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税理士の平均年齢は60歳以上?!平均年齢が高い理由とは?

2024/09/05

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税理士を想像すると、40歳以上のイメージが強いのではないでしょうか。
40歳以上をイメージするのは、税理士の大多数が高年齢層だからです。

では実際、税理士の年齢分布はどうなっているのでしょうか。日本税理士協会連合会のデータから読み解いてみましょう。
税理士試験に挑戦するボーダーラインも併せて解説いたします。

税理士の平均年齢について

60代が多い?税理士の年齢層の実情

日本税理士会連合会実施の第6回税理士実態調査の結果によると、20〜30代の税理士は10.9%でした。つまり90%近くが40代以上であることが分かります。
さらに、60歳代30.1%、70歳代13.3%、80歳代10.4%でした。60歳以上の税理士が50%以上を占めているのです。

これは平成26年1月1日現在におけるデータなので、現在は若干変動している可能性もありますが、下記の理由によりほぼ同様ではないかと推察されます。
したがって税理士全体の年齢層が高いことは間違いなく「税理士は60歳以上」と感じるのはごく自然なことです。
従事年数を見ても高年齢層が多いことが示唆されています。

上記データの従事年数によると、30年以上従事している税理士は37.5%でした。従事年数40年超の大ベテランも8.1%存在することから、長期間にわたり税理士として活躍している、つまり現在は高年齢である税理士が多いことが分かります。

なお税理士に男性のイメージが強いのも、実際に男性が多いためです。
上記同調査の男女比率を確認すると、男性85.6%に対して女性14.4%でした。
男性税理士が3/4以上を占めるので、男性のイメージが強いのも当然なのです。

ただし女性税理士の人数は増えつつあります。
男女雇用機会均等法、育児休業法、女性活躍推進法等の制定により、女性の立場は大きく変わり、女性の社会進出が急激に促進されました。

その結果、上記同調査の女性税理士の登録数推移によると、平成18年(2006年)には7,961人だったのに対し、10年後の平成28年(2016年)には10,859人まで増加しています。
現在では性別に関係なく、税理士として活躍できる環境が整っているのです。

税理士の平均年齢が高い理由とは

高年齢の税理士が非常に多いという事実が浮き彫りになりましたが、なぜここまで高年齢者が多いのでしょうか。

一般的な企業では、60歳を過ぎると定年退職という言葉がちらつきます。しかし税理士の場合は60歳以降が半数以上を占めています。
このような違いが発生しているのは、下記5つの理由によるものと考えられます。

研修受講義務や更新制度がない

税理士資格は一度取得すると一生涯有効です。
たとえば公認会計士の場合は、取得してからも3年間で120単位の研修を受け続けなければ、最悪の場合は登録を抹消されてしまいます。
しかし税理士にそのような決まりはありません。

税理士法第39条2項に「税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会が行う研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」と定められており、年間36時間の研修を受ける努力義務が課せられています。

しかしながら努力義務ですので、研修を受けなかったとしても登録抹消のような処分は下されません。
なお日本税理士協会連合会会則第65条にて「税理士は、その素質の向上を図るため、本会及び所属する税理士会が行う研修を受けなければならない。」と定められていますが、罰則はありませんので受講しなくても税理士でい続けられます。
また更新制度もありません。

税理士を継続するための要件が事実上不要なため、高年齢であっても研修の必要もなく税理士として働き続けられるのです。

定年が無い

税理士には年齢制限がありませんので、生きている限り働き続けられます。
極端な話をするならば、寝たきりになったとしても、その専門知識を生かして税務相談を受けることはできるでしょう。つまり一生涯現役でいられるのです。

一般的な企業の場合、原則60歳で定年を迎えます。
そもそも定年制度が設けられている理由は「人件費を抑える」「人材の新陳代謝を促す」「若手の育成促進」等です。

日本は年功序列がまだまだ根強く、企業は高齢の従業員ほど高い給与を支払わなくてはなりません。また若手を育てて新しい社会に適応することや役職の交代による活性化といったことへの期待もあります。
ところが上記で述べた「定年が必要な理由」は、どれも税理士には当てはまりません。
税理士法人等で働く税理士に限定すれば、多少はあてはまるでしょう。しかし税法が劇的に変化しない限り、少なくとも新陳代謝や若手の育成は不要です。
さらに開業税理士にはまったく関係がないのです。

