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【税理士試験】おすすめの税理士科目をご紹介!選び方のポイントとは?
公開日:2025/05/16
最終更新日:2025/05/16

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税理士試験の科目選びで悩んでいませんか?
実は「合格率が高く、実務にも役立ちやすい」意外な狙い目科目があるんです。
それが、地方税法に基づく《事業税法》。
法人税や所得税とのつながりが強く、理解が深まるうえに点も取りやすい。
しかも出題パターンが超安定。
過去問を制す者が、合格を制す──そんな再現性の高い世界です。
税法科目で効率よく1科目クリアしたい方、
この記事を読めば、きっと「事業税ってアリだな」と思えるはずです。
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税理士試験における事業税とは?
税理士試験の選択科目の一つである「事業税法」は、地方税法に基づいて課される「事業税」に関する専門知識を問う科目です。
事業税には、以下の2つの種類があります。
種類 | 対象 | 課税主体 | 主な特徴 |
個人事業税 | 個人事業主 | 都道府県 | 所得に基づく課税(事業主控除あり) |
法人事業税 | 法人 | 都道府県 | 所得課税+資本金1億円超には外形標準課税も適用 |
この科目では、個人と法人の両方における課税制度の理解、計算、理論的説明能力が問われます。
● 試験科目としての位置づけ
・分類:税理士試験の税法科目(9科目中の選択科目)
・科目群:「ミニ税法」と呼ばれる科目の一つ(他に酒税法、住民税、国税徴収法など)
・受験制限:住民税との選択制(どちらか1科目のみ選択可能)
● 法的根拠と制度設計
・根拠法:地方税法第72条以降
・課税主体:都道府県
・税の目的:
◦地方自治体の財源確保
◦地域での事業活動に対する経済的負担の適正配分
・納税義務者:
◦個人:一定業種の個人事業主
◦法人:日本国内に事業所等を持つ法人
● 課税内容の比較
項目 | 個人事業税 | 法人事業税 |
課税対象 | 事業所得・不動産所得など | 所得、付加価値、資本など |
非課税業種 | 一定の条件に当てはまる人 | なし(ただし業種ごとに税率の違いあり) |
主な控除 | 年間290万円の事業主控除 | なし(別途法人税との調整あり) |
外形標準課税 | 対象外 | 資本金1億円超の法人に対して適用 |
税理士試験での重要性
● なぜ事業税法は重要なのか?
・地方税の基礎理解に直結:税理士として法人・個人事業者の顧問業務を行ううえで、地方税の申告指導は不可欠。
・所得税法・法人税法との密接な連携:事業税の課税標準はこれらの国税と深く関係しているため、税制の全体像を理解するうえで有効。
・出題傾向が安定し、対策しやすい:過去問を中心に学習すれば、高得点を狙いやすい実践的な科目。
・実務的な重要性:多くの都道府県で地方税の電子申告が進んでおり、事業税の処理能力は現場での即戦力となる。
● 税理士実務とのつながり
実務での場面 | 事業税知識の活用例 |
法人の決算申告 | 法人事業税の計算と外形標準課税の適用有無の判断 |
個人事業主の確定申告支援 | 事業主控除や非課税業種の判定、複数事業の所得配分など |
多拠点企業の申告管理 | 分割基準に基づく都道府県ごとの課税の按分計算 |
地方自治体との折衝 | 課税誤りや更正処分対応において法令根拠を説明する能力 |
事業税の試験内容と出題傾向
項目 | 内容 |
科目名 | 地方税法に基づく「事業税法」 |
出題形式 | 記述式(大問2問) |
試験時間 | 2時間(120分) |
配点構成 | 理論問題 50点/計算問題 50点(年による可能性有) |
出題分野 | 個人事業税・法人事業税の両方から出題 |
合格基準 | 60点以上(相対評価により実際は7〜8割が合格ライン) |
試験日程 | 税理士試験3日目の午後(例年:8月上旬) |
出題傾向の全体像
・出題傾向は非常に安定的であり、毎年、基礎的な理論・計算が中心
・応用問題の比率は少なく、定型パターンを押さえた学習が効果的
・毎年、個人・法人両方に関連する問題がバランスよく出題される
