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2024/12/23
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税理士試験とは?概要と受験資格について
税理士試験は、税理士として活躍するために必要な知識と能力を証明するための国家試験です。
日本国内で税務に関する専門的な業務を行うには、この試験に合格し、税理士登録を行うことが求められます。税理士試験は、税務、会計に関する高難易度な知識が問われ、試験合格には平均で8年から10年かかると言われています。
受験資格については、学歴や職歴に関する一定の条件を満たす必要があります。具体的には、大学や短期大学を卒業した者、もしくはこれと同等以上の学歴を有する者、または税務、会計に関する実務経験を有する者などが挙げられます。これにより、受験者は一定の基礎知識を有していることが前提とされています。
この試験は、税理士としての専門性を証明するための重要なステップであり、合格することでさまざまな職業上のメリットを享受できます。税理士は、企業や個人の税務をサポートし、税金に関するアドバイスを行う専門家として、社会的にも高い信頼を得ています。そのため、税理士試験に合格することは、一生のキャリアにおいて大きな意義を持つものといえるでしょう。
税理士試験の基本情報
試験は毎年一回、通常は8月に行われ、国税庁が主催しています。
受験者は、必須科目である「簿記論」と「財務諸表論」のほか、選択科目である「所得税法」「法人税法」「相続税法」「消費税法」「酒税法」「国税徴収法」「住民税」「事業税」「固定資産税」の11科目の中から、計5科目に合格する必要があります。これらの科目は、税法や会計学を中心に構成されており、実務に直結した内容が多く含まれています。
そのため、受験者はただ知識を暗記するだけでなく、実際の業務に応用できる能力を養うことが重要です。
受験資格の詳細
令和5年4月1日以降に実施する税理士試験から、受験資格要件が緩和され、「簿記論」「税務諸表論」については、誰でも受験することが可能となったのです。また、税法科目である「所得税法」「法人税法」「相続税法」「消費税法」「酒税法」「国税徴収法」「住民税」「事業税」「固定資産税」についても、従来は法律学又は経済学に属する科目を少なくとも1科目履修する必要がありましたが、令和5年度以降は「社会科学」に拡充されたため、理工学部や文学部であっても受験することが可能となりました。
新しい変更点を踏まえた受験資格は以下の通りです。
学識による受験資格
・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
・大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
・一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
・司法試験合格者
・公認会計士試験の短答式試験に合格した者
資格による受験資格
・日商簿記検定1級合格者
・全経簿記検定上級合格者
職歴による受験資格
・法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
・銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
また、上記以外であっても受験資格が認められる場合があります。
詳しくは
国税庁_税理士試験受験資格の概要
をご覧ください。
税理士試験の科目と特徴
先ほどご紹介したように、税理士試験は11科目中の5科目に合格することで、試験合格とみなされます。
次の章では、必須科目と選択科目に分けた、各科目の特徴について解説していきます。
必須科目とそれぞれの特徴
必須科目は「簿記論」「財務諸表論」の2つです。税理士になるためには、これらの2つは必ず合格する必要があります。
特徴は以下の通りです。
科目名 | 特徴 | 詳細説明 |
---|---|---|
簿記論 | 会計に関する基礎的な知識と技術を問われる試験。 | 企業の経済活動を記録し、報告するためのツールであり、企業の財務状況を正確に把握するためには欠かせないものです。 簿記論では、仕訳、転記、試算表の作成、決算整理、財務諸表の作成などの基本的な会計手続きが出題されます。 |
財務諸表論 | 企業の財務状態や経営成績を示す財務諸表の作成や分析に関する知識を問う科目。 | 企業会計の基礎から応用に至るまで、非常に幅広い範囲をカバーしています。 貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書の構造とその作成基準、会計基準との整合性、さらには財務諸表の分析方法に関する理解が求められます。 |
選択科目とそれぞれの特徴
一概に選択科目とまとめられていますが、様々なルールが存在します。
所得税法と法人税法は必ずどちらか1つ以上選択する必要があります。また、消費税法・酒税法と住民税・事業税は、それぞれいずれか1つを選択する必要があるのです。
それぞれの特徴は以下の通りです。
科目名 | 選択必須/選択 | 特徴 |
---|---|---|
所得税法 | 選択必須(所得税法or法人税法) | 個人の所得に対する税制を詳細に学ぶ科目。この科目は、所得の種類やその計算方法、控除項目、税額計算の方法など、所得税の基本から応用までを網羅しています。計算問題が多く、実務的な計算力と理論的理解が求められる点が特徴。 |
法人税法 | 選択必須(所得税法or法人税法) | 法人が得た所得に対して課される税金に関する法律です。法人税法は、法人の事業活動によって得た利益を適正に課税するための枠組みを提供し、納税義務を規定しています。 |
消費税法 | 消費税法・酒税法のいずれか1つ | 消費税および地方消費税に関する法令について深く理解し、適用について正確に判断する能力が求められます。課税標準や非課税取引、軽減税率制度、インボイス制度に関する問題が出題されます。 |
酒税法 | 消費税法・酒税法のいずれか1つ | 主に酒類の製造や販売に関する税制を扱う科目。酒類の種類による税率の違いや製造者や販売者が遵守すべき法律、免許制度に関する知識が問われます。 |
住民税 | 住民税・事業税のいずれか1つ | 地方税の一つである住民税に関する知識を問う科目。課税の仕組みや計算方法、納付の手続きについて理解が求められます。 |
事業税 | 住民税・事業税のいずれか1つ | 事業税の基本的な仕組み、課税対象の種類、税率、計算方法、控除や軽減措置の適用方法など、具体的かつ実践的な知識が問われます。 |
相続税法 | 選択科目 | 相続や贈与に関連する税金の法律を扱う科目。基本的な計算方法、申告手続き、税額控除、特例措置などが問われます。 |
国税徴収法 | 選択科目 | 税金の徴収に関する法律を扱う科目。差押えや競売、滞納処分など、税金の回収に必要な手続きについて学びます。 |
固定資産税 | 選択科目 | 土地や建物に課される税金の知識を問う科目。固定資産の評価方法や税額の算定方法を学びます。 |
各科目の特徴を理解し、自分の興味やキャリアプランと照らし合わせて、科目を選ぶことが大切です。
税理士試験の合格率と難易度
前の章では、税理士科目の特徴について詳しく解説いたしました。
気になるのは、各科目の合格率や難易度ではないでしょうか?
