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税理士事務所と税理士法人の違い|法人化による変化や職場の選び方を解説

公開日:2025/12/19

最終更新日:2025/12/19

税理士事務所と税理士法人の違い

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税理士業界の転職先について調べる中で、「税理士事務所」と「税理士法人」が存在することに気付くでしょう。税理士事務所は税理士の個人事務所、税理士法人は税理士の法人化によって設立される組織です。

税理士法人は税理士法で細かなルールが定められているため、法人化に伴い様々な変化も生じます。今回は税理士事務所と税理士法人の違いや転職先を選ぶ上でのポイントについて解説します。

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税理士事務所は個人が運営、税理士法人は法人化した組織

結論として、税理士事務所は税理士の個人事務所(個人事業主)、税理士法人は法人化によって設立される組織です。税理士事務所は人数規模に関係なく個人事業として運営される仕組みです。

税理士法人に関するルール

税理士法人は税理士法で特別に定められた特別法人であり、設立および運営に関して一般企業とは異なるルールが設けられています

税理士法人の設立(法人化)に関する主なルールは以下の通りです。

2人以上の社員税理士による共同設立
・社員は税理士のみ
 (税理士法人の「社員」は一般企業における「取締役」に該当)
・名称に「税理士法人」の使用が必須
・2週間以内の登記手続きが必須

また、税理士法人の社員税理士は以下のような行為が禁止されています。

・ほかの税理士法人の社員になる
・税理士法人ではなく、個人として税理士業務を行う

社員税理士は、自身が社員を務める税理士法人以外では税理士業務ができない決まりです。

税理士の分類

前節で「社員税理士」という言葉が登場しました。税理士は業務形態に応じて3つの登録区分が存在します。それぞれの違いは以下の通りです。

開業税理士:税理士事務所を開業し、所長として業務を行う税理士
所属税理士:税理士事務所や税理士法人に雇用されて業務を行う税理士
社員税理士:税理士法人の共同経営者として業務を行う税理士

同じ税理士法人で働く税理士でも、共同経営者は社員税理士、雇用されている税理士は所属税理士となります。

税理士事務所と税理士法人の主な違い

税理士法人には税理士法で様々なルールが設けられています。そのため、税理士事務所(個人)と税理士法人には、法人格の有無以外にも様々な違いが存在します。
この章では、税理士の法人化による変化として、両者の主な違いについて解説します。

両者の違いを網羅的に理解するために、主要なポイントを以下の比較表にまとめました。

【一覧表】税理士事務所と税理士法人の比較

比較項目 税理士事務所(個人) 税理士法人(法人)
運営形態 個人事業主 特別法人(合名会社に準ずる)
必要な税理士数 1名(所長のみで可) 2名以上(社員税理士)
支店の設置 不可 可(全国展開が可能)
業務範囲 特段の制限なし 制限あり(税理士業務および付随業務のみ)
事業承継 困難(所長死亡で閉鎖のリスクあり) 容易(組織として存続が可能)
社会保険 任意(従業員5人未満の場合など) 強制加入(健康保険・厚生年金)
責任の範囲 個人の無限責任 社員税理士による無限連帯責任 等
クライアント・案件 個人事業主~中小企業中心
小規模・一般的案件が多い
中堅~大企業、上場企業も含む
大規模・特殊案件も多い

①組織の運営形態

前述のように、税理士事務所は税理士の個人事務所であり、所長1名でも運営が可能です。一方、税理士法人は「2人以上の税理士」によって設立される特別法人です。個人が運営する事務所と法人化した組織ということで、組織形態の根幹が異なります。

②支店展開の可否

税理士事務所と税理士法人の大きな違いの一つに、支店展開の可否があります。支店展開が認められているのは税理士法人のみであり、個人の税理士事務所は支店を設置することができません。そのため、広域に展開したい場合は法人化が必須となります。

③業務範囲

業務範囲に関しては、税理士法人の方に制限が設けられています。

税理士事務所(個人)
業務範囲についての法的な制限は特にありません。事務所を運営する税理士であっても、個人として税理士業務以外の事業(不動産賃貸業やコンサルティング業など)を行うことに問題はありません。

税理士法人
税理士法人は特別法人であり、行える業務が限定されています。国税庁の規定により、基本的に「税理士業務」および「その付随業務」以外を受けることができません。

