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税理士試験合格率の推移を徹底解説!合格への道を探る

公開日:2025/10/31

最終更新日:2025/10/31

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1. はじめに:なぜ「合格率の推移」を知ることが税理士試験合格につながるのか?

「税理士試験の合格率は10%〜20%台」

この数字だけを見て、「やっぱり難関すぎる…」「自分には無理かもしれない」と、挑戦する前から不安を感じていませんか?

確かに税理士試験は簡単な試験ではありません。しかし、表面的な合格率の数字だけで判断し、挑戦を諦めたり、非効率な勉強法を選んだりするのは早計です。

本当に大切なのは、合格率が「なぜそうなっているのか」「過去からどう変わってきたのか(推移)」を知ること。そこにこそ、税理士試験を攻略するヒントが隠されています。

この記事は、単に「令和6年度の合格率は〇%でした」とお伝えするだけではなく、なぜ数字が変動するのか、科目ごとにどんな「クセ」があるのかを深掘りし、データを「不安材料」から「戦略的な武器」へ変えることが目的です。

税理士試験の本質をデータから理解し、あなただけの「合格への道」を一緒に探していきましょう。

2. 【速報】最新(令和6年度)の税理士試験「合格率」とデータ分析

まずは、国税庁から発表された「令和6年度(第74回)税理士試験」の最新結果を見ていきましょう。あわせて、大きな変化があった前年度(令和5年度)のデータも比較対象として掲載します。

令和6年度・令和5年度 税理士試験 結果比較

項目 令和6年度(第74回) 令和5年度(第73回)
受験者数 34,757人 32,893人
合格者合計数 5,762人 7,125人
全体合格率 16.6% 21.7%
5科目合格者数(官報合格) 578人 600人
一部科目合格者数 5,191人 6,525人

この最新データから、税理士試験の「今」が明確に見えてきます。


ポイント①:「全体合格率(16.6%)」の正しい見方

最も注目すべきは「全体合格率 16.6%」という数字です。これは、受験者(34,757人)のうち、「いずれか1科目以上」に合格した人の割合(5,762人)を示しています。

税理士試験は「科目合格制」であり、多くの受験生が1〜2科目を集中して受験します。したがって「16.6%」は、5科目一発合格の難易度ではなく、「その年に受けた科目に受かった人」の割合であり、税理士試験への入口の広さを示す数値と理解しましょう。

ポイント②:最終ゴール「官報合格」の難易度

私たちがイメージする「税理士試験合格」とは、5科目をすべて突破した「官報合格」を指します。

令和6年度の官報合格者数は「578人」。全受験者(34,757人)に対する割合は約1.66%です。こちらが、最終的な資格取得の難易度を示す実態に近い数字と言えます。

ポイント③:受験資格緩和(令和5年度〜)の影響

令和5年度から会計科目(簿記論・財務諸表論)の受験資格が撤廃されました。その影響で、受験者数は令和5年度に前年比で約4,000人、令和6年度も約1,900人増加し、V字回復を見せています。

ポイント④:令和6年度の「合格率低下」の理由

令和5年度の合格率(21.7%)が突出して高かったのに対し、令和6年度は16.6%と、例年並みの水準に戻りました。 これは、受験者数が増加した一方で、特定の科目(特に「財務諸表論」の合格率が8.0%と極端に低かった)の難易度調整が厳しく行われた結果と推測されます。

「誰でも受けられる」ようにはなりましたが、「誰でも受かる」試験になったわけではないことが、この結果から明確にわかります。

3. 【表で徹底解説】税理士試験「合格率」の長期「推移」(過去10年)

最新のデータだけでは、その年が「たまたま難しかった」のか、それとも「ずっと難しい」のか判断できません。そこで、過去10年(平成27年度〜令和6年度)の「受験者数」と「全体合格率」の推移を一覧表で見ていきましょう。

過去10年間(H27~R6)の受験者数と全体合格率の推移

試験年度 受験者数(実人員) 合格者合計数(実人員) 全体合格率
平成27年度 38,175人 6,902人 18.1%
平成28年度 35,589人 5,638人 15.8%
平成29年度 32,974人 6,634人 20.1%
平成30年度 30,850人 4,716人 15.3%
令和元年度 29,779人 5,388人 18.1%
令和2年度 26,673人 5,402人 20.3%
令和3年度 27,299人 5,139人 18.8%
令和4年度 28,853人 5,626人 19.5%
令和5年度 32,893人 7,125人 21.7%
令和6年度 34,757人 5,769人 16.6%

