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経理の仕事はAIによってなくなる?最新のトレンド分析

公開日:2025/04/25

最終更新日:2025/04/25

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「経理って、いつまで人の仕事なんだろう?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
近年、“経理はAIによってなくなる”という声がさまざまなメディアで聞かれるようになりました。
たしかに、請求書処理や仕訳などの定型業務は、すでに自動化が始まっています。
一方で、“経理が本当にいなくなるのか?”という問いに対しては、簡単に答えが出せるものではありません。
実は今、経理という仕事は「なくなる」のではなく、「進化する」真っ最中なのです。

この記事では、経理業務の基本から、AI時代に求められるスキル、そして今後のキャリアパスまでを詳しく解説します。
経理として働くあなたにも、これから目指すあなたにも、きっとヒントになるはずです。

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経理業務とは?

経理業務とは、企業のお金の流れ(収入・支出)を記録・管理し、正確な会計データを作成する業務のことです。企業の経営判断や税務申告の基礎となる、とても重要な業務です。

主な業務内容:

業務内容 説明
仕訳・伝票処理 取引を会計上のルールに従って記録する
入出金管理 現金や預金の出入りを管理する
請求書・領収書処理 発行・受領・保管・確認などを行う
給与計算 社員の給与や社会保険料の計算と支払い
月次・年次決算 月末・年末に帳簿を締めて財務状況を明らかにする
税務申告補助 法人税・消費税などの申告に必要なデータ作成
会計ソフト管理 会計ソフトへの入力・データ整理


経理がなくなると言われている理由は?

以下の理由で、経理はなくなると言われています。

理由カテゴリ 内容 説明
① 業務の定型性 作業がルール化・繰り返し型 経理業務の多くはパターン化されており、AIやRPAで代替しやすい
② AI・自動化技術の進化 自動仕訳・OCR処理の実用化 領収書や請求書の処理がAIで自動化され、人手が不要に
③ クラウド会計ソフトの普及 freee、マネーフォワードなど 中小企業でも簡単に使える会計ソフトが業務の大部分を自動化
④ 外注・BPOの拡大 経理業務の外部委託が進行 税理士事務所やシェアードサービスへの外注が一般化しつつある
⑤ 働き方改革・人件費削減 効率化・省人化の流れ 定型業務に人を割くよりも、戦略業務に人材を集中させたい企業が増加
⑥ 電子帳簿保存法・インボイス制度対応 デジタル化の義務化 電子化・クラウド化が法制度によって加速し、紙と人手の処理が減少


ただし、経理業務の中でも以下のような部分は今後も人の判断が必要とされます。

残る可能性が高い業務 理由
経営判断にかかわる分析 単なる数字ではなく、意図の読み取りや提案が求められる
税務・会計の制度変更対応 法律改正への柔軟な対応が必要
社内調整・コミュニケーション 他部門との調整や現場の状況把握が必要
不正リスクのチェック 単なるルールでは発見しづらいイレギュラーな取引


「経理やめとけ」の真理については以下の記事をご参照ください。

経理業務の現状とAIの影響

現在、多くの企業では経理業務において以下のような課題が顕在化しています。特に中小企業では人手不足が深刻であり、業務の属人化も進んでいます。また、制度改正への対応やアナログ作業の多さにより、日常業務が煩雑になっています。

