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月次決算を成功させるための実践的な方法とポイント

公開日:2025/04/10

最終更新日:2025/04/10

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「月次決算、毎月行っているけどもそこでの注意点は?」と疑問に思う方も多いでしょう。

この記事では月次決算でのポイント・注意点と確認のためのチェックリストのひな型をご紹介します。

月次決算に関わる方のお役に立てば幸いです。

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月次決算とは?

月次決算(げつじけっさん)とは、企業が毎月の業績を把握するために行う決算処理のことです。通常、年度末に行われる「本決算」とは異なり、月ごとに財務状況を確認し、経営判断に役立てることを目的としています。

月次決算の基本的な概念

月次決算は、毎月の収益と費用を集計し、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)を作成するプロセスです。通常、以下のような作業が含まれます。

1.売上・収益の集計
 ◦売上データの整理と確認
 ◦売上計上のタイミングの適正化

2.費用の整理と計上
 ◦仕入れや経費の計上
 ◦減価償却費や人件費の計上
 ◦未払費用や前払費用の処理

3.勘定科目の確認と調整
 ◦各勘定科目の残高確認
 ◦仮払金・未収入金・未払金の整理
 ◦売掛金・買掛金の管理

4.試算表(トライアルバランス)の作成
 ◦貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)を作成し、企業の財務状況を把握する

月次決算の目的と重要性

目的

1.経営状況の可視化
 ◦月ごとの利益やコストを把握し、経営改善のためのデータを提供する。

2.早期の問題発見と対策
 ◦収益の変動やコスト増加などの異常値を早期に察知し、迅速に対応できる。

3.予算と実績の比較
 ◦予算と実績を比較し、経営戦略の修正や適正な資金管理を行う。

4.資金繰りの管理
 ◦キャッシュフローを適切に管理し、資金ショートを防ぐ。

5.ステークホルダーへの報告
 ◦経営陣、投資家、金融機関などへの説明資料として活用される。

重要性

・経営の意思決定を迅速化
毎月の業績を正確に把握することで、経営者は迅速かつ適切な意思決定ができる。

・正確な財務管理
資金繰りや利益率の推移を把握し、財務リスクを軽減できる。

・年度決算のスムーズな進行
月次で決算処理を行うことで、年度末の決算作業の負担を軽減できる。

・内部統制の強化
定期的な財務チェックにより、不正会計や記帳ミスを防ぐ効果がある。

月次決算の流れ

月次決算は、毎月の経営状況を把握し、適切な経営判断を行うために必要なプロセスです。以下の流れで進められるのが一般的です。

① 事前準備

月次決算をスムーズに進めるために、あらかじめ必要な資料やデータを整理しておきます。

・請求書・領収書の整理
 ◦売上や経費に関する請求書・領収書を集める
 ◦電子帳簿保存法などのルールに沿って適切に管理
・会計ソフト・システムの更新
 ◦売上・仕入・経費のデータを最新の状態にする
 ◦仕訳データを適切に入力する

② 売上・収益の計上

・当月の売上データを集計し、売上計上のルールに従って処理する
・売掛金の確認(未回収売上がないか確認)
・売上の確定処理を行い、帳簿に記録する

③ 費用・仕入の計上

・仕入や経費を集計し、発生主義に基づいて計上
・人件費、賃借料、水道光熱費、広告費などの経費を適切な勘定科目で処理
減価償却費の計上
 ◦固定資産の減価償却費を計算し、適切に仕訳を行う

④ 勘定科目の整理・調整

未払い費用・未収収益の確認
 ◦発生したがまだ支払いや収入がない取引を適切に計上
前払費用・前受収益の調整
 ◦来月以降に影響するもの(例:前払保険料)を適正に処理
貸倒引当金・棚卸資産の評価
 ◦売掛金の回収可能性を確認し、必要に応じて貸倒引当金を計上
 ◦期末の棚卸資産の評価を実施

⑤ 試算表(PL・BS)の作成

損益計算書(PL, Profit & Loss Statement) の作成
 ◦月間の売上と費用を整理し、営業利益・経常利益・当期純利益を算出
貸借対照表(BS, Balance Sheet) の作成
 ◦資産・負債・純資産の最新の状況を反映
キャッシュフローの確認
 ◦資金繰りの健全性を確認し、必要に応じて調整

⑥ 月次決算のレビューと分析

部門別・プロジェクト別の収支分析
 ◦予算と実績の比較を行い、差異の要因を分析
経営層への報告
 ◦財務データを経営者や関係部門に共有し、意思決定の材料とする
改善策の検討
 ◦コスト削減や利益率向上のための施策を検討

