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公開日:2026/04/17
最終更新日:2026/04/22
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国税庁は、非上場株の相続時における評価方法を抜本的に見直す方針を固めました。2026年4月中に有識者による検討会を立ち上げ、年内に議論を進めた上で、2027年度の税制改正で具体的な調整を行う予定です。
現在の評価ルールは1964年に定められたものであり、もし今回ルールが改正されれば、実に半世紀以上ぶりの大きな変更となります。
見直しの背景には、一部の富裕層による過度な節税対策を抑止する狙いがあります。一方で、全国に約299万社ある非上場企業の多くからは、突然の増税となり事業承継の大きな足かせになると強い反発の声が上がっています。この記事では非上場株の相続評価ルール見直しの具体的な背景や問題点、そして中小企業に与える影響について分かりやすく解説します。
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なぜ非上場株の評価ルールが見直されるのか
上場企業の株式は市場で日々取引されているため、客観的な時価がはっきりしています。これに対し、市場に出回っていない非上場株は時価を算定するのが非常に困難です。そのため、国税庁は財産評価基本通達というルールを設け、これに沿って非上場企業の価値を評価し、相続税を計算する仕組みをとっています。
しかし近年、この通達のルールを逆手にとり、意図的に株の評価額を下げて税負担を免れようとする事例が相次ぎました。資産の入れ替えを行ったり、配当の出し方を工夫したり、会社の決算期を変更したりと、様々な手法を組み合わせることで、本来の企業価値よりも著しく低い評価額で申告する手法です。
国税庁は、ルール通りに計算されていても結果として著しく不適当と判断した場合は、総則6項という例外規定を使って再評価し、課税処分を行うことができます。実際に、過去10年間でこの総則6項が適用されたケースは27件あり、そのうち非上場株に関連する事案が過半数の14件を占めています。
ある不動産管理会社では、相続人側が約21億円と申告した非上場株に対し、国税当局が約40億円と再評価して課税し、審判所で当局の主張が認められました。また別の裁判事例では、新株発行などの手法を駆使して評価額を意図的に引き下げ、約9億円もの税負担を軽減していたケースもあります。こうした極端な税逃れを防ぐため、新しいルールの策定が急がれているのです。
現在の評価方法が抱える最大4倍の格差問題
現在のルールについては、会計検査院からも厳しい指摘が入っています。
非上場株の評価には、会社の規模などに応じて複数の計算方法が用いられます。しかし、選択する評価方式によって、算出される株価に最大で4倍近い格差が生じていることが明らかになっています。
たとえば、似た業種を参考にする方式は時代に合わせて評価額が下がるような法改正が行われてきた一方で、純資産をベースにする方式は昭和53年以降、実質的な改正が行われていません。また、配当額から逆算する方式で使用される10%という還元率も昭和39年に制定されて以来見直されておらず、現在の低金利環境下では現実離れした水準になっています。
以下の表は、現在の主な評価方式と指摘されている課題をまとめたものです。
| 評価方式 | 特徴 | 指摘されている主な課題 |
|---|---|---|
| 類似業種比準方式 | 似た業種の上場企業の株価を参考にする | 手法の組み合わせで意図的に評価額を下げやすい |
| 純資産価額方式 | 会社の持つ資産や負債をベースにする | 過去の法改正が反映されておらず、他の方式との格差が大きい |
| 配当還元方式 | 配当金額を一定の率で割り戻す計算方法 | 昭和39年制定の10%という還元率が現在の金利環境と乖離している |
会社の規模が大きくなるほど、株式の評価額が相対的に低く計算されやすい傾向もあります。今後の議論では、これら方式による不自然な格差を埋め、全体として評価額が上がる方向で議論が進むと予想されます。
経済界や専門家から巻き起こる強い反発と懸念
この見直し方針に対し、経済界や中小企業の経営者、さらには税務の専門家から強い反発や懸念の声が巻き起こっています。
