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103万円の「壁」引き上げの自民新案!年収200万円以下は「壁」が160万円に!【2025年2月最新版】

公開日:2025/02/27

最終更新日:2025/02/27

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パート・アルバイト層の税務相談で頻出する「103万円の壁」。この所得税の基準が、2025年から123万円へ引き上げられ、その先には160万円への改正案も浮上しています。

自民党案では、年収200万円以下の世帯に対して基礎控除を上乗せし、課税開始ラインを160万円に引き上げる構想。一方で、公明党・国民民主党は「所得制限の撤廃」を求め、1000万円近くまで控除対象を広げるべきだと主張。

昨年末の「年収178万円を目指す」という3党合意からの方針転換に、国民民主党は強く反発し、一時協議を離脱。交渉の行方は不透明な状況です。

税理士事務所の職員の方にとっては、顧問先の給与体系や税負担への影響を踏まえたアドバイスが求められるため、最新の議論を押さえつつ、実務への影響を整理しておくべき局面です。

この記事では2月18日時点での議論動向について解説いたします。

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年収103万円の壁とは?

「103万円の壁」とは、日本の所得税制度において、配偶者控除が適用されるかどうかの基準となる年収のラインを指します。

具体的な内容

1.103万円以下の場合

 ◦所得税がかからない
  ・給与所得者の場合、給与所得控除(55万円)と基礎控除(48万円)を差し引くと、課税所得が0円になるため所得税がかかりません。
 ◦配偶者控除が適用される
  ・配偶者(夫または妻)が103万円以下の収入であれば、配偶者の扶養に入ることができ、夫(または妻)の所得税計算において最大38万円の配偶者控除を受けられます。

2.103万円を超える場合

 ◦所得税が発生
  ・103万円を超えると、その超えた部分に対して所得税(5%~)が発生します。
 ◦配偶者控除が受けられなくなる
  ・103万円を超えると、配偶者控除の対象外となり、配偶者特別控除の対象になりますが、収入が増えるにつれて控除額は減少します。

その他の関連する壁

106万円の壁
 ◦社会保険の加入対象になるかどうかを決める基準。
 ◦勤務先が従業員101人以上の企業の場合、年収106万円以上で社会保険(厚生年金・健康保険)に加入が義務付けられる。
 ◦その結果、手取り収入が減る可能性がある。

130万円の壁
 ◦社会保険の扶養から外れるかどうかの基準。
 ◦年収130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険料(健康保険・年金)を支払う必要がある。

年収103万円の壁引き上げをめぐる今までの議論

税制大綱での改正ポイント

1. 改正の概要

自民・公明両党の税制改正大綱により、2025年から所得税が発生する年収を103万円から123万円へ引き上げ
物価上昇(食料・光熱費など)を考慮し、1995年以来の見直し。

2. 具体的な変更内容

(1) 基礎控除
所得税の基礎控除を現在の48万円 → 58万円へ増額
(2) 給与所得控除
最低保障額を55万円 → 65万円へ引き上げ
年収190万円までは65万円の控除が適用され、それ以上は従来の計算方式を維持。
(3) 地方税(住民税)の対応
・住民税の 給与所得控除55万円 → 65万円へ引き上げ
・ただし、住民税の基礎控除は据え置き(地方財政への影響を考慮)。

3. 年収ごとの減税額(民間シンクタンク試算)

年収 減税額
150万円 2万円
200万円 5000円
300万円 5000円
500万円 1万円
600万円 1万円
800万円 2万円
1000万円 2万円
1200万円 2万3000円
1500万円 3万4000円


4. 特定扶養控除の見直し

大学生などを扶養する世帯の税負担軽減策
「特定親族特別控除」を新設し、子どもの年収要件を103万円 → 150万円へ引き上げ
・123万円を超えると控除額が徐々に減少する仕組みを導入。