⑦ 修正処理と確定

仕訳ミスや不整合の修正
 ◦月次決算の数字に誤りがないか最終チェック
最終承認後、決算データを確定
 ◦経営層や財務責任者が承認し、確定させる

⑧ 月次決算報告・資料作成

財務報告書の作成
 ◦必要に応じて、月次財務報告書や経営報告書を作成
会議での報告・今後の方針決定
 ◦経営会議や部門会議で決算結果を共有し、次月以降の経営方針を決定

表にまとめると以下の様になります。

ステップ 作業内容 ポイント・注意点
① 事前準備 - 請求書・領収書の整理
- 会計ソフトのデータ更新
- 電子帳簿保存法に準拠
- データの正確性を確認
② 売上・収益の計上 - 売上データの集計・計上
- 売掛金の確認
- 売上計上基準(発生主義)を守る
- 未回収売掛金をチェック
③ 費用・仕入の計上 - 仕入や経費の計上
- 人件費・減価償却費の処理
- 期間対応を正しく行う
- 仮払費用・未払費用の精査
④ 勘定科目の整理・調整 - 未払費用・未収収益の確認
- 前払費用・前受収益の調整
- 科目ごとの適正な処理を徹底
⑤ 試算表(PL・BS)の作成 - 損益計算書(PL)作成
- 貸借対照表(BS)作成
- 予算と実績の差異を分析
⑥ 月次決算のレビューと分析 - 部門別・プロジェクト別収支の分析
- 経営層への報告
- 重要なKPIや財務指標をチェック
⑦ 修正処理と確定 - 仕訳ミスの修正
- 最終確認・承認
- データの整合性を最終確認
⑧ 月次決算報告・資料作成 - 財務報告書の作成
- 経営会議での報告
- 経営判断の材料として活用


月次決算を効率的に行うためのポイント

月次決算をスムーズかつ正確に行うためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

カテゴリ 具体的なポイント 期待できる効果
① 事前準備の徹底 - 必要な書類(請求書・領収書など)をリアルタイムで整理
- 会計ソフトやERPシステムを活用し、データを自動取得
- 書類の抜け漏れを防ぐ
- 作業時間を短縮
② 業務フローの標準化 - 業務マニュアルを作成し、担当者ごとの業務の属人化を防ぐ
- タスク管理ツールを活用して進捗を可視化
- 作業の効率化
- 担当者交代時の引き継ぎが容易
③ データ入力の自動化 - 会計ソフトやRPAを活用して仕訳を自動化
- クレジットカードや銀行データと会計システムを連携
- 人為的ミスを削減
- 手作業の負担を軽減
④ 勘定科目の事前チェック - 毎月決まった経費(賃貸料・人件費など)は定型仕訳を活用
- 仕訳のテンプレートを作成し、誤入力を防ぐ
- 仕訳ミスを減らす
- 修正作業の手間を削減
⑤ 費用・売上の適正な計上 - 発生主義に基づき、費用・売上を正しく計上
- 月末締め処理の締切を統一する
- 正確な財務データを確保
- 経営判断の精度向上
⑥ 試算表のリアルタイム更新 - クラウド会計ソフトを活用し、リアルタイムで財務データを更新
- ダッシュボードで月次の数値を可視化
- 最新の財務状況を即時把握
- 経営者の意思決定を支援
⑦ 事前のレビューと調整 - 勘定科目の誤りや異常値を事前にチェック
- 必要に応じて税理士・会計士と連携し、不明点を確認
- 修正作業の負担軽減
- 決算の正確性向上
⑧ 月次決算の早期化 - 決算スケジュールを明確化し、締切を厳守する
- 経理部門と関連部門(営業・購買など)の連携を強化
- 月次決算の迅速化
- 経営会議での活用を促進


月次決算の注意点は?

月次決算を適切に行うためには、以下のポイントに注意する必要があります。

1. 正確なデータ入力を徹底する

月次決算では、売上や費用のデータを正確に記録することが重要です。
入力ミスや記帳漏れがあると、経営判断を誤る原因になります。
特に、売上の計上タイミングや経費の仕訳ミスが起こりやすいため、発生主義に基づいた正確な処理を行うようにしましょう。

2. 勘定科目の一貫性を保つ

毎月の決算処理において、同じ取引が異なる勘定科目に計上されると、財務状況の比較が難しくなります
勘定科目の使用ルールを明確にし、一貫した処理を行うことが重要です。
また、新たな取引が発生した際には、適切な勘定科目を事前に設定しておくとスムーズに対応できます。

3. 売上と費用の計上基準を統一する

企業の会計処理には、発生主義(取引が発生した時点で計上)と現金主義(入金・出金のタイミングで計上)の2種類の方法があります。
月次決算では、通常、発生主義に基づいて売上や費用を計上します。
例えば、売上は「請求書を発行した時点」ではなく「商品を出荷した時点」で計上するなど、ルールを統一しておくことが重要です。