最も多い反発の理由は、一部の極端な節税対策を封じ込めるために、真面目に事業を営んでいる大多数の中小企業まで巻き添えになるのは不公平だという意見です。日本の企業の約99%は非上場企業であり、ルール改正によって非上場株の評価額が一律に引き上げられれば、相続税の負担は大幅に跳ね上がります。
株式は現金と違って、すぐに納税資金として使えるわけではありません。相続税を支払うために後継者が多額の借金などを背負ったり、最悪の場合は会社を切り売りして納税資金を捻出したりする事態になりかねません。結果として、地域の雇用や経済を支えている中小企業が、望まない形で外資や大手資本へ身売りせざるを得なくなるという危機感が広がっています。
中小企業の事業承継はどうなる?今後の焦点と対策
多くの中小企業が経営者の高齢化と後継者不足に悩む中、国も円滑な事業承継を促すための支援策を打ち出してきました。しかし、今回の評価ルールの見直しによる税負担増は、そうした国の支援の方向性と完全に逆行するという指摘もあります。
現在でも、非上場株を相続する際に納税が猶予される事業承継税制という制度は存在します。しかし、この制度は受け継いだ株式を原則として生涯保有し続けなければならないなど条件が非常に厳しく、利用を躊躇する企業が少なくありません。
そのため、単に評価ルールを厳しくするだけでなく、同時に事業承継税制の要件を大幅に緩和し、経営者が安心して会社を引き継げる環境をセットで整えるべきだと主張されています。
過度な節税を防ぐことと、真っ当な事業承継を守ること。国がこの二つのバランスをどう取り、納得感のある制度設計を行えるかが今後の最大の焦点です。経営者としては、現行ルールのもとで自社株がいくらになるのかを正しく把握し、税制改正の動向を見据えながら、早めに税理士などの専門家と対策を練り始める必要があります。
非上場株の評価見直しに関するよくある質問
いつから新しい評価ルールが適用される予定ですか?
2026年4月から有識者による検討会が設置され、年内に議論がまとめられます。順調に進めば2027年度の税制改正で盛り込まれる見通しです。実際にいつの相続から新ルールが適用されるかは、今後の法改正のプロセスで決定されます。
見直しによって自社の株価はどのくらい上がりますか?
会社の規模や資産状況によって異なりますが、現在の評価方式で生じている最大4倍近い格差を是正する方向で議論が進んでいます。特に、規模が大きく類似業種比準方式の恩恵を受けていた企業や、低金利の実態と合わない配当還元方式を用いていたケースでは、実態に合わせた評価へ引き上げられ、税負担が増す可能性が高いとみられています。
税負担が増えることへの対策はありますか?
評価額が引き上げられた場合、納税資金の確保が最大の課題となります。現時点では、事業承継税制を活用して納税を猶予する選択肢がありますが要件が厳しいため、ルールの改正と合わせて事業承継税制が緩和されるかどうかが焦点となります。最新の動向を確認しつつ、生前贈与や生命保険の活用などを含めた対策を検討する必要があります。
あなたの「適正年収」を調べてみませんか?
簡単な質問に答えるだけで、一般的な会計事務所ならいくら提示されるのかを即座に算出。「今の適正額」はもちろん、「資格を取得したら年収はどう変わるのか?」など、あなたの現在地と未来の可能性を診断します。
非上場株の相続評価ルールが抜本見直し -まとめ-
国税庁による非上場株の評価ルール見直しは、1964年以来となる抜本的な改正です。一部の富裕層による行き過ぎた節税策を封じ、評価方式による最大4倍もの税額格差を是正するという目的がある一方で、日本経済を支える大多数の中小企業からは、相続税の増税によって事業承継が困難になると強い反発が起きています。
現行の10%という実態と合わない配当還元率の見直しや、純資産価額との乖離幅の修正が進めば、多くの非上場企業で株価の評価額が上がることが予想されます。地域経済や雇用を守るためにも、国には事業承継税制の緩和を含めたバランスの取れた制度設計が強く求められています。
2027年度の税制改正に向けて年内に詳細が固まっていくため、非上場企業の経営者や後継者の方々は、早い段階から自社の状況を分析し、将来に向けた準備を進めておくことをおすすめします。
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加藤慧大
株式会社ミツカルプロフェッショナル 代表取締役社長









