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税理士試験の難易度は?資格取得までの学習の仕方

2024/11/20

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税理士試験は司法試験や公認会計士試験と並び、3大難関試験の1つとされています。
超難関資格ではあるものの、毎年多くの合格者を輩出しているのが現状です。
そこで今回は税理士試験の難易度や学習方法、試験合格後の流れ等についてまとめました。
学習の方法さえ間違えなければ、社会人でも無理なく合格を目指せますよ。

税理士試験の難易度 概要

税理士試験の難易度を説明するためにまずは試験の概要をまとめました。
税理士試験は年1回全国で実施される試験です。
全11科目中5科目に合格することで、税理士試験合格となります。

試験科目

下記11科目のうち、必修2科目を含む5科目を選択します。
なお所得税法と法人税法は選択必修です。

所属 科目名 必修もしくは選択
会計学に属する科目 簿記論 必修
財務諸表論 必修
税法に属する科目 所得税法 法人税法と選択必修
法人税法 所得税法と選択必修
相続税法 選択
消費税法 酒税法と選択
酒税法 消費税法と選択
国税徴収法 選択
住民税 事業税と選択
事業税 住民税と選択
固定資産税 選択

受験資格

会計学に属する科目:制限なし。誰でも受験可能です。
税法に属する科目:学識、資格、職歴等により受験資格が定められています。
引用:税理士の資格取得_日本税理士会連合会

受験資格の例
学識による受験資格 大学又は短大の卒業者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
司法試験合格者
公認会計士試験の短答式試験に合格した者(平成18年度以降の合格者のみ)
資格による受験資格 日商簿記検定1級合格者
全経簿記検定上級合格者(昭和58年度以降の合格者のみ)
職歴による受験資格 法人又は事業を行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
銀行・信託会社・保険会社等において、資金の貸付・運用に関する事務に2年以上従事した者
税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者

合格条件

各科目とも満点の60%です。
合格科目が合計5科目に達した時点で税理士試験合格となります。

免除要件

一定の要件を満たした場合、一部の試験科目が免除されます。
引用:税理士の資格取得_日本税理士会連合会

主な免除要件
学位による免除 一定の分野における修士または博士の学位を授与されたものは、試験の一部が免除される
国税従事者における免除 10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者は、税法に属する科目が免除される
23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者は、会計学に属する科目が免除される

上記の他、弁護士や公認会計士の資格を有する人は、無試験で税理士になれます。

他の難関資格と比較した税理士試験の難易度

ここでは他の難関資格や国家資格と学習時間の目安時間の情報を元に、資格合格の難易度を比較します。
税理士試験は3大難関資格に数えられるほどの高難易度です。 税理士試験を★5とし、他の難関資格やその他の国家資格等と難易度を比較しました。

資格名 難易度 学習時間の目安 概要
税理士 ★★★★★ 4,000時間前後 税務業務を独占業務とする国家資格です。税理士法人等への就職や独立開業を目指せます。科目合格が生涯有効なので、公認会計士試験よりも若干合格しやすいと言われています。合格率は15%前後。
公認会計士 ★★★★★★ 4,000時間前後 監査を独占業務とする税務系資格です。監査法人等への就職や独立開業を目指せます。短答式試験と論文式試験の2種類の試験を突破することで合格となります。短答式試験の合格は2年間有効です。合格率は10%以下。
司法試験 ★★★★★★ 5,000時間前後 法律系試験の中で最難関の試験です。合格すると弁護士や裁判官、検察官になれます。令和5年より、法科大学院在学中の学生も一定の条件を満たすことで受験可能となりました。合格率は30〜45%前後。合格率は低くないものの、受験資格を満たす難易度が高いと言われています。
宅地建物取引士 ★★★★ 600時間前後 毎年20万人前後が受験する人気の国家資格です。35条書面への記入等の独占業務を持ち、不動産関連企業には必須の資格です。合格率は15%前後。
社会保険労務士 ★★★★ 1,000時間前後 人事や労務管理等の法律の専門家です。人事労務系の手続き代行や帳簿作成が独占業務です。企業存続に必要な資格であり仕事がなくなることはありません。合格率は7%前後。
行政書士 ★★★ 1,000時間前後 法律系国家資格の1つです。主に許認可等に関する書類の作成等を独占業務としています。行政に提出する書類は数百を超えると言われており、人気の高い資格です。合格率は10%前後。
税理士資格を取得すると行政書士試験が免除されます。

