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税理士は割に合わない?実はねらい目と言われる税理士資格を解説

2024/09/11

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税理士になるには難関試験を突破し2年間の実務経験が必要です。
特に試験合格までには数年以上の月日が必要になることから、税理士は割りに合わないのでは、と考える人もいるようです。

そこで今回は、税理士が本当に割りに合わない職業なのかを解説いたします。
結論から申しますと、税理士に向いている人にとっては天職と言っても過言ではないほどの充実感と高待遇が得られます。

税理士が割に合わないと言われる理由

まず、税理士が割りに合わないと言われる理由と、実際の状況についてまとめました。
あなたが感じている「割りに合わない理由」が本当なのかどうかを確かめましょう。

資格取得までが大変

税理士の資格を取得するためには、一般的には税理士試験に合格しなければなりません。
税理士試験は11科目中5科目に合格することが求められます。試験科目自体はそれほど多くはありませんが、1科目ごとのボリュームと難易度が非常に高く、科目合格を果たすだけでも大変です。

働きながら税理士資格取得を目指す場合、1年間で1〜2科目に合格し、3年以上の月日をかけて5科目合格を果たす人が大多数を占めます。

このように税理士試験合格までに数年以上の学習期間が必要となるため、資格取得までが大変だとして「割りに合わない」と言われているようです。

一方で、先に述べたように1科目合格であっても優遇されます。多くの税理士事務所や税理士法人では、科目合格数によって資格手当てが加算されますし、転職の際にも科目合格は非常に優遇されます。
確かに税理士資格取得までの道のりは長いものですが、道半ばであってもメリットは発生するのです。

また一定の要件を満たす修士課程や博士課程を修了すると、税理士試験の一部が免除されます。
難関資格に間違いないものの、選択によってはさほど苦労と感じることなく資格を取得できるでしょう。

年収が期待値ほどではない

数年以上の歳月をかけて合格したのに、年収が想像よりも上がらないという理由です。 ところで令和5年賃金構造基本統計調査の結果によると、税理士の平均年収は約747万円でした。一般労働者全体の年収よりも高収入です。

なお平均年収が1,000万円を超える主な職業は医師や弁護士等です。
1,000万円オーバーを期待する人にとっては割りに合わないと感じる額かもしれませんが、日本経済全体からすれば税理士はかなりの高収入と言えるのではないでしょうか。
また社会人になってからでも目指せるという点で、税理士には人生逆転のチャンスがあるのです。

所属する事務所によっては業務が限定される

小規模の税理士事務所では、地域の中小企業をクライアントとして法人税申告業務を中心に仕事を請け負っていることがほとんどです。
法人税申告業務とその付随業務だけでもかなりの業務量になりますので、資産税のような他の業務を取り扱えないという不満も耳にします。

税理士試験の勉強では税法等に関する様々な分野について膨大な知識を得ているのに、その知識を十分に生かしきれないとして「割りに合わない」と感じるのです。
業務が限定されると「仕事=作業」のように捉えてしまい、必死で勉強を重ねた時間を無意味に感じてしまいがちです。

しかし税理士が担える業務は法人税だけではありません。国際税務や相続税等の高度な分野も税理士の業務範囲です。さらに専門的で高度な業務を担うためには、これらの業務を請け負っている税理士事務所や税理士法人に転職しましょう。
ある程度の実績ができれば、あなたが担いたい分野に特化した税理士事務所を立ち上げることも可能です。

長時間労働や休日出勤

所属する税理士事務所や税理士法人によっては、長時間労働や休日出勤を余儀なくされることもあります。たとえば、繁忙期に月50時間を超える残業が発生したり、客先の都合で休日出勤が常態化していたりするケースです。
超難関の国家試験をパスしたのに、過酷な労働環境で働かなければならないことに対して割りに合わないと感じるようです。

