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中小企業成長加速化補助金とは?審査基準と対策まで紹介

公開日:2025/04/17

最終更新日:2025/04/17

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2025年度に新設された「中小企業成長加速化補助金」は、最大5億円という大型補助が得られる注目の制度です。

対象となるのは、すでに売上高10億円以上を達成し、さらなる飛躍を狙う“成長志向”の中小企業。 単なる延命ではなく、「売上100億円を目指す企業」を国が本気で応援する政策です。

この補助金には、設備投資・新事業展開・海外進出など、攻めの投資が求められます。 そして重要なのが、審査を通過するための「ストーリー設計」と「数値根拠」。 経営者の熱意と実行力を、論理的な資料でどう表現できるかがカギになります。

税理士としては、顧問先の財務データ整理だけでなく、成長計画の策定支援にも関与できるチャンスです。 本記事では、次回公募に向けた準備ポイントを整理し、実務に活かせる視点をご紹介します。

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中小企業成長加速化補助金とは?

「中小企業成長加速化補助金」は、2025年度に新設された国の補助金制度で、売上高100億円を目指す中小企業の大規模な設備投資や成長戦略を支援することを目的としています。

補助金の概要

補助対象者:
​売上高が10億円以上100億円未満の中小企業で、「売上高100億円を目指す宣言(100億宣言)」を行っている企業

補助上限額:​
最大5億円

補助率:​
対象経費の1/2以内

補助対象経費:
・建物費(拠点の新設・増築など)
・機械装置費(器具・備品費含む)
・ソフトウェア費
・外注費
・専門家経費

補助事業期間:
​交付決定日から24か月以内

補助金の目的

目的のカテゴリ 詳細内容 補足説明
① 稼ぐ力のある中小企業の飛躍支援 売上10億円超の中小企業が、売上100億円の中堅企業へ成長することを支援 「拡大フェーズ」にある企業を重点支援。成長加速の後押し
② 大胆な先行投資の後押し 設備やDXへの1億円以上の投資を支援し、成長のスピードを高める 建物、機械、ソフトウェアなど、未来に向けた本格的な投資を支援
③ 賃上げ・雇用創出による地域貢献 補助を受けた企業は、賃上げ・雇用維持の努力が求められる 補助終了後3年の平均給与上昇率が最低賃金の上昇率以上が条件
④ 外需対応力・グローバル展開の促進 海外展開・輸出・インバウンド対応等を評価項目に含め、内需依存からの脱却を図る デジタル・脱炭素・健康分野などの成長産業も対象に
⑤ 中堅企業層の創出(国家戦略的視点) 「中堅企業化」を国家として支援し、日本経済の構造強化を目指す 中堅企業の裾野拡大で、経済の中核層を厚くし、M&Aや上場も視野に

補助金の対象となる事業とは?

「中小企業成長加速化補助金」は、売上高100億円を目指す中小企業の大規模な設備投資や成長戦略を支援する制度です。

対象事業の種類と具体例

この補助金は、企業の成長を加速させるための以下のような事業を対象としています:​

設備投資による生産性向上:

最新の機械装置や自動化設備の導入による生産効率の向上。​
具体例:​製造ラインの自動化システム導入。​

新規事業・新分野への進出:

新しい製品やサービスの開発、提供を目的とした投資。​
具体例:​既存の食品加工業者が健康食品市場への参入を図るための新設備導入。​

海外展開のための基盤整備:

海外市場への進出や輸出拡大を目的とした投資。
​ 具体例:​海外向け製品の生産ライン構築や現地法人設立のための設備投資。​

M&A(企業の合併・買収)による事業拡大:

他企業の買収や統合による事業規模の拡大。​
具体例:​関連事業を営む企業の買収に伴う設備投資や統合プロセスの実施。

対象となる中小企業の要件

この補助金の申請には、以下の要件を満たす必要があります:​

中小企業者であること:

中小企業等経営強化法で定める中小企業者であること。​ 具体的な基準は業種によって異なりますが、例えば製造業の場合、資本金3億円以下または従業員数300人以下の企業が該当します。 ​

売上高要件:

直近の売上高が10億円以上100億円未満であること。​

投資額要件:

補助対象経費のうち、建物費・機械装置費・ソフトウェア費の合計が1億円以上(税抜)であること。 ​

「売上高100億円を目指す宣言(100億宣言)」の実施:

売上高100億円を目指す旨を宣言し、所定のポータルサイトに公表していること。 ​

賃上げ要件:

補助事業終了後3年間の「給与支給総額」または「従業員1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が、都道府県の直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上であること。 ​

国内実施:

日本国内で補助事業を実施すること。

公募と申請の流れ

公募スケジュールと応募期間

項目 日程
公募要領公開 2025年3月17日(月)
公募説明会 2025年4月下旬
申請受付開始 2025年5月8日(木)
申請締切 2025年6月9日(月)17:00
一次審査結果公表 2025年7月上旬
プレゼンテーション審査 2025年7月下旬~8月下旬(お盆期間を除く)
採択結果公表 2025年9月上旬以降
補助事業実施期限 交付決定日から24か月以内
事業化状況報告期間 補助事業終了後5年間

申請手続きと必要書類

GビズIDプライムアカウントの取得 電子申請システム「jGrants」を利用するために必要です。取得には数日から数週間かかる場合がありますので、早めの準備をおすすめします。

