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工業簿記とは?商業簿記との違いや出題内容、勉強のポイントを紹介

公開日:2026/03/22

最終更新日:2026/03/22

工業簿記とは?商業簿記との違いや出題内容、勉強のポイントを紹介

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工業簿記は製造業を対象とした簿記で、日商簿記検定では2級以上で出題されます。商業簿記とは使用する勘定科目や会計処理の方法が大きく異なるため、慣れるまで苦労する受験生も多いです。

簿記2級は大問5問構成で、原則として第4問と第5問で工業簿記が出題されます。簿記1級は大問4問構成で、第3問と第4問が工業簿記の内容です。工業簿記の占める割合を考えると、簿記2級以上に合格するためには工業簿記の十分な理解が必須です。

この記事では工業簿記について、商業簿記との違いや出題内容、勉強のポイントなどを解説します。

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工業簿記の概要

はじめに工業簿記の概要を紹介します。

工業簿記とは

工業簿記とは製品の製造にかかったコストを適切に管理・記録するための簿記です。主に製造業を対象とした簿記で、製品コストの管理および製造にかかったコストを計算する「原価計算」が中心となります。

商工会議所の公式サイトでは、工業簿記について以下のように説明されています。

 「工業簿記」は、企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識です。
(引用:商工会議所の公式サイト

経営管理という用語の通り、外部への報告だけでなく自社内でのコスト管理を目的とする面も強いです。

工業簿記の特徴

工業簿記の主な特徴として以下の3つが挙げられます。

製造にかかったコストを「材料費」「労務費」「経費」「製造間接費」に細かく分類し、それぞれ集計・計算する
・「実際原価計算」「予定原価計算」「個別原価計算」「総合原価計算」「全部原価計算」「直接原価計算」といった様々な種類の原価計算があり、それぞれ計算方法に細かな決まりがある
・変動費・固定費、予定原価・実際原価、製造過程で絡む様々な要素を考慮する必要があるため、計算量が多く複雑になりやすい

工業簿記では考慮するべき要素が多岐にわたり、計算量や計算の種類も多くなります。そのためどうしても計算ミスや他の計算方法との混同が起こりやすいです。

工業簿記で作成する計算書類

工業簿記ならではの計算書類として製造原価報告書が挙げられます。

製造原価報告書とは一定期間の製品の製造にかかった費用(製造原価)を明らかにする財務諸表です。「製造原価明細書」「コストレポート」とも呼ばれます。

金融商品取引法により製造業を営む上場企業は、製造原価の内訳を記載した明細書を損益計算書に添付することが義務付けられています非上場企業には製造原価報告書の作成義務はありませんが、適切なコスト管理や経営判断への活用のためにも作成するのが一般的です。

工業簿記と商業簿記の違いとは

商業簿記は経営活動に伴う会計取引を管理・記録し、報告書としてまとめる業務およびそのスキルを指します。単に「簿記」とだけ表現する場合は商業簿記を指すのが一般的です。

この章では工業簿記と商業簿記の主な違いを3つ紹介します。

工業簿記と商業簿記の違い1|対象とする業種

工業簿記は製品の製造・加工を行う業種を対象とする簿記です。製造業や加工業のほか、システム開発業でも工業簿記を取り入れているケースがあります。

商業簿記は仕入れた商品の販売やサービスの提供等を行う業種を対象とします。商工会議所の公式サイトに記載されている商業簿記の説明は以下の通りです。

 「商業簿記」は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
(引用:商工会議所の公式サイト

製造業以外の幅広い業種では商業簿記が採用されています。

工業簿記と商業簿記の違い2|使用する勘定科目

工業簿記ならではの勘定科目として以下の7種類が挙げられます。

・原材料
・労務費
・経費
・製造間接費
・仕掛品
・製品
・月次損益

工業簿記の範囲でも仕訳問題が出題されるため、工業簿記の勘定科目についても理解が必須です。

商業簿記の勘定科目は以下の5種類に大別されます。

資産
例:現金、普通預金、売掛金、各種固定資産(土地、建物、車両)など
負債
例:買掛金、未払金、借入金など
純資産
例:資本金、資本準備金、利益剰余金など
収益
例:売上高、受取利息、受取配当金など
費用
例:売上原価、販管費に該当する勘定科目全般

