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個人事業主が税理士を雇うべき理由。メリットと税務管理のリスクを徹底解説。

2024/09/11

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個人事業主として開業した場合、税理士を雇うか迷いますよね。税理士への報酬も安くはありませんので、開業したばかりの頃は特に売上に直結しない経費を抑えたいものです。
結論として、個人事業主でも税理士は雇うべきです。
その理由は、あなたが税務のスペシャリストではないためです。

今回は個人事業主が税理士を雇うべき理由や、享受できる大きなメリットについて解説いたします。

個人事業主が税理士を雇うべき理由とは?

個人事業主が税理士を雇うべき理由は大きく2点です。
経営者自身が税務管理を行うことで税務上のリスクが発生することと、今後の経営が上向く大きなメリットがあることです。詳しく解説いたします。

個人事業主自身での税務管理のリスク

入力漏れや計算ミスに対応できない

多くの場合、個人事業主は税務のスペシャリストではありません。
エンジニアやイラスト等、販売に携わっている分野に関してはプロでしょうが、税務に関してそれほど膨大な知識や経験を有しているわけではないはずです。
現在ではクラウド会計が進化しており、経理や税務に精通していない人でも記帳や確定申告等が簡単にできるようになりました。

しかしクラウド会計が提供してくれるのは、記帳が可能なフォーマットです。
そのため、入力者による入力漏れや計算ミスが発生していたとしても、クラウド会計が是正してくれるわけではありません。

結果として、誤った内容で申告してしまうのです。
申告内容に誤りがある場合、税務署にもスルーされることもありますが、税務調査の対象となった際に指摘を受けることになります。
指摘が入れば追徴課税や是正の作業が発生し、不要な作業が増えてしまいます。

時間をかけて税務の知識を身につけなければならない

また記帳以上のこと、たとえば「なぜこれをここに入力するのか」「節税するにはどうすれば良いのか」といった質問に個別に回答してくれるものではありません。

たとえば車両の買い替え時には複雑な記帳が必要になりますが、クラウド会計は記帳方法を手取り足取り教えてくれるわけでもなければ代わりに入力してくれるわけでもないのです。
個人事業自身の責任で記帳しなければならず、正確な記帳のために経理や税務に関する正しい知識を身につけなければなりません。

税務の知識を個人事業主が身につけたとしても、売上には直結しないでしょう。
もちろん、財務諸表の見方や未来会計について学ぶことで、キャッシュフローの改善や利益の向上等につなげることは可能です。しかし販売している分野を極めた方が、売上向上につながりやすいと言えます。記帳をしている間に「こんなことより専門の分野について勉強したい」「売上につながる仕事がしたい」と感じたことはないでしょうか。

記帳や税務の勉強をする時間を、売上に直結する作業に割けるならば、あなたの売上はさらに伸びるでしょう。反対に申しますと、記帳や税務といった売上につながりにくい作業をする時間は、経営者としてあまり増やすべきではないのです。

税務調査が入りやすい・指摘を受けやすい

顧問税理士がついていない法人や個人事業主と比較して、税務調査が入りやすくなると言われています。

その理由は、申告内容に誤りのある可能性が高いためです。
税務調査は法人、個人を問わず、5〜7年程度に1度入る調査です。正確な記帳を行い、正しく申告していれば税務調査が入っても特に問題はありません。

しかしながら税務調査の対応はかなり大変です。
数年分の申告書類や見積書等の書類だけでなく、求められれば個人事業主のプライベート用携帯電話の履歴まで見られます。

このような中で税務調査官の質問に適宜回答しなければなりません。
また顧問税理士がいない場合、税務調査で指摘を受けて追徴課税等が発生する危険性が高まります。顧問税理士がいるということは、記帳や申告を正確に実施しチェックしている証明でもあるのです。