ただしこのような税理士事務所は一部に限られます。現在では繁忙期でも残業20時間以下であったり、完全週休2日制で休日出勤を認めていない等、労働環境が整備された税理士事務所も増えてきました。
もし現在勤めている事務所で残業や休日出勤が多すぎると感じるようなら、労働環境の良い職場への転職を検討してみましょう。

税理士の魅力

割りに合わないと言われることもある税理士ですが、税理士ならではの魅力もたくさん存在します。ここではその一部を紹介いたします。

高度な専門性

税務に関する高度な知識を有することになります。
高い専門性を備えていることは、周囲から称賛されたり、自尊心を高めたりすることにつながります。クライアントから感謝されることも少なくありません。

たとえばクライアントが知らない知識を伝え節税につながったとしたら、喜んでもらえるでしょう。このようなシーンは、専門的な知識を有する税理士ならば何度も遭遇するはずです。逆に言えば、専門的な知識のない人は与えられる情報がないので相手に喜んでもらえる機会があまり発生しません。

専門的な知識は、仕事で活用できるだけでなく、あなたの人生や心の在り方を豊かにしてくれるものなのです。

社会的地位

国家資格たる税理士という肩書きは、あなたの社会的地位を高めてくれます。
親戚や友人知人から一目置かれる存在になれるだけでなく、ローン審査に通りやすくなる、他人からの信頼を得やすくなるといった利点も享受できます。

もちろん医師や弁護士といった名だたる国家資格でも、同様の社会的地位が保証されるでしょう。しかしこれらの資格よりも若干取得しやすいという意味では、税理士はタイムパフォーマンスの良い難関資格と言えるのかもしれません。

高収入

たとえば経理事務として働く場合より、税理士として働く場合の方が給与は上がります。
事務よりも専門的で高度な業務をこなし、その責任を負うためです。
前述のとおり、税理士の平均年収は約747万円。

たしかに税理士になったばかりの頃の給与は事務職と変わらない程度かもしれません。しかし信頼と実績を積み上げることで年収はどんどん上がっていきます。
しかも税理士資格は一生涯有効ですので、定年を過ぎてからでも働けます。つまり高齢になってからも収入を確保できるのです。

また税理士は独立開業も可能な職業です。うまく運営できれば年収1,000万円以上も狙えるでしょう。
物価高の影響から従業員の給与を上げようとする動きはあるものの、実行しているのは一部の大手企業のみ。自力で高収入を勝ち取りたいならば、高収入が約束されている税理士資格の取得をおすすめします。

独立開業

税理士は独立開業が可能な職業です。
経営者になりたい人は、税理士事務所を開業しましょう。
一般的に、飲食店等のお店の場合は競合に押し負けてしまうことも少なくありません。

しかし税理士は独占業務を持つ特殊な業種ですので、これから参入してもやり方次第で安定した経営が可能なのです。
もちろん税理士資格のみで開業するのは無謀ですが、しっかりと準備することで若くして経営者の仲間入りを果たすこともできます。

まずは税理士事務所や税理士法人で働き、資金を貯めつつ税理士としての経験を積みましょう。

企業アドバイザーとしてのやりがい

クライアントとなる中小企業の経営者から頼られる存在になります。
たとえば税理士のアドバイスで赤字からの黒字転換を実現できれば、経営者だけでなく従業員からも感謝されることになるでしょう。また後継がいなくて困っている経営者に事業承継のアドバイスを実施し事業自体を残せるようになれば、それもまた喜ばれます。税理士の腕次第でクライアント企業の立て直しや増収増益も可能です。

税理士はクライアント企業のアドバイザーとして、非常に重要な役割を担っています。 地域経済の成長に一役買うこともあり、大きなやりがいを持って働けるでしょう。

税理士に向いている人の特徴

税理士は特殊な職業ですので、向き不向きがはっきり分かれています。
どのような人が向いているのかチェックしましょう。

クライアント企業が成長していく姿に喜びを感じられる人

周囲の人が幸せになることに喜びを感じられる人、そのために努力を惜しまない人に向いています。
税理士はクライアント企業やクライアントたる経営者を、税務の観点からより良い状態にするための存在です。