人手不足により、経理人材の採用・定着が難しい

制度対応(インボイス制度・電子帳簿保存法など)で業務が増加

・月次・年次決算業務などに追われ、戦略的業務に時間を割けない

紙中心の業務フローが残る企業も多く、DX(デジタル化)が遅れている

AI導入が進む背景

こうした課題を解決する手段として、AIの導入が加速しています。背景には、業務の定型性や技術進化、社会的ニーズなどが複合的に関係しています。

・経理業務の多くがルールベースの定型作業であり、自動化と相性が良い

OCRや自然言語処理、機械学習などのAI技術が実用レベルに向上

クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)の普及により、AI機能が使いやすくなった

・法改正対応の煩雑さを受け、AIによる書類処理のニーズが高まっている

働き方改革やコスト削減の一環として、定型業務の効率化が求められている

経理業務でAIが担う役割

実際にAIは、以下のような業務を代替・支援しています。従来、人手で行っていた作業が、AIによって高速かつ正確に処理されるようになっています。

自動仕訳:領収書・銀行明細などをもとに、AIが勘定科目を自動で判断・記帳

請求書処理:OCRで請求書を読み取り、AIが内容を判別してシステムに反映

経費精算の支援:交通費の自動ルート判定や、不正な経費の検出

決算業務の効率化:過去データからAIが予測し、決算の精度とスピードを向上

不正検知:取引パターンの異常をAIが分析し、不正の兆候を自動検出

財務レポートの作成:AIが数字をもとにグラフ・レポートを自動生成

社内問い合わせ対応:会計ソフトの使い方など、社内向けQ&AをAIが自動応答

経理職の仕事内容は以下をご参照ください。

AIにより変わる経理のスキルセット

これから必要とされるスキル

AIが定型業務を代替する中で、経理担当者には次のようなスキルが重要になります。

■ デジタルスキル・ITリテラシー

会計ソフトやクラウドツールの操作スキル
AI・RPAなどの自動化ツールへの理解と活用力
Excelの高度な関数・マクロ・データ分析力

■ 分析・提案力

財務データの読み取りと課題抽出
経営層へのレポーティングと提案力
予算編成・管理会計の知識

■ プロジェクト推進力・改善志向

業務プロセスの見直し・効率化の推進
他部署との連携・調整による業務改善

■ セキュリティ・法令対応力

データ管理・個人情報保護に関する知識
電子帳簿保存法やインボイス制度などの法令理解

スキルカテゴリ スキル項目 説明
デジタルスキル 会計ソフト・クラウドツールの活用 freee、マネーフォワードなどの操作・活用力
Excel・スプレッドシートスキル 関数、ピボット、マクロなどの高度な表計算スキル
RPA・AIツールの理解 単純作業の自動化やAIによる仕訳・分析支援の活用力
分析・思考力 財務分析力 数字から傾向や課題を見つける力
課題発見・提案力 数値に基づき、改善案や戦略を立案・提案する力
経営理解 管理会計の知識 原価計算・部門別損益などの実践力
経営視点 収益性・投資対効果などを意識した意思決定サポート力
対人スキル コミュニケーション力 他部署や経営層との連携・報告・交渉能力
チームワーク 他の担当者と連携しながら効率よく業務を進める力
学び続ける力 情報収集力 会計基準・制度・ITの変化にアンテナを張る習慣
自己研鑽・アップデート力 資格取得や研修などを通じてスキルを継続的に伸ばす姿勢


専門知識と人間力の重要性

AIが数値処理やパターン認識を担うようになる中で、人間にしかできない領域=専門知識と人間力の重要性が増しています

■ 専門知識の深化

税務・会計基準の理解と応用力
企業特有の会計処理や制度対応の柔軟性
経営戦略と会計情報を結びつける視点

分類 項目 説明
専門知識 会計・税務知識 会計基準、法人税・消費税などの制度理解と実務への応用力
管理会計・原価計算 予算編成、原価分析、事業部の収支管理などのスキル
法令・制度対応力 電子帳簿保存法、インボイス制度、内部統制などの理解と運用
DX・ITリテラシー クラウド会計、RPA、AIツールなどの活用力
経営視点 財務データをもとに経営課題を読み解き、提案する力


■ 人間力(ソフトスキル)

社内外との円滑なコミュニケーション能力br> ・信頼される誠実さと倫理観(内部統制の担い手として)
問題発見力と状況判断力(イレギュラーな事態に強い)
学び続ける姿勢(制度変更や技術革新への対応力)