・理論問題では「定義」「趣旨」「条文の説明」「制度設計の背景」などが頻出
・計算問題では「課税標準の算定」「税率の適用」「分割計算」などが軸
過去5年の出題傾向一覧
年度 | 大問1(理論) | 大問2(計算) |
令和5年度 | 法人が複数の事業を行う際の課税標準・税率の理論 | 法人の外形標準課税・分割計算 |
令和4年度 | 個人事業税の非課税業種・事業主控除に関する論述 | 個人事業主の年途中廃業に伴う複数県の申告計算 |
令和3年度 | 外形標準課税の制度趣旨と構成要素の説明 | 資本金1億円超の法人における3割の計算 |
令和2年度 | 分割基準に関する法的根拠と具体的適用例 | 法人事業税の課税標準と税率の組み合わせ計算 |
令和元年度 | 外形標準課税導入の背景と構造 | 法人の所得割・資本割・付加価値割の具体的計算 |
傾向:
・外形標準課税は毎年のように計算で問われる鉄板論点
・理論では制度趣旨や条文の構造の説明を問う問題が多い
・実務上の事例をベースに理論を問う「準ケーススタディ型」の出題が増加傾向
頻出テーマまとめ(理論)
頻出テーマ | ポイント例 |
外形標準課税の構造 | 所得割・付加価値割・資本割の定義と制度趣旨 |
課税標準の算定 | 所得ベース・収入ベース・控除項目の考え方 |
非課税業種・控除規定 | 医師や助産師の非課税規定、事業主控除の論拠 |
分割基準と申告義務 | 法人の複数事業所保有時における申告義務の所在 |
法定調書・条例課税 | 都道府県独自条例との関係、法定調書提出義務の所在 |
● 頻出テーマまとめ(計算)
項目 | 内容の具体例 |
法人事業税課税 | 所得の算出、損金算入制限、所得割の税率適用 |
外形標準課税 | 資本割・付加価値割・所得割の計算と控除限度額 |
複数事業所・事業種 | 分割基準(従業者数・売上高等)による各県の税額按分計算 |
個人事業主の申告計算 | 年間事業主控除、非課税業種の除外、年途中廃業時の対応 |
法人の中間申告 | 中間納付税額の計算、仮決算方式と予定申告方式の比較 |
● 理論・計算の出題バランスと評価ポイント
観点 | 理論 | 計算 |
難易度 | 中〜やや高 | 中程度(パターン暗記で対応可能) |
評価基準 | 条文理解・趣旨説明・構成要素の正確性 | 計算過程・根拠の明示・ケアレスミスの有無 |
傾向 | 制度の本質理解が重視される | 手順・形式への忠実性が重視される |
出題形式 | 記述式(300〜500字程度) | 資料を基にした実務的な税額算定 |
試験範囲(地方税法に基づく)
試験範囲分類 | 内容例 |
地方税法の基本 | 地方税の分類、課税主体、法令構造 |
個人事業税 | 対象業種(法定業種)、所得算定、事業主控除、非課税業種 |
法人事業税 | 所得割の課税標準と税率、外形標準課税(資本割・付加価値割)の適用範囲 |
分割基準 | 法人の複数県への納税、按分方法(従業員数・売上高・固定資産など) |
税率と計算 | 個人・法人それぞれの標準税率、条例税率の扱い |
条例課税 | 各都道府県が定める特例税率や非課税措置の取り扱い |
特例・免除規定 | 地域産業支援策としての税制優遇、事業転換時の取り扱いなど |
事業税の勉強方法と時間管理
事業税法は、所得税法や法人税法と比較して出題範囲が狭く、出題傾向も安定しているため、パターン学習と過去問演習の相性が非常に良い科目です。 一方で、地方税特有の「外形標準課税」や「分割基準」など、国税にはない論点も多く、初学者にとってはなじみづらい部分もあります。
必要な学習時間の目安
受験者タイプ | 必要な学習時間の目安 | 解説 |
初学者(税法初挑戦) | 約300~400時間 | 地方税の基本からインプットが必要 |
所得税・法人税合格者 | 約150~250時間 | 重複部分が多く、事業税特有論点に集中すれば短縮可能 |
科目合格経験者 | 約100~150時間 | 外形標準課税・分割計算など重点攻略で済む |
スケジュール例(6か月前スタート)
学習期間 | 内容 | ポイント |
6~4か月前 | インプット期 | テキスト・講義で基礎理論と計算構造を把握 |
4~2か月前 | アウトプット期 | 過去問演習を開始。理論暗記と計算練習を繰り返す |
