INDEX

おすすめ記事

記事を全て見る

税理士にダブルライセンスは必要?取得すべき人の特徴とおすすめの資格

2024/10/25

INDEX

税理士資格は日本3大難関資格とまで言われる、合格が難しい資格として認知されています。独占業務も法律で設定されており、非常に強力です。 しかし税理士の業務はAIに奪われると世間では言われています。それではダブルライセンスが必要なのでしょうか。 結論から申しますと、ダブルライセンスはなくても問題ありません。しかしダブルライセンスがあれば選択肢も給料も増える可能性が高まります。

税理士にダブルライセンスはなくてもよいが…

最初にお伝えしたいのは、無理をしてダブルライセンスを取得する必要はないということです。 前述しましたように、税理士資格は難関資格ですし、独占業務も設定されています。

AIは単純作業が得意なので、記帳代行等は将来的にシステムが行う仕事になるかもしれません。しかしIT技術はまだその段階には達していませんし、そもそも単純作業以外にも税理士の仕事は山ほどあります。 たとえば経営者から悩みを聞き取り、その悩みの根本を探ること。売り上げの障害となっているボトルネックを探ること。企業に合わせた節税や補助金の提案。新規事業参入時期の選定、等。 現在のAIにはできない高度な業務が、税理士の手から離れることはありません。 そのためダブルライセンスがなくとも、税理士資格さえあれば問題はないのです。

一方で、ダブルライセンスを取得することで間口が広がる、クライアントからも信頼が高まる、自信がつく等のメリットがあることも見逃せません。 これらを総括すると、ダブルライセンスはなくても問題ありませんが、余裕があるのならばダブルライセンスを取得すると良い、という結論になります。 あくまでもあなたのビジネスパーソンとしての価値にプラスとなるものであり、ダブルライセンスがなければいけないわけではないのです。

税理士がダブルライセンスを取るメリット

税理士がダブルライセンスを取得すると、様々なメリットが享受できます。 その中からいくつか重要なメリットを紹介します。

クライアントからの信頼が高まる

ダブルライセンスを取得していることで、クライアントの信頼度が上がります。 たとえば税務コンサルティングを提供する場合を想像してみましょう。税理士資格のみの場合、クライアントに伝えられるのは税務範囲に限定されるかもしれません。コンサルティングに関する知識が薄いため、クライアントからの信頼を得るまでに時間がかかるでしょう。

一方で、税理士資格と共に中小企業診断士の資格を取得していれば、クライアントからの印象は大きく変わるはずです。中小企業診断士を受験するまでに学んだ内容が実務にいかせますし「コンサルティングの資格持ち」という安心感を与えられます。

個人事業主のクライアントには、FP資格等が有効かもしれません。税務範囲以外のファイナンシャルプランを総合的に提案できるため、クライアントの満足感を向上させられるでしょう。 このようにクライアントの信頼を勝ち取り、業務をスムーズに遂行する上で、ダブルライセンスは大いに役立ちます。

受注業務が広がる

たとえば税理士資格にプラスして行政書士資格を取得していた場合、税務業務だけでなく行政書士業務も受注できることになります。 特にスタートアップのクライアントは、税務に限らず書類作成等の雑務をこなさねばならず、このような煩わしい仕事を税理士に一括で依頼できるならば非常に喜ばれるでしょう。

他にも、社会保険労務士の資格があれば就業規則の作成代行等が請け負えるようになります。就業規則の作成代行等は社労士の塞栓業務なので、資格を取得していなければ業務を提供できません。そのため社労士資格をダブルライセンスとしている場合も非常に重宝されます。

上記のように、受注業務が広がればクライアントに重宝されるばかりでなく、顧客単価も増加します。顧客単価が上がれば税理士事務所としての売上も上がりますし、あなた自身の評価もアップするでしょう。

転職しやすくなる

ダブルライセンスを持っていると、税理士資格1本の人よりも転職しやすい傾向にあります。
その理由は
①ダブルライセンス保有者が優遇される
②転職できる業界が広がる
の2点です。

