ミツプロに会員登録する
3つのメリット

無料で会員登録する

INDEX

おすすめ記事

記事を全て見る

年収の壁は「178万円」へ!物価上昇に伴う所得税の基礎控除等引き上げを解説【令和8年度税制改正大綱】

公開日:2025/12/24

最終更新日:2025/12/24

年収の壁は「178万円」へ!物価上昇に伴う所得税の基礎控除等引き上げ【令和8年度税制改正大綱】

INDEX

令和8年度税制改正大綱において、所得税の課税最低限を「178万円」へと引き上げる方針が示されました。 ニュース等では「103万円の壁」という言葉が象徴的に使われていますが、実務上は、2025年(令和7年)の段階ですでに「160万円」への引き上げが措置されています。

本記事では、長年続いた「2024年までの103万円」、今年度適用される「2025年の160万円」、そして今回決定した「2026年以降の178万円」という3つのフェーズに分けて、控除額の変遷と実務への影響を解説します。

<会計事務所特化>
あなたの「適正年収」を調べてみませんか?
会計事務所の給与水準は、保有資格や経験年数、担当件数などの組み合わせでガラリと変わります。

簡単な質問に答えるだけで、一般的な会計事務所ならいくら提示されるのかを即座に算出。「今の適正額」はもちろん、「資格を取得したら年収はどう変わるのか?」など、あなたの現在地と未来の可能性を診断します。
⇒無料で年収診断を試してみる

3つのフェーズで見る「年収の壁」の引き上げ

所得税の課税最低限を指す「年収の壁」といえば長らく「103万円」が常識でしたが、昨年の改正ですでに大きな変化が起きています。今回の178万円への引き上げを正しく理解するために、以下の3つのステップを押さえておきましょう。

ステップ1:長らく続いた「103万円」時代(~2024年)

多くの人がイメージする従来の基準です。基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)を足した103万円が、長年にわたり所得税の発生するボーダーラインとなっていました。

ステップ2:「160万円」へ引き上げ(2025年)

令和7年度(2025年)の税制改正等の措置により、年収の壁はすでに160万円まで引き上げられています 。 物価高への対応として基礎控除等の基準額が見直され、さらに「特例措置(37万円)」が新設されたことで、これまでの常識を上回る大幅な拡充が行われました。今回の大綱資料における「現行」とは、この160万円を指します。

ステップ3:今回決定した「178万円」時代(2026年~)

2026年度(令和8年度)の税制改正大綱では、上記の160万円をベースに、さらなる物価連動と政策的な上乗せを行うことで、所得税の課税最低限を178万円まで引き上げることが示されています。

2026年度税制改正の変更内容(「160万円」から「178万円」への引き上げ)

2025年の「160万円」から、今回の改正でどのように「178万円」まで引き上げられるのか、その差額18万円の内訳を解説します。

① 物価連動による引き上げ(+8万円)

直近2年間の消費者物価上昇率(6.0%)を反映し、基本となる控除額(本則)が底上げされます 。

基礎控除(本則):58万円 → 62万円 (+4万円)
給与所得控除(本則):65万円 → 69万円 (+4万円)

これにより、課税最低限は160万円から168万円相当へ自然増となります。

② 政策的な上乗せ(+10万円)

さらに、三党合意に基づき、政策的に10万円分の上乗せ措置が講じられます 。
この上乗せ分は、令和8年・9年の時限措置として実施されます 。

基礎控除の特例:37万円 → 42万円 (+5万円)
給与所得控除の特例:5万円 (新規追加)

【103万・160万・178万の内訳推移】


項目 2024年まで 2025年 2026年以降(今回の改正)
基礎控除 48万円 58万円(本則) 62万円(本則)
給与所得控除 55万円 65万円(本則) 69万円(本則)
基礎控除の特例 なし 37万円 42万円
給与所得控除の特例 なし なし 5万円
合計(課税最低限) 103万円 160万円 178万円


基礎控除特例の対象拡大

今回の改正では、控除額が増えるだけでなく、特例(上乗せ)を受けられる対象者も広がります。 大綱の参考資料に基づき、現行(2025年基準)と改正後(2026年基準)の適用区分を比較しました。

