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防衛特別法人税の概要と影響分析:令和7年度(2025年度)税制改正のポイント解説

公開日:2025/02/14

最終更新日:2025/01/24

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「防衛特別法人税って何?」「私たちへの影響は?」「税務担当者として知っておくべき情報は?」
と、気にしている方も多いかもしれません。

この記事では、防衛特別法人税の概要と企業等への影響について記載させていただきます。

この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。

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防衛特別法人税とは?

防衛特別法人税の定義と目的

「防衛特別法人税(仮称)」とは、防衛費増額の財源確保のため、令和8年(2026年)4月1日以降に開始する事業年度から、新たな付加税として導入 されるものです。
この税制により、法人税額の4%を新たに課税し、国の防衛力強化に必要な資金を調達することが目的 とされています。

なお、以下のような観点での中小企業への配慮も加味されています。

法人税額から 500万円 の控除を適用
・これにより、「法人税額が500万円以下」、すなわち「所得2,400万円前後まで」の企業は課税対象外 となる

創設された背景と経緯

創設された背景

防衛特別法人税の創設は、日本を取り巻く安全保障環境の急速な変化と、政府の防衛力強化の方針 に基づいています。具体的な背景として、以下の要因が挙げられます。

1.地域の安全保障環境の悪化
◦中国による東シナ海・南シナ海での軍事的な活動の活発化
◦北朝鮮による弾道ミサイル発射の頻発
◦ロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスクの高まり ◦台湾有事の可能性に対する懸念

2.防衛費の増額方針
◦日本政府は「国家安全保障戦略(2022年12月策定)」において、防衛力の抜本的強化を決定
◦2027年度までに防衛費をGDP比2%(約43兆円)まで増額する方針を打ち出し、 NATO標準に追随
◦新たな財源確保が急務に

3.財政の逼迫と防衛費確保の必要性
◦高齢化による社会保障費の増加により、歳出全体の圧迫が続く
◦新型コロナウイルス対策による巨額の財政支出が財政運営の制約に
◦防衛費増額のため、歳出削減や赤字国債発行だけでは限界があり、新たな恒久的財源の確保が必要

創設までの経緯

防衛特別法人税が導入されるまでには、政府内外での議論と調整が行われました。その主な経緯は以下の通りです。

1.2022年~2023年:防衛費増額に向けた議論開始
◦2022年12月:「国家安全保障戦略」改定で防衛費倍増の方針を決定
◦2023年初頭:財務省が財源確保策として増税案を提示(法人税、所得税、たばこ税など)
◦経済界から「経済の成長を阻害する」との反発が相次ぐ

2.2023年夏:財源確保の具体化
◦法人税を中心に負担を分散させる案が浮上
◦中小企業への影響を考慮し、「500万円控除」の仕組みを導入
◦個人所得税への付加税は見送り、たばこ税増税を検討

3.2023年12月:令和7年度税制改正大綱の策定
◦自民党・公明党の税制調査会が防衛特別法人税の創設を決定
◦法人税額の4%を新たな付加税として課すことを確定
◦中小企業への影響を最小限に抑えるため、段階的な施行を検討

4.2024年:税制改正法案の成立へ
◦2024年通常国会で税制改正関連法案が審議・可決見込み
◦2026年4月からの施行を目指す

令和7年度の税制改正のポイント

法人税における重要な変更点

令和7年度税制改正では、特に法人税の軽減措置や増税に関する以下の変更が行われます。

課税の対象となる基準法人税額
各法人の事業年度における「基準法人税額」に基づいて課税

計算方法(改正案)
防衛特別法人税=(基準法人税額−基礎控除額(年500万円))×4%
基準法人税額とは?
 以下の適用前の法人税額:
 ・所得税額控除
 ・外国税額控除
 ・分配調整外国税相当額の控除
 ・仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う法人税額控除
 ・戦略分野内生産促進税制に関する控除など
基礎控除額:500万円
 ・中小企業への配慮として、法人税額から年500万円を控除し、所得2,400万円以下の企業は課税対象外となる。
税率:4%
 ・控除後の法人税額に対し4%の付加税として課税。

