバイスを行う法務業務や、雇用契約書の管理や決算業務の人事・総務業務があるほか、建設業や不動産業では許認可申請が必要とされるシーンが数多く発生するため、行政書士の資格を活かして働くことが可能となります。

業務内容

行政書士も税理士同様に、独占業務があります。

<行政書士の独占業務>
行政書士の独占業務は大きく3つに分類できます。
官公署へ提出する書類の作成とその代理、相談業務 ・各種許認可申請書等の作成と手続きの代行
*日本国内の許認可申請書等は1万種類以上
合格率目安 15%前後 *科目合格率
権利義務に関する書類の作成とその代理、相談業務 ・遺産分割協議書、売買契約書、念書といった各種書類の作成
事実証明における書類の作成とその代理、相談業務 ・案内図や現況測量図、各種議事録等の作成
*他の法律において制限されているものについては、作成不可
<行政書士のその他の業務>
行政書士の非独占業務の一例を下記にまとめます。

  • ・官公署書類提出の代行
  • ・証明書等の代理受領
  • ・代理人署名
  • ・各種書類の作成相談

年収・待遇

厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、令和4年の平均年収は579.8万円でした。
自営業が85.2%と、ほとんどの行政書士は独立開業していることがわかります。税理士より若干低いものの、高収入だと言えるでしょう。

難易度

<行政書士試験>
総合難易度 ★★★
合格率目安 10%前後
学習時間目安 600〜800時間 半年〜
試験概要と合格基準 全6科目に合格。絶対評価。
試験科目 憲法、行政法、民法、商法、基礎法学、行政書士の業務に関し必要な基礎知識の合計6科目
受験資格 なし。誰でも受験可能。

行政書士の合格率は税理士より低いように思えますが、難易度は税理士の方がはるかに高いと言えます。この理由は、税理士試験が科目合格制を導入しているためです。税理士試験における合格率は「科目合格」です。1科目の合格でも合格率に含まれるので、科目合格制ではない行政書士試験と比較した場合には見かけの合格率が逆転します。

学習時間の目安を比較すれば実際の合格率は一目瞭然でしょう。行政書士の学習時間の目安は600時間〜で、最短半年でも合格圏内に入れます。さらに6割以上の得点を取れば合格できる絶対評価です。相対評価ではないので、一定以上勉強すれば確実に合格できます。

税理士は試験免除で行政書士になれる

試験免除の条件

「税理士となる資格」を有していることが条件です。税理士として登録していなくとも、税理士試験に合格しており「税理士となる資格」を有していれば行政書士になれます。
なお、税理士資格を有している人が行政書士となるには、各行政書士会に必要書類と登録諸費用を提出し、行政書士の登録免許税を支払うことになります。

行政書士になれない場合も

税理士となる資格を有していたとしても、下記の欠格事由に当てはまる場合は行政書士にはなれません。

  • 一 未成年者
  • 二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者
  • 四 公務員(行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員を含む。)で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
  • 五 第六条の五第一項の規定により登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
  • 六 第十四条の規定により業務の禁止の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
  • 七 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、弁理士、税理士、司法書士若しくは土地家屋調査士の業務を禁止され、又は社会保険労務士の失格処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から三年を経過しないもの
  • 八 税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第四十八条第一項の規定により同法第四十四条第三号に掲げる処分を受けるべきであつたことについて決定を受けた者で、当該決定を受けた日から三年を経過しないもの

出典:行政書士法第2条2

まとめ

税理士と行政書士は共に国家資格ではありますが、当然ながら取り扱える業務は異なります。税理士資格の方が、資格取得難易度や平均年収は高くなります。

しかしながら、どちらも需要の絶えない資格ですので、ダブルライセンスで持っておくと就職や転職時に有利に働きます。税理士も行政書士も難関資格ではありますが、ご自身の目指したいキャリアにあえば両方の取得を目指してみてはいかがでしょうか。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。