4. 未払費用・未収収益の管理を徹底する

未払費用(まだ支払っていないが当月の費用として計上すべきもの)や未収収益(まだ入金されていないが当月の売上として計上すべきもの)は、適切に管理する必要があります。
これらを見落とすと、正しい利益が把握できず、翌月以降の決算にも影響を及ぼす可能性があります。

5. 仕訳の自動化・効率化を進める

毎月同じ仕訳を繰り返し手作業で入力していると、作業負担が大きくなります。
会計ソフトの自動仕訳機能を活用したり、定型仕訳を事前に登録することで、ミスを防ぎながら効率よく処理を行いましょう
また、銀行口座やクレジットカードの明細データと会計ソフトを連携させることで、取引データを自動取り込みできるため、手作業の負担を減らすことができます。

6. 関連部門との情報共有を徹底する

経理部門だけでなく、営業部門や購買部門とも連携し、売上・仕入データの共有をスムーズに行うことが大切です。
例えば、営業部門が請求書の発行を遅らせると、売上の計上も遅れてしまい、月次決算の締めが遅くなる可能性があります。
事前に締切を設けて情報を収集し、スケジュールを守るようにしましょう。

7. 異常値の確認を怠らない

月次決算では、前月や前年同月のデータと比較し、売上や費用に異常な変動がないか確認することが重要です。
特に、以下のような点に注意しましょう:

・予算と大きく乖離している項目はないか
・売上・仕入・人件費などの増減が極端でないか
・突然の赤字や黒字になっていないか

異常値が見つかった場合は、仕訳ミスや計上漏れがないか再確認しましょう。

8. 適切なタイミングで確定する

月次決算を早く終わらせることは重要ですが、正確性を犠牲にしてまで急ぐべきではありません。
一定のチェック体制を整え、誤ったデータのまま決算を確定させないようにしましょう。
特に、経営者やステークホルダーに報告する前に、最終確認を行うことが重要です。

9. 税務・法務リスクを意識する

税務や法務に関わる取引は、専門家と相談しながら慎重に処理する必要があります。
例えば、交際費や寄付金の計上ルール、消費税の適用範囲など、誤った処理をすると税務調査の対象になる可能性があります。

月次決算チェックリストの作り方とサンプル

月次決算のチェックリストを作成することで、ミスを防ぎ、業務の標準化・効率化を図ることができます。
以下に、作り方の手順サンプルチェックリストを紹介します。

月次決算チェックリストの作り方

1.主要な決算作業をリストアップする
 ◦売上、費用、人件費、仕訳、帳簿の確認など、必要なタスクを洗い出します。

2,作業の担当者を明確にする
 ◦各タスクごとに、担当者(経理、営業、購買など)を設定し、責任を明確化します。

3.締切(デッドライン)を設定する
 ◦月次決算を遅れなく完了させるために、作業ごとの期限を決めます。

4.確認事項を具体的にする
 ◦「売上の計上を確認する」だけでなく、「発生主義に基づき売上計上が適切か確認」など、具体的な内容にする。

5.異常値チェックを含める
 ◦先月や前年と比較して、売上・経費の異常値がないかを確認するチェックを組み込む。

6.最終承認・報告のステップを設ける
 ◦決算データの最終確認を行い、経営者や関係部門へ報告する手順を明確にする。

サンプル

【基本情報】
対象月:______
作成者:______
承認者:______
締切日:______

カテゴリ チェック項目 担当者 完了状況(✔/×)
売上計上 売上データの入力・確認(売掛金の計上) 営業・経理
発生主義に基づいた売上計上の適正確認 経理
売掛金の回収予定確認(未回収リスト作成) 経理
費用計上 仕入・経費の計上(発生主義ベース) 購買・経理
水道光熱費・通信費・賃借料などの計上 経理
人件費の計上(給与・社会保険・賞与) 人事・経理
減価償却費の計上 経理
勘定科目チェック 未払費用・未収収益の適正計上 経理
前払費用・前受収益の計上処理 経理
貸倒引当金の計上(売掛金の回収可能性チェック) 経理
試算表の作成 損益計算書(PL)の作成・確認 経理
貸借対照表(BS)の作成・確認 経理
キャッシュフローの確認(資金繰りチェック) 経理
異常値チェック 前月・前年と比較して異常値がないか確認 経理
売上、経費、利益率などの大幅な変動の原因分析 経理・財務
最終承認・報告 仕訳・試算表の最終確認 経理責任者
経営陣への報告資料作成 経理
経営会議での報告 経理・経営者

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月次決算を成功させるための実践的な方法とポイント -まとめ

この記事では月次決算について取り扱いました。

この記事がお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

税理士 平川 文菜(ねこころ)

税理士|熊本出身|2018年京都大学卒業| 在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。