税理士事務所では、まず税理士資格を取得している人が優遇されます。 税理士資格がなければ税理士とは名乗れませんし、独占業務を行えないので当然です。しかしダブルライセンスを持っていれば、事務所としてもできる業務が増加しますし、クライアントからの信頼もアップします。そのためダブルライセンスを持っていると、転職にも役立つのです。

そしてもう1つの理由は、税理士業界以外でも活躍できるチャンスが生まれることです。 たとえばダブルライセンスとして行政書士を取得した場合、税理士業界でも行政書士業界でも活躍できるようになります。そのため選べる求人数がグッと増えるのです。 税理士は独占業務を遂行できる素晴らしい職業ですが、他にも転職できると考えると心の余裕が生まれるのではないでしょうか。

自信がつく

税理士に合格したという事実は、あなたの大きな自信となったのではないでしょうか。 同じように、別の資格に挑戦し合格できたという事実は、あなたに大きな自信を与えてくれます。

税理士として働いていても、時には傷つくことや自信を失うこともあるでしょう。そんな時にあなたを支えてくれるのは、あなた自身の価値やこれまでの経験です。 自分の力で勝ち取った資格は自信となり、あなたの人生を照らしてくれます。 また「税理士を辞めてもこの資格を生かして別の業界で働ける」と思えることで、辛いことがあっても前を向けるようになるかもしれません。

勉強の習慣が身につく

税理士は一生勉強し続けるものですが、勉強時間や量は受験時よりも落ちるものです。 ダブルライセンスを取得するために勉強するのならば、税理士試験の受験時のように勉強することになり、脳の活性化も促されます。 勉強の習慣が身につけば、税理士としての勉強も苦にはならないでしょう。

税理士がダブルライセンスを取るデメリット

ダブルライセンス取得には、デメリットも存在します。 資格試験の勉強を始める前に、デメリットについても確認しておきましょう。

勉強に時間とお金がかかる

ダブルライセンスを取る最大のデメリットは、資格取得までに時間とお金がかかることです。 たとえば司法書士を受験する場合、勉強時間の目安は2,000時間程度、予備校の費用が10〜50万円程度かかります。受験料は8,000円です。

これだけの時間とお金があれば、家族と旅行にも行けますし、親孝行もできるでしょうし、子どもの学費を積み立てられますし、美味しいものをたくさん食べられるでしょう。 時間とお金をダブルライセンスに使うことで、やりたいことができなくなるかもしれません。 目指す資格によって、必要となる時間もお金もまちまちです。 費用対効果やプライベートをどれだけ削るかをしっかり検討した上で、ダブルライセンスを取得するのか、ダブルライセンスを取るならばどの資格を取得するのかを決断してください。

ダブルライセンスを取るべき税理士の特徴

基本的に、税理士はダブルライセンスがなくても仕事はなくなりません。 中小企業が存続する上で欠かせない独占業務が税理士には設定されていますので、他の資格がなくても社会から必要とされているのです。 しかし下記に当てはまる人は、ダブルライセンスを取得した方が良いのかもしれません。

既存顧客から望まれている

担当しているクライアントから希望されている場合は、ダブルライセンスの取得を検討しましょう。

たとえば「契約している行政書士と相性が良くない。税理士に行政書士の業務範囲も依頼したいので取得して欲しい」と要望を受けるケースです。 クライアントから望まれている場合、その資格を取得すれば確実にその1社から仕事が舞い込みますし、あなたの売上も上がります。 売上は給料アップにもつながるので、ダブルライセンスを取得後すぐに給料という形で還元されます。 仕事と両立できそうであれば、取得を検討しても良いのではないでしょうか。

受注できる業務を増やしたい

担当1社あたりの売上高を増やしたい場合、担当クライアントの売上に貢献することの他に、幅広い業務を請け負うことも効果的です。 たとえば行政書士の資格を取得し、税務業務だけでなく行政書士の仕事も取れるようになれば、1社あたりの売上は確実に増額となり、あなたの給料も増えるでしょう。 事務所内での立場も向上するかもしれません。ダブルライセンスで損をすることがないのです。