税理士試験は公認会計士試験や司法試験と同等もしくは若干難易度が下がる程度です。
他の国家資格と比較すると難易度の高さが浮き彫りになっています。
なお難易度と学習時間はほぼ比例しますが、合格率とは比例しません。

たとえば税理士や公認会計士、司法試験には、厳しい受験資格が設けられています。一方で宅地建物取引士や社会保険労務士、行政書士の受験資格はそれほど厳格ではありません。つまり難関資格を受験するにはその分野の専門知識が身についてからでなければ受験できず、難易度の低い資格はバックグラウンドにかかわらず多くの人が受験します。そのため難易度と合格率は比例しないのです。

税理士試験の各科目ごとの合格率と難易度

税理士科目の中でも合格率にはばらつきがあり、比較的難易度が優しい科目もあれば、難易度が高い科目もあります。
各科目の合格率は以下の通りです。

引用:令和5年度(第73回)税理士試験結果

科目名 令和5年度合格率(%) 令和4年度合格率(%)
財務諸表論 28.1 14.1
簿記論 17.4 23.0
固定資産税 17.3 18.4
事業税 16.4 14.1
住民税 14.7 17.2
法人税法 14.0 12.3
国税徴収法 13.9 13.8
所得税法 13.8 14.1
酒税法 12.7 13.2
消費税法 11.9 11.4
相続税法 11.6 14.2

これらの合格率から分かるように、特に税法科目は難易度が高いとされています。これは、法律の理解だけでなく、実務に直結する知識や応用力が求められるためです。

一方で、比較的難易度が低いのは財務諸表論や簿記論と言われています。
受験科目を選択する際は科目ごとの合格難易度も鑑みることで、効率的に受験を進めることができます。

税理士試験に合格するための学習方法

税理士試験は数年以上かけて合格を目指すものです。
長時間の学習を継続し、合格のボーダーライン以上の知識を身に付けなければなりません。
科目合格を果たしても勉強が続かず挫折する恐れもあります。自分に合った学習方法でコツコツと勉強を続けてください。
本項では学習を継続するための例をいくつか紹介いたします。

学習時間の目安と合格までの日数

必要となる学習時間は4,000時間前後ですので、1日2時間勉強しても6年ほどかかる計算になります。
税理士試験の科目合格は生涯有効ですから、1回の受験で1〜3科目に絞って学習し、数年かけて税理士合格を目指します。社会人は平日に長時間勉強できませんので、休日を利用して学習時間を確保しましょう。

数年間の長期学習計画を立てる

勉強に取り掛かる前に、長期間の学習計画を立てましょう。
たとえば「今年は簿記論と財務諸表論を勉強する。他の科目は来年以降」といったように、何をいつ勉強するのかを決めます。

また翌年以降の学習計画も立案します。科目合格できるかどうかは分からずとも、順調に科目合格を続けた場合の税理士資格取得までの道のりが浮かび、モチベーション維持にも役立ちます。
目標どおり合格できなかった場合は1年先送りになることも目で見て理解できますので、勉強に身が入りますよ。

簿記論と財務諸表論から取り組む

経理の基礎と言われている簿記論と財務諸表論から取り組むのがおすすめです。
簿記論と財務諸表論は受験資格がありませんので、税法の受験資格を満たしていなくても受験可能です。こういった意味でも先に受験すべきでしょう。

なお簿記論と財務諸表論は関連性が高いため、2科目同時に学習をすすめると理解が深まります。
学習時間に余裕がない場合は1科目ずつでも構いません。

家族や職場に周知する

勉強していることを家族や職場の同僚等に報告しましょう。
勉強時間が捻出できるように便宜を図ってくれるかもしれません。たとえば、自宅で1人で勉強することを容認してもらえる、専門スクールの講義に間に合うよう仕事を抑制してくれる等。

またモチベーションにもつながります。周囲から「順調?」「勉強はどこまで進んだ?」と声をかけてもらうと、自然と意識が勉強に向いてくるものです。
事情がない限りは試験勉強開始と同時に周知することをおすすめします。

淡々と学習を進める

長時間に及ぶ学習を続けるには、歯磨きや手洗いのように習慣化することがポイントです。
そのためには「今日は○ページ進んだ!」「今日は目標未達」と一喜一憂せずに、時間や場所を決めて淡々と勉強していきましょう。
人によってつまずく箇所はまちまちですので、予定どおり進まなくても問題はありません。コツコツと学習時間を積み上げることで理解度も格段に上がります。

