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なぜ税理士の平均年齢は高いのか?業界の変化と未来を見据えて

公開日:2025/03/07

最終更新日:2025/03/07

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税理士業界の平均年齢が高いイメージがあります。年々この平均年齢は上昇しており、その要因が気になるところです。

主な理由として、「税理士資格の取得に時間がかかる」などが挙げられます。他にも、「働き方改革によるキャリア選択の多様化」「ITシステムの発展」による影響もあります。

また、デジタル化が進む社会において、税理士の将来に不安を感じ、受験者数が減少しているというデータもあります。そのため合格者数が増えにくく、結果的に平均年齢の上昇につながっています。

しかし、 「AIによって税理士の仕事がなくなる」といった懸念は本当に正しいのでしょうか?

この記事では、税理士業界の平均年齢が高い理由だけでなく、業界の未来や今後求められる税理士人材についても詳しく解説していきます。

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税理士の平均年齢について

上記でも申し上げたように、税理士業界の特徴として、比較的 年齢層が高いことが挙げられます。

日本税理士会連合会が発表している統計によると、税理士の 平均年齢は60歳前後とされており、他の士業と比べても 高齢化が進んでいるにあります。実際に税理士の約7割が50歳以上を占めているというデータもあり、業界全体の高齢化が課題となっています。

しかし最近では 若手税理士の活躍も目立ってきています。税理士試験の受験制度の変更や、働き方の多様化により、30代や40代の税理士も増えつつあります。特に、 ITツールやクラウド会計を活用し、オンラインでの税務サポートを提供する新しいスタイルの税理士が増えている点も注目されています。

この働き方改善から最近では 若手税理士を求める人も増えてきました。理由としては会話がスムーズにできる、相談しやすい、対応が速いなどがあげられます。

また、従来は独立開業が主流だった税理士業界ですが、最近では税理士法人や一般企業の経理・財務部門で活躍するケースも増えています。

特に、 大手税理士法人(Big4など)やコンサルティングファームでは、若手税理士の採用が積極的に行われており、キャリアの選択肢も広がっています

働き方改善による、若手税理士の重要性が高まっている中、税理士の平均年齢は下がることなく上がり続けています。次は、「なぜ平均年齢が下がらないのか」について説明していきます。

平均年齢が高い理由

税理士の平均年齢が下がらない理由としては主に以下の3つが挙げられます。

1.税理士資格を取得するまでに時間がかかる
2.受験者・合格者の低下
3.税理士に定年がない


それでは、この3つを詳しく見ていきましょう。

1. 税理士資格を取得するまでにかかる時間

税理士資格を取得するには、税法に関する5科目に合格する必要があります。そのため、5科目全てに合格することを目指して学習を行う必要があり、資格を取得するには非常に多くの時間がかかるのが現実です。このような点が、税理士の平均年齢が高い要因の一つと言えるでしょう。

資格取得まで時間がかかる理由は以下の2つが挙げられます

1科目に合格するためにかかる時間
 ◦1科目に合格するには、長い学習時間と試験挑戦が必要。
 ◦数年かかることもあり、5科目すべて合格するには10年以上かかる場合もある。

税理士試験の難易度
 ◦試験範囲が広範囲で、体系的な理解と実務的な応用力が求められる。
 ◦1回の試験で全科目合格するのは非常に難しい。

令和5年度の税理士試験の受験者データによると、 5科目すべてに合格した人の中で最も多かった年齢層が41歳以上であることもわかります。これは、税理士資格を取得するまでの年月の長さと、専門的な知識の蓄積が必要であることが影響しているためです。

このように、税理士資格を取得するためには、長い時間をかけて科目ごとの合格を積み重ねていく必要があります。そのため、受験者年齢が高くなる傾向があり、平均年齢が上がる要因となっています。若いころから資格取得を目指して努力する人もいれば、ある程度の年齢を重ねてから挑戦する人も多いため、結果的に税理士の平均年齢が高いという要因の一つと言えます。

