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税理士の官報合格とは?認定合格より優遇される?

2024/11/20

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税理士の資格を取得する方法は「官報合格」と「認定合格」の2種類です。 どちらも等しく税理士として認められますが、転職時等には官報合格の方が高く評価される傾向にあります。

そこで今回は、官報合格とは何なのか、認定合格ではなく官報合格を目指すべきなのか等について解説いたします。 結論から申しますと、税理士としての基礎知識をしっかり身につけたい人には官報合格、早く税理士資格を取得したい人には認定合格が適しています。

税理士の官報合格とは

そもそも官報合格とは、免除制度を利用せずに合格することを指します。
筆記試験をすべてクリアした人は「官報」に氏名が掲載されることから、官報合格と呼ばれているのです。なお税理士試験だけでなく、司法試験等でも官報合格という言い方をします。 税理士試験の場合、5科目の試験に合格し税理士資格を得られた際に官報合格となります。

一方で、認定合格とは免除制度を利用して一部科目免除または全試験免除となり税理士資格を得た場合を指します。 認定合格者は官報に掲載されません。また試験を突破していないことから、税理士事務所によっては官報合格よりも評価されない恐れもあります。

官報合格と認定合格

官報合格と認定合格の大きな違いは、5科目の試験を受験して合格しているかどうかです。 5科目の試験を突破していれば官報合格、免除を受けて税理士となったならば認定合格となります。

認定合格とは

認定合格とは、試験免除を受けて税理士試験に合格した場合を指します。 たとえば公認会計士や弁護士資格を取得している人は、税理士試験を受験せずとも税理士資格が得られます。この場合は認定合格とされます。

また国税従事期間があることや特定の学位を取得していること等により、一部試験が免除されます。 これらの免除を受けて2科目または3科目のみ試験を受験し合格した人も、官報合格ではなく認定合格です。

認定合格の条件

認定合格となるのは試験の一部または全部を免除されることです。

一部科目免除の条件

学位による免除
特定の学科における修士または博士の学位を授与された者:試験の一部が免除

国税従事者における免除
10年又は15年以上税務署に勤務:税法に属する科目が免除 23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了:会計学に属する科目が免除

全科目免除の条件

・弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む)
・公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む)


このうち公認会計士については、公認会計士法第16条第1項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち、財務省令で定める税法に関する研修を修了した公認会計士に限定されます。

弁護士または公認会計士の資格を取得している人は、税理士試験を受験せずに税理士になれるのです。
ただし司法試験も公認会計士試験も、税理士試験より難易度が高いと言われています。 税理士試験の免除を受けたいからと言って司法試験や公認会計士試験に挑戦するのは、本末転倒かもしれません。

官報合格者の評価や待遇

官報合格を果たした人は、5科目に合格した実績を踏まえて、認定合格者よりも評価や待遇がよくなるケースが見受けられます。
ただし、すべての税理士事務所で差がつくわけではありません。

高く評価されやすい・転職に有利

官報合格は転職時に高く評価され、非常に有利に働きます。 なぜなら、税理士試験に突破できるだけの知識が身についている証明になっているからです。

たとえば法人税で合格しているならば、法人税に関して詳しいことの証明になります。このように「高い知識を身につけている証明」が5科目に及ぶ人は、5科目未満の人よりも高く評価されます。

入所してしまえば認定合格者も官報合格者も同じように働くことになりますが、官報合格による期待値が高い分、昇給や昇格が認定合格より早くなるケースがあるようです。

官報合格を条件とする事務所あり

税理士事務所や税理士法人からの求人は無数に存在しますが、その中で「官報合格」を必須条件とする募集も少数ながら見受けられます。

官報合格を必須条件としている事務所の場合、たとえ税理士資格を取得していても認定合格者は入所できません。 官報合格することで、働ける場所の幅が広がるのです。 なお認定合格を受け入れている事務所でも「全科目免除者はNG」としていることもあります。

認定合格者とさほど給与は変わらない

多くの税理士事務所では、認定合格でも官報合格でもさほど給与は変わりません。 クライアントの報酬額に応じて給与を決定する事務所が多数であるため、試験合格の仕方にはあまり左右されないのです。 しかし官報合格であれば認定合格よりも税務知識が身についていますし、クライアントや所長からの信頼も得やすいものです。

そのため、最初のうちは認定合格者と差を感じられなくとも、徐々に開いていく可能性はあります。

官報合格と認定合格どちらを狙う?