国税庁の公式サイトでは、税理士法人が行うことのできる業務について以下のように記載されています。

「税理士法人が行うことのできる業務は、

1.税理士業務(法第2条第1項の業務)
2.税理士業務に付随する業務(法第2条第2項の業務)
3.法第2条第2項の業務その他の業務で税理士が行うことができるものとして財務省令で定める業務
4.法第2条の2第1項の規定により税理士が処理することができる事務をその税理士法人の社員等に行わせる事務の受託(補佐人:問7-3参照)

とされています(法第48の5、第48の6)。」

「個人の税理士については、税理士の資格において行う税理士業務と、自然人として税理士資格によらずに行う業務とが存在し得るのですが、税理士法人は特別法人であり、その業務は法第48条の5の規定により限定されていることから、それ以外の業務を行うことはできないこととなります。」

引用:7 税理士法人|国税庁

以上のように、税理士法人では税理士業務および付随業務以外を受けることができません。上記以外の業務を行う場合、個人や別会社など税理士法人とは別の名義で受ける必要があります。そのため業務範囲に関する規定を理由に、法人化のタイミングで受ける業務の範囲を狭めるケースもあるでしょう。

④ 事業承継と組織の存続性

組織の存続性においては、税理士法人にメリットがあります。

税理士事務所(個人): 所長税理士個人の資格で運営されているため、万が一所長が死亡した場合、その時点で事務所は閉鎖せざるを得なくなるリスクがあります。事業承継には所長の交代手続きや顧客との再契約など煩雑な手続きが必要です。

税理士法人: 組織として運営されているため、代表社員に万一のことがあっても、他の社員税理士がいれば法人は存続します。事業承継や組織としての永続性が確保しやすい形態です。

⑤ 社会保険の適用

従業員の待遇面に関わる大きな違いとして、社会保険の加入義務があります。

税理士事務所(個人): 従業員が5人未満の場合、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は任意となります。

税理士法人: 法人であるため、従業員の人数に関わらず社会保険への加入が強制(義務)となります。求職者にとっては、法人の方が福利厚生面での安心感につながりやすいといえます。

⑥ 責任の範囲

何かトラブルがあった際の責任の負い方にも違いがあります。個人の税理士事務所は所長が無限責任を負いますが、税理士法人の場合、社員税理士は「無限連帯責任」を負います。これは、法人財産で債務を完済できない場合、社員税理士が個人の財産をもって弁済する責任があり、かつ他の社員税理士と連帯して責任を負うという重いものです。

⑦ クライアントの規模と案件の傾向

組織規模や支店展開の違いから、取り扱うクライアントや案件の傾向も異なります。

税理士事務所(個人): 主なクライアントは個人事業主や小規模な中小企業です。地域密着型で運営されることが多く、案件も個人の確定申告や一般的な税務申告が中心です。

税理士法人: 組織力と信用力があるため、中堅・大企業や上場企業をクライアントに持つケースが増えます。それに伴い、組織再編や国際税務、連結納税など、作業量が多く高度な専門知識を要する特殊な案件を扱う機会も多くなります。

ただし、従業員数が数人程度の「小規模な税理士法人」もあれば、従業員が10人を超える「大規模な税理士事務所」も存在するため、あくまで一般的な傾向として捉えておくとよいでしょう。

税理士事務所の「法人化」のメリットは?

税理士事務所が「税理士法人」へと組織変更することを「法人化」と呼びます。 前章では税理士事務所と税理士法人の違いについて一覧表で比較しましたが、具体的に法人化することで事務所側にはどのようなプラス面があるのでしょうか。

なぜ多くの事務所が法人化を目指すのか、その背景にある主なメリットを解説します。

組織の永続性と事業承継

個人事務所の最大の弱点は、所長税理士に万が一のことがあった場合、事務所が消滅し、顧問先へのサービスが停止するリスクがあることです。 一方、税理士法人は2名以上の税理士で構成されるため、一人が欠けても組織は存続します。クライアントに対し「永続的なサービス提供」を約束できる点は、法人化の最大のメリットと言えます。

支店展開による規模の拡大

税理士法上、個人の税理士事務所は支店を出すことが禁止されています(税理士法第40条)。 しかし、税理士法人であれば支店(従たる事務所)の設置が認められています。これにより、複数のエリアで顧客を獲得したり、大規模なネットワークを構築したりすることが可能になります。

社会的信用の向上と採用力

一般企業と同様に、法人格を持つことで金融機関や大手企業からの信用が得やすくなります。また、求職者にとっても「社会保険完備(厚生年金等)」である可能性が高い税理士法人は、雇用の安定性の面で魅力的に映り、優秀な人材が集まりやすい傾向にあります。

税負担の軽減(節税効果)

事業規模が大きくなると、個人事業主として所得税を支払うよりも、法人化して法人税を支払う方が税負担を抑えられるケースがあります。 また、所長自身の給与を「役員報酬」として経費計上できる点や、欠損金の繰越控除期間が長くなる点など、経営面での金銭的なメリットも法人化の大きな理由の一つです。

税理士事務所と税理士法人どちらを選ぶべき?

