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公開日:2025/05/01
最終更新日:2025/05/01

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「新事業を始めたいんだけど、補助金って使えるのかな?」
顧問先からそんな相談を受けたこと、ありませんか?
コロナ後の事業再構築、EC化、新サービスの立ち上げ──。
中小企業の経営環境が大きく変化する中、補助金は資金面の支援だけでなく、事業戦略の再設計を促す強力なツールになっています。
特に「新事業進出補助金」は、従来の事業と異なる分野への挑戦を後押しする制度で、顧問先の新たな成長の起点になる可能性を秘めています。
本記事では、この補助金の概要や申請スケジュール、補助対象となる経費のポイントから、実務で陥りがちな申請ミスの注意点まで、税理士事務所でのサポートに直結する情報を整理しました。
支援機関の確認書が必要な補助金も増えている今、税理士としての関与がますます重要になっています。
補助金支援を通じて、顧問先の信頼をより一層深めるきっかけにもなりますので、ぜひチェックしてみてください。
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新事業進出補助金とは?
「新事業進出補助金」は、企業が新たな分野への進出や新事業の立ち上げを行う際に、初期投資や準備費用などの負担を軽減し、円滑に事業をスタートできるようにするための補助制度です。以下に概要と目的、対象企業・要件を整理します。
補助金の概要と目的
項目 | 内容 |
名称 | 新事業進出補助金(※正式名称は自治体や省庁によって異なる場合あり) |
目的 | 既存事業からの脱却、新市場への挑戦、事業再構築・多角化を促進し、地域経済の活性化や企業の持続的成長を支援すること。特にポストコロナやデジタル化、脱炭素など社会変化に対応した新分野進出を後押し。 |
補助対象経費 | 設備投資費、広告宣伝費、外注費、人件費、調査費、システム構築費など(補助金ごとに異なる) |
補助率・補助上限額 | 一般的に補助率は1/2~2/3程度、上限額は500万円~1億円規模(制度により異なる) |
対象となる企業と要件
区分 | 内容 |
対象企業 | 中小企業、小規模事業者、一定の条件を満たす中堅企業(大企業は対象外の場合が多い) |
事業要件 | 新たな分野への進出であること(例:飲食業→冷凍食品の製造、対面販売→ECへの転換など) 事業計画が明確であり、将来的に収益化が見込める内容であること |
その他要件 | 法人登記や開業から一定期間経過している 税金滞納がない 暴力団排除条項に同意 必要な許認可が取得済または取得見込み |
地域要件 | 一部の補助金では、自治体内での事業実施が条件となる |
申請から公募までのスケジュール
以下に、「新事業進出補助金」における2025年4月公募開始想定のスケジュールと、申請手続きの流れ・ポイントをまとめます(例として、経産省や自治体の補助金を参考に構成しています)。
2025年4月の公募開始について
時期 | 内容 | 補足 |
2025年4月上旬〜中旬 | 公募開始(募集要領公開) | 公式Webサイト・自治体HPなどで詳細公表 |
2025年4月中旬〜6月上旬 | 申請受付期間 | 約1~2ヶ月設けられるのが一般的。電子申請が主流。 |
2025年6月中旬〜7月上旬 | 書類審査・外部有識者の評価 | 審査基準:新規性・実現可能性・収益性など |
2025年7月中旬以降 | 採択結果通知・交付決定 | 採択通知後、交付申請→交付決定 |
2025年8月以降 | 事業開始・補助対象経費の支出開始 | 交付決定通知の後でなければ補助対象にならない点に注意 |
2026年3月末まで | 事業実施・実績報告 | 実施後、報告書・証憑提出など必須 |
申請手続きの流れとポイント
・公募要領の確認
◦事業の趣旨・対象経費・補助率などを確認
◦不明点は早めに事務局へ問い合わせ
・事業計画書の作成
◦新事業の目的、ターゲット、市場動向、売上見込み、体制等を明確に記述
◦図やグラフを用いて見やすくすると加点されやすい
・見積書・証拠資料の準備
◦設備投資費用、委託費などの見積書を用意
◦過去実績の資料や、類似事例の参考も◎
・申請書類の電子提出
◦gBizIDやjGrantsを利用するケース多数(ID取得は早めに!)