「100億宣言」の実施 「売上高100億円を目指す」旨を宣言し、所定のポータルサイトに公表します。申請時に同時提出も可能です。

申請書類の作成・提出 必要書類を準備し、jGrantsを通じて電子申請を行います。

一次審査(書類審査) 提出された書類に基づき、審査が行われます。

二次審査(プレゼンテーション審査) 一次審査を通過した企業は、経営者等が出席するプレゼンテーション審査を受けます。

採択結果の公表・交付決定 審査を通過した企業には、採択結果が通知され、補助金の交付が決定されます。

書類名 留意点
投資計画書(様式1) 35ページ以内で作成し、PDF形式で提出。決算資料との整合性を確認。
投資計画書別紙(様式2) Excel形式で提出。数値は指定の単位で記載。
ローカルベンチマーク(様式3) 所定のExcelフォーマットを使用。事業者名の記載が必須。
決算書等(3期分) 確定した決算資料をPDF形式で提出。貸借対照表、損益計算書、販売費及び一般管理費の明細が必須。
金融機関による確認書(様式4) 金融機関から投資計画の確認を受けた場合に必要。
リース取引に係る誓約書(様式5) リース会社との共同申請をする場合に必要。
リース料軽減計算書(様式6) リース会社との共同申請をする場合に必要。

審査基準と対策

以下に「中小企業成長加速化補助金」の審査基準と対策を整理しました。審査ポイントを押さえたうえで、効果的な申請書を書くためのコツも具体的に紹介します。

審査のポイントと評価基準

審査項目 内容 対策ポイント
① 100億円への成長可能性 「売上高100億円を目指す」明確なビジョンと実行性があるか 売上計画・事業領域・市場性・過去実績を具体的に記載。
5年後の姿を数字で示す。
② 投資の必要性と波及効果 なぜ今、なぜこの投資が必要か?
地域・業界への波及効果も評価
「やらなければ衰退」「やれば一気に成長」の文脈を明確に。
雇用・地域活性の効果も記載。
③ 実現可能性 人材・資金・パートナー体制、過去の実績含めて「実行力」があるか 自社の強み・連携先の具体名・資金調達見通しも記載。
外部支援者(顧問・取引金融機関)も記載。
④ 賃上げ・従業員還元 申請後3年間の給与上昇計画が現実的か 「賃上げ予定額」をロジカルに書く。
売上や利益とリンクさせる。
⑤ 外需や成長産業への貢献 グローバル展開・新規市場(脱炭素・健康・DXなど)への貢献度 海外販売・新サービス開発・輸出比率UPなど、
数値で示すと有利。
⑥ 申請書の整合性・わかりやすさ 数字・記述・事業計画間で矛盾がないか。
ロジックが明快か
決算データと計画数値の整合性をしっかり確認。
図や表を活用。

効果的な申請書の書き方

コツ 解説・具体例
1. ストーリーを持たせる 「現状の課題 → 投資内容 → 成長イメージ」を一貫した文脈で記述。
例: 属人的な工程がボトルネック → 自動化導入 → 3年後には○○倍の生産性向上
2. 数字で語る 売上、利益、雇用者数、投資効果などはできる限り数値で示す。
例: 設備導入後は月産2,000個 → 6,000個に増加予定(3倍)
3. 過去の実績をアピール 過去の挑戦・成果を記述し、「成長実績がある企業」と印象付ける。
例: 過去5年で売上2倍、輸出比率も15%→30%へ拡大
4. 組織力・外部連携を明示 単独ではなく、外部パートナーや支援機関との連携も記述。
例: 地域金融機関と資金計画連携済/販路は商社と提携
5. 読みやすさ重視 長文よりも箇条書き・図表・見出しで構成を整える。
例: 売上計画 → 表形式、市場分析 → グラフ挿入 などで視認性UP

次回の公募に向けて準備すること

準備項目 内容補足・ポイント
① GビズIDプライムの取得 電子申請システム「jGrants」利用に必須。
登録に1~2週間かかるため、早めの申請が必要。
法人代表者による本人確認あり。
② 「売上高100億円宣言」の準備 補助金申請には、「100億円を目指す」公式な宣言が必要。
宣言文と将来計画(簡易な内容)を事前に準備。
ポータルサイトへ掲載申請が必要。
③ 成長戦略と事業計画の整理 投資の背景・狙い・効果など、論理的なストーリー構築。
売上推移・新市場参入・競争優位性など、数値で整理しておく。
④ 投資内容・金額の見積もり取得 建物、設備、ソフトウェア等の費用見積もりを取得。
「建物+設備+ソフト」で1億円以上必要(税抜)のため、費用構成を精査。
⑤ 財務資料(3期分)の整備 直近3期分の決算書(BS、PL、販管費明細等)を整理。
銀行提出用など形式がバラバラになりがちなので、早めに整理。
⑥ 賃上げシミュレーション 補助後3年間の給与支給総額または1人当たり支給額の上昇計画。
自社の成長予測に基づいた、無理のない賃上げプランを作成。
⑦ 外部支援者・金融機関との連携体制 金融機関や士業との連携体制を整備し、必要書類(確認書)も事前調整。
金融機関の確認書があると信頼性UP。
⑧ 過去採択事例の収集・分析 同業他社や近い業種の採択事例をリサーチ。
参考になる成功パターンを把握し、自社の事業計画に活かす。

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中小企業成長加速化補助金とは? -まとめ

中小企業成長加速化補助金は、「成長性」「投資意欲」「実行力」の三拍子がそろった企業にこそ適した制度です。

税理士にとっては、補助金申請の単なるサポートにとどまらず、事業計画や投資判断に寄り添う“経営パートナー”としての役割が期待されます。 次回の公募に向けては、早期の情報提供・申請支援体制の構築が鍵を握ります。 成長企業との関係をより深めるチャンスとして、ぜひ本補助金を実務に取り入れてみてください。 この記事が参考になれば幸いです。

執筆 ・ 監修

税理士 平川 文菜(ねこころ)

税理士|熊本出身|2018年京都大学卒業| 在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。