なぜなら自分自身が最先端の専門的な知識を有しており、経験も豊富で、かつクライアントとの信頼関係も出来上がっているためです。さらに税理士に年齢制限がないので、自分が引退すると決めるまでは引き続き活躍できます。

現在はアクティブシニアという言葉が定着するほど、若々しく活発に活動する高年齢者が増加してきました。
年齢など気にせずに、元気なうちはずっと働き続けたいと願う税理士は多いものなのです。

後継者がいない

少子高齢化による後継者問題も、税理士の平均年齢を押し上げている要因に数えられます。
中小企業庁の「中小企業の事業承継・M&Aに関する検討会(第1回) 配布資料(令和6年6月28日)」によると、2023年時点における経営者の平均年齢は60.5歳で過去最高を更新。70代以上の割合も増加傾向にあります。

後継者不在率もいまだ高く、60代38%、70代30%、80代23%という結果でした。高年齢になるにつれて後継者不在率は減少していますが、それでも30%近い企業に後継者がいない実情が示されています。
税理士業界もこれに漏れず、後継者がいないために高年齢になっても働き続けなければならない税理士が一定数以上いるものと思われます。

税理士事務所は通常、税理士補助や会計スタッフ等を雇用しています。経営者不在となれば従業員を全員解雇することになりますので、おいそれと事務所を畳めないのです。身内が税理士になり承継するケースも散見されますが、子どもや親戚が税理士にならなければ後継者にはできません。

また事務所内の有望な人材に引き継がせる道もありますが、第三者を後継者とする場合、身内よりも厳しく見定める傾向にあります。そのため、なかなか後継者が決まらないのです。

税理士試験の受験資格や難易度

税理士試験の制度にも着目しましょう。
2024年7月現在、税理士試験の受験資格は下記になります。
  • ・会計学に属する科目:制限なし
  • ・税法に属する科目:学歴、資格、職歴等の制限あり

会計学に属するの受験資格は撤廃されましたが、税法に属する科目の受験資格はかなり厳しく「大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者」「日商簿記検定1級合格者」「法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者」等です。

税理士試験の受験資格を満たすだけでも、人によっては数年以上の時間が必要でしょう。
たとえば日商簿記検定1級を10代のうちに合格するのは困難です。
また、税理士試験は3〜8年程度かけて合格を目指します。合格まで10年近くかかるケースも少なくありません。

令和5年度(第73回)税理士試験結果表(学歴別・年齢別)によると、年齢別受験者数は以下のとおりです。

年齢層 受験者数(人)
41歳以上 11,362
36~40歳 4,619
31~35歳 4,973
26~30歳 4,916
21~25歳 5,695
20歳以下 1,328

この結果からも、40歳以上で税理士試験を受験している、つまり40歳以上でまだ税理士になれていない人が1万人以上いることが分かります。この人々が税理士になれるのは今年以降ですから、41歳以上でようやく税理士1年目になります。
このように、税理士試験の受験資格や難関さが、税理士の平均年齢を押し上げているのです。

税務署の定年退職者

税理士になるには、原則として国家試験合格が必要です。
しかし税理士試験が免除される条件も備えられています。その1つが国税従事者です。
一定年数以上税務署に勤務した国税従事者は税理士試験の科目免除が認められています。
「国税OBの税理士」という肩書きは中小企業経営者から圧倒的な信頼をおかれます。特に税務調査時の対応に期待が寄せられるのです。

そのため、税務署を退職してから税理士を目指す人は少なくありません。
税理士になるのは60歳を超えてからですが、国税出身というアドバンテージを生かして税理士事務所で働いたり、開業したりしています。
税務署職員から税理士にジョブチェンジするので、税務署で働いている間は税理士にカウントされません。60歳を過ぎてから税理士として扱われるので、平均年齢がグッと上がってしまうのです。