これから税理士試験に挑戦するのならば、官報合格と認定合格どちらを目指すべきでしょうか。 それぞれにメリットとデメリットがありますので、比較検討して選択してください。

官報合格のメリット・デメリット

官報合格の最大のメリットは、就職活動及び転職活動で有利になることです。 税理士試験をクリアしてきた代表税理士等は、税理士試験の難関さを身をもって体験しています。

そのため官報合格者は高く評価されますし、転職でも認定合格者より優遇されます。 また5科目についての深い知識が身に付くので、実務で活かせる場面が多いのもメリットでしょう。 デメリットは税理士試験合格までに長い時間がかかることです。

税理士試験は超難関と言われており、5科目に合格するまで十数年かかる人もいます。 学位等による免除を受けることで受験期間を短縮できる可能性が高く、早く税理士になりたい人にとっては大きなデメリットとなるでしょう。

官報合格が適している人

税理士としての深い知識を身につけたい人におすすめです。 認定合格は免除が受けられるために、税務の知識が不足するまま税理士となる恐れがあります。

クライアントからの要求に応えられない、解決策や手続きの仕方が分からないといった不安要素を抱えた税理士になるよりも、税務知識をしっかりと身につけ、税理士の名に恥じない対応ができるようになりたい人は、官報合格を目指しましょう。 現在大学生の人、深い知識を身につけたい人、定時退勤や休暇が取りやすい企業で働いている人等に適しています。

認定合格のメリット・デメリット

認定合格の大きなメリットは、受験期間を短縮できる可能性が高いことです。 たとえば大学院で修士課程を2年間修めることで、一部の科目免除が受けられます。

税理士試験は難関資格ですから、1科目ずつ勉強しても5科目合格までに十数年かかる人もいます。 2年間勉強することで確実に1科目をパスできるため、学習期間の短縮につながるのです。

デメリットは、官報合格より知識面で劣る可能性が高いことです。 税務実務で不明点が頻発したり、官報合格者よりも手続きに手こずる可能性があります。ただし実務に慣れてくると官報合格と同じように動けるようになりますので、問題となるのは就職または転職したての頃に限定されます。

就職や転職活動でも官報合格と比較されるケースがあります。 特に所長が官報合格者であったり、官報合格にこだわりがあったりする場合、認定合格者は採用活動で苦戦を強いられることになるでしょう。しかし一方で、認定合格も官報合格と同様に扱う税理士事務所や税理士法人も少なくありません。また一般企業で税理士として働く場合は、採用面や給与面等で大差がつくことはほとんどありません。

認定合格が適している人

早く、確実に税理士になりたい人に適しています。 免除を受けることで官報合格よりもスピーディーに税理士資格を取得できます。

税理士として働くには税理士資格が絶対に必要ですから、すぐにでも税理士になりたい人は認定合格を目指しましょう。 仕事が忙しくてまとまった学習時間が取りにくい人、独立開業を目指している人、年齢的に余裕がない人等におすすめです。

官報合格を実現するためのポイント

官報合格を目指すならば、長時間に及ぶ学習を想定しスケジュールを組まなければなりません。 最低限の時間で官報合格できるように、下記のポイントについてチェックしておきましょう。

教材やテキストは厳選する

勉強中に使う教材やテキストは、科目ごとに1〜3つ程度に絞り込みましょう。 税理士試験のテキストは膨大に出版されていますので、どれを選べば良いのか迷い、気になる参考書をすべて購入したくなるものです。

