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税理士試験の院免が適用されるのはどこ?科目免除される要件や選び方

2024/11/08

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税理士試験に合格するには、11科目中5科目に合格しなければなりません。 しかし5科目に合格するには膨大な量の勉強時間が必要ですし、受験しても落ちてしまえばまえば再受験できるのは1年後です。勉強のやり直しは精神的に大きな打撃となり、諦めてしまう人も少なくはありません。

そこで本記事では、税理士試験が一部免除となる院免についてまとめました。 一言で申しますと、一定条件下で大学院を修了すると、最大3科目免除が受けられる制度です。 院免を上手に利用して、効率的な税理士試験突破を目指してください。

税理士試験の院免が適用される大学院の条件

税理士試験の院免には主に5パターンが存在します。 それぞれ適用される大学院の条件が異なりますので、自分が希望する免除要件に合致する大学院を選択してください。

会計学1科目免除の条件

「会計学に属する科目その他財務省令で定めるもの(以下この項及び次条第一項第二号において「会計学に属する科目等」という。)に関する研究により修士の学位又は学校教育法第百四条第三項に規定する文部科学大臣の定める学位で財務省令で定めるものを授与された者で税理士試験において会計学に属する科目のいずれか一科目について政令で定める基準以上の成績を得た者が、当該研究が会計学に属する科目等に関するものであるとの国税審議会の認定を受けた場合」 -税理士法第七条

つまり、会計学に関する論文を書いて修士課程を卒業することが条件です。 なお会計学の免除を申請するには、会計学の科目1科目に合格してからでなければなりません。大学院を卒業する前でも後でも構いませんので、会計学1科目合格は必須です。

税法2科目免除の条件

「税法に属する科目その他財務省令で定めるもの(以下この項及び次条第一項第一号において「税法に属する科目等」という。)に関する研究により修士の学位(学校教育法第百四条に規定する学位をいう。次項及び次条第一項において同じ。)又は同法第百四条第三項に規定する文部科学大臣の定める学位で財務省令で定めるものを授与された者で税理士試験において税法に属する科目のいずれか一科目について政令で定める基準以上の成績を得た者が、当該研究が税法に属する科目等に関するものであるとの国税審議会の認定を受けた場合」 -税理士法第七条

税法2科目の免除を受けるためには、税法に属する論文で修士課程を修了することが必要です。 会計学と同様に、免除申請ができるのは税法1科目以上に合格してからになります。

会計学1科目+税法2科目免除の条件

会計学1科目と税法2科目の合計3科目の免除を受けることも可能です。 この場合、大学院での学習内容は重複しないため、1度の修了で3科目免除はできません。 修士修了を2度行うことで、会計学1科目と税法2科目の両方の免除を目指します。

会計学2科目免除または税法3科目免除

「大学等(学校教育法の規定による大学若しくは高等専門学校又は同法第百四条第七項第二号に規定する大学若しくは大学院に相当する教育を行う課程が置かれる教育施設をいう。次号において同じ。)において税法に属する科目等の教授、准教授又は講師の職にあつた期間が通算して三年以上になる者及び税法に属する科目等に関する研究により博士の学位を授与された者については、税法に属する科目」 -税理士法第八条

会計学にも同様の免除制度が定められています。 つまり、会計学または税法に関する研究で博士課程を卒業した場合、会計学または税法のすべての科目が免除されます。

しかし博士課程まで進むと卒業まで5年かかることになります。また求められる研究内容も高度になることから、税理士試験の免除のために博士号を目指す社会人は少ないようです。 研究が楽しいならば問題ありませんが、税理士試験の免除が目的ならば、修士課程の卒業で十分なのかもしれません。

税理士試験の院免が適用される大学院の学費や準備

院免を受けるためには、大学院の卒業が必要であり、そのためには入試の合格と入学金や授業料の支払いが発生します。 どの程度の学費と準備が必要なのか、解説いたします。

必要な学費

私立の場合:入学金を含めて200万円前後 国公立の場合:入学金を含めて150万円前後 通信制大学院の場合:入学金を含めて300万円前後 *修士課程卒業までの2年間で算出

