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税理士試験における所得税法の重要ポイントとは?合格のための戦略を解説!

公開日:2025/05/16

最終更新日:2025/05/16

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所得税法は、税理士試験の中でも「実務に最も近い」科目の一つです。
しかしその一方で、出題範囲の広さと計算の複雑さから、多くの受験生を悩ませています。
理論暗記は膨大で、計算問題では所得区分の知識が問われ、処理スピードも要求される――。
「覚えきれない」「時間が足りない」「模試で点が取れない」……そんな声も少なくありません。

けれど、正しい道筋をたどれば、どんな人でも合格に近づくことができます。
この記事では、過去問の傾向分析、頻出テーマの整理、合格者の学習法や心構えをまとめました。
働きながら勉強している方、今年こそ合格を目指す方にとって、実践的なヒントが詰まっています。
“なんとなく勉強”から抜け出して、“勝つための勉強”へ――その第一歩を、ここから踏み出しましょう。

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所得税法の試験概要

所得税法とは?

所得税法は、個人の所得に課される税金のルールを定めた法律です。日本では、所得の種類によって10区分に分類され、それぞれ課税方法や控除などが異なります。所得税法では、以下のようなことを規定しています:

・所得の種類と計算方法(例:給与所得、事業所得、不動産所得 など)

・各種所得控除・税額控除

・青色申告や損益通算のルール

・源泉徴収・確定申告の仕組み

税理士として、個人のクライアント対応において必須となる法律科目です。

試験の出題内容と難易度

分野 内容 比重(目安)
理論問題 所得区分、損益通算、所得控除、課税の特例、申告制度、青色申告、源泉徴収 など 約40%
計算問題 所得金額の算定、税額計算、損失の繰越控除、居住用財産の譲渡特例、配偶者控除・扶養控除など 約60%


理論問題は、事例に即して「適用条文や通達」をベースに記述する形式

計算問題は、所得区分ごとの正確な計算処理と申告書の作成力が問われる

また、所得税法は、税理士試験の中でも上位レベルの難しさを持つ科目です。

指標 概要
合格率 毎年約10~15%(受験者数:約5,000~6,000人)
ボリューム 所得区分が多岐にわたるため、暗記・計算ともに広範囲
学習時間 一般に800~1,000時間以上が目安
傾向 青色申告・損益通算・譲渡所得の特例など、応用的な事例対応力が必要



合格するための学習戦略

合格するためには学習の戦略が重要になります。

1. 基礎理論の徹底暗記
・所得の10分類、各種控除、損益通算、青色申告などの「基本理論」をまず網羅
「条文ベース」で整理された理論集を使い、早い段階から暗記ルーティンを構築

2. 計算問題の分野別マスター
・所得区分ごとの計算問題(給与、事業、不動産、譲渡など)を分解して習得
最初は1日1区分ペースでスモールステップに落とす

3. 理論と計算のリンク学習
・所得区分ごとに「理論→計算→理論→計算」と交互に復習
・譲渡所得などは特例条文を読んでから具体的な金額計算に移ると定着しやすい

4. 模試・過去問を通じた実戦訓練
・模試は年3〜4回を目標に、時間配分の訓練と「処理スピード」を鍛える
過去問5年分を繰り返す(特に出題傾向が安定している理論問題)

効率的な学習時間の確保

時期 学習目安 内容
4〜8月 平日:3時間/休日:8時間 インプット中心(理論暗記・計算手順)
9〜12月 平日:2.5時間/休日:6時間 計算演習と理論記述の定着
1〜4月 平日:2時間/休日:5時間 過去問・模試・暗記強化(アウトプット重視)
5〜7月 平日:3時間/休日:10時間 直前期の総仕上げ、答案練習


法人税法との違いを理解する

項目 所得税法 法人税法
対象 個人 法人
所得区分 10区分(事業・給与・譲渡など) 原則1区分(損益計算書ベース)
計算 所得区分ごとに異なる 法人全体で一括処理(税務調整が中心)
理論 申告制度・控除制度の理解が中心 会計と税務の差異の理解が中心
暗記量 区分ごとの制度が多く、幅広い 調整項目が深く、専門的
実務 個人事業主・資産家・不動産保有者などが中心 中小企業~上場企業の法人全般


過去の試験問題の分析

よく出題されるテーマの解説

所得税法の試験は、「理論問題」と「計算問題」に大別されます。
過去5年間の出題傾向を分析すると、実務を想定した複合的な出題が増加しており、単なる暗記では対応しきれない応用力が求められています

▽ 過去問の特徴(箇条書き)

・理論問題は「条文の正確な理解と適用能力」を問う記述形式

・計算問題は2~3種類の所得区分を組み合わせた問題が主流

・青色申告、損益通算、譲渡所得の特例などは毎年のように登場

・法改正があったテーマ(配偶者控除など)は翌年に出題されやすい

・所得の組み合わせ問題(例:退職+譲渡+山林)は難易度が高め

年度 理論出題テーマ(抜粋) 計算出題テーマ(抜粋)
令和5年(2023年) 居住用財産の譲渡、青色申告取消 譲渡所得・山林所得・損益通算
令和4年(2022年) 損失の繰越控除、配偶者控除 事業所得・雑所得・特定口座株式
令和3年(2021年) 所得控除、申告制度の概要 退職所得・不動産所得
令和2年(2020年) 一時所得、青色事業専従者給与 譲渡所得の特例、損失通算
令和元年(2019年) 損益通算、居住用財産の3,000万円特別控除 事業所得・株式譲渡所得