この一覧表から、税理士試験の「合格への道」を探る上で非常に重要な2つの傾向が読み取れます。


傾向①:受験者数は「V字回復」、人気が再燃

まず「受験者数」の推移に注目してください。 平成27年度の約3.8万人から令和2年度の約2.6万人まで、一貫して減少していました。これが「税理士試験離れ」と言われていた時期です。

しかし、令和4年度から増加に転じ、受験資格が緩和された令和5年度・令和6年度で急激にV字回復を遂げています。会計科目の受験ハードルが下がったことで、若年層や他分野の社会人の「挑戦の場」として、税理士試験の人気が再燃していることが明確です。

傾向②:「合格率」は15%~20%で安定(=相対評価の示唆)

次に「全体合格率」の推移です。 受験者数が激減していた時期(H27〜R3)も、合格率は極端に上がったり下がったりせず、概ね「15%〜20%」の範囲で安定して推移していることがわかります。(令和5年度の21.7%はやや突出していますが)

これは、税理士試験が「合格基準点(60点)」という絶対評価を建前としつつも、実質的には合格者数を一定の割合(=15%〜20%)に調整する「相対評価」の側面を強く持つことを示唆しています。

受験者数が減っても合格枠が広がらず、逆に受験者数が急増した令和6年度は合格率が引き締められました(16.6%)。

【受験生が知るべきこと】

この推移からわかるのは、「受験者が減ったからラッキー」「増えたからアンラッキー」という単純な話ではない、ということです。

税理士試験は、常に受験者の中の「上位15%〜20%」に入る実力を身につけることが求められる競争試験であると理解する必要があります。

次の章では、この「全体合格率」をさらに分解し、「合格への道」に直結する「科目別」の合格率と推移を徹底的に分析します。

4. 【合格への最重要ポイント】科目別の「合格率」の「推移」を深掘り

第3章までで、税理士試験全体の合格率が「15%~20%」で推移しており、相対評価的な側面が強いことを解説しました。しかし、税理士試験の最大の特徴は「科目合格制」にあります。

5科目合格への「道」を探るには、科目ごとの合格率と推移を分析することが不可欠です。ここでは主要科目をピックアップし、その傾向と戦略を探ります。

① 必須科目(会計):「簿記論」「財務諸表論」

 会計科目は、令和5年度から受験資格が撤廃され、最も受験者層が変化した科目です。

【簿記論・財務諸表論】 合格率の推移(過去5年)

科目名 R6年度 (R5.12発表) R5年度 R4年度 R3年度 R2年度
簿記論 17.4% 17.4% 23.0% 16.5% 22.6%
財務諸表論 8.0% 28.1% 14.8% 23.9% 19.0%


・簿記論:「安定」の中の「変動」
「簿記論」の合格率は、R4年度の23.0%を除けば、概ね16%~17%台で推移しています。しかし、これは数字上の安定であり、実際は「計算ボリュームが多い年(時間切れ続出)」と「解きやすい年」の差が激しい科目です。合格率の推移がどうであれ、時間配分と基礎計算力を徹底的に鍛える必要があります。

・財務諸表論:「安定」から「激動」へ
注目すべきは「財務諸表論」の推移です。R5年度は28.1%と突出して高かったのに対し、R6年度は8.0%と過去類を見ない低さを記録しました。これは受験資格緩和による受験者急増に対し、試験側が明確に「難易度(合格ライン)を引き上げた」結果 と言えます。

もはや「財表は受かりやすい」という過去の常識は通用しません。簿記論同様、生半可な対策では合格できない、税理士試験の「本丸」になったと認識すべきです。

② 選択必須科目(税法):「法人税法」「所得税法」

 多くの受験生が最初に選択する主要税法です。

【法人税法・所得税法】 合格率の推移(過去5年)

科目名 R6年度 R5年度 R4年度 R3年度 R2年度
法人税法 16.4% 14.0% 12.3% 12.8% 16.1%
所得税法 12.6% 13.8% 14.1% 12.6% 12.0%


・合格率は「12%~16%」で安定
どちらの科目も、合格率の推移は「12%~16%」の狭いレンジで非常に安定しています。これは、学習量が膨大で、受験生の大半が専念またはベテラン社会人であり、実力差が出やすいため、合格率をコントロールしやすいことを示しています。

・戦略:合格率の推移で選ぶな
データが示す通り、どちらかの合格率が極端に高い・低いという推移は見られません。「法人税法の方が受かりにくい」といったイメージは、この推移からは読み取れません。

「合格への道」としては、合格率の推移(数%の差)で選ぶのではなく、「実務で使う方(法人が多い)」「学習範囲(所得税法は範囲が広い)」といった観点で選択するのが賢明です。