モチベーションを保つ

勉強が苦手だったり嫌いだったりする人は、モチベーションを保つための工夫をしてください。
1時間勉強したら甘いものを食べる、勉強しなかった日は趣味の時間を削る等。
やる気が出る方法は人それぞれ異なりますので、自分がよく使っている方法や、自分に効果が高そうな方法を試してください。

難関資格である税理士試験に最短で合格するためのポイント

税理士試験は数年以上かけて合格できる難関資格試験です。できる限り取得までの時間を短縮したいものですよね。
そこで最短で合格するためのポイントを3つに絞って紹介いたします。

専門スクールで勉強する

税理士の専門スクールで講義を受け勉強を進めましょう。
専門スクールでは、税理士試験に精通したプロの講師が分かりやすく講義を実施してくれます。また参考書等もスクール独自のものを購入すれば良いので悩むこともありません。そして税理士試験に挑戦する仲間と共に学習を続けられます。
学習時間を圧縮しつつ継続できるシステムが詰まっているのです。

仕事と勉強が両立できる職場に転職する

数年以上かけて学習を続けなければなりませんので、社会人の場合は仕事と勉強が両立できる職場に転職することが不可欠です。
たとえば毎日終電まで残業している中で勉強時間を確保するのは難しいでしょう。それよりも、残業が少なく有給が取得しやすい職場の方が適しています。
休日にまとめて勉強するにしても、平日に疲れていては満足に内容を吸収できません。残業時間の長い人は、この機会に転職を検討してはいかがでしょうか。

大学院に進学して科目免除を受ける

税理士試験には免除要件が設定されており、一定の学位を取得することで試験の一部が免除されます。つまり5科目受験せずとも合格できるのです。
試験を受けて5科目合格する官報合格者と待遇もほとんど変わらないことから、大学院に進学して免除を受け税理士資格を取得する人は増加しています。
学位を取得すれば確実に試験の一部が免除されるので、5科目合格が困難だと感じるならば、早めに大学院進学に切り替えましょう。
ただし大学院で学ぶ時間と費用を捻出しなければなりません。

税理士試験に合格してから資格取得までの流れ

税理士試験に合格しても、すぐに税理士と名乗れるわけではありません。
2年間の実務経験を経て、税理士としての登録申請を行うことで税理士になれます。

2年間の実務経験

租税に関する事務または会計に関する事務で政令に定めるものについての実務経験が2年間必要です。なお実務経験は税理士試験合格の前でも後でも構いません。
税理士法基本通達によると、実務経験として認められるものは下記のような事務を指します。
参考:国税庁_税理士業務関係

<実務経験にカウントされる事務>
  • ・簿記上の取引について、簿記の原則に従い取引仕訳を行う事務
  • ・仕訳帳等から各勘定への転記事務
  • ・元帳を整理し、日計表又は月計表を作成して、その記録の正否を判断する事務
  • ・決算手続に関する事務
  • ・財務諸表の作成に関する事務
  • ・帳簿組織を立案し、又は原始記録と帳簿記入の事項とを照合点検する事務

会計の知識がなくてもできる単純な事務は実務経験に該当しません。
たとえば税理士事務所で働いていたとしても、電卓を使用して簡単な入出力事務を行っていた場合、実務経験とは認められません。

税理士の登録申請

税理士試験合格と2年間の実務経験をクリアした後、日本税理士連合会に対して登録申請を行います。登録申請の流れは以下のとおりです。
引用:税理士登録の手引き_日本税理士会連合会

  • 1. 申請書及び添付書類の提出
    税理士登録申請書や住民票の写し、履歴書、誓約書等の必要書類を提出します。
    この時、登録免許税6万円と登録手数料5万円が必要です。
  • 2. 税理士会による調査
    申請を受けた地域の税理士会による調査です。
    この際に、登録調査員または登録調査委員会の担当者から面接を受けることになります。
    書類が不足していた場合は提出を請求されます。
  • 3. 日本税理士連合会による調査・審査
    登録調査部会で書面調査を行い、その調査結果を登録審査会に付議し、登録審査会において登録の適否が決定されます。
  • 4. 登録通知
    税理士の登録通知が、はがきで届きます。

税理士試験の難易度-まとめ

税理士は3大難関資格と言われるほどに難易度の高い資格です。
しかしそれだけ価値が高く、資格を取得すれば転職にも有利ですし給与アップにもつながります。

5科目合格が困難な人は、大学院に進学して免除を受けることもご検討ください。
税理士資格を取得して、新たなキャリアを切り拓きましょう。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。