私立大学院は数が多いので選びやすいのが特徴です。また試験免除のための進学も比較的好意的と思われます。ただし、国公立よりも若干学費が上回る傾向にあります。

国公立大学院は、最も学費が抑えられます。少しでも安く免除を受けたいならば、国公立大学院で免除要件に合致するコースを探しましょう。 通信制大学院は比較的高額です。

しかしほとんど通学せずに大学院に通えるというメリットは非常に大きいと言えます。近くに通学できる大学院がない人や、不確定な残業が多く大学院に通いにくい人は、通信制の大学院で税理士試験免除を目指してはいかがでしょうか。

入試と準備

まず、会計学と税法どちらの免除を受けるか決めたうえで、税理士試験の免除が受けられる大学院を探しましょう。 大学院の入試は、一般的に9〜10月と2〜3月の2回もしくはどちらかで行われます。入学を希望している大学院研究室の入試時期を調べてください。 入試は多くの場合で筆記試験と面接が行われます。傾向を掴んで対策しておきましょう。

なお出願時の研究計画書には、会計学または税法に関する研究テーマを記載してください。 研究テーマが会計学または税法に関するテーマでない場合、大学院を卒業できても、その後の国税審議会で免除認定されない恐れが高いためです。

出願方法

一般的には、出願申請書に履歴書と大学の卒業証明書等を添付して出願します。入試の受験料も同時に振り込むことが多いようです。

各大学院では専用の申請用紙等が指定されていることもあります。 出願書類に不備があれば受験日に間に合わなくなるかもしれませんし、受験料は基本的に返還されません。募集要項をよく読み、間違いのないようにご注意ください。

大学院進学による院免を利用するメリット

大学院への進学と修了により、税理士試験の一部が免除されます。 院免を利用する税理士試験受験生は非常に多く、反対に官報合格者は少ないのが現状です。 なぜこれほどまで院免が利用されるのか、その理由は下記のようなメリットにあります。

5科目受験より期間を短縮できる可能性が高い

税理士試験は、11科目中5科目の合格が求められます。 しかし勉強したとしても合格するのは15%前後です。残りの85%は不合格となり、再試験を受けなければなりません。

一方で、大学院に進学し院免が認められれば、確実に税理士試験の受験科目を減らせます。 そのため税理士試験を5科目受験するよりも、合格までの期間を短縮できる可能性が高いのです。

税理士試験合格までの期間は平均で8年程度かかると言われています。 院免を利用するケースを考えてみましょう。3科目免除を受ける場合、大学院に在籍する期間は最短4年です。残りの2科目をあらかじめ2年間で合格できていたとすれば、税理士試験合格までの期間は6年ですみます。 平均よりも早く税理士になることができるのです。

税理士を目指す仲間ができる

院免を求めて進学する人は少なくありません。 また免除要件を満たす大学院がさほど多くはないため、院免可能な研究室には税理士試験の受験生が集まる傾向にあります。

大学院の中には院免を全面的に掲げているケースもあり、そのような研究室には特に集中しやすいため、税理士試験の受験生同士で意見交換する機会も生まれます。 働きながら大学院に通うことは簡単ではありません。けれども税理士試験突破を目指す仲間がいれば、励まし合って乗り越えられるでしょう。

実務で役立つ法律を体系的に学べる

税理士試験の専門スクールや独学の場合、税理士試験に特化した勉強を進めることになります。

一方、大学院では法律を体系的に捉えて、様々な判例を踏まえて学びます。 その結果、税理士になった後、クライアントへの提案や法律の解釈等で知識が生きてくるのです。 記帳代行や決算処理といった事務作業は、近い将来AI中心になるかもしれません。

しかしクライアントへの提案といった税務コンサルティングは、今後も税理士でなければできないでしょう。 大学院での学びが、将来、税理士としての活動を支えてくれるのです。

コミュニケーション力やプレゼンテーション能力が鍛えられる

大学院では学会発表等のプレゼンの機会に恵まれます。 そこでコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を鍛えられるのです。 税理士として働く中で、プレゼンテーション能力を磨く機会は多くはありません。 しかしながら「クライアントへの提案」という形のプレゼンは定期的にしなければなりません。たとえば赤字脱出のための提案や節税提案等です。

