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相続時の財産評価方法を徹底解説!相続税対策のポイント

公開日:2026/03/15

最終更新日:2026/03/15

相続時の財産評価方法を徹底解説

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相続税の実務において、最も税理士の腕が試され、かつ税務当局との見解の相違が生じやすいポイントはどこか。それは単純な税額計算ではなく、その前段階にある財産評価にあります。相続税額を算出するプロセスにおいて、課税対象となる財産の価値をいくらと見積もるかという評価の巧拙は、納税額を左右する最大の変数です。特に土地などの不動産は、画一的な計算だけでは測れない個別性を有しており、評価一つで数千万円単位の差が生じることも珍しくありません。

本記事では、会計事務所の新任職員や税理士試験合格を目指す受験生に向けて、相続税の基礎から財産評価の具体的な手法、および実務上の留意点までを徹底的に解説します。単なる計算式の暗記に留まらず、なぜその評価が必要なのか、実務で陥りやすい落とし穴はどこかという視点を養うことで、プロとしての確かな一歩を踏み出すための指針を提示します。

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1. 相続税の基礎知識

相続税とは何か?:富の再分配と機会の平等

相続税とは、亡くなった人(被相続人)から財産を受け継いだ人(相続人など)に対して課される税金です。その目的は、主に富の再配分と機会の平等にあります。一代で築き上げた巨額の資産が次世代へ無税で引き継がれ続けると、社会的な格差が固定化される恐れがあるため、相続時にその一部を国が徴収し、社会へ還元するという思想が背景にあります。

実務上、相続税は遺産課税方式と遺産取得課税方式を組み合わせた「法定相続分課税方式」という独特の計算体系を採っています。これは、実際に誰がどの財産をもらったかに関わらず、一度「法定相続人が法定相続分通りに分割した」と仮定して総額を計算し、それを実際の取得割合で按分する仕組みです。この構造を正しく理解することは、計算ミスを防ぐための大前提となります。

基礎控除額の計算式: 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

この基礎控除額を超える遺産がある場合に、相続税の申告が必要となります。2015年の税制改正により基礎控除が大幅に引き下げられて以降、都市部に不動産を持つ世帯の多くが課税対象となっており、財産評価の重要性はかつてないほど高まっています。

誰が相続税を支払うのか?:納税義務者の区分と範囲

相続税の納税義務者は、その人が居住無制限納税義務者か非居住無制限納税義務者、あるいは制限納税義務者かによって、課税される財産の範囲が異なります。

1.居住無制限納税義務者:日本国内に住所がある人。国内・国外を問わず、すべての取得財産に課税されます。

2.非居住無制限納税義務者:日本国内に住所はないが、日本国籍を有し、かつ一定期間内に国内住所があった人など。こちらも全世界財産が対象です。

3.制限納税義務者:日本国内に住所がなく、かつ国籍要件等も満たさない人。日本国内にある財産のみが課税対象となります。

ここで実務家が注意すべきは、相続人以外でも納税義務が生じるケースです。遺言によって財産を受け取った受遺者や、生命保険金の受取人となった人は、たとえ法定相続人でなくても相続税の納税義務者となります。また、相続開始前3年(改正により2024年以降、順次7年へ延長)以内に贈与を受けた財産も、相続税の計算に取り込まれる生前贈与加算の論点も、実務上極めて重要です。この加算期間の延長は、相続対策のあり方を根本から変える大きな変更点であり、正確な履歴把握が求められます。

2. 財産評価の重要性

なぜ財産評価が必要なのか?:公平性の担保

相続税法第22条には、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」と定められています。しかし、この時価という言葉が曲者です。

上場株式のように毎日市場価格がつくものは明白ですが、不動産や非上場株式には、唯一絶対の時価が存在しません。もし各納税者が勝手な基準で評価をすれば、同じ価値の財産を持っていても税額に差が出てしまい、租税公平主義が崩れてしまいます。 そのため、国税庁は「財産評価基本通達」を定め、全国一律の評価基準を設けています。実務家の仕事は、この通達に基づき、客観的かつ論理的に時価を導き出すことにあります。

