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公開日:2025/11/24
最終更新日:2025/11/25
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公認会計士を目指したいが、「繁忙期の激務に耐えられるか不安」 「監査法人の繁忙期はいつからいつまでで、具体的にどれくらい忙しいのか?」など、不安に感じる人は多いのではないでしょうか。
公認会計士は高収入でステータスの高い資格である一方、ハードワークなイメージが先行しているのも事実です。では、公認会計士の繁忙期の実態はどうなっているのでしょうか。
結論から言えば、公認会計士には明確な繁忙期が存在し、その時期は非常に忙しい日々が続きます。しかし、1年を通してずっと激務なわけではなく、閑散期には長期休暇を取得できるというメリハリも大きな特徴です。
この記事では、公認会計士(主に監査法人勤務)の年間のスケジュールを月ごとに分解し、いつが繁忙期のピークなのか、残業時間や土日出勤のリアル、そして繁忙期が給料にどう影響するのかを徹底解説します。
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公認会計士の繁忙期はいつ?決算時期と「45日ルール」によるスケジュールの波
公認会計士の仕事は、クライアント(監査先の企業)の決算スケジュールに連動して動きます。
そのため、公認会計士の繁忙期は担当する企業の決算月によって決まるのが大前提です。
しかし、業界全体として見ると、やはり4月と5月が圧倒的な最大の山場となります。
これには、日本の上場企業の多くが3月決算を採用していることが大きく関係しています。
なぜ4月・5月が繁忙期なのか?データで見る「3月決算」の集中度
日本企業の多くが「3月決算」を採用していることは周知の事実ですが、実際の数字を見るとその偏りは顕著です。
東洋ビジネスコンサルティングが公表している「東証上場企業の決算期別の集計」のデータによると、日本の上場企業のうち約60%(約2,219社)が3月決算を採用しています(※)。 次いで多いのが12月決算(約14%)、2月・9月決算(各約5%)と続きます。
つまり、全上場企業の6割にあたる2,000社以上の監査業務が、4月1日に一斉にスタートするわけです。この時期に業界全体のリソースが逼迫し、公認会計士の物理的な業務量がピークに達するのは避けられない構造にあります。
(※出典:東洋ビジネスコンサルティングより)
4月・5月の繁忙期の正体は「45日ルール」と「税務申告期限」
単に決算が集中しているだけでなく、そこには「この日までに終わらせなければならない」という絶対的なデッドラインが存在します。
1. 上場企業の場合:「45日ルール」
証券取引所は、投資家への適時開示の観点から、「決算日から45日以内に決算短信を開示することが適当である」と定めています。 3月31日の決算日から起算して45日後は、5月15日前後です。公認会計士はこの期限に間に合わせるため、ゴールデンウィークを返上してでも監査意見を形成する必要があり、これが5月中旬までの激務の直接的な原因となります。
2. 非上場企業の場合:「2ヶ月以内の申告」
非上場企業には45日ルールはありませんが、法人税法上の申告期限が決算日の2ヶ月以内(5月31日)と定められています。また、6月末までには株主総会を開催する必要があります。 そのため、上場企業担当よりは多少余裕があるものの、5月末〜6月上旬には業務を完了させる必要があり、やはりこの時期が公認会計士の繁忙期であることに変わりはありません。
その他月の繁忙期:四半期レビュー(8月・11月・2月)
期末監査ほどではありませんが、上場企業には四半期ごとの財務報告も義務付けられています。そのため、以下の月も「四半期監査(レビュー)」として、公認会計士は一時的に忙しくなります。