項目 説明
コミュニケーション力 経営層・現場・他部署との円滑なやりとり、調整・提案・傾聴の能力
誠実さ・倫理観 情報管理やコンプライアンス遵守、不正への感度、信頼される姿勢
柔軟性・適応力 制度変更・業務改革・システム導入など、環境変化に対応する力
問題発見・判断力 異常値や業務上のリスクを見つけ、状況に応じて判断・行動する力
学習意欲・向上心 新しい会計基準・ITツール・制度に対する積極的な学びの姿勢


経理の将来性とキャリアパス

AI時代における経理の役割

AIや自動化が進む中で、「経理=なくなる仕事」と誤解されることがありますが、実際には経理の役割は形を変えて進化しています。定型作業の多くがAIに代替される一方で、人間にしかできない業務がより重要になっています。

経理に求められる新たな役割:

戦略的意思決定のサポート(データ分析、経営層へのレポート作成)
業務プロセスの見直し・改善提案
ガバナンス・コンプライアンスの担保
事業部門との連携による予算管理・利益改善の提案
AIやシステムの導入・運用を支えるブリッジ役

分類 具体的な役割 解説
データ活用・分析 経営判断のための財務データ分析 予算・実績のギャップ分析、KPI管理、意思決定支援など
戦略的パートナー 経営企画や事業部門との連携 数字をもとに、コスト削減や利益改善の提案を行う
プロセス改善・効率化 業務フローの見直し・自動化の推進 RPAやAIを活用し、決算早期化・人的コスト削減を実現
コンプライアンス対応 内部統制・法令順守の強化 不正防止やインボイス制度・電子帳簿保存法などの対応
IT活用推進者 会計システムやAIツールの導入・活用 システム導入・運用の実務支援や社内教育も担う
ガバナンス強化 リスク管理と経営モニタリング 経営数値の透明化、経営陣への定期レポート提出など
ヒューマン・ブリッジ 数字と現場をつなぐコミュニケーター 数字の背景にある現場の動きを理解し、説明・調整を行う


新しいキャリアの可能性と展望

AIが経理業務の一部を代替することで、経理職にはより上流の業務・専門的な分野へのキャリア拡張が求められるようになります

代表的なキャリアパスの例:

分野 キャリアの方向性 求められるスキル
✅ 経営企画・CFO候補 経営層に近い立場で、財務戦略やKPI管理を主導 経営視点・財務分析・プレゼン力
✅ 管理会計・事業支援 原価計算や事業部の収支改善に貢献 数字の背景理解・コミュニケーション力
✅ 内部監査・ガバナンス 不正防止・法令対応などリスク管理を担当 監査知識・誠実性・内部統制への理解
✅ DX・IT会計人材 会計システム導入や自動化推進を担当 RPA/AIツール知識・ITリテラシー
✅ 会計士・税理士・コンサル 専門家として独立や法人支援に活躍 高度な専門知識・提案力・信頼構築


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まとめ

経理業務は、今も企業運営に欠かせない重要な役割を担っています。
しかし、AIや自動化の進展により、単純作業は確実に機械へと移行しています。
それでも経理の仕事がなくなるわけではなく、「どう変わるか」が問われる時代になりました。
これからは、経営視点を持ち、ITや分析にも強い“進化型経理人材”が求められます。
そのためには、専門知識に加えて、人間力や学び続ける姿勢が不可欠です。 スキルを磨けば、経理から経営企画・DX推進・CFO候補など、キャリアの幅は大きく広がります。

この記事が皆様のお役に立てば幸いです。

執筆 ・ 監修

税理士 平川 文菜(ねこころ)

税理士|熊本出身|2018年京都大学卒業| 在学中より税理士試験の勉強を始め、2018年12月に税法三科目(法人・消費・国徴)を同時に合格し、官報合格を果たす。 2018年9月よりBIG4 税理士法人の一つであるKPMG税理士法人において、若手かつ女性という少数の立場ながら2年間にわたり活躍。税務DDやアドバイザリーといった幅広い業務に従事。 2020年9月より、外資系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループに転職。戦略策定から実行支援まで幅広い業務に従事。2024年12月にフリーランスとして独立。