子の年収 控除額
150万円以下 63万円
160万円 51万円
170万円 31万円
188万円超 0円


5. 配偶者特別控除の見直し

配偶者(パート勤務など)の年収要件150万円 → 160万円へ引き上げ

引き上げ案(2/18)のポイント

自民党は2月18日、所得税がかかり始める「年収103万円の壁」のさらなる引き上げ案を公明党、国民民主党に提示しました。

1. 改正案の概要

自民党が2月18日、公明党・国民民主党に新たな引き上げ案を提示
年収200万円以下の世帯に対し、課税水準を123万円 → 160万円へ引き上げ
所得に応じた2段階の控除措置を導入し、低所得者層の負担軽減を図る。

2. 具体的な変更点

(1) 所得税の課税開始ライン
現行の103万円 → 123万円(2025年施行予定)をさらに160万円へ引き上げ
年収200万円以下の世帯を対象に段階的な控除を適用
(2) 2段階の控除措置
低所得層の負担をより軽減するため、所得に応じた控除を導入
・具体的な計算方法や減税額は今後の協議で調整。

3. 公明党・国民民主党の反応

公明党・国民民主党は提案に対して疑問を呈し、協議を継続中
焦点は「160万円の引き上げが妥当か」「2段階控除の具体的な仕組み」

4. 今後の見通し

・3党の協議が続いており、合意に至れば2026年以降の施行も視野に
「178万円を目指す」とした先の合意との整合性も課題
公明党・国民民主党の追加要求によって変更の可能性あり

年収103万円の壁への自民党の新たな提案の詳細

自民党の提案では、年収200万円以下の人々に対して、基礎控除(58万円)に加えて特例として37万円を上乗せする措置を導入します。この結果、給与所得控除(65万円)と合わせると、所得税がかかり始める年収の基準は160万円となります。さらに、 年収200万~500万円以下の層には基礎控除を10万円上乗せし、課税水準を136万円以上に設定しました。一方で、年収500万円を超える場合は、政府・与党が昨年末にまとめた税制改正大綱の控除額を据え置く方針です。

対象年収 控除内容 課税開始基準特記事項
~200万円 - 基礎控除:58万円
- 特例控除:+37万円
- 給与所得控除:65万円
160万円
課税開始基準を160万円へ引き上げ
200万~500万円 - 基礎控除を10万円上乗せ(68万円)
- 給与所得控除:従来通り
136万円以上
2年間の時限措置(経済対策)
500万円超 - 基礎控除:58万円(据え置き)
- 給与所得控除:従来通り
従来通り
既存の税制改正大綱を維持


この新たな控除案の導入背景には、物価上昇の影響があり、特に生活保護費の水準を考慮した調整がなされました。また、年収200万~500万円の層への特例措置は、経済対策の一環として2年間の時限措置とすることが明らかにされています。

項目 内容
改正の背景 - 物価上昇を考慮し、特に生活保護水準を踏まえた調整。
- 低所得者層への負担軽減を目的とする。
今後の課題 - 公明党・国民民主党が協議を継続中。
- さらなる控除拡大の可能性もあり、最終決定を調整中。
特例措置の期限 - 200万~500万円の基礎控除上乗せ(+10万円)は2年間の時限措置。


各党の主張と対立

しかし、 公明党と国民民主党は、この新たな所得制限に強く反発しています。公明党の赤羽一嘉税調会長は「年収1000万円近くまで広く控除を適用すべきだ」と指摘し、所得制限の撤廃を求めました。国民民主の古川元久税調会長も「基礎控除はすべての国民に適用されるべきであり、所得制限を設けるのは適切ではない」と批判し、国民生活に寄り添った政策を求めています。

また、今回の提案は、昨年12月に3党幹事長が「年収178万円を目指して引き上げる」と合意していた内容と大きく異なるものとなっています。これに対し、国民民主党は「自公の提案では不十分だ」として一時協議を離脱しました。自民党側は今年に入って協議の再開を模索しましたが、並行して日本維新の会との協議を進めたことが影響し、国民民主党との交渉は停滞していました。