出題頻度の高いテーマには、制度理解と応用計算の両方が求められるものが多く、これらを重点的に学ぶことが合格への近道です。

▽ 頻出テーマとポイント(箇条書き)

損益通算・繰越控除
 → 黒字所得と赤字所得をどう通算・繰越できるかの実務的判断力

居住用財産の譲渡所得
 → 3,000万円控除・軽減税率の適用要件・譲渡損失との関係

青色申告制度
 → 要件・控除金額・取消リスクなど、条文知識が不可欠

配偶者控除・扶養控除
 → 所得制限の判定や、実際の家族構成を想定した適用可否

源泉徴収・確定申告制度
 → 年末調整の要否、申告義務の発生パターン

株式等の譲渡・特定口座制度
 → 所得区分の判定と損益通算の可否を問われることが多い

分野 テーマ 解説
損益通算・繰越控除 赤字と黒字の所得をどう通算するか 不動産所得×給与など、事業継続と税負担調整に直結
居住用財産の譲渡 3,000万円控除、軽減税率の特例 実務でも重要、譲渡所得の目玉テーマ
青色申告制度 特別控除・専従者給与・取消要件 青色申告の要件や取り消しリスクに関する記述も出る
配偶者控除・扶養控除 所得制限、同一生計の判定 社会情勢に応じて改正・出題が続く
源泉徴収・申告制度 年末調整、確定申告の要否 税務署対応や提出義務に関するケース問題が出やすい
株式譲渡・特定口座 所得区分と損益通算の関係 雑所得との違いや分離課税制度の理解がカギ


合格率と難易度の推移

所得税法の合格率は、過去10年を通して 毎年10〜15%前後 を推移しています
他の税法科目(相続税法・法人税法など)と比べて出題範囲が広く、実務寄りの応用力が問われるため、難易度は高めです


年度 合格率 難易度(目安) コメント
令和5年(2023年) 12.1% ★★★★☆ 譲渡所得と青色申告が難問に
令和4年(2022年) 14.4% ★★★☆☆ 理論は基本的、計算がやや複雑
令和3年(2021年) 11.3% ★★★★☆ 理論で法改正対応が問われた
令和2年(2020年) 10.7% ★★★★☆ 複数区分の組み合わせで計算に時間がかかる
令和元年(2019年) 13.6% ★★★☆☆ 順当な出題、努力が結果に反映されやすい


合格への道筋

所得税法の合格には、「インプット→アウトプット→実戦演習→再整理」というステップを1年かけて丁寧に積み上げる学習プロセスが求められます。特に、「理論の暗記」と「計算力の正確性」は双輪です。

▽ 合格へのステップ(箇条書き)

1.4~6月:基礎固め
 - 所得区分・控除・申告制度の理論インプット
 - 所得計算の基礎を1つずつ習得(例:給与、不動産)

2.7~10月:演習強化期
 - 理論の暗記スタート(1日2題ペース)
 - 計算問題を通じて“処理スピード”と“凡ミス減少”を目指す

3.11~2月:応用定着期
 - 複数区分が絡む過去問・予想問題演習
 - 理論記述を本番形式で毎週練習(採点付き模試の活用)

4.3~7月:実戦力完成期
 - 時間配分・答案構成・得点戦略を意識した実践演習
 - 苦手論点の総点検と暗記の再確認(理論集1冊の使い込み)

試験直前の心構えと準備

直前期は「不安との戦い」です。学力以上に「自信と整理」が合否を分けます。焦って新しいことに手を出すよりも、“今ある知識を確実に使える状態”にすることが最優先です。

▽ 心構えと準備(箇条書き)

手を広げすぎない:「やってきた問題集とノート」を信じて繰り返す

ミスノートの読み返し:直前は“自分だけの弱点集”が最強

理論は口頭で暗唱練習:黙読だけでは定着しない

睡眠・食事・運動を整えて体調管理を徹底

「本番を想定した1日」を数回体験:朝の時間に試験を想定して模擬演習

合格者の体験談を活用する

合格者の体験記は「成功法だけでなく失敗の回避法」まで学べる貴重な教材です。特に同じバックグラウンドの人(働きながら、他科目併願など)を参考にするのがおすすめです。

▽ 活用法(箇条書き)

勉強時間・ペース配分の目安を知る
 → 例:週25時間、理論暗記は1日2題など

失敗した勉強法を回避できる
 → 「暗記に偏りすぎて計算で落ちた」などの反面教師

理論の覚え方や計算の工夫を取り入れる
 → ゴロ合わせ、A3用紙1枚整理法、電車内暗唱など

使用教材・講座の選び方を比較できる
 → 大原 or TAC の違い、Web講座のメリット など

モチベーション維持のために読む
 →「あの人もここでつまずいた」と知ることで安心感が得られる

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まとめ

所得税法は、「広く・深く・正確に」知識と処理力を求められる科目です。
合格には、正しい学習戦略、頻出テーマへの集中、そして試験直前の冷静な準備が不可欠です。
過去の合格者も、はじめは誰もが不安でした。しかし、積み上げた努力は必ず力になります。
大切なのは、“焦らず、自分のペースで、一歩ずつ進むこと”。
この記事が、あなたの学習に小さな灯をともす一助となれば幸いです。

執筆 ・ 監修

税理士 平川 文菜(ねこころ)

税理士|熊本出身|2018年京都大学卒業| 在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。