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【意外と知らない】会計事務所と税理士事務所の違いについて解説します!

2024/09/05

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求人募集で「会計事務所」「税理士事務所」といった表記を見かけることもありますよね。
明確に区別されていますが、どのような違いがあるのでしょうか。

結論から申しますと、会計事務所と税理士事務所に違いはありません。
本記事では、会計事務所と税理士事務所が混在する理由や、仕事内容等についてまとめました。

会計事務所や税理士事務所への転職を検討している人は、求人募集を見る前に本記事を最後までお読みください。

会計事務所と税理士事務所の違い

会計事務所と税理士事務所は実は同じ

会計事務所と税理士事務所に違いはありません。
どちらも同じく税理士が所長である、税務業務を生業とした事務所です。
企業としての優劣があったり、何かの差がついたりすることもありません。会計事務所も税理士事務所も立場は平等です。
なお税理士法第40条第2項において「税理士が設けなければならない事務所は、税理士事務所と称する。」と定められています。

つまり会計事務所との名称であっても、正式名称は「○○税理士事務所」または「税理士事務所△△」なのです。
そして正式名称とは別に「会計事務所」を名乗っていることになります。

ところで、公認会計士が事務所を設立した場合は「公認会計士事務所」とするのが一般的です。「会計事務所」と表記されているのであれば、公認会計士事務所ではなく税理士事務所と同様であるとお考えください。

会計事務所と名乗る理由

会計事務所も正式名称は税理士事務所だとお話ししました。
ではなぜわざわざ俗称として会計事務所を名乗るのかと疑問に感じる人もいるでしょう。
その理由は「分かりやすいから」「クライアントを獲得しやすいから」です。
クライアントからすると「税理士事務所」は連絡しにくく感じます。税務に詳しくない人からすると、何をしてくれるのかも分かりにくいでしょう。有り体に言えば依頼しにくいのです。

一方で「会計事務所」としている場合は、一眼で会計を依頼できる事務所だと分かります。また柔らかい印象を受けることも理由の1つでしょう。
このような理由からクライアントを獲得しやすいとして、多くの税理士事務所が俗称として「会計事務所」を名乗っているのです。

したがって仮に会計事務所と税理士事務所の違いを表すならば、顧客目線なのが「会計事務所」で、税務業務にプライドを持っているのが「税理士事務所」と言えるのではないでしょうか。

会計事務所や税理士事務所と税理士法人との違い

会計事務所と税理士事務所に大きな違いはありませんが、税理士法人とは明確に異なります。
異なる点は「個人事業主か法人か」です。

会計事務所も税理士事務所も、所長は税理士であり個人事業主です。一方で税理士法人はその名が示すとおり法人です。

税理士法人は税理士が2名以上在籍すること、支店を設けられることが特徴です。
求職者目線ですと、大きく異なるのは企業規模でしょう。
会計事務所や税理士事務所は2〜10人未満でこぢんまりしていることが多いようです。

その点、税理士法人は10人〜1,000人超まで幅広い規模で展開しています。
小規模な事務所で働きたい場合は会計事務所や税理士事務所、転勤も視野に入れてダイナミックに働きたい場合は税理士法人がおすすめです。

なお税理士法人が設立可能となったのは平成13年(2001年)です。
それまでは税理士事務所しか設立できなかったため、現在でも会計事務所や税理士事務所の比率が非常に高くなっています。

会計事務所・税理士事務所の仕事内容

会計事務所も税理士事務所も提供するサービスに違いはありません。
そのため仕事内容も同じです。
本項では会計事務所や税理士事務所における職種と働き方について解説いたします。

税理士

最低限、税理士資格を有していることが求められます。
申告書の確認や税務相談の対応、巡回監査、税務調査の立ち会い等を行います。
税理士には「税務書類の作成」「税務代理」「税務相談」という3つの独占業務が定められており、これを実施できるのは税理士に限定されます。

とはいえ決算書類の大半は会計スタッフ等に作成してもらい、税理士はその確認とサインを行う等、役割分担をして税理士の負担を減らすことが一般的です。
人数の少ない事務所の場合は、税理士がすべての業務に対応することもあります。その場合は税務業務だけでなく、請求書の発行や報酬の入金確認、経費の支払い業務、会計事務所等の記帳もすべて税理士自身が行います。開業したばかりの事務所にこの傾向が強く、徐々に専門性の低い業務から順番に税理士補助や会計スタッフに引き継いでいきます。

また会計事務所等によっては、経営コンサルティングやその他の付随業務も行います。
現在は特にIT技術の進歩により記帳代行を筆頭とした業務が削減される傾向にあり、その補填として経営コンサルティングや国際税務、事業承継等の高度な業務を提供している事務所が増えてきました。
会計事務所等で働く場合、転職には税理士資格に加えて実務経験数年以上が求められるケースが多いようです。