税額控除 以下の項目が課税後の控除対象となる:
◦外国税額控除
◦分配調整外国税相当額の控除
◦控除対象所得税額等相当額の控除
◦仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う防衛特別法人税額控除

防衛特別法人税とたばこ税の関係

防衛力強化の財源確保のため、法人税の追加課税(防衛特別法人税)だけでなく、たばこ税の増税も税制改正の一環 として組み込まれています。

1.たばこ税の見直し内容
◦今回の税制改正では、特に加熱式たばこに対する課税が強化されます。
◦課税標準(従来の換算方法)が変更され、たばこの重量や吸引回数などに応じて、より厳密な課税が行われる予定です。
◦税率の引き上げは3段階(2025年~2027年にかけて)に分けて実施されることが決定。
◦具体的な増税幅としては、加熱式たばこ1本あたり2円~3円程度の引き上げが見込まれています。

2.影響の概要
◦たばこ税の増税により、消費者の負担が増加するため、健康志向の高まりと相まって喫煙率の低下が予想されます。
◦たばこ産業の売上や小売業への影響も考えられ、価格の上昇による需要減少が懸念されています。
◦政府の試算では、たばこ税の増税により年間約5,000億円の税収増が見込まれています。

項目 内容 備考
税率 法人税額の4% 付加税として課税
控除額 500万円 中小企業(所得2,400万円以下)は非課税
適用対象 すべての法人 個人事業主は対象外
施行開始 令和8年(2026年)4月1日以降 試行期間の設定なし
課税対象の基準 「法人税額 - 500万円」 の部分が課税対象 控除適用後の課税額
企業の影響 法人税の実質的な増税、企業の手取り利益が減少 企業の税務対策が必要
特例措置(中小企業向け) 控除適用により影響軽減 実質的に中小企業の大半は課税回避可能
財源確保の見込み額 約9,000億円程度(政府試算) 防衛費拡充の一部財源
関連税制改正 たばこ税の増税(段階的に引き上げ) 所得税増税案は見送り
今後の検討課題 経済界との調整、減税措置の延長 企業負担のバランス調整が必要

防衛特別法人税が企業に与える影響

法人への影響

以下の影響が考えられます。

税負担の増加:
防衛特別法人税が導入されることで、法人税額が500万円を超える企業は実質的な税負担が増加します。

◦例: 法人税額が1,500万円の企業は、(1,500万円-500万円)×4%=40万円の追加税負担
◦特に、収益が高い大企業は大幅な増税となり、企業のキャッシュフローや投資戦略の見直しが必要となります。

資金計画の見直し:
税務負担の増加に伴い、企業は内部留保の活用、コスト削減、投資計画の慎重な策定が求められます。

◦設備投資や研究開発費など、法人税の優遇措置を活用することで課税所得の最適化を図る必要があります。
◦中小企業にとっては、今後の事業拡大に伴う課税対象化への注意が必要。

国際競争力の懸念:
法人税の増税により、海外企業との競争力が低下し、企業の海外移転を誘発する可能性も指摘されています。特に、日本の法人税率(23.2%+防衛特別法人税)は諸外国と比較して依然として高い水準です。

個人事業主への影響

個人事業者に関しては、直接的な影響はありません。

ただし、以下のような間接的な影響が考えられます。

1.たばこ税の増税の影響:
◦たばこ税の増税により、喫煙者をターゲットとする業種(飲食店、コンビニエンスストア等)への売上減少の可能性。
◦喫煙人口の減少に伴い、一部関連ビジネスが縮小。

2.消費者心理への影響:
◦法人増税により、企業がコスト転嫁を進めることで、商品の値上げやサービス価格の上昇が想定される。
◦経済全体の購買意欲低下による売上減少のリスク。