登場する勘定科目の数は商業簿記の方が多いです。

工業簿記と商業簿記の違い3|計算期間

工業簿記と商業簿記ともに会計期間は原則として1年です。工業簿記の対象である製造業でも、非製造業と同じように1年間の貸借対照表や損益計算書を作成します。

工業簿記ならではの計算期間として原価計算期間が挙げられます。製造コストの細かな把握および迅速な問題発見・解決のために、原価計算は1ヶ月ごとに行うのが一般的です。

工業簿記は日商簿記2級から登場

最初に紹介した通り、工業簿記は日商簿記検定では2級から登場(※)します。日商簿記検定2級で出題される工業簿記について解説します。

(※日商簿記検定には「簿記初級」「原価計算初級」というレベルもあり、工業簿記を扱う級のうち最も難易度が低いのは原価計算初級です。しかし、仕事や転職に活かせるのは簿記3級以上といわれています。そのため原価計算初級を勉強する人は少なく、簿記2級ではじめて工業簿記に触れるのが一般的です。)

簿記2級における工業簿記の出題割合

最初に触れた通り簿記2級は大問5問から構成されており、そのうち第4問と第5問で工業簿記が出題されます。配点は商業簿記が60点、工業簿記が40点です。

なお、簿記2級の合格基準は100点満点中70点以上です。仮に商業簿記で満点をとれたとしても、工業簿記が0点では不合格となります。したがって簿記2級に合格するためには、工業簿記でもある程度の点数をとる必要があります

簿記2級の工業簿記で出題される内容

簿記2級の工業簿記で出題されるのは工業簿記の基本的なルール全般です。具体的な内容として以下の例が挙げられます。

工業簿記ならではの用語
工業簿記の仕訳
基本的な原価計算全般
 例:実際原価計算、予定原価計算、個別原価計算、総合原価計算、全部原価計算、直接原価計算、標準原価計算
各種コストの計算
 例:材料費計算、労務費計算、経費計算、製造間接費計算、部門費計算、営業費計算
原価予測
製品の受入れや販売の記帳

一つひとつのルールや計算方法の難易度は高くありませんが、覚えるべきことや計算量が多いため、難易度が高いと感じやすいです。

工業簿記の勉強のポイント

最後に、工業簿記の勉強のポイントを3つ紹介します。

なるべく早く勉強を始める

工業簿記の勉強はなるべく早く始めるのが理想です。理由として以下の3つが挙げられます。

・工業簿記は簿記2級ではじめて出題される内容であり不慣れなため、理解するまでに想定よりも時間がかかる恐れがある
工業簿記は覚えるべき事項や必要な計算量が多く、一周するだけでも膨大な時間を要する
・勉強を始めるのが遅いと不安や焦りから勉強に集中できない事態が起こりやすい

工業簿記の配点は100点中40点と商業簿記より少ないため、優先順位は商業簿記より工業簿記の方が低い印象を受けるかもしれません。

しかし前述のように、工業簿記は初登場の2級でも幅広い範囲から出題されます。勉強を始めるのが遅ければ勉強が追い付かず、理解が甘いままになってしまう可能性があります。

前述の理由から工業簿記は勉強に時間がかかりやすいため、なるべく早めに勉強を始め、時間に余裕をもたせるのが安心です。

まずは工業簿記の全体像をつかむ

工業簿記の勉強は一つひとつの論点を完璧にしてから次の論点に進むのではなく、まずは全体を軽く1周しましょう

多くの人は簿記2級試験の勉強で初めて工業簿記に触れます。すなわち、工業簿記に関する前提知識はほとんどない状態です。

全体像が見えていない状態ではイメージが難しいため頭に入りにくいです。結果として、時間をかけて勉強したつもりでもほとんど理解できていないという事態が起こり得ます。

最初から完璧に勉強しようとするのはかえって非効率的です。最初の1周は細かな論点の暗記や理解ではなく、全体像を把握するために行いましょう。1周目では枠組み程度の簡単な全体図を作成し、2周目以降で詳しい内容を書き足していくイメージです。

