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公開日:2026/03/21
最終更新日:2026/03/21
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令和5年度の税制改正により創設され、2025年分の所得から適用が開始された新たな課税ルールをご存知でしょうか。高額な所得を得た方に対して最低限の税負担を求めるこの制度について、ミニマムタックスとは具体的にどのような仕組みなのか、疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
さらに、2025年12月に発表された2026年度(令和8年度)税制改正大綱において、この制度が2027年から大幅に強化されることが決定しました。対象者が大きく広がるため、これまで自分には関係ないと思っていた方にも影響が及ぶ可能性があります。
本記事では、この制度が導入された背景や、2027年からの税制改正による変更点、対象となる方の目安、そして具体的な追加納税額の計算方法までをわかりやすく解説します。将来的に自社株の売却や不動産の譲渡などを検討している経営者や資産家の方は、ぜひ参考にしてください。
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ミニマムタックスとはどのような制度か
まずは制度の全体像から説明します。ミニマムタックスとは、極めて高い水準の所得を持つ、いわゆる超富裕層と呼ばれる方々を対象とした所得税の追加課税措置です。
正式には、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化に係る措置と呼ばれています。年間の所得が一定額を超える方を計算の対象とし、その所得に対して一定の税率を掛けた金額が、通常のルールで計算した所得税額を上回る場合に、その差額を追加で納付するという仕組みになっています。
簡単に言えば、巨額の所得がある方に対しては、最低でも決められた税率分の税金を負担してもらうというルールです。なお、この制度は国税である所得税にのみ適用され、地方税である住民税は対象外となっています。
ミニマムタックスとは?導入された背景にある課題
このような新しい課税ルールが作られた背景には、日本の税制が抱えていた特定の課題があります。なぜ富裕層に対する課税が強化されることになったのか、その理由を見ていきましょう。
1億円の壁という格差問題
最も大きな理由は、1億円の壁と呼ばれる税負担の逆転現象を解消することです。
日本の所得税は、給与所得や事業所得などに対して累進課税という方式を採用しており、所得が高くなるにつれて税率も上がり、最高で45%に達します。一方で、株式の売却益や配当などの金融所得については分離課税が適用され、どれだけ利益が出ても税率は一律で15%(所得税のみ)にとどまります。
そのため、所得が1億円を超えるような富裕層になると、所得全体に占める金融所得の割合が大きくなり、結果として全体の所得に対する実効的な税率が下がっていくという現象が起きていました。給与で稼いでいる層よりも、株などで巨額の利益を得ている層の方が実質的な税負担割合が軽いという不公平感を是正するために、この制度が設けられました。
世界的な税制の潮流
もうひとつの背景として、国際的な税制の動向と足並みをそろえるという側面があります。
欧米などの先進諸国でも、富の偏在や格差の拡大が深刻な社会問題となっており、富裕層に対する適切な課税が議論されてきました。日本においても、税負担の公平性を確保し、再分配の機能を回復させるために、諸外国の動きも参考にしながら今回の制度設計が行われました。
2026年度税制改正による変更点と2027年からの影響
ミニマムタックスは2025年からスタートしたばかりの制度ですが、2026年度(令和8年度)の税制改正において、早くも大幅な見直しが行われました。この見直しは、2027年(令和9年)分の所得から適用されます。
この改正の最大のポイントは、対象となる人を増やし、税負担を引き上げることにあります。具体的には以下の2点が変更されます。
特別控除額が3億3000万円から1億6500万円へ半減
ミニマムタックスの計算をする際、所得全体から差し引くことができる特別控除額というものがあります。2025年と2026年の所得については、この控除額が3億3000万円に設定されています。
しかし、2027年分の所得からは、この控除額が1億6500万円へと半分に引き下げられます。計算の土台となる金額が大きく下がるため、これまで対象外だった所得水準の方も、新たにミニマムタックスの対象に含まれることになります。
適用される税率が22.5%から30%へ引き上げ
もうひとつの変更点は税率の引き上げです。ミニマムタックスの基準となる税額を計算する際、2026年までは22.5%の税率を掛け合わせていました。これが2027年からは30%へと大幅に引き上げられます。
控除額の半減と税率の引き上げが同時に行われるため、2027年以降に巨額の所得を得た場合の追加納税額は、これまでと比較して一気に跳ね上がることになります。
ミニマムタックスとはどのような人が対象になるのか
具体的にどのような人がこの制度の影響を受けるのか、適用時期ごとに目安となる所得水準を整理します。
対象となる所得の目安(2025年・2026年)
現行制度では、年間の基準所得金額が3億3000万円を超える方が計算の対象です。
収入が株式の譲渡所得のみである場合、追加で税金を納めることになる分岐点は約10億円となります。給与所得などと混在している一般的なケースでは、年間の合計所得が約30億円以上になる方が実質的な対象となると見込まれており、ごく一部の超富裕層に限定された制度と言えます。
