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税理士事務所の年間スケジュールを解説!
2024/11/08
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税理士事務所の仕事は繁忙期と閑散期で業務量にかなり差があると言われています。
ここでは
税理士事務所の1年間のスケジュールを通して、繁忙期の残業時間までを解説
していきます。
税理士事務所や会計事務所への転職を検討されている方は、是非参考にしてみてください。
税理士は忙しい?
税理士は非常に忙しい職業とされています。 特に、税制や会計基準の変更、新しい法令の施行などに迅速に対応する必要があるため、常に最新の情報を把握しなければなりません。また、税理士はクライアントの財務状況を詳細に分析し、最適な節税対策や経営戦略を提案する役割も担っています。そのため、クライアントからの相談や質問に迅速かつ適切に対応することが求められます。
一方で、 税理士の忙しさは季節によって変動します。 繁忙期には特に多くの業務が集中し、長時間労働が続くことが一般的です。
では、税理士の繁忙期はいつからいつまでなのでしょうか。次の章では、繁忙期の業務内容まで詳しくご説明いたします。
繁忙期は11月から5月
税理士の繁忙期は一般的に11月から5月まで とされています。この期間中、税理士は多岐にわたる業務をこなさなければならず、特に年末年始を中心に業務量が増加します。では、繁忙期の業務内容について説明していきます。
年末調整
年末調整は、企業や個人事業主が従業員の一年間の所得税を計算し、過不足を精算する業務 です。年末調整は 11月から12月にかけて行われ、特に12月は最も忙しい時期 となります。年末調整を行うためには、各従業員から必要な書類や情報を収集し、税額を正確に計算する必要があります。具体的には、各従業員の扶養控除申告書、保険料控除証明書、住宅借入金等特別控除の証明書などが必要です。これらの書類を基に、年間の所得税額を再計算し、過不足があれば給与と一緒に精算します。
また、年末調整は税法の改正や新たな控除項目の追加など、毎年異なる要素が加わるため、最新の情報を把握し適切に対応することが求められます。このため、税理士は11月から12月にかけて残業時間が増えることが一般的です。
特に、企業規模が大きく従業員数が多い場合や、複数の企業を担当している税理士にとっては、非常に忙しい時期 となります。
法定調書
法定調書は、税理士が繁忙期に直面する重要な業務の一つ
です。
この書類は、企業や個人事業主が税務署に提出する必要がある情報をまとめたものです。具体的には、給与所得や退職所得、利子所得、配当所得などを含む各種の所得に関する情報を記載します。
これにより、税務当局は個々の納税者の所得状況を把握し、適正な課税を行うことができます。 法定調書の提出期限は通常1月末 です。企業は年末調整を終えた後、速やかに法定調書の作成に取り掛かり、期限内に提出する必要があります。税理士は、このプロセスをサポートするために、クライアントから必要な情報を集め、正確に書類を作成し、期限内に提出することが求められます。
法定調書には、主に以下の種類があります:
- 1. 給与所得の源泉徴収票:従業員の給与や賞与に関する情報を報告します。
- 2. 退職所得の源泉徴収票:退職金などに関する情報を報告します。
- 3. 支払調書:特定の支払いに関する情報(例えば、弁護士や税理士に対する報酬)を報告します。
法定調書の作成は、単に書類を作成するだけではなく、クライアントが法令を遵守しているかどうかの確認にも関わります。これにより、税理士はクライアントが不正行為に巻き込まれるリスクを管理し、適正な税務処理を支援する役割も担っています。さらに、税理士は法定調書に関する最新の法令やガイドラインを常に把握しておく必要があります。税法は頻繁に改正されるため、最新情報を基に適切な助言を行うことが求められます。
償却資産申告
償却資産申告は、法人や個人事業主が保有する償却資産について、毎年1月1日時点での資産状況を申告しなければならない重要な手続き です。償却資産とは、固定資産のうち建物以外の資産で、例えば機械設備、器具備品、車両などが含まれます。これらの資産は使用年数に応じて価値が減少するため、その減少分を税務上の経費として計上することが可能です。
