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税理士がBIG4税理士法人に転職するには?メリット・デメリットも解説

2024/08/20

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BIG4税理士法人とは「デロイトトーマツ税理士法人」「KPMG税理士法人」「EY税理士法人」「PwC税理士法人」の4つを指しており、転職先候補として税理士資格を取得した人から絶大な人気を誇っています。その理由は、高度な業務に携われるうえ平均給与が高いことでしょう。

では人気の高いBIG4に転職するには、何をすれば良いのでしょうか?また転職するにあたり、メリットやデメリットの再確認も行っておきましょう。

BIG4税理士法人の転職難易度

転職難易度はかなり高いです。
一般的な地域密着型の税理士事務所に入職するよりも、はるかに高倍率・高基準でふるいにかけられます。

BIG4のクライアントは大手企業を中心としており、グローバルに展開していることもしばしば。そのため取り扱う業務は国際税務や連結納税、M&Aや組織再編、事業承継等、非常に規模が大きく難易度の高いものになります。

これらの業務に耐えうるだけの知識とスキル、そして体力を求められるのがBIG4です。
従って、中小企業の月次決算を主とする他の税理士事務所や税理士法人と比較して、転職難易度は非常に高くなります。

またBIG4への転職希望者は大勢いるので、他の人ではなく自分を選んでもらうだけの突出したスキルや経験等が必要です。
BIG4へ転職するならば、事前に徹底した調査と自己研鑽を行いましょう。

BIG4税理士法人の特徴

BIG4は大企業をクライアントとするため、中小企業を主要クライアントとする他の税理士法人よりも業務規模や業務の仕方が異なります。また給与にも差が見受けられます。

業務内容

  • ・税務申告書の作成やチェック
  • ・経営コンサルティング業務
  • ・M&Aや事業承継

主な業務は税務申告書の作成と、クライアント企業が作成した申告書類のチェック業務です。
クライアントは大手企業が中心なので、その申告書類も膨大になります。また様々な分野を扱うことになりますし、中小企業では使用しない税制を利用することもあります。クライアントがグローバルに展開している場合は国際税務に携わるケースも少なくありません。
幅広く専門的な知識が必要になる業務です。

コンサルティング業務も大切な業務の1つです。
税法のプロという立場から、節税や中長期戦略の立案等を実施します。
その他クライアントからの要望により、海外展開や組織変革といった、クライアントに多大な影響を及ぼすコンサルティングを提供することも業務の1つです。
基本的にクライアントと連携しながら進めるため高いコミュニケーション能力と説明スキルが必要になります。

M&Aや事業承継も行います。
デューデリやM&Aといった分野は一般の税理士法人では取り扱っていないことが多いものです。
このような高度な業務に携われるのは、BIG4の大きな特徴と言えるでしょう。

なお記帳代行や決算業務は基本的に行いません。

業務の特徴

大規模かつ高度な専門知識が必要になります。
クライアントの多くが大企業や上場企業であり、求められるのは税務のプロとしての対応です。

また一般的な税理士法人よりも従業員数が多く、各業務をチーム単位で遂行します。複雑なプロジェクトには複数のチームが協力して業務を進めることもあります。
担当制の税理士法人の場合、クライアントと1対1で対応し、ほぼすべてを自分1人で解決しなければなりません。逆に考えると1人で自由に動けるので、スピーディな意思決定が可能です。

一方でBIG4の場合は、高度な業務に対してチーム制で対応します。まず社内で法人税チーム・資産税チーム等に分かれて配属され、クライアントごとにさらに細かいチームに分けられ業務に携わります。チーム内で調整を重ねながらクライアントと相談し、業務を遂行する形です。
知識の質だけでなく、社内外でのコミュニケーション能力が要求されるのです。