原価計算の種類による計算方法の違いを押さえる

工業簿記の中でも特につまづく人が多い分野が原価計算関連です。一口に原価計算といっても以下のように多くの種類が存在し、それぞれ計算方法やルールに様々な違いがあります。

・実際原価計算
・予定原価計算
・個別原価計算
・総合原価計算
・全部原価計算
・直接原価計算
・標準原価計算

工業簿記は第4問と第5問で出題されると紹介しました。そのうち第5問は原価計算に関する問題であり、指定の方法での原価計算が求められます。原価計算の種類による違いが曖昧な場合、他の原価計算と混同してしまい、問題の最初から誤った計算方法をとってしまう可能性があります。結果として、第5問で全く点がとれない事態も起こり得るのです。

原価計算の勉強では単純に計算のスピードや正確性を上げることだけでなく、種類ごとの特徴・違いを押さえることを意識しましょう

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工業簿記に関するよくある質問

工業簿記の学習を始めるにあたって、受験生からよく寄せられる質問をまとめました。

Q. 工業簿記と商業簿記、どちらから勉強を始めるべきですか?

基本的には商業簿記(3級の内容)から始めるのが鉄則です。工業簿記でも仕訳や決算の基本的な考え方は商業簿記の基礎に基づいているため、まずは商業簿記で「簿記の基本ルール」を理解してから工業簿記に進むとスムーズに学習できます。

Q. 数学が苦手ですが、工業簿記をマスターできますか?

はい、問題ありません。工業簿記で必要なのは「四則演算(足し算・引き算・掛け算・割り算)」がメインです。複雑な数式を解く力よりも、「コストがどこに流れていくか」という図解的なつながりを理解する力が重要になるため、パズルのように考えるのが得意な人であれば十分攻略可能です。

Q. 独学で工業簿記を攻略するコツはありますか?

「勘定連絡図」や「シュラッター図」などの図を自分で書けるようになることが最大の近道です。工業簿記は一つひとつの仕訳を暗記するよりも、工場全体のモノと金がどう動いているかを視覚的に捉える方が理解が早まります。テキストを読むだけでなく、実際に手を動かして図を作成する練習を優先しましょう。

Q. 「原価計算」と「工業簿記」は何が違うのですか?

厳密には、製品のコストを算出する手法そのものが「原価計算」であり、その計算結果を帳簿に記録する仕組みが「工業簿記」です。日商簿記2級ではこれらをセットで学習するため、試験対策としては同じ枠組みとして捉えて差し支えありません。

工業簿記とは?‐まとめ

工業簿記は製品の製造にかかったコストを適切に管理・記録するための簿記で、主に製造業を対象としています。日商簿記検定では2級から登場します。

簿記2級の配点は商業簿記が60点、工業簿記が40点です。合格基準が100点満点中70点以上のため、工業簿記でもある程度の点数をとる必要があります。

しかし、工業簿記と商業簿記は同じ簿記でも様々な面で違いがあり、最初のうちは苦手に感じる人が多いです。出題範囲の広さや計算量の多さ等から勉強に時間がかかりやすい分野でもあります。

工業簿記でしっかり点数をとれるだけの力を身につけるには、ポイントを押さえた効率的な勉強をする必要があります。勉強に時間がかかりやすいからこそ、なるべく早めに勉強を始めることも大切です。

工業簿記の勉強にあたり、今回紹介した内容を参考にしていただければ幸いです。

執筆 ・ 監修

加藤慧大

株式会社ミツカルプロフェッショナル 代表取締役社長

株式会社ミツカルプロフェッショナル代表取締役社長。 税理士・社労士事務所に特化した人材紹介およびコンサルティング事業を展開。月間2,000名以上の税務・労務担当者の登録、年間300件以上の事務所人事相談の実績を持り、年200%以上の成長を継続中。