新たな分野へ転職したい

税理士業界を一度飛び出し、新たな業界に転職するならば、ダブルライセンスの取得がおすすめです。 たとえば経営コンサルタントの業界に転職するならば、中小企業診断士の資格と税理士資格の両方が評価されます。 強みが1つから2つに増えるので、希望する転職先に採用されやすくなるでしょう。 ただし、その分野と関連性の薄い資格を持っていても評価の対象にはなりません。どの資格を取得するかはじっくり検討すべきです。

税理士におすすめの資格6選

ダブルライセンスにおすすめの資格を紹介いたします。 上から順におすすめですので、ぜひ検討してください。

行政書士

官公庁に提出する書類の作成や手続き代行等を担える資格です。 経営者にとって欠かせない存在として、税理士資格との相性も抜群です。 税理士ならば試験免除で行政書士になれるという点でも非常におすすめ。

項目 内容
行政書士になるには 税理士資格があれば試験免除。行政書士会への登録のみ。
勉強時間目安 不要
登録料等 約30万円。地域によって異なる。

社会保険労務士

行政書士と並びおすすめの資格です。 労働者名簿や就業規則等の作成、労働保険の書類の作成や提出代行、健康保険等の加入・脱退手続き等を独占業務とする資格です。 こちらも経営者が必要とする業務を受けられるため、ダブルライセンスとして有効です。

項目 内容
社会保険労務士になるには 1. 社会保険労務士試験に合格
2. 2年以上の実務要件(試験前後問わず)
3. 事務指定講習修了
4. 社会保険労務士協会への登録
勉強時間目安 約1,000時間
登録料等 年会費を含めて20〜30万円前後。地域によって異なる。

中小企業診断士

コンサルティング業務を提供している、提供したい税理士におすすめの資格です。 独占業務はありませんが、経営相談に乗れる専門家としての評価は高く、コンサルティング業界では重宝されます。 税務コンサルタントとしての活躍を目指すならば、取得しておくべきでしょう。

項目 内容
中小企業診断士になるには 1. 7科目の1次試験突破
2. 2次試験突破または養成課程を修了
3. 中小企業診断士登録
勉強時間目安 約1,000時間
登録料等 年会費を含めて10万円前後。地域によって異なる。

司法書士

司法書士は、不動産登記や商業登記の申請代理等を独占業務に持つ資格です。 会社運営等に関わる資格としておすすめです。 ただし勉強が長期に及ぶことから、取得は慎重に検討してください。

項目 内容
司法書士になるには 1. 司法書士試験に合格
2. 新人研修と特別研修
3. 能力認定考査合格
4. 日本司法書士連合会に登録
勉強時間目安 約2,000時間
登録料等 年会費を含めて40〜50万円前後。地域によって異なる。

USCPA(米国公認会計士)やEA(米国税理士)

USCPAとは、アメリカにおける公認会計士の資格です。USCPAを持っていても日本国内で公認会計士の独占業務を行うことはできませんが、取得していると国際税務の知識と高い英語力が評価されます。

項目 内容
USCPA(米国公認会計士)になるには 1. USCPA試験の受験要件を満たす
2. アメリカまたは日本国内で受験し合格する
3. ライセンス申請・取得
勉強時間目安 1,500時間前後
登録料等 10万円前後。申請した州と為替により変動。

語学系資格

TOEICや英検といった語学系資格もダブルライセンスとして役立ちます。 主に中国やアメリカ等との貿易や海外展開を検討しているクライアントにとって、語学力の高い税理士は重宝する存在です。 ここではTOEICにおけるビジネスレベルとされる700点を目指す場合についてまとめます。

項目 内容
TOEIC700点を目指すには TOEICの公開テストを受験
勉強時間目安 500時間前後
登録料等 不要。受験料のみ。

まとめ

税理士はダブルライセンスがなくても問題ありませんが、あれば人生の選択肢が広がりますし、クライアントから喜ばれます。 本記事で紹介したダブルライセンスで興味のあるものが見つかれば、ぜひ詳細をお調べのうえ挑戦してみてください。 今後のあなたを支えてくれるはずです。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。