日本税理士会連合会実施の第6回税理士実態調査の結果によると、税理士資格取得前の職業について、1位は税理士事務所職員43.2%、2位が公務員31.9%でした。
この調査結果における「公務員」とは、税理士会によると税務職員を指すようです。つまり上記の国税従事者です。
全税理士の30%以上を税務署の定年退職者が占めるのですから、税理士の平均年齢が高年齢になるのは至極当然と言えます。

若手税理士に需要はある?

結論から申しますと、若手税理士は引く手数多です。
若ければ若いほど税理士事務所や税理士法人で優遇されます。

60歳以上の税理士が半数以上を占めるのが現在の税理士業界です。
その理由は上記のとおりで、高年齢の税理士がクライアントから選ばれているのではありません。

主なクライアントとなる中小企業経営者の中には、若い税理士を求めている人もいます。
高年齢の税理士は、いついなくなるか分かりません。今80歳の税理士に、あと30年顧問でいてほしいと願うのは無理があります。一方で若い税理士ならば、これからも長く付き合っていけるためです。

また柔軟性に富むことやITツール等の最先端技術を使いこなしそうという期待、そして何より話しやすいことも求められる理由です。
事業継承に難があるとは言え、経営者層は少しずつ若手にシフトチェンジしています。

たとえば30代の若手経営者に60代の税理士がつくと、経営者側から見れば親世代かそれより年上ですから萎縮してしまいかねません。
一方で同年代の税理士であれば、思ったことを伝えやすく、良い関係が築きやすいのです。 当然、高年齢で経験値の高い税理士を好む経営者もいますが、若手税理士を希望する経営者もいるのが現状です。

その上で若手税理士は人数が少ないため、若手を希望するクライアントから引っ張りだこになります。

税理士は何歳までに目指すべきか

現在未経験で科目合格数ゼロならば30代がボーダーです。
すでに実務経験を積んでいる場合は年齢はさほど問題ではありません。

未経験なら30代がボーダーライン

税務に関する実務経験がなく、科目合格もゼロの場合は30代の合格を目指しましょう。
税理士になるには試験合格だけでなく2年間の実務経験も必要です。つまり税理士事務所等で最低2年間は働かなければ税理士になれません。

そして税理士事務所に未経験から転職できるのは、30代がボーダーと言われています。
そのため税理士試験の勉強と並行して、税理士事務所等への転職活動を始めることをおすすめします。

実務経験ありなら年齢は気にしない

すでに科目合格をいくつか持っており、税理士事務所等での実務経験を積んでいる場合、年齢にこだわる必要はありません。
あなたの人生設計によりボーダーラインを決めましょう。

クライアントからすれば、税理士の年齢はそれほど重要ではありません。そもそも高年齢者が多いので、50歳でも若手に入るのです。
ですから受験のボーダーラインはあなた自身が決めてください。

年齢が高くても税理士試験に合格するためには

勉強を継続すること、習慣化することです。
記憶力の面で若い受験生には劣るかもしれませんが、そこは努力でカバーできます。
税理士試験は数年以上かけて合格を目指すものです。
ですから試験勉強を習慣化し継続することで、無理なく税務の知識を身につけられます。

苦手な科目が多い場合は大学院進学も検討しましょう。
一定の要件を満たした大学院を修了すると、科目の一部が免除されます。
大学院で学生気分を満喫できますし、会社以外の人と出会うチャンスでもあります。人生を豊かにするという意味でも、進学して損はないのです。

まとめ

税理士の平均年齢はかなり高齢です。
20代30代は超若手。40代50代でも若手と表現されることもあるでしょう。
ただしその原因は上記で示したとおりで、社会やクライアントから高年齢の税理士が望まれているためではありません。可能な限り早い段階で税理士になった方が後々有利に働きますので、受験を迷っている人は今すぐに勉強を開始しましょう。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。