税理士は、この償却資産申告において、資産の取得価格、取得日、耐用年数などの情報を基に、減価償却費の計算を行い、適切に申告書を作成することが求められます。また、申告の際には、自治体ごとに異なる申告書式や提出方法を把握しておく必要があります。
個人の確定申告
個人の確定申告は通常、毎年2月26日から3月15日まで
です。
この業務は、ただ単に申告書を作成するだけでなく、クライアントの税務状況を総合的に理解し、最適な節税対策を提案することが求められます。
例えば、青色申告と呼ばれる制度を利用することで税務上の特典を受ける方法や、医療費控除や住宅ローン控除などの各種控除を適用する方法など、クライアントの利益を最大化するためのアドバイスを行います。また、税務署からの問い合わせや調査が行われた場合にも、税理士が代理人として対応することが多いです。
確定申告の時期は、忙しい時期となりますが、税理士は効率的に業務を進めるために、事前にクライアントとコミュニケーションを取り、必要な情報を早めに収集することが必要となります。
法人クライアントの決算業務
多くの法人は3月決算を採用しており、決算業務は通常3月末から5月にかけて集中します。この期間には、法人の財務諸表の作成、税務申告書の作成、財務諸表の監査対応など、多岐にわたる業務が発生します。
法人の決算業務は、個人の確定申告と異なり、企業の経営状況を正確に反映させるための複雑な作業が求められます。貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書など、企業の財務状況を詳細に示す書類を作成するほか、税務申告書の作成も行います。法人税や消費税など、企業が納めるべき税金の計算と申告が必要です。税理士は、税法の最新の改正点を把握し、適切に税務処理を行うことで、クライアントにとって最適な税務戦略を提供します。
さらに、決算時には監査対応も求められることが多く、特に上場企業や大企業の場合、外部監査人による監査が義務付けられているため、税理士は監査人と協力して、企業の財務諸表が適正に作成されていることを証明するためのサポートを行います。この監査対応には多くの時間と労力が必要であり、詳細な資料の準備や質疑応答、調整作業が含まれます。
ここまで、繁忙期における税理士の業務内容について徹底解説いたしました。では、 閑散期にはどのような業務を行っているのでしょうか?
閑散期は6月から10月
税理士事務所の閑散期は一般的に6月から10月
と言われています。この期間は、繁忙期に比べて比較的業務量が少なくなるため、税理士にとっては一息つける時間となります。とはいえ、全く仕事がないわけではありません。
閑散期の中心的な業務として「巡回監査」「月次決算」「記帳代行」が挙げられます。
3つの業務について、詳しく説明していきます。
巡回監査
巡回監査とは、税務担当者がクライアントを毎月訪問して、会計システムや書類の整理、経営方針や税務相談を受ける業務 です。これにより、クライアントは日常の経理業務を正確かつ効率的に行うための支援を受けることができます。税務担当者は、クライアントの会計データを確認し、不備や問題点を早期に発見して修正することができます。
これにより、後々の税務申告や決算業務がスムーズに進み、税務リスクを最小限に抑えることができます。また、巡回監査は定期的な訪問を通じて、クライアントの経営状況や課題を深く理解し、適切なアドバイスを提供することができます。
閑散期において巡回監査が行われる理由としては、この時期が比較的業務の負担が少ないため、クライアントをじっくりとサポートする時間を確保しやすいことが挙げられます。繁忙期に向けて、クライアントの経理体制を整えるための準備期間としても有効です。税務担当者はこの期間を利用して、クライアントの経理業務の効率化や問題点の改善に取り組むことができます。
月次決算
月次決算とは、毎月の財務状況を明確にするために行う決算作業のこと を指します。これにより、企業は財務状況をタイムリーに把握し、経営判断に役立てることができます。月次決算の主な作業には、売上や経費の整理、棚卸資産の計上、固定資産の減価償却費の計算などがあります。