まずは、過去5年の税理士試験の合格率について見ていきましょう。
過去5年の合格率
受験年度 | 受験者数 | 合格者数合計 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年 | 34,757名 | 5,762名 | 16.6% |
2023年 | 32,893名 | 7,125名 | 21.7% |
2022年 | 28,853名 | 5,626名 | 19.5% |
2021年 | 27,299名 | 5,139名 | 18.8% |
2020年 | 26,673名 | 5,402名 | 20.3% |
過去5年の平均合格率は19.38%となっており、かなり難易度の高い試験であると言えます。
科目別の合格率
それでは次に、科目別の合格率を見ていきましょう。
以下の数値は令和6年度の科目別合格数をまとめています。
受験科目 | 合格率 |
---|---|
簿記論 | 17.4% |
財務諸表論 | 8.0% |
所得税法 | 12.6% |
法人税法 | 16.4% |
消費税法 | 10.3% |
酒税法 | 12.1% |
住民税 | 18.2% |
事業税 | 13.7% |
相続税法 | 18.7% |
国税徴収法 | 13.0% |
固定資産税 | 18.0% |
引用:国税庁_令和6年度税理士試験結果
以上の表を見てみると、各科目ごとの合格率は約8%から約19%で推移していることが分かります。
このような科目別の合格率は、各年度ごとに公表されています。
これまでのデータを見比べて、合格率が比較的高い科目を選択することも、最短で税理士試験合格を狙うのであれば、1つの戦略となるでしょう。
税理士試験の免除制度について
さて、ここまで税理士試験に合格するには合計5科目に合格する必要があるとお伝えしてきました。
しかし、5科目合格せずとも税理士試験に合格する方法があるのです。それが、この章で解説する「免除制度」を活用した方法です。
税理士試験の免除制度概要
税理士試験の免除制度とは、特定の条件を満たすことにより、一部の試験科目を受験せずに資格取得を目指せる制度を指します。一般的に、科目免除を受けて税理士試験に合格した者については「認定合格者」と呼ばれています。
免除の対象となるのは、主に学位や特定の職業経験を持つ者です。
具体的には、大学院で税法または会計学に関する一定の単位を修得し、修士または博士の学位を取得した場合、関連する科目の免除が認められます。また、国税専門官としての一定の職務経験を有する者も、一部科目の免除が可能です。
免除制度は、受験者にとって大きなメリットですが、免除を受けるためには、該当する学歴や職歴を証明するための適切な書類の提出が必要です。
ただし、免除対象の科目が全ての受験者にとって有利に働くわけではないため、自身の学習状況や得意分野を考慮し、免除制度の利用を検討することが重要です。
認定合格についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
税理士の官報合格とは?認定合格より優遇される?
免除申請の手続き
税理士試験の免除制度を利用するには、適切な手続きを行うことが必要です。まず、免除申請を行うためには、条件を満たす必要があります。例えば、大学院で特定の科目を修了した場合や、国税専門官として一定期間勤務した経験がある場合などが該当します。これらの条件を満たしたうえで、免除申請を行うことができます。
手続きの流れとしては、まず必要な書類を準備し、国税庁が指定する申請書類に正確に記入します。書類には、大学院の修了証明書や職歴を証明する書類などが含まれます。これらを準備した後、指定された申請期間内に提出することが重要です。期限を過ぎると、申請が受理されない場合があるため、計画的に手続きを進めることが求められます。
さらに、申請が受理された後、審査が行われます。審査には時間がかかる場合があり、結果が出るまでの期間を考慮して、試験準備を進めることが推奨されます。審査結果は通常、書面で通知されますので、申請時に正確な住所を記入することも大切です。
免除が認められた場合、その科目については試験を受ける必要がなくなりますが、他の科目については引き続き受験が必要です。免除制度を活用することで、効率的に税理士試験合格を目指すことが可能となります。したがって、制度を理解し、適切に活用することが合格への近道となるでしょう。
税理士試験-まとめ
税理士試験は、多くの受験生にとって専門的かつ難易度の高い試験です。
本記事では、税理士試験の概要から科目、合格率、そして免除制度までを詳しく解説しました。税理士試験は特定の受験資格を満たす必要があり、学識、資格、職歴によって受験が可能です。科目は必須科目と選択科目に分かれ、受験生は自分の強みや専門性に応じて選ぶことができます。
また、試験の合格率は難易度を示す重要な指標であり、過去5年のデータを参照することでその傾向を把握できます。科目ごとの合格率も異なるため、戦略を立てて受験に挑みましょう。
さらに、税理士試験には特定の条件を満たすことで科目が免除される制度があり、これを活用することで試験の負担軽減も可能です。
税理士試験を目指す方は、自身の状況や将来のキャリアプランを考えて受験計画を立て、効率的に試験に臨むことが成功への鍵となります。
本記事を通じて、税理士試験の全体像を理解し、個々の目標に向けた具体的なステップを描く一助となれば幸いです。
城之内 楊
株式会社ミツカル代表取締役社長