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公開日:2025/09/28
最終更新日:2025/09/28

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簿記は、企業や個人の経済活動を正確に記録・管理し、財務状況を明らかにする重要な技術システムです。現代社会において、経営判断・投資・融資など、あらゆる経済活動の基盤となっています。
この記事では簿記の歴史や原理、役割、学習方法まで幅広く解説します。
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簿記とは何か
簿記とは、企業や個人の経済活動を帳簿に記録・整理し、財務状況を明らかにする技術のことです。
「お金の流れを“見える化”する仕組み」と言い換えると理解しやすいでしょう。
日々の売上や仕入、経費や給与の支払いなどをルールに従って記録し、最終的には貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)といった財務諸表を作成します。
これにより、会社経営者は経営判断を下しやすくなり、投資家や金融機関も正しい情報を得ることができます。
簿記の歴史と原理
複式簿記の誕生
複式簿記の起源は、15世紀のイタリア・ベネチア共和国にさかのぼります。地中海貿易が盛んな中世イタリアで、数学者で修道僧でもあったルカ・パチョーリ(1445-1517年)が1494年に出版した数学書『スムマ(算術、幾何、比および比例に関する全集)』で初めて複式簿記が学術的に説明されたため、パチョーリは「近代会計学の父」と呼ばれています。
日本への導入
日本では、福沢諭吉が明治6年(1873年)にアメリカのテキストを翻訳した「帳合之法(ちょうあいのほう)」という書籍が複式簿記の始まりです。「借方」「貸方」という用語も福沢諭吉による翻訳によって生まれました。
基本原理:借方と貸方
複式簿記は、すべての取引を「借方(左側)」と「貸方(右側)」の二面から記録する仕組みです。
覚え方のコツ:
・借方の「り」は左にはらっている → 左側
・貸方の「し」は右にはらっている → 右側
仕訳の5つのグループ
グループ | 増加する場合 | 減少する場合 | 具体例 |
---|---|---|---|
資産 | 借方 | 貸方 | 現金、売掛金、建物、備品 |
負債 | 貸方 | 借方 | 買掛金、借入金、未払金 |
純資産(資本) | 貸方 | 借方 | 資本金、利益剰余金 |
収益 | 貸方 | 借方 | 売上、受取利息 |
費用 | 借方 | 貸方 | 仕入、給料、光熱費 |
簿記の役割と目的
簿記の役割は大きく分けて3つあります。
1.記録
日々の取引を正確に残すことで、将来のトラブルや不正防止につながります。
2.報告
財務諸表としてまとめ、株主や金融機関、税務署などの外部に報告します。
3.経営判断
利益率や資金繰りを把握し、投資・経営戦略の意思決定に役立ちます。
つまり簿記は、単なる会計処理ではなく、経営の羅針盤ともいえる存在です。
簿記の種類
簿記にはいくつかの種類があり、用途や利用者によって区別されます。
種類 | 概要 | 利用される場面 |
---|---|---|
商業簿記 | 商品売買やサービス提供を扱う簿記 | 会社・個人事業の経理 |
工業簿記 | 製造業での原価計算を中心に扱う | 工場やメーカー |
会計学的簿記 | 財務諸表作成や理論的側面に重点 | 大学の研究や会計士試験 |
単式簿記 | 家計簿のようにシンプルに収支を記録 | 個人事業主の簡易帳簿 |
複式簿記 | 借方・貸方の両面から記録 | 法人会計、税務申告必須 |
多くの企業では複式簿記が採用されており、税務申告でも必須です。
それぞれの特徴は以下の通りです。
商業簿記
・対象:商品売買、サービス業
・特徴:売上、仕入、在庫管理が中心
・主要取引:商品仕入、売上、掛取引
工業簿記
・対象:製造業
・特徴:原価計算が複雑
・主要要素:材料費、労務費、経費の管理
建設業会計
・特徴:工事進行基準、完成工事高
・複雑さ:長期プロジェクトの収益認識
金融業会計
・特徴:金利計算、貸倒引当金
・規制:金融商品取引法などの厳格な基準
簿記を学ぶメリット
簿記は「経理担当者が使うもの」と思われがちですが、実際には幅広い人に役立つスキルです。ここでは、代表的なメリットを具体例を交えて紹介します。
1. 就職・転職に有利
簿記の知識を持っていることは、採用担当者から高く評価されやすいポイントです。
・経理・会計職では、必須スキルとしてほぼ確実にチェックされます。特に日商簿記2級以上を持っていれば即戦力として期待されます。
・営業職や管理職にとっても有利です。売上やコストの数字を理解できれば、経営陣や顧客との会話がスムーズになり、説得力が増します。
・転職市場でも「簿記資格あり」は求人票で優遇条件になることが多く、キャリアチェンジの際に大きな武器になります。
例:営業職から経理職への転職に成功したケース、または管理職昇進時に数字理解が評価されたケースなどが挙げられます。
2. お金のリテラシー向上
簿記を学ぶと、日常生活や投資判断に直結する「お金の見える化力」が身につきます。
・家計管理では、単なる収支の記録ではなく「資産・負債・収入・支出」をバランスよく把握できるようになります。住宅ローンや教育費といった将来支出の計画にも強くなります。
・投資判断にも役立ちます。企業の財務諸表を読めるようになれば、株式投資や不動産投資のリスクを見極める力が養われます。
・副業・フリーランスでも必須です。青色申告や確定申告で必要な帳簿付けがスムーズにでき、節税にもつながります。