◦郵送申請のケースも一部あり(自治体型など)
・審査・採択通知
◦通常、数週間〜2ヶ月程度で通知
・交付申請・交付決定
◦採択後に改めて「交付申請書類」を提出
◦交付決定を受けて初めて補助対象経費が発生可能
補助金のメリットと活用法
以下に、「新事業進出補助金」に関するメリットと活用法、補助率と資金活用の具体例、中小企業が受けられる支援内容を分かりやすくまとめました。
補助率と資金活用の具体例
項目 | 内容 |
資金負担の軽減 | 初期費用(設備、人材、広報など)の負担を1/2〜2/3軽減でき、資金繰りに余裕が出る。 |
新事業への挑戦を後押し | 成功の見込みがあっても踏み出せなかった事業を、補助金で現実化しやすくなる。 |
信用力・対外評価の向上 | 公的機関からの支援実績は、金融機関・取引先に対する信頼性向上につながる。 |
社内の意識改革 | 新事業に向けた体制づくりや業務改善が進み、社員のモチベーションアップにも寄与。 |
収益の多角化 | 既存事業依存から脱却し、収益源を複数化することによって経営の安定性を高められる。 |
中小企業が受けるサポート
分類 | 補助率 | 活用例 | 補助金額例(目安) |
通常の中小企業 | 2/3以内 | ・冷凍食品製造機の導入 ・新規ブランドのWeb広告 ・新店舗の外装・内装工事 ・新分野の人材採用費 |
最大750万円(事業再構築補助金・成長枠など) |
小規模事業者 | 2/3〜3/4 | ・ECサイト構築 ・移動販売車の購入 ・ロゴやパッケージデザイン費 |
最大500万円(持続化補助金など) |
特定業種(地域特化、脱炭素分野等) | 上限額大きめ or 優遇枠あり | ・省エネ設備の導入 ・地域資源を活かした新商品開発 |
1,000万円〜1億円(自治体による) |
サポート機関 | 支援内容 | 特徴 |
商工会議所・商工会 | ・計画書作成支援 ・事業計画のブラッシュアップ ・採択後のフォロー |
地元密着、持続化補助金などで密接支援 |
中小企業診断士・認定支援機関 | ・採択率を高める事業戦略の構築 ・財務分析・収支予測の作成 |
交付要件として「支援機関の確認書」が必要な補助金も多い |
自治体の産業振興課など | ・補助金の最新情報の提供 ・申請書の事前相談 |
都道府県・市区町村独自の補助制度を多数運営 |
よろず支援拠点(全国) | ・無料での経営相談 ・補助金相談 |
国が設置する中小企業支援ネットワーク |
申請時の注意点
補助金の申請には、想像以上に時間と準備が必要です。ただ書類を出すだけではなく、審査で通るための戦略的な計画作成と、細かな実務対応が求められます。以下の点に注意することで、採択の可能性を高められます。
① スケジュールは「前倒し」が鉄則
補助金申請の最大の失敗原因の一つが「準備不足による間に合わない申請」です。
公募開始から締切までは1〜2ヶ月ありますが、実際はgBizID取得・見積書手配・計画書作成で早くも手一杯になります。
・gBizIDは取得に1〜2週間かかる
・支援機関の確認書の依頼もタイムラグがある
・見積書の依頼は意外と返ってこない
▶ 最低でも締切の3週間前から準備着手がおすすめです。
② 事業の「新規性」と「社会性」が鍵
補助金の目的は、単なる延命措置ではなく、新しい挑戦や地域への貢献を後押しすることです。
よくあるNG例:
・既存店舗の単なる内装リニューアル
・機械の更新のみ(更新理由が「古いから」だけ)
・一般的な販促活動だけ(既にやっている内容の焼き直し)
審査で見られるポイント:
・その新事業は「なぜ今」必要か?
・地域や社会にどんなインパクトを与えるか?