年齢層 受験者数 (A) 5科目到達者数 一部科目到達者数 合格者計 (B) 合格率 (A/B)
41歳以上 11,362 269 1,219 1,488 13.1%
36~40歳 4,619 97 865 962 20.8%
31~35歳 4,973 107 1,061 1,168 23.5%
26~30歳 4,916 74 1,258 1,332 27.1%
21~25歳 5,695 53 1,641 1,694 29.7%
20歳以下 1,328 - 481 481 36.2%


上記をお読みいただくと、税理士資格が難関であり、取得までに長い年月がかかることがお分かりいただけると思います。時間がかかる点や、難易度の高さから近年では受験者や合格率も減っているのが現実です。次は、このことについて、詳しく説明します。

2. 税理士資格の受験者・合格者の低下

国税庁のデータによると、税理士試験の受験者数は2015年から2022年にかけて大きく減少しました。具体的には、2015年の受験者数は38,175人で、2022年には28,853人に減少していました。この間に 1万人以上の受験者が減少したことがわかります。この 受験者数の減少は税理士業界にとって深刻な問題です。さらに、 資格合格率が16%~22%の範囲で一向に上がらないことも、平均年齢が下がらない要因の一つだといえます。

試験受験者と合格者が減っている理由は後ほど詳しく説明します。

税理士には定年がないことが挙げられます。次に、この点について詳しく考えていきましょう。

3. 税理士に定年がない

企業に勤める場合、通常は60歳~65歳を目安に定年退職を迎えることが一般的です。そのため、企業の平均年齢は税理士業界ほど高くなることはありません。しかし、 税理士という職業には定年がなく、年齢に関係なく現役で働き続けることができます。この特徴が、 税理士業界の平均年齢が高くなる大きな要因の一つです。

税理士は自営業が多いため、自分のペースで仕事を続けられるという柔軟さがあり、年齢に制限がありません

そのため、長年にわたって実務経験を積んだ ベテラン税理士が多く、定年を迎えて引退せずに現役を続けていることが、業界全体の平均年齢を押し上げる要因となっています。

実際のデータでも、 税理士の登録者数は増加傾向にあり、2015年には75,643人だった登録者数が、2024年には81,555人にまで増えています。この増加は、 年齢に関係なく現役で働き続ける税理士が多いため、定年後も活動していることが背景にあります。

税理士の多くは、働き続ける意欲が強く、職業に誇りを持ちながら長年続けることができるため、このような現象が生まれていると言えるでしょう。このように、定年退職がないため現役で働き続ける税理士が多く、それが税理士業界の平均年齢を押し上げる要因となっています。

次に、先ほど説明した試験受験者数が減少している理由について詳しく説明していきます。

試験受験者数減少の理由

試験受験者数が減っている理由は以下の4つが挙げられます。

働き方改革の影響
◦働き方改革が進み、労働市場における選択肢が広がった。
◦企業や個人の労働環境の変化に伴い、税理士資格を取得して独立する人が減少。
◦税理士資格だけに依存することへの不安から、税理士試験の受験者数が減少。

働き方の多様化
◦他のキャリアパス(異業種転職や企業内専門職の採用)を選ぶ人が増加。

AIとクラウドソフトの普及
◦記帳代行業務の多くがAIやクラウドソフトで自動化されるようになった。
 ・これにより、税理士に依頼する必要性が低くなった。

税理士業務の重要性の低下
 ◦自動化により、税理士業務の重要性が以前ほど高くなくなり、受験者数が減少。

このように、働き方改革やITシステムの導入により、税理士の重要性を感じにくくなったことが、資格受験者の減少につながっていると考えられます。しかし、受験者数や合格者数が減少することで、税理士業界の高齢化はさらに加速するといえます。

では、高齢化が税理士業界にどのような影響を与えるのか、次に詳しく見ていきましょう。

試験受験者数・合格者数の減少の影響

受験者数や合格者数の減少が高齢化を加速する理由は以下が挙げられます。

・受験者数が減少すると、合格者も減り、新たに資格を取得する税理士の数が少なくなる。
・若年層の税理士の参入が減少し、業界の高齢化が加速する。
・若年層の受験者が減少することで、合格者数も減り、新しい世代の税理士が増えにくくなる。