財産評価が相続税に与える影響:1パーセントの誤差が命取りになる

財産評価は、相続税の課税価格を決定するプロセスです。以下の式を見れば、その影響力の大きさがわかるでしょう。

(各人の課税価格の合計額 - 基礎控除額)× 税率 = 相続税の総額

ここで重要なのは、日本の相続税が累進課税であるという点です。財産評価額が上がれば、適用される税率も上がる(10パーセントから最高55パーセントまで)ため、評価額の僅かな変動が納税額に指数関数的な影響を及ぼします。

例えば、1億円と評価した土地に、実は騒音問題や土壌汚染、高圧線下の利用制限といったマイナス要因(減価要素)があったとします。もしこれを見落として申告した場合、納税者は本来払う必要のない多額の税金を支払うことになります。逆に、意図的に低く評価しすぎれば、税務調査によって過少申告加算税や延滞税という重いペナルティを課されるリスクが生じます。

財産評価とは、単なる計算ではなく、財産の物理的・法的・経済的状況を分析し、法的に正当な範囲で最小の評価額を見出すクリエイティブな作業であると言えるのです。

3. 財産評価の具体的な方法:土地評価の深掘り

相続税の実務において、最も高い比重を占め、かつ評価が複雑なのが宅地(土地)です。土地の評価方法は、その土地が所在する地域によって路線価方式と倍率方式のいずれかに分かれます。

路線価方式の詳細と計算プロセス

路線価方式は、主に市街地化された地域で採用される評価方法です。道路(路線)に面する宅地1平方メートル当たりの価額を路線価として国税庁が公表しており、これに基づき算出します。

基本計算式: 評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 地積(平方メートル)

しかし、実際の現場ではこの式だけで終わることはまずありません。路線価図には、数字の後に「A」から「G」までのアルファベットが記載されています。これは借地権割合を示すもので、「C」であれば70パーセントが借地権の価値であることを意味します。

実務上の難所:不整形地と想定成形地

プロの評価において最も神経を使うのが不整形地の評価です。歪な形の土地は、正方形や長方形の土地(成形地)に比べて利用効率が落ちるため、評価を下げることができます。 この際、その土地を囲む最小の長方形(想定成形地)を設定し、その面積と実際の面積の差(かげ地)を算出します。このかげ地の割合(かげ地割合)に応じて、最大で40パーセント程度の評価減が可能となります。受験生はこの計算プロセスを正確に追う必要があり、実務家は現場で測量図の信憑性を確認する必要があります。

二方路線と側方路線の影響

土地が二つの道路に面している場合、利便性が高まるため評価額は加算されます。

1.側方路線影響加算:角地などの場合

2.二方路線影響加算:正面と裏面に道路がある場合

加算の計算例: 正面路線価 +(側方路線価 × 側方路線影響加算率)= 1平方メートル当たりの価額

ここでの正面路線価の判定(どちらの道路を正面とするか)を誤ると、その後の計算がすべて狂うため、奥行価格補正後の単価で比較するという実務ルールを徹底しなければなりません。

倍率方式:一筋縄ではいかない地方の土地評価

路線価が設定されていない地域では、倍率方式によって評価を行います。

基本計算式: 評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率

固定資産税評価額は市町村が決定するものですが、注意が必要なのは地目です。登記上の地目が「原野」や「雑種地」であっても、現況が「宅地」として利用可能であれば、宅地比準での評価が求められます。この場合、近隣の宅地の固定資産税評価額を参考に、造成費を控除して計算するなど、極めて高度な判断が求められます。

4. 建物および権利関係の評価

建物の評価:自用か賃貸か

建物は、固定資産税評価額に1.0を乗じて評価します。つまり、固定資産税評価額そのものが相続税評価額となります。 ただし、その建物を人に貸している場合(貸家)は、以下の計算式で減額されます。

評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 - 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は全国一律で30パーセントです。アパート経営が相続対策と言われるのは、この評価減と、後述する小規模宅地等の特例がダブルで適用できる点にあります。

借地権と底地の複雑な関係

土地を借りて家を建てている場合、その借りている権利(借地権)も相続財産です。

 借地権評価額 = 自用地価額 × 借地権割合

逆に、土地を貸している側(底地)の評価は以下のようになります。

 貸宅地評価額 = 自用地価額 ×(1 - 借地権割合)

借地権割合が70パーセント(C)の地域であれば、土地所有者の手元にある底地の価値は30パーセントまで下がることになります。このように、権利関係の整理は評価額を大きく変動させる要因となります。