・収益化の道筋は明確か?
▶ 社会課題やトレンドとの接続(例:脱炭素、デジタル化、子育て支援等)を意識すると◎
③ 補助対象経費のルールを正しく理解する
補助金の経費には明確なルールがあります。誤って対象外の経費を申請すると、不採択や減額の可能性があります。
補助対象外になりやすいもの
・自社従業員の給与(例外あり)
・税金、振込手数料、家賃
・決定前に発注・契約した経費
補助対象になりやすいもの
・設備購入費、広告宣伝費、外注費
・専門家へのコンサル費(外注扱い)
・ホームページ制作、ECサイト構築費
▶ 申請前に「対象経費リスト」を確認し、見積書を正確にそろえましょう。
④ 支援機関との連携はマスト
多くの補助金では、「認定経営革新等支援機関」の支援を受けていることが申請要件になっています(例:事業再構築補助金など)。
連携先の一例:
・商工会・商工会議所
・中小企業診断士
・税理士・社労士(認定機関であれば)
彼らに依頼すべきこと
・事業計画のブラッシュアップ
・財務内容の見直し
・確認書の発行(申請書類に必須)
▶ 早めに相談し、申請締切1週間前までには確認書をもらうのが理想です。
⑤ 交付決定「前」の支出は対象外
これは非常に重要なポイントですが、採択されたからといってすぐにお金を使ってはいけません。
補助金は「交付決定通知」以降の支出しか対象になりません。
例:
・6月に採択通知 → 実際の交付決定が7月 → 7月以降の支出だけが対象
▶ 採択=OKではなく、「交付決定通知」まで待つのがルールです。
分類 | 注意点 | 解説・具体例 |
スケジュール管理 | 締切ギリギリでの申請は厳禁 | gBizID取得や見積取得、計画書作成に意外と時間がかかるため、最低でも3週間前には準備開始を。 |
事業の新規性・必要性 | 単なる設備更新やリフォームは対象外の場合あり | 「なぜこの新事業なのか」「どう社会・地域に貢献するのか」まで明確にする必要あり。 |
採算性・収益性 | 収支予測に根拠があるか | 「○○事業を開始→半年後に黒字化予定」といった数値に対し、裏付け資料・実績が求められることも。 |
補助対象経費の誤記 | 申請前に必ずチェック | 補助対象外の経費(車両費、税金、社内人件費など)を誤って計上すると、減額や不採択の恐れ。 |
gBizID取得のタイミング | 電子申請には事前取得必須 | 発行には1〜2週間程度かかるため、早めに登録を済ませること(jGrants利用の補助金で必須)。 |
認定支援機関の活用 | 要件となっている場合あり | 事業再構築補助金などでは「認定経営革新等支援機関」の確認書類が必須。未確認だと申請不可。 |
実施期間の誤解 | 交付決定前に支出した費用は対象外 | 「採択された=経費使ってOK」ではなく、交付決定通知後の支出のみが対象となる。注意。 |
過去の補助金との重複 | 同じ経費で複数補助金を受けるのはNG | 別の補助金と同時申請・併用する場合、対象経費の区分を明確に分けること。二重取りは違反。 |
提出書類の不備 | 書類不足・押印漏れが多い | 必要書類チェックリストを活用し、複数人でのWチェック推奨。小さなミスが不採択要因に。 |
働きがいのある会計事務所特選

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まとめ
「新事業進出補助金」は、中小企業や小規模事業者が新分野へ挑戦する際に、資金面・計画面の両方を後押ししてくれる力強い制度です。
採択されるには、「新規性」「社会性」「収益性」を備えた事業計画の策定が重要であり、スケジュール管理や支援機関との連携、正確な経費分類など、実務的な注意点も数多く存在します。
本記事では、
・制度の概要と目的
・申請から交付までのスケジュール
・活用事例や補助率の目安
・中小企業が受けられる支援内容
・実務上の注意点
を網羅的に解説しました。
新事業への第一歩を確かなものにするため、ぜひ本記事の内容を申請準備に役立ててください。

税理士 平川 文菜(ねこころ)