一方で、 最近では受験者数が増加しているというデータもあります。特に、2019年から2024年の間に受験者数は29,779人から34,757人へと増加しています。この増加の背景には、 税理士業界の将来への期待や、特定の地域における税理士需要の高まりなどが要因として考えられます。

しかし、 受験者数が増加しているにもかかわらず、若年層の合格率は依然として低いままです。税理士試験は非常に 難易度が高く、合格するためには長期間の学習が必要とされます。

そのため、若年層が試験に合格し、税理士として活躍するまでには時間がかかり、業界の平均年齢を下げるのは容易ではないとされています。このように、受験者が増えたとしても、 試験の難易度が高いため、単に受験者数を増やすだけでは税理士の高齢化解決にはつながりにくいことがわかります。

今後、税理士業界でもデジタル化が進むことで、若い世代の税理士がこれまで以上に求められるようになります。その結果、若手税理士の需要がさらに高まると考えられます。


次に、税理士業界の今後について詳しく説明していきます。

今後、税理士はデジタル化がチャンス

近年、AIの発展が進む中で、「AIによって税理士の仕事がなくなるのではないか」という不安を抱く声が増えています。AIによる 自動化が進むことで、税理士業務の一部は効率化され、これにより税理士の役割がなくなるのではないかと懸念する人も多いです。

また、税理士になるためには難関資格に合格する必要があり、この過程の厳しさや将来への不安が、高齢化を加速させる原因となっているとも考えられます。しかし、 デジタル化やAI化が進む中で、税理士業界には新たなチャンスも生まれています

では、実際に税理士業界がどのように変わっていくのか、また税理士はこれをどう活かしていけるのかについて考えてみましょう。

税理士業界のデジタル化と税理士の受容性

税理士業界におけるデジタル化の進展

デジタル化
 ◦業務効率化や生産性向上を目指して、ITツールの活用が進んでいる。
 ◦クラウド会計ソフトやAIを活用した記帳代行、税務申告の自動化が進んでいる。
 ◦従来のアナログ業務から脱却する動きが加速している。

業務の効率化
 ◦税理士業務はますます効率的になり、手間のかかる作業が軽減される。
 ◦新たなスキルや知識の習得が求められるようになっている。

デジタル化によるデジタル人材の不足と課題

デジタル人材の不足
 ◦多くの税理士事務所でITスキルを持つ人材が限られている。
 ◦新しいツールを導入しても、活用方法を十分に理解していないケースが多い。

ベテラン税理士の抵抗感
◦ベテラン税理士の中には、デジタル化に対する抵抗感を持つ人が多い。
◦事務所全体でのITリテラシー向上が急務となっている。

ITスキルの確保と育成
 ◦税理士が持っている専門知識を最大限に活用するためには、ITスキルを持つ人材の確保と育成が不可欠。

IT教育の強化
 ◦若手人材の育成やIT教育の強化が今後の課題。

デジタル化する社会でも税理士の必要性

税理士の必要性
 ◦AI化する社会においても、税理士は依然として必要な存在である。
◦若い税理士や税理士のデジタル人材は今後さらに受容性があると予測される。

柔軟な働き方とサービスの多様化

税理士業界のフリーランス化の進展

雇用の流動化とフリーランス税理士の増加
 ◦これまで税理士法人や会計事務所に所属し、経験を積むことが一般的だったが、今後はフリーランス税理士として独立する人が増えると予測されている。

デジタルツールと柔軟な働き方
 ◦クラウド会計ソフトやAIによる業務効率化により、税理士は場所を問わず業務を効率的に遂行できるようになった。
 ◦リモートワークやフリーランス契約が一般化し、企業との業務委託契約やプロジェクトベースの仕事が増加すると予測されている。