「数字が苦手で家計簿が続かない…」という人でも、簿記を学ぶと“お金の流れ”を体系的に理解できるため、自然と継続できるようになります。
3. キャリアアップにつながる
簿記は、さらなるキャリアのステップアップにつながる基礎資格です。
・日商簿記2級取得後は、税理士試験や公認会計士試験など、より高度な会計・税務資格に挑戦する人が多いです。
・中小企業診断士やMBAを目指す場合でも、簿記知識は前提となる会計リテラシーとして必須です。
・社内昇進でも有利です。数字に強い社員は管理職候補として抜擢されやすく、経営企画や財務部門への異動にもつながります。
例えば「営業職 → 管理職 → 経営幹部」とキャリアを歩む人の多くは、早い段階で簿記を学び、財務理解を武器にしています。
簿記検定の種類とレベル
日本で最も認知度が高いのが日商簿記検定です。
級 | 難易度 | 主な内容 | 学習時間の目安 |
---|---|---|---|
3級 | 初心者向け | 基本的な仕訳と財務諸表 | 100~150時間 |
2級 | 中級者向け | 商業簿記+工業簿記 | 200~300時間 |
1級 | 上級者向け | 会計学・工業簿記・原価計算 | 500時間以上 |
簿記論/財務諸表論 | 税理士試験科目 | 会計・税務の実務レベル | 1,000時間超 |
まずは3級から始め、就職・転職で評価される2級を目指す人が多いです。
簿記を活かすキャリアパスと年収
簿記資格別年収相場は以下の通り
資格レベル | 平均年収 | 年収レンジ | 主な就職先 |
---|---|---|---|
簿記3級 | 350-400万円 | 300-500万円 | 経理事務、一般企業 |
簿記2級 | 400-500万円 | 350-600万円 | 経理主任、中小企業経理 |
簿記1級 | 500-700万円 | 400-900万円 | 経理管理職、会計事務所 |
以下、詳細を解説します。
簿記3級:ビジネス基礎を固めるスタートライン
・平均年収:350〜400万円
・年収レンジ:300〜500万円
・主な就職先:経理事務、一般企業のバックオフィス
簿記3級は「会計の入門資格」として位置づけられます。
日常的な仕訳や帳簿付け、簡単な財務諸表の理解ができるレベルのため、一般事務や経理アシスタント職への就職・転職に有利です。
特に「数字が苦手で不安…」という人でも、3級から学べば実務で必要な最低限の知識を無理なく習得できます。
簿記2級:実務で即戦力となるレベル
・平均年収:400〜500万円
・年収レンジ:350〜600万円
・主な就職先:経理主任、中小企業の経理担当
簿記2級を取得すると、財務諸表を深く理解し、企業の経理実務を一通りこなせる力がつきます。
そのため、経理職の採用条件として「日商簿記2級以上」と指定する企業は多く、就職市場での評価は非常に高いです。
中小企業では「一人経理」として経理全般を任されることもあり、責任の分だけ年収レンジの上限も伸びやすい資格です。
簿記1級:経理の管理職候補
・平均年収:500〜700万円
・年収レンジ:400〜900万円
・主な就職先:経理管理職、会計事務所、上場企業の財務部門
簿記1級は難易度が高く、合格率は10%前後。
しかしその分、経理部長や経営企画、会計事務所での実務といった「企業の数字を動かす」役割に就ける可能性が広がります。
特に上場企業や大手企業では、簿記1級レベルの知識を持つ人材は少なく、評価が高まりやすいです。
上位資格へのステップアップ
簿記1級を取得すると、さらに難関資格への道が拓けます。
税理士
・平均年収:580万円(転職時)
・主な業務:税務申告、税務相談、税務代理
・特徴:独立開業が可能で、年収1,000万円以上も現実的
中小企業の顧問税理士として安定収入を得る人もいれば、M&Aや国際税務などに強みを持ち高収益を上げる人もいます。
公認会計士
・平均年収:747万円(2022年調査)
・主な業務:監査、会計コンサルティング、M&A支援
・特徴:Big4監査法人では年収1,000万円以上も可能
特に若手でも評価されやすく、20代後半で年収800万円超を目指せる点が大きな魅力です。
キャリアパスの例
簿記3級 | → | 簿記2級 | → | 簿記1級 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
↓ | ↓ | ↓ | ||||
一般事務 | → | 経理担当 | → | 経理主任 | → | 経理部長 |
↓ | ||||||
税理士試験 | → | 税理士 | ||||
↓ | ||||||
公認会計士試験 | → | 公認会計士 |
簿記の学習方法
簿記を学ぶ方法は大きく3つに分かれます。
1.独学
参考書や過去問を使い、コストを抑えて学習可能。
→ 3級なら独学でも十分合格可能。
2.通信講座
動画やテキストが充実しており、スキマ時間で効率的に学べる。
→ 忙しい社会人におすすめ。
3.専門学校・スクール
講師から直接学べ、短期間で合格を目指せる。
→ 2級以上を狙う人や資格を早く取りたい人に最適。
簿記と会計・経理の違い
・簿記:取引をルールに従って記録すること
・会計:簿記で得た情報をもとに分析・報告すること
・経理:実際に日常業務で簿記を行い、会計処理を担当する人や部門
つまり、簿記は会計や経理の“基礎技術”です。
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まとめ
簿記とは、お金の流れを正しく記録し、経営や生活に役立てる技術です。
資格としても人気が高く、就職・転職、副業や起業にも役立ちます。
「簿記を学ぼうかな」と思った時が始めどきです。まずは日商簿記3級からチャレンジし、実務やキャリアに活かしましょう。
この記事がお役に立てば幸いです。

税理士 平川 文菜(ねこころ)