5. 財産評価における減額特例

財産評価を語る上で、避けて通れないのが「小規模宅地等の特例」です。これは、亡くなった人の自宅や事業用地を相続人が引き継ぐ際、その評価額を大幅に減額できる制度です。

1.特定居住用宅地等:330平方メートルまで80パーセント減額 自宅の土地が対象。配偶者が相続する場合や、同居親族が相続する場合に適用。

2.特定事業用宅地等:400平方メートルまで80パーセント減額 被相続人が営んでいた事業の用を供していた土地。

3.貸付事業用宅地等:200平方メートルまで50パーセント減額 アパートや駐車場の土地。

実務上の注意点として、いわゆる「家なき子」特例(持ち家のない親族が相続する場合)の要件が厳格化されている点が挙げられます。単に住民票を移しただけのような不適切な適用は、税務調査で真っ先に否認されるポイントです。

6. 非上場株式(同族株式)の評価

会計事務所の中堅職員にとって避けて通れないのが、経営者の持っている自社株の評価です。これには大きく二つの方法があります。

1.類似業種比準方式: 上場している同業種の株価や配当、利益、純資産を参考に計算する方法。

2.純資産価額方式: 会社の資産から負債を差し引いた「解散価値」をベースに計算する方法。

会社の規模(大会社・中会社・小会社)によって、これらを併用します。特に純資産価額方式では、土地や建物を相続税評価額で再評価し、含み益に対する法人税相当額(37パーセント)を控除できるなど、特有のルールが存在します。この自社株評価は、数億円単位の評価額になることが多く、株価対策(生前の評価引き下げ)の提案は税理士にとって最も付加価値の高い業務の一つです。

7. 専門家のサポートを受けるメリット

相続税の申告において、なぜ税理士が必要とされるのか。それは、単に計算代行をするためではありません。

税理士に相談する理由:リスク回避と最適化

1.税務調査リスクの低減: 国税当局は土地の評価、特に地積規模の大きな宅地の判定や名義預金の有無を厳しくチェックします。税理士が作成した「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」は、法的根拠に基づいた論理的な説明資料となり、不当な指摘を防ぐ盾となります。

2.二次相続を見据えた遺産分割: 今回の相続(一次相続)だけでなく、次に配偶者が亡くなった時(二次相続)の税負担までシミュレーションし、トータルで最も税負担が少なくなるような評価と分割を提案できるのはプロならではの視点です。

正確な財産評価のために必要な準備

納税者側でも、正確な評価のために以下の準備を整えておくことが推奨されます。

・公図・地積測量図:土地の正確な形状や境界を確認するために不可欠です。
・登記事項証明書:権利関係や利用制限(抵当権等)の有無を確認します。
・過去3年分以上の法人の決算書:自社株評価が必要な場合に必須となります。
・葬式費用の領収書:これらは債務控除として評価額から差し引くことが可能です。

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8. まとめ:財産評価は相続の質を決める

相続税における財産評価は、法律と数字、そして現場の事実が交差する、極めて専門性の高い領域です。 適切な方法を選択し、現場の状況(物理的瑕疵や法的規制)を正確に評価額へ反映させ、そして特例を戦略的に活用する。この一連のプロセスこそが、適正な納税を実現し、ひいては円満な相続を実現するための礎となります。

会計事務所の職員や受験生の皆さんは、まずは財産評価基本通達というルールの背後にある「なぜこの評価になるのか」という理屈を大切にしてください。土地の不整形をどう捉えるか、借地権をどう解釈するか。その一つひとつの判断の積み重ねが、将来、納税者の大切な財産を守り、信頼されるプロフェッショナルへの道へと繋がるはずです。

財産評価は、相続税申告の「終わりの始まり」ではなく、次世代へ資産を繋ぐための「最適化のプロセス」です。本記事で解説した基礎と応用を、ぜひ日々の実務や学習の糧として役立ててください。

執筆 ・ 監修

安井貴生

税理士

平成27年度税理士試験に官報合格(簿記論・財務諸表論・法人税法・相続税法・消費税法)を果たし、その後10年間に渡り税理士として活躍。 現在は藤和税理士法人所属の税理士として活動しており、法人税・所得税・相続税 等、幅広い業務を担当中。最近では、相続や事業承継案件を多く扱っている。