しかし合格のために必要な知識は、1冊でほぼ足ります。 どの参考書も「税理士に合格すること」を前提に作成されているはずですので、1冊で事足りるのです。

しかし「たくさんの事例を解きたい」「1冊ではどうしても不安」という人は、最大3冊までに厳選しましょう。 あまりに参考書が多くても解ききれませんので、1〜3冊程度に絞ってください。 なお専門学校に通う場合は、指定された参考書で学習を進めましょう。別に購入する必要はありません。

数年間の長期計画を立てる

勉強時間の豊富な大学生であっても、1回に合格できる科目は最大3科目程度と言われています。つまり学習時間があったとしても、税理士試験合格までに2年は必要なのです。 仕事をしながらの受験ならば、なおさら時間がかかります。1年に1科目合格を目指すのならば、5年の学習計画を立てましょう。

現在税理士事務所等に勤務している場合、繁忙期と閑散期の残業時間を把握し、繁忙期の学習時間を抑制して閑散期に集中的に勉強を進めることをおすすめします。 年間を通して残業が発生しにくいのなら、毎日同じ時間を学習に充て、自分のペースを崩さないように継続しましょう。

不安は成長している証拠

受験日が近づいてくると、合格できるのか不安になってくることもあります。しかし不安は成長している証拠であると前向きに捉えてください。

仮に「絶対合格ラインに届かない」と分かっていれば、不安になることもないはずです。 不安を感じているのは、合格できる可能性があると自分自身で理解している証拠です。 そして受験生は誰しも不安を感じています。あなた1人だけではありません。不安を乗り越えて勉強を継続できれば、合格はもう目前です。

官報合格から税理士になるまでの流れ

官報合格した後、税理士名簿に登録することではじめて税理士を名乗ることができます。 そして税理士名簿に登録するためには、2年以上の実務経験が必要です。 本項で、税理士試験に合格した後の流れを確認しましょう。

1.2年以上の実務経験を積む

税理士になるためには、税理士試験合格と共に2年以上の実務経験が必要です。 試験合格前の実務経験でも問題ありません。
実務経験となる業務は税理士法で定められており、国税庁が発表した法令解釈通達第2条<税理士業務>関係によると、下記が当てはまるとされています。

<実務経験となる業務>
1. 簿記上の取引について、簿記の原則に従い取引仕訳を行う事務
2. 仕訳帳等から各勘定への転記事務
3. 元帳を整理し、日計表又は月計表を作成して、その記録の正否を判断する事務
4. 決算手続に関する事務
5. 財務諸表の作成に関する事務
6. 帳簿組織を立案し、又は原始記録と帳簿記入の事項とを照合点検する事務

上記以外の「特別な判断を要しない機械的事務」は対象外です。たとえ税理士事務所等で働いていたとしても、電卓で単純な入出力事務を行っていた場合等は実務経験に該当しません。 引用:国税庁_税理士業務

2.税理士の登録申請を行う

日本税理士会連合会に登録申請を行います。 登録申請を受けようとする税理士会に申請書を提出し、税理士会による調査を受けます。 さらに、日本税理士会連合会による調査と審査を受け適格と判断された場合にのみ、税理士として登録されることになります。

なお申請時には登録免許税として6万円、登録手数料5万円の合計11万円が必要です。 引用:税理士登録の手引き

3.税理士として働く

現在の職場で働き続けることもできますし、税理士資格を生かして転職することもできます。また税理士として独立開業も可能です。 理想の働き方を検討し、それに見合う職場を探しましょう。

税理士の官報合格-まとめ

税理士試験で官報合格を果たすと、認定合格者よりも優遇されるケースがあります。 官報合格が優遇される職場で働いている場合は官報合格を目指しましょう。

ただし税理士としての経験を積み上げれば、認定合格でも官報合格と変わらない待遇が得られます。

また一般的には認定合格の方が早く税理士資格を得られます。 官報合格を目指すのか、それとも科目免除が受けられる認定合格を目指すのか、しっかり検討した上で学習計画を立ててください。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。