税理士事務所と税理士法人はどちらも税理士が運営する組織ですが、様々な面に違いがあります。自分に合う働き方をするためには、転職先を選ぶにあたって税理士事務所と税理士法人の違いも意識するのが良いでしょう。

この章では税理士事務所と税理士法人それぞれをおすすめできるケースの例や、転職先を検討する上で大切なことについて解説します。

税理士事務所がおすすめなケースの例

税理士事務所をおすすめできるケースとして以下の例が挙げられます。

・所長税理士や有資格者と近い距離で働きたい
・仕訳入力から申告書作成まで幅広く行いたい
・クライアントと近い距離で働きたい

税理士事務所は組織としての規模が小さいため、所長および他のスタッフとの距離が近い傾向です。また、スタッフが少ない分1人あたりが担当する業務範囲が広く、簡単な作業から申告書作成まですべて対応するケースもあります。同じ理由で、クライアントとのコミュニケーションが発生する場面も多いです。

小規模な事務所ならではの距離の近さや1人で幅広い仕事を担当できる点は、税理士事務所ならではのメリットといえるでしょう。これらに魅力を感じる人には税理士事務所をおすすめできます。

税理士法人がおすすめなケースの例

税理士法人をおすすめできるケースの例は以下の通りです。

・分業体制が整っている組織で働きたい
・特定の業務の専門性を高めたい
・高度な案件に携わりたい

税理士法人は人数規模が大きいため分業体制が整っている傾向にあります。クライアントとのやり取りや申告書作成などを行うスタッフとは別で、会計入力や書類作成などの補佐業務のみを担当するスタッフがいることも多いです。幅広い経験というよりは、特定の業務を専門的に行うケースが多いです。

また、税理士事務所よりも難しい案件や特殊な性質をもつ案件も多くみられます。税理士事務所より税理士法人の方が業務の難易度は高めといえるでしょう。

専門性を高めたいと考える人には税理士法人の方がおすすめです。

法人化しているか否かは参考程度にするべき

税理士事務所と税理士法人では様々な違いがある旨を紹介しました。同じ税理士が運営する組織であっても、法人化に伴い多くの変化が生じると考えて良いでしょう。

ただし、今回紹介した内容がすべての税理士事務所・税理士法人に当てはまるとは限りません。スタッフ数が少ない税理士法人もあれば、人数が多く分業体制が整った税理士事務所も存在します。受ける案件の傾向や難易度も、組織形態というよりは所長や社員税理士の方針による影響が強いです。

大まかな傾向はあるものの、「税理士事務所は〇〇」「税理士法人は××」と単純な判断はできません。法人化しているか否かはあくまで参考程度と考えましょう。転職先を選ぶ際は、求人や公式サイト等から情報を集めた上で判断することが大切です。

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税理士事務所と税理士法人の違いまとめ-法人化によって様々な変化が発生する

税理士事務所は税理士が運営する個人事務所、税理士法人は2人以上の税理士によって設立される特別法人です。法人化によって設立される組織が税理士法人といえます。

税理士法人は設立や運営に関して税理士法で細かなルールが定められています。そのため同じ税理士が運営する組織でも、法人化に伴い様々な変化が生じるケースも多いです。主なクライアントや案件の傾向など、働き方を大きく左右する違いも存在します。

とはいえ「税理士事務所は〇〇」「税理士法人は××」と断言はできません。そのため転職先を選ぶにあたって、法人化しているか否かに重きを置くのは避けるべきといえます。

転職先を選ぶ際は職場の雰囲気や仕事内容、労働条件などの正確な情報を重視し、法人化の有無はあくまでも参考程度に考えましょう。

執筆 ・ 監修

高梨 茉奈(たかなし まな)

めざせ!TAX MASTER パーソナリティ

2001年生まれ、北関東出身のWEBライター。税務のポッドキャスト番組「めざせ!TAX MASTER」のパーソナリティも務める。商業高校を卒業後、医療事務の専門学校へ進学し、総合病院で2年半勤務。激務と低月収に悩みつつも医療業界で経験を積むが、より自分の可能性を広げるため転職を決意。現在は士業特化の採用支援を行う株式会社ミツカルに所属し、SNS発信やWEBライティングを担当。