自分自身の成長や幸福ももちろん重要ですが、周囲の人が儲かったり幸福を掴み取ったりする姿に思わず笑みがこぼれる人が、税理士に適しています。
反対に、周囲の人が幸せそうだと妬んでしまう、恨んでしまう、自分より幸せそうにしているなんて許せないと感じてしまう人には向いていません。
クライアントに対して誠実に対応できる人こそ税理士に最適なのです。

数字を見続けることに抵抗がない人

現在の税理士の主たる業務は、税務コンサルティングです。
利益創出のボトルネックになっている箇所を洗い出して解決したり、節税可能な方法をアドバイスしたりします。

これらのアドバイスを行うには、クライアント企業の財務諸表を読み込むことが必要不可欠です。財務諸表とは財務に関するクライアント企業の資料であり、数字の羅列で構成されています。

つまり税理士としての業務を遂行するには、数字を見続けながら思考を巡らせる必要があるのです。記帳代行の作業を税理士が行うこともあり、数字を見続けられるかどうかは税理士の適性に関わります。
数字が好きでなくとも、抵抗がなければ問題ありません。

コミュニケーションが好きな人

税理士は訪問やテレビ会議等を用いて、定期的にクライアントとコミュニケーションをとります。月次決算の報告や今後の方針等を相談するためです。会話が続かなければ不信感を持たれる原因になってしまいますし、クライアントへの提案もうまくいかないかもしれません。

また事務所内でも会計スタッフや同僚の税理士、所長等とコミュニケーションを取らなければなりません。
会話を楽しめる人の方が、そうでない人よりも税理士に向いているのです。

税理士に向いていない人の特徴

税理士に向いていない人の特徴も確認しましょう。
下記に当てはまる場合でも、1つ程度ならさほど問題はありません。
しかし全てに当てはまる場合は、税理士以外の道を探すこともご検討ください。

計算が苦手

税理士は数字で構成された財務諸表を読み解き、税務アドバイス等の業務を提供します。
財務諸表の数値を時として計算し、新たな数値から結論を導き出すこともよくあります。

たとえば確定申告時におけるローン残債の計算や、相続税の計算、不動産にかかる税額の計算等です。会計ソフトに入力すれば計算できますが、その前に試算したり、概算を出したりします。
そのため計算が苦手な人や数字が苦手な人には、あまり向いていない仕事なのです。

一方的に話してしまう

クライアントとのコミュニケーションが確実に発生します。
ここで対応を誤ると、クライアントからの信用を一気に失い契約解除にもなりえます。ですからコミュニケーション能力は税理士にとって重要なのです。

大切なのは、クライアントの話を傾聴することです。クライアントが何を考え、何に悩み、税理士に何を期待しているのかを聞き出さなければなりません。
一方的に話をしてしまうと「押し付けがましい」「こちらの話を聞いてくれない」と捕らえられて距離ができてしまうのです。
一方的に話してしまう癖のある人は、税理士になる前に矯正しておきましょう。

決まった作業をコツコツ続けたい

税理士はクライアントへの報告やアドバイス、財務諸表の解析等、様々な業務に取り組みます。

そのため、決まった作業をコツコツ続けたい人にはあまり向いていないかもしれません。
たとえば記帳代行を主たる業務とする会計事務から税理士に転身した場合、黙々と作業を続けられる時間があまり取れないと感じる可能性があります。税務の範囲は膨大ですから、税理士の業務範囲も膨大なのです。

まとめ

税理士は割りに合わないと言われていますが、高収入で社会的地位も高い職業です。
業務内容や職場環境に関しては、相性の良い事務所を選択することで不満を解消できます。噂に惑わされず、税理士の真実を見つめてください。
高度な専門知識を生かして地域の中小企業等から感謝されるのが税理士です。このような働き方がしたい人にとっては適職と言えるのではないでしょうか。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。