【基礎控除の特例額 比較表】

給与収入 2025年基準(現行) 2026年基準(改正案) 変更点
200万円相当まで 37万円 42万円 +5万円(最大額が増額)
200~475万円相当 30万円 42万円 +12万円(満額対象に拡大)
475~665万円相当 10万円 42万円 +32万円(大幅拡充)
665~850万円相当 5万円 5万円 変更なし

このように、これまでは最大額(37万円)を受けられるのが「年収200万円以下」の層に限られていましたが、改正後は「年収665万円」の層まで最大額(42万円)が適用されるようになります。 これにより、パート・アルバイト層だけでなく、一般的な給与所得者層も広く減税の恩恵を受けられる仕組みとなりました。

年収別 減税シミュレーション

今回の改正により、控除額が段階的に拡大します。「旧来の103万円時代」から「今年(160万円)」、そして「来年以降(178万円)」で税負担(所得税+住民税)がどう変わるのか、目安をまとめました。

【年収別税負担と手取り増加額の目安(概算)】

年収 旧来(103万基準) 2025年基準(160万) 改正後(178万) 今回の改正による手取り増加額 備考
160万円 約9万円 0円 0円 0円 2025年基準ですでに非課税
170万円 約10.5万円 約1.5万円 0円 約1.5万円 この区間は全額非課税
178万円 約11.7万円 約2.7万円 0円 約2.7万円 ここまで全額非課税
300万円 約24万円 約15万円 約12万円 約3万円 所得税率5%区間での減税効果
500万円 約53万円 約35万円 約32万円 約3万円 基礎控除特例の適用拡大

※上記は単身者を想定した概算シミュレーションです。実際の減税額は、扶養親族の有無や社会保険料控除等の金額によって変動します。
※「今回の改正による手取り増加額」は、2025年基準(160万)と改正後(178万)の差額です。

実務への適用スケジュール

実務担当者にとって重要なのは、「いつ、どの基準を使うか」です。

2025年(令和7年)分の年末調整
「160万円」基準で行います。 (※2024年の年末調整までは「103万円」基準でした)

2026年(令和8年)分の年末調整
今回決定した「178万円」基準で行います 。 なお、2026年中の月次の源泉徴収は、システム改修等の負担軽減のため「変更なし(2025年基準等のまま)」で行われ、年末調整で一括精算される予定です 。

毎年のように基準額が変わる過渡期にあるため、給与計算システムのアップデート情報や、年末調整時の申告書様式の変更には十分な注意が必要です。

<会計事務所特化>
あなたの「適正年収」を調べてみませんか?
会計事務所の給与水準は、保有資格や経験年数、担当件数などの組み合わせでガラリと変わります。

簡単な質問に答えるだけで、一般的な会計事務所ならいくら提示されるのかを即座に算出。「今の適正額」はもちろん、「資格を取得したら年収はどう変わるのか?」など、あなたの現在地と未来の可能性を診断します。
⇒無料で年収診断を試してみる

年収の壁は「178万円」へ!所得税の基礎控除等引き上げを解説 -まとめ

2026年度(令和8年度)の税制改正大綱により、「年収の壁(所得税の課税下限)」は3段階のステップを経て、最終的に178万円へと引き上げられることが確定しました。

2024年まで:103万円(旧来の課税下限)
2025年(現在):160万円(令和7年度改正による引き上げ済み)
2026年以降:178万円(今回の令和8年度改正)

すでに2025年の時点で160万円までの非課税枠が確保されており、さらに2026年には物価連動と政策的な上乗せにより178万円まで拡大します。実務上は、2026年の年末調整でこの178万円基準に基づいた精算が行われ、多くの納税者にとって手取りが増える結果となるでしょう。

毎年のように基準が変わるため複雑に見えますが、「物価高に対応して課税下限(控除枠)が着実に広がっている」という大きな流れを理解しておくことが重要です。

執筆 ・ 監修

加藤慧大

株式会社ミツカルプロフェッショナル 代表取締役社長

株式会社ミツカルプロフェッショナル代表取締役社長。 税理士・社労士事務所に特化した人材紹介およびコンサルティング事業を展開。月間2,000名以上の税務・労務担当者の登録、年間300件以上の事務所人事相談の実績を持り、年200%以上の成長を継続中。