・第1四半期: 8月上旬〜お盆前
・第2四半期: 11月上旬〜中旬
・第3四半期: 2月上旬〜中旬
これらの時期は、通常2週間程度の短期決戦となるのが一般的です。
【月別詳細】公認会計士の年間スケジュールと繁忙期・閑散期
ここでは、最も一般的な「3月決算会社」を担当する監査チームの公認会計士を想定し、1年間の流れを一覧表と詳細解説で見ていきます。
年間繁忙度・業務内容一覧表
まずは公認会計士の1年間の業務の波をざっと把握しましょう。繁忙期と閑散期のコントラストが明確です。
| 月 | 繁忙度 | 主な業務内容・状況 |
|---|---|---|
| 4月 | ★★★★★ | 【繁忙期】 期末監査の開始。残業急増、土日出勤の可能性大。 |
| 5月 | ★★★★★ | 【繁忙期】 決算発表前。GW返上も覚悟が必要な最大の山場。 |
| 6月 | ★★★☆☆ | 株主総会対応。中旬以降は落ち着きを取り戻す時期。 |
| 7月 | ★☆☆☆☆ | 【閑散期】 予備調査や研修。有給休暇を取り始める人も。 |
| 8月 | ★★★☆☆ | 第1四半期レビュー。上旬は忙しいが、後半は夏休みへ。 |
| 9月 | ★☆☆☆☆ | 【閑散期】 長期休暇(バカンス)のベストシーズン。 |
| 10月 | ★★☆☆☆ | 期中監査、内部統制テストなど。自己研鑽に良い時期。 |
| 11月 | ★★★☆☆ | 第2四半期レビュー。2週間程度忙しくなる。 |
| 12月 | ★★☆☆☆ | 年末調整、棚卸立会。年末年始はカレンダー通り休める傾向。 |
| 1月 | ★★★☆☆ | 第3四半期準備、12月決算会社の監査対応。 |
| 2月 | ★★★★☆ | 第3四半期レビュー、確定申告(個人)などで残業が増える。 |
| 3月 | ★★★★☆ | 期末に向けた最終準備。実地棚卸などで緊張感が高まる月。 |
公認会計士の月ごとの詳細な業務フロー
上記の表を踏まえ、具体的な働き方のイメージを解説します。
4月:繁忙期の始まりとピークへの助走
新年度の始まりである4月は、期末監査がいよいよ本格化する月です。上旬は実地棚卸(在庫カウント)への立会などで出張が発生することもあります。中旬以降はクライアントから提出される決算数値を検証するため、連日の残業が常態化します。この月の後半からは、土日のどちらかを出勤に充てるケースも増えてきます。
5月:公認会計士が1年で最も忙しい地獄の月
5月は、ゴールデンウィーク(GW)返上で働くことが珍しくありません。決算発表のプレスリリース日や、有価証券報告書の提出期限に向けて、チーム全員が極限状態で働きます。深夜に及ぶ残業や休日出勤が最も多くなるのがこの月です。ただし、中旬以降に監査報告書を提出し終えると、一気にプレッシャーから解放されます。
6月:株主総会と事後処理の時期
6月に入ると、ピークは過ぎますが、まだ完全に落ち着くわけではありません。この月は、定時株主総会に向けた招集通知のチェックや、株主総会本番への待機対応などが発生します。また、繁忙期中に作成した監査調書の整理(アーカイブ)作業もこの月に行います。5月に比べれば、定時で帰れる日も少しずつ増えてきます。
7月:予備調査と研修の月
7月は、比較的落ち着いた時期に入ります。次年度の監査計画の策定や、内部統制監査の計画立案などが主な業務です。また、この月には法人全体での研修が集中的に行われたり、有給休暇を消化し始めたりする人もいます。残業時間は大幅に減少し、プライベートの時間を確保しやすくなります。
8月:第1四半期と夏休みの月
8月の上旬から中旬にかけては、第1四半期の四半期レビュー業務があるため、2週間ほど忙しい期間があります。しかし、その業務が終われば本格的な夏休みシーズンです。多くの公認会計士がこの月の後半にまとめて休暇を取り、リフレッシュします。お盆休みと合わせて10連休以上にする人も少なくありません。