対象となる所得の目安(2027年以降)
2027年からは条件が厳しくなり、年間の基準所得金額が1億6500万円を超える方が計算の対象となります。
収入が株式の譲渡所得のみである場合、およそ3億3000万円を超えたあたりから追加納税が発生し始めます。対象となるハードルが劇的に下がるため、数億円規模の所得が発生する予定のある方は、広く影響を受ける可能性が出てきます。
影響を受けやすい具体的なケース
一般的な生活を送る中でこの制度の対象になることは稀ですが、一時的な要因で多額の所得が発生する場合には注意が必要です。
典型的な例としては、会社を経営しているオーナーがM&Aなどで自社株を売却して利益を得た場合や、会社が新規上場して株式を市場で売却した場合などが挙げられます。また、代々受け継いできた都心の広大な不動産を売却した場合にも、想定外の追加課税を受ける可能性があります。
特にM&Aや大規模な不動産売却を控えている方は、実行する年が2026年か2027年かによって手元に残る金額が数千万円から億円単位で変わる可能性があるため、スケジュールの慎重な検討が求められます。
ミニマムタックスとは?計算の仕組みと2027年以降の試算
ここからは、実際に追加納税額がどのように決まるのか、計算手順と具体的な金額のイメージを解説します。
追加納税額の計算手順
計算は大きく分けて3つのステップで行われます。
最初は、通常のルールに従って所得税額を計算します。これを基準所得税額と呼びます。
次に、ミニマムタックスの基準となる税額を計算します。年間の基準所得金額から特別控除額(2026年までは3.3億円、2027年からは1.65億円)を差し引き、残った金額に決められた税率(2026年までは22.5%、2027年からは30%)を掛け合わせます。
最後に、この二つの金額を比較します。後者で計算したミニマムタックスの金額が、通常の基準所得税額よりも大きい場合、その差額分を追加で納付することになります。
2027年からの課税強化による追加納税額の比較例
株式の売却益など、分離課税の対象となる金融所得のみを得た場合を想定し、2026年までと2027年以降で追加納税額がどう変わるのかを表にまとめました。通常の所得税率は約15.315%として計算した目安です。
| 所得金額 | 通常の所得税額の目安 | 2026年までの追加納税額 | 2027年以降の追加納税額 |
|---|---|---|---|
| 5億円 | 約7650万円 | 追加なし | 約2400万円 |
| 10億円 | 約1億5315万円 | 追加なし | 約9735万円 |
| 20億円 | 約3億630万円 | 約6945万円 | 約2億4420万円 |
表を見るとわかるように、所得が5億円や10億円の場合、2026年までであればミニマムタックスによる追加納税は発生しません。しかし、2027年以降になると、数千万円単位の多額の追加納税が発生する計算になります。所得が20億円規模になると、追加される税金は2億円以上にのぼり、改正による影響の大きさが伺えます。
ミニマムタックスに関するよくある質問
制度への理解を深めるために、よく寄せられる疑問とその回答をまとめました。
ミニマムタックスは住民税にも影響しますか?
ミニマムタックスは国に納める所得税のみを対象とした制度です。お住まいの自治体に納める住民税については、現時点ではこの制度の適用はなく、通常の計算式に基づいて課税されます。
2027年からの税制改正で何が一番変わりますか?
対象となる所得の基準が大きく下がり、税率が上がる点です。2026年までは主に所得数十億円の超富裕層が対象でしたが、2027年からは所得が数億円規模の方(M&Aでの会社売却や不動産売却など)も追加納税の対象になりやすくなります。
適用を回避するための対策はありますか?
保有している資産の売却時期を複数年に分散させて単年での所得を抑える方法や、2027年の増税前に売却を完了させるスケジュール調整などが考えられます。また、資産管理会社を活用する方法もありますが、いずれも高度な専門知識が必要となるため、必ず税理士などの専門家に相談して進めることが大切です。
あなたの「適正年収」を調べてみませんか?
簡単な質問に答えるだけで、一般的な会計事務所ならいくら提示されるのかを即座に算出。「今の適正額」はもちろん、「資格を取得したら年収はどう変わるのか?」など、あなたの現在地と未来の可能性を診断します。
ミニマムタックスとは?のまとめ
今回は、2025年分の所得から適用が始まり、2027年からさらに強化されるミニマムタックスの仕組みについて解説しました。
所得税の負担における不公平感をなくすために導入されたこの制度ですが、2026年度の税制改正により、今後は超富裕層だけでなく、数億円単位の資産売却を行う一般的なオーナー経営者や資産家にも広く影響を及ぼすことになります。事業承継や企業買収による自社株の売却、あるいは高額な不動産の処分など、人生の大きな節目において予期せぬ多額の税金が発生する可能性があります。
巨額の資産の売却や移動を伴う計画を立てる際には、事前に税金への影響を正確に把握しておくことが欠かせません。2027年の制度強化が迫る中、将来の税務リスクに不安を感じている場合や、売却の最適なタイミングを検討している場合は、豊富な実績と専門知識を持つ税理士へ早めに相談することをおすすめします。あなたにぴったりの専門家をお探しの際は、ぜひミツカルプロをご活用ください。
加藤慧大
株式会社ミツカルプロフェッショナル 代表取締役社長