年収

厚生労働省「職業情報提供サイト」によると、税理士の平均年収は746.6万円でした。
対してBIG4の年収は、スタッフレベル(初年度)で500万円前後、シニアスタッフ(3〜5年)で800万円前後、マネージャークラス(6年〜8年)で1,000万円前後、パートナー(10年〜)になると1,500万円以上と言われています。
BIG4の年収平均だけを見れば、800万円を超えるでしょう。
一般の税理士法人よりも高収入を得られることが分かります。

また福利厚生や待遇が充実していることもポイントです。
資格手当等の各種手当てがつきますし、育休や産休といった制度だけでなく、業務量の調整ができるところもあります。年間休日も120日以上と一般の大企業並みです。高収入をキープしながら、メリハリをつけて長く働き続けられる環境なのです。

税理士がBIG4税理士法人に転職するメリット

高度な業務を経験できる

一般的な税理士事務所や税理士法人では携われないような、大規模で高度な業務を経験できます。
国際税務やデューデリ、M&Aといった業務は、中小企業ではほとんど必要とされません。中小企業をクライアントとする税理士法人で働いた場合、一度も携わることなく定年を迎える人もいるでしょう。

一方、大企業をクライアントとするBIG4では、求められる業務もレベルも格段に高く、幅広い業務経験を積む機会が与えられます。
また記帳代行のような比較的簡単な業務は、アウトソーシングしたり自計化されていたりするので、基本的に税理士が作業をする機会はありません。
税理士としてのレベルをスピーディに上げるならば、BIG4は最適な環境と言えるでしょう。

市場価値が高まりやすい

BIG4から転職する際には、市場価値が高く評価されます。
BIG4はネームバリューが高く、また高度な業務を行っていると認知されているので、税理士業界だけでなく、業界に詳しくない人からも信頼されやすいためです。

また独立する時もクライアント獲得に一役買ってくれます。
BIG4経験後に独立して税理士法人を立ち上げる人は珍しくありません。やはりネームバリューがあるので、開業直後であってもクライアントから信頼されやすいのです。

税理士がBIG4税理士法人に転職するデメリット

税務に関する全般的な知識を得にくい

BIG4ではチーム制で業務に携わることになるため、携わった分野に関する税務については極められますが、他の税務について知識を深める機会がないかもしれません。
たとえば法人税部門に配属された場合、法人税に関する知識や経験は急激に上昇するでしょう。

しかし相続や資産税に関する税務知識については身に付けられないのです。
定期的に部署移動を願い出ればある程度の分野をマスターできるでしょうが、基本的に広く浅くではなく「狭く深く」を追求し、ある分野のプロフェッショナルを目指します。
また担当制ではないので、自由に提案することもできません。
税務全般の知識を深めたい人には、不満が溜まる可能性があります。

激務になりやすい

一般の税理士法人の場合、繁忙期は12月下旬・2〜3月上旬・4〜5月の約4カ月です。
年末調整が始まる12月から繁忙期に突入し、1月に少し休憩をはさんで2月から確定申告業務、確定申告が終わった3月15日以降に少し業務量が減り、3月決算に向けて4月から5月の業務量が膨大になる、というスケジュールになります。
繁忙期における残業時間は月平均50時間程度です。

これに対してBIG4の繁忙期は12月〜5月頃。1年の約半分が繁忙期にあたります。
BIG4でも繁忙期における業務内容はほとんど変わりませんが、3月決算だけでなく12月決算の企業も多いため2〜5月は特に多忙を極めます。
月平均残業時間は50〜80時間程度。繁忙期は毎日終電で帰宅することになるかもしれません。

ただし休日はしっかり取れます。繁忙期の土曜日に出勤することもありますが、その場合は代休が取れます。36協定を遵守する流れも生まれつつあり、仕事自体は長時間に及びますが、泊まり込みになったり、プライベートを脅かされたりするほどではありません。

BIG4税理士法人への転職が向いている人

BIG4は一般的な税理士法人とは少し異なる働き方になりますので、向いている人と向いていない人の差が激しい職場でもあります。
自分が向いているのかどうか確認しましょう。