③ 人気選択科目:「消費税法」「相続税法」

 実務での重要性が高い2科目です。

【消費税法・相続税法】 合格率の推移(過去5年)

科目名 R6年度 R5年度 R4年度 R3年度 R2年度
消費税法 10.3% 11.9% 11.4% 11.9% 12.5%
相続税法 18.7% 11.6% 14.2% 12.8% 10.6%


消費税法:「低位安定」の難関
「消費税法」は、学習量は比較的少ないものの、合格率が「10%~12%」前後で一貫して低く推移しています。これは、受験生が多いための激戦区であり、かつ理論・計算ともに「ミスが許されない」精度を要求されるためです。

相続税法:「変動」するも実力勝負
「相続税法」は、R6年度に18.7%と突出しましたが、それ以外は11%~14%で推移しています。学習量は膨大で、税法の中でも屈指の難関科目です。R6年度の結果は「易しかった」というより、問題傾向に対応できた受験生が多かった結果と見るべきでしょう。

科目別分析のまとめ

この科目別推移からわかるのは、「ラクに受かる科目はない」という事実です。

特に受験資格が緩和された会計科目は、合格率の推移が激しく変動しており、今や税法科目以上に「ふるい落とされる」厳しい試験になっています。「合格への道」を探るには、どの科目も「上位15%前後」に入るための徹底した学習が不可欠であると、データが示しています。

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5. 「合格率」の数字の裏側と「合格への道」を探る戦略

ここまで税理士試験の最新合格率と、過去からの推移を徹底的に分析してきました。

・全体の合格率は「15%~20%」で安定推移(=相対評価の側面が強い)
・科目別の合格率は、安定している科目(税法)と、近年激動している科目(特に財務諸表論)がある

では、これらの事実から、私たちはどのような「合格への道」を描けばよいのでしょうか。合格率の数字の裏側に隠された本質を踏まえ、3つの戦略を提言します。

戦略①:「合格基準60点」の罠。目指すは「上位15%」

税理士試験の要項には「合格基準点は60点」と明記されています。これは「絶対評価」です。しかし、第3章の推移で見た通り、受験者数が変動しても合格率は一定のレンジに収まっています。

さらに第4章で見た「財務諸表論」の推移(R5: 28.1% → R6: 8.0%)は、どう考えても「60点」という絶対的な基準だけで運用されているとは思えません。

これが意味することは一つです。 税理士試験の実態は、「上位15%~20%(科によっては10%)を選抜する相対評価試験」であるということ。

「60点でいいや」という学習は、合格率が低い(=問題が難しい)年に対応できません。「合格への道」は、常に受験生の中の上位15%に入る実力を目指すこと。模試や答練で上位安定を目指す学習こそが、合格率の推移に左右されない唯一の戦略です。

戦略②:「会計科目の早期突破」が最重要課題に

かつては「簿記論・財務諸表論は受かりやすい」と言われた時代もありました。しかし、令和5年度からの受験資格緩和で状況は一変しました。

・受験者が急増し、競争が激化。
R6年度の財務諸表論(合格率8.0%)に見るように、試験側が明確に「ふるい落とし」にかかっている

会計科目は、もはや「入口」ではありません。税理士試験の「最初の関門」へと難易度が上がったと認識すべきです。

「合格への道」は、まずこの会計科目を1〜2年で確実に突破する計画を立てること 。ここで足踏みすると、膨大な時間がかかる税法科目の学習に進めず、長期化(いわゆる「沼」)の原因となります。

戦略③:「合格率の推移」に一喜一憂せず、淡々と積み上げる

・「R5の財務諸表論は合格率28%でラッキーだった」
・「R6の財務諸表論は合格率8%でアンラッキーだった」
・「R6の相続税法は合格率18.7%だったから、来年は狙い目だ」

合格率の推移を見て、このように一喜一憂するのは最も危険です。

データが示すのは、「どの科目も、いつ難化・易化するかわからない」という事実だけです。狙い目だと思った科目が翌年、超難化することは税理士試験では日常茶飯事です。

税理士試験の本当の難しさは、1回の合格率の低さではなく、この不確実な試験を5回クリアしなければならない長期戦であること。

「合格への道」とは、合格率の推移という「運」の要素に期待するのではなく、どの科目・どの難易度で出題されても「上位15%」に入れる実力を、1科目ずつ淡々と積み上げていく覚悟を持つことに他なりません。

執筆 ・ 監修

安井貴生

税理士

藤和税理士法人所属の税理士として活動しており、法人税・所得税・相続税 等、幅広い業務を担当中。最近では、相続や事業承継案件を多く扱っている。