公明党の動きと自民党の反発

2025年の参院選を控える公明党は、有権者の関心が高い「年収の壁」の問題において存在感を示そうと動きを活発化させています。2月7日には、公明党が食料品の値上がりを考慮した引き上げ案を複数提示し、14日には国民民主党の榛葉賀津也幹事長と会談し、3党協議の合意に向けた連携を確認しました。これにより、自民党への働きかけを強めています。

しかし、自民党内ではこうした公明党の動きに対する不信感が高まっています。自民党関係者の中には「勝手に複数の案を示したのは公明党だ。最終的に与党が案を提示したときに、公明党の意見が反映されたとアピールしたいだけではないか」と批判する声も上がっています。

各政党の動きと立場(表形式)

政党 主張・動き 協議の状況 背景・目的
自民党 - 年収200万円以下の控除を拡大し、課税開始基準を160万円へ引き上げ
- 年収200万~500万円の控除強化(時限措置)
- 年収500万円超の控除額は据え置き
- 公明党・国民民主党との協議継続中
- 日本維新の会とも並行して協議
- 経済対策として低所得層の負担軽減を狙う
- 公明・国民民主党の要求をある程度受け入れつつ、所得制限を維持
公明党 - 年収1000万円近くまで控除を適用すべきと主張
- 所得制限の撤廃を要求
- 2月7日に食料品値上がりを考慮した引き上げ案を提示
- 2月14日に国民民主党と会談し、3党協議の合意に向けて連携強化
- 自民党に対して圧力を強める姿勢
- 協議継続中だが、自民党との溝が拡大
- 2025年の参院選を見据え、有権者へのアピールを強化
- 低所得者支援を前面に出し、国民の支持を得る狙い
国民民主党 - 基礎控除はすべての国民に適用されるべきと主張
- 所得制限の導入に強く反発
- 「自公の提案では不十分」として一時協議を離脱
- 公明党と連携し、3党協議の合意形成を模索
- 一時協議を離脱したが、再交渉の可能性あり
- 維新との協議進展により、自公との交渉が停滞
- 国民生活に寄り添った政策を重視し、所得制限の撤廃を要求
- 独自の立場を確立し、有権者の支持を広げたい考え
日本維新の会 - 自民党と並行して協議を進める
- 公明・国民民主党の動きを見つつ、独自の対応を検討
- 自民党との協議が進展
- 国民民主党との交渉停滞の要因に


政策の複雑化と国民の理解

一方で、 自民党案の複雑さに対する懸念も指摘されています。ある政府関係者は「もっと分かりやすく説明できるようにする必要がある。初めて聞いたときは理解できなかった。国民が誤解なく納得できるようにしなければならない」と語りました。

また、財務省幹部からは「税制は本来『公平、中立、簡素』の3原則に基づくべきだが、今回の議論はその原則が崩れていくように見える」との懸念が示されています。所得制限を設けることで、税制の公平性が損なわれる可能性があり、政策の根幹に関わる問題として今後も議論が続く見通しです。

今後の展望

3党の協議は2月19日以降も続けられ、妥協点を探ることになります。しかし、各党の立場には大きな隔たりがあり、特に所得制限の有無が最大の争点となっています。年収の壁の引き上げが最終的にどの水準で決着するのか、今後の政治的駆け引きが注目されます。

また、今回の議論は単なる所得税制の問題にとどまらず、今後の税制改革全般に影響を与える可能性があります。物価上昇や最低賃金の引き上げが続く中、税制の見直しは避けられない課題となっています。国民の理解を得るためには、分かりやすく透明性のある政策決定が求められるでしょう。

今後の動向を注視しながら、国民にとって最も負担の少ない税制のあり方を考えることが重要です。

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まとめ

本記事では103万の壁についての最新の議論動向をまとめました。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

執筆 ・ 監修

平川 文菜(ねこころ)

熊本出身。2018年京都大学卒業。在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。