フリーランス税理士の役割とサービスの多様化

付加価値の高いサービスの提供
 ◦フリーランス税理士は、税務アドバイザーだけでなく、財務コンサルティングや経営アドバイザーとしての役割も強化し、より付加価値の高いサービスを提供することができる。
 ◦税務業務だけでなく、資産承継、M&A、国際税務などの高度で多様な業務に対応するスキルが求められる。
 ◦フリーランス税理士は、自身の専門性を強化し、複数の分野でアドバイザーとしての役割を果たすことが求められる。

効率的な業務運営と柔軟な対応
 ◦デジタルツールを駆使して、業務運営の効率化とクライアントへの柔軟な対応が可能になり、税務業務にとどまらず、多様な業務に対応できる。
 ◦フリーランス税理士は、コスト効率が良く、専門性の高いサービスを提供できるため、中小企業や個人事業主にとっては重要な存在となる。
 ◦クライアントにとっては、契約ベースで必要な業務に対応し、無駄なコストを抑えることができ、柔軟に専門的なアドバイスを受けられる。

このように、税理士業界のデジタル化は、多様な働き方を可能にし、業務提供やサービスを開拓するチャンスを提供します。しかし、デジタル人材が不足しているため、このチャンスを活かすにはデジタル人材の育成を強化する必要があります。

税理士として身に着けておきたいスキル

AIやデジタル技術の進化、働き方の多様化、そして国際化の進展により、税理士業界は大きな変革期を迎えています。従来の「税務申告代行」だけでなく、財務アドバイザー、経営戦略のサポート、DX支援といった新たな役割が求められるようになっています。そのため、税理士にはこれまで以上に幅広いスキルが不可欠です。

では、どのようなスキルが必要なのか、主な4つのスキルを見ていきましょう。

1. 高度な税務・財務知識

税理士の基本となる税務知識は、 これまで以上に専門性が求められます。特に、 国際税務やM&A、事業承継といった分野は専門家が少なく、高単価な案件になりやすいため、強みを持つことで競争を避けながら価値を高めることができます。

2. DXスキル

AIやクラウド会計の普及により、税理士業務は効率化が進んでいます。これからの税理士には、 デジタル技術を活用し、クライアントの業務効率化をサポートするスキルが求められます。

DXスキルは主に以下の4つになります。

 ◦クラウド会計ソフトの導入・活用
  ・freee、マネーフォワード、弥生会計など
 ◦電子帳簿保存法・インボイス制度対応支援
 ◦AI・RPAの活用
 ◦データ分析・ビジネスインテリジェンス(BIツール活用)

3. コンサルティング能力

単なる税務計算ではなく、 企業経営全般に関わるアドバイスができる税理士が求められています「税理士 × コンサルタント」としての 価値を提供することで、クライアントとの関係性が深まり、顧問契約の長期化や高単価案件の獲得につながります。

4. コミュニケーション能力・交渉力

AIや自動化技術が発展しても、税理士の重要な役割の一つは クライアントとの対話を通じた課題発見や提案にあります。この部分に関しては、 AIには代替できない人間ならではのスキルが求められます

税理士は単に数字を扱うだけでなく、クライアントとの信頼関係を築き、顧客のニーズに合わせた最適なアドバイスを提供することが重要です。

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まとめ

税理士業界の 平均年齢は60歳前後で、他の士業と比べて高齢化が進んでいます。約7割が50歳以上であり、業界全体の高齢化が問題視されています。平均年齢が高い理由としては、「税理士資格取得に時間がかかること」「税理士に定年がないこと」などが挙げられます。

さらに、近年では、 税理士試験の受験者数は減少しており、特に若年層の受験者が少なくなっています。そのため、 若年層の合格者も減少しており、平均年齢が高くなっているといえます。若年層の受験者減少の要因としては、働き方改革ITの発展により、税理士資格取得の重要性が低下したり、業務の自動化が進んでいることが挙げられています。

しかし、最近では若手税理士の活躍も増えており、特にITツールやクラウド会計を活用したオンライン税務サポートを行う新しいスタイルの税理士が注目されています。

これにより、税理士法人や企業の経理部門で活躍する若手税理士が増加しています。よって、 「AIによって税理士の仕事がなくなる」のではなく、今後の税理士の需要はより高まるといえます

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。