年収を上げるために頑張れる人

BIG4は税理士業界全体の中で、年収が比較的高い傾向にあります。
努力すれば年収1,000万円も夢ではありません。一般的な税理士法人では得られなかった高収入が手に入るでしょう。

ただし高収入を得る代わりに、激務をこなす必要があります。
知識や技術面でも、時間的にも激しく消耗しますので、生涯勉強を続けられて、なおかつ体力のある人が向いています。

しかし最近では36協定の遵守やライフワークバランスへの理解が進み、残業時間の削減に向けて取り組んでいたり、短時間労働やテレワークの導入等が実現しています。
仕事第一での働き方が中心になるものの、長く働き続けられる取り組みも進んでいるのです。

英語が得意な人

BIG4のクライアントには外資系企業やグローバルに展開している日本企業も含まれます。
このような企業をクライアントとする場合は、英語を使う機会が非常に多くなります。具体的にはTOEIC700点以上あると優遇される傾向にあります。

日本人は特に英語に対して苦手意識を持っている人も少なくありません。税務知識が優れているけれど英語は話せないという税理士も在籍しているでしょう。そのため英語が堪能だと同僚からも信頼されます。

反対に、英語がまったく話せない場合は日本国内の業務しか担えません。
国際税務等スケールの大きな業務に携わりたい人は、英語力を身に付けることも検討してください。

科目合格者でも転職できるか

2024年現在、若干ではありますが転職のハードルが下がってきており、科目合格者でも一定の基準を満たせばBIG4への転職は可能です。ポテンシャルが高く年齢が低ければ、実務経験がなくても応募可能な場合があります。

<主な要件>
  • ・科目合格2科目以上
  • ・TOEIC700点以上
  • ・20代〜30代

科目合格は2科目以上を目指しましょう。1科目では不足しています。
特に官報合格でなければならないともされていませんので、大学院に通い科目免除を受けても良いでしょう。

英語力はなくても応募できますが、ライバルとの差をつけるためには必要です。税理士資格がない分を英語力で補うようにしてください。英語力が高ければ、科目合格数や実務経験が少なくとも優遇されるケースがあります。
年齢に関しては30代前半が境界線と言われています。

科目合格での採用は、今後税理士になるポテンシャル込みということです。30代を超えると税理士資格を取得してから定年到達までの年数が短いため、採用は厳しくなるでしょう。ただし科目合格3科目以上であれば採用される見込みはあります。
この場合も税理士資格に代わる英語力等のスキルを持っていると優遇されます。

税理士がBIG4に転職するために必要なこと

税理士がBIG4に転職する場合、求められるのは即戦力となれる能力です。
BIG4で即戦力となるための能力を分解すると、大きく以下の3つに分けられます。

  • ・税務業務の経験
  • ・英語力の強化
  • ・コミュニケーション能力の強化

中途採用には実務経験が求められます。一般的には税理士法人等で3年以上の経験が望ましいとされています。
ポテンシャルが高ければ未経験で採用されることもありますが、基本的には実務経験がないと採用されるのは困難です。

また英語力も問われます。グローバルに展開する企業を主なクライアントとしているため、英語が話せる・英語の資料が読める能力が最低限必要になるのです。
英語力が低くても採用されることもありますが、英語力が低いために採用を見送られることもよくあります。

コミュニケーション能力も必要です。BIG4は社内外を問わずコミュニケーションを取る機会が多いので、会話ができないと仕事が進みません。
コミュニケーション能力に不安がある人は、転職活動を始める前にコミュニケーション能力を強化しておきましょう。

まとめ

税理士がBIG4に転職するためには、英語力やコミュニケーション能力等が必須です。
科目合格者でも転職は可能ですが狭き門です。1科目でも多く合格するか、英語力等の他のスキルを磨いてライバルとの差をつけてください。

BIG4は魅力的な企業ではありますが、記事で紹介したようなデメリットも存在します。自分の求めるライフスタイルに合っているかを確認してから応募するか判断しましょう。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。