2か月前~直前 | 実戦演習+弱点補強 | 模擬試験や予想問題を通して時間配分の感覚を養う |
学習の進め方のポイント
✔ 理論学習(暗記+応用)
・条文や制度趣旨を理解したうえで、書けるレベルで暗記する
・頻出テーマ(外形標準課税の構成要素、課税標準、非課税業種など)を優先
・構造化メモ(骨子→展開)で論述訓練する
✔ 計算学習(手を動かす)
・基本的な公式を毎日1回は手書きで練習
・外形標準課税、分割計算、事業主控除のような典型パターンを徹底的に反復
・ミスした問題の「理由メモ」作りが効果的
事業税の難易度と合格率
事業税法は、税理士試験の中でも「中堅レベルの難易度」とされる選択科目です。出題傾向が安定しており、対策が取りやすいことから、比較的短期間での合格が狙える科目とされています。
▷ 合格率の推移(直近5年間)
年度 | 合格率 | 備考 |
令和5年度 | 16.4% | ミニ税法の中では最も高い水準 |
令和4年度 | 15.6% | 例年並み |
令和3年度 | 12.6% | 計算問題がやや難化 |
令和2年度 | 13.9% | 配点が理論・計算50:50へ完全移行 |
令和元年度 | 12.4% | 外形標準課税の出題 |
【分析】
・合格率は概ね12~16%前後で推移
・回答しやすい年度は16%前後まで上昇、難化年でも10%を下回ることは稀
他の科目との比較
科目名 | 難易度感 | 学習時間目安 | 出題傾向 | コメント |
酒税法 | 易しめ | 約150時間 | 基本論点中心 | 初学者向け、暗記量はやや多め |
国税徴収法 | やや易しめ | 約200時間 | 判例や手続き系 | 法律思考が求められ、暗記に偏りがち |
事業税法 | 中程度(標準) | 約250時間 | 安定出題 | 計算+理論のバランス型。実務的価値も高い |
住民税 | やや難しめ | 約300時間 | 地方税特有が多い | 条例や二重課税調整など論点が細かい |
消費税法 | 難しめ | 約400時間 | 応用計算多め | 検算しづらく計算力が問われる |
合格のための戦略とコツ
① 出題パターンを徹底分析せよ
・過去10年の出題傾向を押さえるだけで、7割得点は狙える
・頻出テーマ(外形標準課税、分割基準、所得算定)を繰り返し演習
② 理論は「書ける暗記」重視
・暗記カードや要点整理ノートで「見て覚える」から「書いて覚える」へ
・300~500字の答案を「構造化」して組み立てる練習が重要
③ 計算は「定型化」&「速解き」訓練
・外形標準課税、事業主控除などは手順がほぼ決まっている
・1問あたり30分以内で正確に解ける訓練を積む
④ 理論と計算の配点を意識した時間管理
・本試験は120分=理論55~60分+計算60~65分が目安
学習法 | 実践ポイント |
---|---|
毎朝1テーマ暗記 | 理論カードを1日1セット覚える習慣で記憶を定着 |
解いた問題のミスノート | 計算ミス・理論の失点原因を「1冊に集約」して復習 |
自分で「ミニ模試」 | 過去問を時間内に解き、自作で理論+計算セットを作成 |
条文音読 | 地方税法の条文を声に出して読むことで理解力UP |
働きがいのある会計事務所特選

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まとめ
税理士試験における事業税法は、地方税法に基づく個人・法人への課税制度を扱う選択科目です。
出題傾向は非常に安定しており、頻出論点を押さえた学習ができれば、比較的短期間での合格が狙えます。
理論・計算のバランスが求められ、外形標準課税や分割基準など、地方税独特の論点への理解も不可欠です。
学習時間は200〜300時間が目安で、過去問を中心にしたアウトプット重視の勉強が効果的。
合格率は12〜16%前後と比較的高めで、他のミニ税法と比べても実務性・得点再現性ともに高いコストパフォーマンスの良い科目です。
理論は「構造で覚えて書けること」、計算は「パターン化して速く正確に解くこと」がカギ。
時間配分の管理と、暗記・計算両面の強化によって合格が見えてくる科目と言えます。
特に所得税法や法人税法との並行受験者にとっては、知識の相乗効果も期待できる、おすすめの選択科目です。
この記事がお役に立てば幸いです。

税理士 平川 文菜(ねこころ)