9月:完全な閑散期・長期休暇のチャンス
9月は、年間を通じて最も閑散とした月と言えます。法人のオフィスは人がまばらになり、数週間の長期休暇(バカンス)を取って海外旅行に行く会計士も多いのがこの月の特徴です。業務としては、内部統制の運用テストなどが中心で、期限に追われることはほとんどありません。
10月〜3月:次の山場への準備と小波
10月以降は、第2四半期(11月)、第3四半期(2月)のレビュー業務という小さな山を越えつつ、次の期末監査に向けた準備を進めます。特に2月から3月にかけては、期末監査計画の確定や子会社の監査報告書の回収などで徐々に忙しさが増し、嵐の前の静けさではなく、嵐が近づいていることを実感する時期となります。
公認会計士の繁忙期の残業時間と土日出勤のリアル
スケジュールで見た通り、4月・5月を中心とした繁忙期には業務が集中します。では、公認会計士の具体的な残業時間や休日の実態はどうなっているのでしょうか。
繁忙期の残業時間は月80時間を超えることも
働き方改革が進んだ現在、監査法人でもPCのログ管理が徹底され、無制限な残業はできなくなっています。
しかし、物理的な業務量が減るわけではありません。繁忙期のスタッフ・シニアクラスの残業時間は、月40時間〜80時間程度が目安となります。
特に決算発表直前の1〜2週間は、「朝9時から夜22時・23時まで」といった生活が続く覚悟が必要です。
土日祝日は休めるのか?
繁忙期のピーク時(4月下旬〜5月上旬)に関しては、土日や祝日(ゴールデンウィーク)に出勤せざるを得ない状況が発生します。
ただし、最近の傾向として「土日の両方を出勤にせず、必ず一日は休む」「チーム内で交代制にする」といった配慮がなされています。
また、この時期に休日出勤した分は、閑散期に「振替休日」として必ず消化するルールになっている法人がほとんどです。
繁忙期の「残業」は公認会計士の「給料」にどう反映されるか
「激務で辛い」と言われる公認会計士の繁忙期ですが、その対価として公認会計士の給料は大きく跳ね上がります。
残業代が年収を押し上げる要因
大手監査法人では、管理職(マネージャー)になる前の職階までは、残業代が全額支給されるのが基本です。
繁忙期には基本給に加え、深夜割増や休日割増を含めた残業手当が支給されるため、その月の月収が普段の1.5倍〜2倍近くになることも珍しくありません。
「4月・5月の激務は、ボーナスを前借りしているようなもの」
「この時期の稼ぎで年収が決まる」
このように捉えている会計士も多く、忙しいこと自体を「稼ぎ時」としてポジティブに受け止める文化もあります。逆に言えば、残業がほとんどない閑散期(8月・9月など)は手取り額が下がるため、公認会計士は毎月の給料変動が大きいという点は理解しておく必要があります。
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公認会計士の繁忙期はいつ? -まとめ
公認会計士の繁忙期について解説してきました。
記事のポイントをまとめます。
・いつが繁忙期?: 4月〜5月が最大のピーク。8月・11月・2月にも小さな波がある。
・どれくらい?: 繁忙期は月80時間程度の残業や土日出勤が発生する可能性がある。
・給料は?: 繁忙期の残業代が年収を大きく底上げする。
・休みは?: 8月・9月などの閑散期には、2週間以上の長期休暇(バカンス)が取れる。
公認会計士の仕事は、1年を通じてダラダラと忙しいわけではありません。「やる時は徹底的にやり、休む時は思い切り休む」というメリハリの効いた働き方です。
繁忙期の厳しさは事実ですが、その先には長期休暇や高い報酬という確かなリターンが待っています。この明確なスケジュールの波を理解し、ライフスタイルとうまく調和させることができれば、公認会計士は非常に魅力的なキャリアとなるはずです。
高梨 茉奈(たかなし まな)
めざせ!TAX MASTER パーソナリティ