そのため顧問税理士がいない個人事業主に対しては、比較的厳しい税務調査がなされ、結果として指摘を受けやすくなっています。

税理士の専門性が個人事業主にもたらすメリット

記帳や申告の悩みから解放される

記帳が面倒、確定申告の作業をやりたくないと感じている個人事業主は少なくありません。
確定申告シーズンになるとストレスをあらわにする経営者もちらほらお見かけします。
記帳や申告といった税務処理は、多くの個人事業主にとって大きな悩みでありストレスの元なのです。

税理士を雇った場合、これらのストレスは一気に無くなります。
個人事業主がやるべきことはレシートや領収書、売上実績等の書類を送付するだけ。あとは税理士が正確に記帳し、申告を完了させてくれます。

記帳代行を依頼しなかったとしても、個別の記帳方法について相談できるため誤りを限りなく減らせます。また確定申告作業は丸投げできるので、毎年2〜3月に焦る必要もありません。ストレスも悩みも税務に関わる時間もグッと減らし、売上に直結する作業時間を増やせます。
特に2〜3月頃が繁忙期という個人事業主にとっては、大きなメリットとなるでしょう。

税務調査を任せられる

税務調査は個人事業主であっても実施されます。
前述のとおり顧問税理士がいない個人事業主は、顧問税理士がいる個人事業主よりも税務調査が入りやすく指摘を受けやすいのが現状です。

そのため顧問税理士を雇うことは、税務調査を受ける回数を減らすことにもつながります。
また税務調査そのものの対応を税理士に任せることもできます。
もちろん個人事業主本人も立ち会いますが、税務調査官からの鋭い指摘を、税理士が受け流してくれることもあるでしょう。

税務調査は適正な申告を行っていれば顧問税理士がいなくとも何ら問題ありませんが、雇っていれば税務調査の回数も指摘を受ける頻度も減らせます。
面倒な応対も引き受けてくれるので、税務調査対策になるという意味でも税理士を雇うことはメリットが大きいのです。

税務相談ができる

税務相談は税理士の独占業務です。そのため税理士しか個人事業主からの税務相談には乗れません。
税理士にできる税務相談には下記のようなものがあります。

  • ・医療費控除の申告の仕方を教えて欲しい
  • ・税務調査で事前に準備しておくことは?
  • ・補助金や助成金の対象となる設備は?
  • ・後継がいなくて困っている
  • ・急に親戚が亡くなって相続問題が発生している
  • ・不動産を息子に譲りたいので節税効果が最大になる方法を教えてほしい 等

税金が絡む相談ならば何でも相談できるので、何かトラブルが発生した時でも落ち着いて対処できるでしょう。
なお顧問税理士でなくとも、単発で相談に乗ってくれるケースもあります。

ただしその場合、突っ込んだアドバイスは受けられません。なぜなら財務諸表等の情報がありませんし、個別の事情にも詳しくないためです。
長年伴走している顧問税理士ならば、あなた個人の事情も経営状況も把握していますので、ニーズにマッチしたアドバイスが受けられます。

キャッシュフロー等の改善

税理士は損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー表等を作成し分析できるため、事業のお金の流れを正確に把握できます。
そのためボトルネックになっている箇所や今後の資金繰り等を、ある程度理解しているのです。

税理士を雇っていない場合、財務諸表から数字を拾って読み取る作業も個人事業主本人の仕事です。たとえば仕事に集中してしまい支払いを失念する、逆に売上入金が遅れていることに気づかないといったケースが見受けられます。

このような事態が続くと、取引先からの信頼は低下しますし、キャッシュフローも悪くなります。また、黒字なのに手元にお金がないといった状況に陥る個人事業主も少なくないものです。

顧問税理士がいれば、お金の流れを適正化するためのアドバイスをくれますし、場合によっては支払いや入金確認の代行を依頼できることもあります。
キャッシュフローの改善は事業の安定化でもあります。事業を安定的に継続していくために、税理士という存在は不可欠なのです。