大学院進学による院免を利用するデメリット

院免には税理士試験クリアを短縮できる等の素晴らしいメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。 人によっては致命的なデメリットにもなりえますので、進学前に必ず確認しておきましょう。

入学金や授業料のコスト

院免を受けるためには大学院に進学し、最低でも修士課程を卒業しなければなりません。 そのためには最短2年間の在籍が必要であり、期間中は授業料が発生します。当然、入学時には入学金もかかります。 これらの学費の総額はおよそ200〜300万円。 高額かつ安定した収入源のある人ならば問題なく支払えるでしょうが、人によっては家計を圧迫することも考えられます。

税理士事務所や税理士法人には、福利厚生の一種として大学院進学費用の一部を用立ててくれるところもあります。 学費がネックで進学を躊躇しているならば、大学院進学を後押ししてくれる職場に転職することもご検討ください。

通学に時間がかかる

通信制大学院であっても、数日以上は大学院まで通学し出席しなければなりません。 普通の大学院であれば、さらに出席日数が必要になります。 社会人向けの大学院は講義が夕方以降に組まれていることが多いため、比較的通いやすくはあります。しかしながら急な残業や家庭の事情等で授業に間に合わなくなることもあるでしょう。

官報合格者よりも転職で不利になる恐れがある

官報合格とは、免除制度を利用せず税理士試験5科目に合格することを指します。 合格者は官報に掲載されることから官報合格と呼ばれるようになりました。 官報合格者は、税理士試験により5科目の知識が一定レベル以上であると証明されています。

一方で、院免を利用するということは、税理士試験を2科目程度しか受験していないことを示します。 官報合格者の方が税務の知識に詳しいと考えられるため、税理士事務所等の採用時には、官報合格者が優先されることがあるようです。

しかし院免であっても官報合格であっても、同じ税理士試験合格者として扱う事務所がほとんどです。また転職した後の昇給や昇格については、官報合格者も院免の合格者も同じように評価されます。税理士試験の合格方法で評価基準が分けられることはありませんので、ご安心ください。

自分に合った大学院を選ぶポイント

院免の適用が受けられる大学院は全国に存在します。しかしどの大学院を選択しても良いというわけではありません。 自分に合った大学院を選ぶポイントを紹介いたします。

免除申請の通過率や通過実績

大学院に進学する最大の目的は、院免の適用を受けることです。 その目的が果たせるかどうかをまず確認しましょう。 大学院に問い合わせるのが確実です。 仮に2年間在籍し、修了した後に免除申請が通らなかった場合、お金と時間を無駄にしたと感じるかもしれません。 確実に院免の適用を受けるために、必ず免除申請の実績等を確認しておきましょう。

開講時間

院免の適用が受けられる大学院では、社会人向けに平日の夕方以降や土日に開講しているケースが見受けられます。 都合がつきやすい時間帯に受講できる大学院を選択しましょう。

たとえば、平日に残業が入りやすいのならば、土日に講義が集中している大学院が適しています。残業が安定しており平日でも通える場合は、平日夕方以降に開講している大学院を選択し、土日はプライベートの充実や税理士試験の勉強に充てましょう。

授業料

2年間でおよそ200〜300万円がかかるイメージです。 もし2年間で修了できなかった場合は、さらに授業料が加算されます。 パッと出せる金額ではありませんので、授業料を払いきれるのかをしっかりと検討してください。

なお生活費を削って授業料を捻出するのは得策とは言えません。我慢ばかりしていると、いつか爆発して爆買いに走ってしまう恐れがあるためです。 授業料が準備できない場合は、先に税理士試験を受験しつつ学費を貯めるか、税理士事務所の福利厚生で一部負担してもらえないか確認しましょう。

税理士試験の院免適用-まとめ

院免が適用される大学院は広範囲に存在しますし、一部の通信制大学院も含まれます。 そのため重要なポイントは、院免の申請が必ず通過するのか、通い続けられるのか、授業料を卒業まで払えるかでしょう。これらのポイントを踏まえて、あなたに最適な大学院を選んでください。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。