これらの作業を毎月行うことで、企業は財務状況をリアルタイムで把握することができ、経営の方向性や戦略の見直しが迅速に行えます。月次決算の精度が高ければ、年度末の決算作業もスムーズに進めることができ、企業の経営管理が一層効率的になります。閑散期を利用して、月次決算を丁寧に行うことで、クライアント企業の財務管理を強化することが可能になります。
記帳代行
記帳代行は、企業や個人事業主が日々の取引を正確に記録し、財務状況を把握するために必要不可欠な業務 です。しかし、日常業務に忙殺されるクライアントにとっては、つい後回しになりがちです。そこで、税理士事務所が代行することで、クライアントは本業に専念できる上に、正確な帳簿が維持されるというメリットがあります。
具体的には、領収書や請求書の整理、現金出納帳や預金通帳の記帳、仕訳の入力、試算表の作成などが含まれます。これにより、クライアントは月次決算や年次決算の際に正確な財務データをもとに経営判断を行うことができ、財務の透明性が確保されます。
また、税理士が記帳代行を行うことで、税務調査の際にも適切な対応が可能になります。税務署からの指摘事項に対しても、正確な帳簿をもとに迅速かつ適切に対処することができるため、クライアントの安心感が高まります。さらに、クラウド会計ソフトの普及により、記帳代行の効率が向上しています。税理士事務所は最新のテクノロジーを活用することで、クライアントとの情報共有やデータ入力の自動化が進み、記帳業務のスピードと正確性が向上しています。
繁忙期の残業時間について
それでは、 通常時の平均残業時間と繁忙期の残業時間について見比べていきましょう。
税理士事務所の平均残業時間
税理士事務所における平均残業時間は、事務所の規模や業務内容、スタッフのスキルや経験によって大きく異なります。しかし、 一般的には月に20時間から40時間程度の残業が発生することが多い です。
また、 残業時間は税理士事務所の規模でも大きく変わってきます。 中小規模の税理士事務所では、スタッフ一人一人の業務負担が大きくなりがちであり、その結果、残業時間も増えることが一般的です。大規模な税理士事務所では、業務の分担が比較的効率的に行われるため、個々の残業時間は中小規模の事務所に比べてやや少ない傾向がありますが、それでも月に20時間から30時間程度の残業が発生することが珍しくありません。
繁忙期の平均残業時間
繁忙期における税理士の平均残業時間は、業務の種類や事務所の規模によって異なりますが、 一般的には月に50時間から80時間程度と言われています。これは、通常の業務時間に加えて、クライアントの申告や決算作業が集中するため、1日あたり2時間から4時間の残業が発生する計算 になります。
特に年末調整や確定申告の時期には、多くのクライアントからの依頼が重なるため、残業時間がさらに増える傾向があります。このため、繁忙期における残業時間は月に100時間を超えることも稀ではありません。 一部の税理士事務所では、スタッフの健康管理や労働環境の改善を目的として、繁忙期における残業時間の上限を設定する取り組みも行われています。
また、繁忙期には週末や祝日も出勤することが一般的であり、これがさらなる残業時間の増加につながっています。特に個人事業主やフリーランスの税理士にとっては、自分自身でスケジュールを管理する必要があるため、クライアントとの調整が難しく、結果的に長時間労働が避けられない状況になることもあります。
まとめ
税理士の業務は、繁忙期と閑散期によって大きく変動します。
11月から5月は、年末調整や法定調書、償却資産申告、個人の確定申告、法人クライアントの決算業務など、非常に多忙な時期です。この期間は、税理士事務所の平均残業時間も増加し、従業員の負担が大きくなります。
一方で、
6月から10月の閑散期には、巡回監査や月次決算、記帳代行などの業務が中心となり、比較的余裕のあるスケジュールで進められます。
この時期には、繁忙期に比べて残業時間も減少する傾向にあります。このように、年間を通じて業務量の差が明確に分かれているため、税理士事務所は計画的な業務配分が求められます。
城之内 楊
株式会社ミツカル代表取締役社長