税理士との相談を通じた税務管理の強化

税務管理とは、税務全般に対する危機意識を持ち、納税等を正しく行えるよう管理することです。企業規模が大きいまたは老舗であるほど税務管理は徹底されています。そして個人事業主であっても税務管理は必要です。
本項では税理士との税務相談による税務管理の方法とメリットをまとめました。

相談から始める税務管理の改善

まずは自身の税務管理が他の経営者と比較してどうなのか、税務署から求められているレベルなのかどうかを相談しましょう。
現在の立ち位置を知ることで、何をすべきかが見えてくるものです。
税務管理に不備があると指摘された場合は、具体的な対策について相談してください。
必要となる対策は事業や規模等によって異なりますので、税理士からアドバイスを受けるのが最善です。

なお記帳代行等を依頼していたとしても、税務管理についての相談はしておきましょう。
レシートやその他の資料の保管方法、またキャッシュフロー等の様々な範囲でのアドバイスが受けられます。

税務コンプライアンスのリスク回避

税務コンプライアンスとは、税務について経営責任者が自ら適正申告の確保に積極的に関与し、必要な内部統制を整備することを指します。
税務コンプライアンスを分かりやすく言えば「法律に基づいて正しく申告しましょう。そのために必要ならば、情報の周知や勉強会等を実施しましょう」というものです。
税務コンプライアンス違反となるものは、領収書の管理が徹底されていない、記帳内容に誤りがある、正しく家事案分されていない等です。

このような税務コンプライアンス違反を引き起こした場合、信頼の低下や顧客離れのみならず、追徴課税が科されたり、従業員による横領を招いてしまったりすることにもなります。
このようなリスクを回避するためには、税理士に相談するのが最適です。
税務のプロフェッショナルである税理士に税務コンプライアンスの徹底を依頼しましょう。

節税機会の逸失を回避

経営者ならば誰もが1円でも多くのお金を残したいと考えるものです。その点、税理士が独自の観点から節税のアドバイスをしてくれます。

たとえば不動産の売却時期をずらす、生前贈与を活用する、住宅ローン控除やふるさと納税制度を上手に活用する、各種特例を利用して節税するといったことを提案してくれます。
税法や各種特例は毎年変更されますので、税理士でもなければ最新情報を追いきれません。プロに相談することで最適解を導き出してくれます。

ただし税理士が提案できるのは「法の範囲内においての節税」です。
法律を無視した節税は脱税行為にあたりますので、税理士は提案できません。したがって納税額を毎年0円にする、といった極端な節税アドバイスは期待しない方が良いでしょう。

税理士を活用した売上向上の可能性

税理士は財務諸表を正確に読めるため、個人事業主の売上向上に貢献する可能性があります。

税理士による売上分析と改善提案

財務諸表の数値から、売上や経費の使い方、利益の出方等について分析し、ボトルネックになっている箇所を見極めて改善の提案をしてくれることがあります。

財務諸表を読むためには税務や経理を正確に理解しておく必要があります。当然、個人事業主本人が勉強すれば読めるようになりますが、本業に時間と労力を注ぎたいのが本音ではないでしょうか。

その点、税理士はプロとして分析や改善の提案をしてくれるため、取り組みやすく結果につながりやすいアドバイスが期待できます。
なお一部の税理士は、個人事業主自身が思い描く将来の売上やキャッシュフローを実現させるための「未来会計」を提供してくれることもあります。

まとめ

個人事業主であっても税理士は雇うべきです。
なぜなら税務管理がしやすくなり、ストレス軽減や売上向上といった大きなメリットが享受できるためです。

売上に直結しないため一歩が踏み出しづらいものですが、まずはあなたに適した税理士を探すことから始めてはいかがでしょうか。
税理士は大勢いますので、時間をかけてじっくりと最適な税理士を選び抜きましょう。

個人事業主が税理士を雇うメリットの再確認

  • ・ストレスや悩みから解放される
  • ・税務調査を任せられる
  • ・税務相談ができる
  • ・キャッシュフロー等の改善 等
執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。