項目 内容 影響の程度
税負担の増加 法人税額の4%を追加課税(500万円控除後)により、企業の実質的な税負担が増加。 大企業: 高 / 中小: 中〜低
資金計画への影響 増税によるキャッシュフローの圧迫。納税額増加により、投資計画や運転資金の調整が必要。 大企業: 中 / 中小: 低
中小企業の影響 法人税額500万円以下の企業は課税対象外となるが、将来的な業績拡大時には影響が発生。 中小企業: 低〜中
成長投資への影響 増税により設備投資や研究開発への資金が減少し、競争力の低下につながる可能性。 大企業: 中〜高 / 中小: 中
コスト転嫁の可能性 企業は税負担増を製品・サービス価格へ転嫁する可能性があり、消費者・取引先へ影響を与える。 すべての企業: 中
国際競争力の低下 法人税の実効税率上昇により、海外市場との競争が激化。外資系企業の日本離れが進む懸念。 大企業: 高
税務対策の必要性 企業は節税対策を講じる必要があり、適切な税務計画の見直しが必須。 すべての企業: 中
経済活動全体への影響 増税による経済成長の鈍化や、景気への影響も懸念される。 すべての企業: 中〜高

防衛特別法人税に関するよくある質問

施行日と適用期間

施行日について

施行開始: 令和8年(2026年)4月1日以降に開始する事業年度 から適用予定
対象事業年度:
 ・2026年4月1日以降に開始する事業年度(例:2026年4月1日~2027年3月31日が会計期間の法人)

準備期間:
 ・企業は2026年の施行前に、納税資金の確保や税務戦略の見直しが必要
 ・税制の詳細を確認し、事前の対策を講じるべき

適用期間について

終了時期の未定義:
◦現時点では防衛特別法人税の終了時期は明確に定められておらず、「恒久的税制」 としての性格を持つ可能性があります。
◦過去の「復興特別法人税(東日本大震災対応)」の事例では、3年間の時限措置とされたが、今回の防衛特別法人税は防衛力強化の長期的な必要性を鑑みると、数年以上の継続適用が見込まれる

継続の可能性:
◦防衛費の増大が続く限り、政府の財政戦略に応じて継続される見込み。
◦もし財政状況が改善されれば、将来的に税率の引き下げや段階的な縮小が検討される可能性もあるが、当面は一定の税負担が続くと予想される。

税制改正の今後の見通し

以下については、今後改正の可能性があり、留意が必要です。企業として、今後の動向を継続的に追う必要があると考えられます。

税率の見直し:

◦初期税率は法人税額の4%と設定されていますが、政府の防衛政策や国際情勢の変化、経済状況に応じて、税率の引き上げ・引き下げが検討される可能性があります。
◦景気低迷期では軽減措置の導入が検討される一方、防衛費のさらなる増額が必要となれば税率引き上げの議論も想定されます。

新たな税制導入:

◦たばこ税以外にも、以下のような新たな税収確保策が検討される可能性がある:
 1.防衛特別所得税: 個人所得への付加税(現在は見送り)
 2.消費税増税: 防衛費の恒久財源として消費税引き上げ議論の再燃
 3.金融所得課税強化: 資産運用利益への課税強化

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防衛特別法人税の概要と影響分析 -まとめ

防衛特別法人税は、防衛力強化の財源確保を目的に、2026年4月1日以降の事業年度から導入されます。法人税額の4%が追加課税され、500万円以下の法人税額の企業は対象外となりますが、対象企業には負担増が見込まれます。

また、たばこ税の増税も併せて実施予定で、経済全体への影響が懸念されています。今後、経済状況や防衛政策に応じて税率の見直しも検討される可能性があります。

企業は税負担増に備え、資金計画の見直しや節税対策を講じることが重要です。特に成長を目指す中小企業は、将来の課税対象化を見据えた準備が必要となります。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。