税理士補助

税理士の補助業務を行います。
上記税理士の業務に対して、税理士1人では手が回らない巡回監査や申告書の確認等を実施することが多いようです。

なお税理士資格を有していない場合は税務相談等の独占業務は提供できません。そのため個別の案件は税理士の指示を仰ぐことになります。
会計スタッフが別でいる場合は、会計スタッフが作成した資料のチェックも行います。
税理士ではないので独占業務は実施できませんが、独占業務以外の税務業務や、税務以外のサービスの提供も行います。たとえば税理士でも紹介した経営コンサルティング業務は、税務相談にならなければ税理士補助でも提供できます。

税理士補助に資格は不要ですが、税理士試験の科目合格を果たしていると転職時や給与面で優遇されます。
税理士を目指して勉強しながら働いている税理士補助が多いものですが、中には税理士をまったく目指していない人もいます。

特に成果重視の事務所の場合、税理士補助1人1人の売上に比例して給与が増減するので、税理士資格を取得しなくとも高収入が目指せるためです。

会計スタッフ

記帳代行のサービスを提供している会計事務所等では、主に記帳代行を行う会計スタッフを税理士補助とは別で雇用しているケースも少なくありません。

会計スタッフはほぼ1日中、事務所内で記帳代行作業等を行います。複数の企業の売上や経費を正確に入力するのが主な仕事です。決算書作成業務を行う場合もあります。
入力が完了した資料は税理士や税理士補助が確認し、巡回監査等の機会に報告する資料となります。
税理士や税理士補助よりも大人数になる傾向があり、税理士1人:会計スタッフ5人となることも珍しくはありません。

給与は税理士や税理士補助より低いことが一般的です。しかし一般事務より高い収入になる傾向があり、かつバックオフィスとして活躍できる専門職であることから常に一定の人気があります。

通常は簿記2級や経理事務の経験等が必要です。記帳や決算書作成業務は、最低限の簿記の知識がなければ務まりません。そのため簿記の資格や経理経験が求められます。
専門性が高いことから、会計スタッフは常に人手不足です。そのため簿記についての最低限の知識があれば応募可能な事務所が増えてきました。会計ソフトの発達により高度な知識を持たずとも正確に入力できるようになったことも後押しとなっているのでしょう。

ほとんどの時間を入力に費やすので、1人でコツコツと作業が継続できる人に向いています。
事務所によっては電話番やお茶出しといった雑務も兼任します。

一般事務その他

少し大きめの事務所の場合、一般事務等が在籍していることもあります。
その場合は上記の会計スタッフとはまた別の業務を実施します。

一般事務は、書類整理や来客対応、電話応対、資料のコピー、小口現金の管理といった軽作業が中心です。会計スタッフや税理士補助、税理士をサポートします。
会計スタッフがいる場合は、経理処理を行う機会はほとんどありません。

一方で、会計スタッフがいない事務所の場合は、税理士補助等の手が足りない際には経理に携わる可能性があります。この場合は求人票に簿記資格等の条件が記載されている確率が高いのでご確認ください。

また国際税務に携わる事務所の場合は、外国語でのメールのやりとりやビジネス会話が求められます。
正社員よりもパートでの募集が中心で、給与も税理士ほど高額にはなりません。しかし専門性の高い事務所でオンオフしっかり切り替えて働けるというメリットも。
多くの場合は事務職未経験でも応募可能です。最低限のパソコンスキルと社会人としてのマナーがあればOK。

これらの他にも、行政書士や税理士以外の資格保有者が在籍している事務所も見受けられます。税理士業務と相性の良い資格を保有している人は、上記のような業務ではなく、保有資格を生かした働き方をしています。

会計事務所・税理士事務所で求められる資格とは?

会計事務所や税理士事務所に転職する場合、以下のような資格を取得していると優遇されます。ぜひ積極的に取得してください。

税理士資格

最も求められるのは税理士資格です。
税理士資格は税理士試験5科目に合格し、実務経験2年以上を経て取得できます。
社会人が取得する場合は平均で8年程度かかると言われており、日本3大難関資格の1つに数えられています。合格率は平均17%前後。まさに一握りのエキスパートが取得できる資格と言えます。

科目合格制を採用しているため、1回の試験で5科目全てに合格する必要はありません。
一定の要件を満たした大学院を修了することでいくつかの科目が免除されるため、税理士を目指す多くの受験生が進学の道を選びます。

税理士資格を取得している場合、一般的には給与に1万円〜5万円程度の資格取得手当てが加算されます。

科目合格

税理士試験の科目合格も歓迎されます。
科目合格とは、税理士試験において1〜4科目に合格していることを指します。
5科目合格で税理士になれるため、通常は5科目合格者は「税理士試験合格者」と表現します。

合格している科目数に応じて資格手当てが給与に上乗せされるケースが多く、大抵は1科目あたり5,000円〜1万円/月です。4科目合格すると最大4万円/月が上乗せされます。
資格欄に、どの科目で合格したかを記入しておきましょう。

税理士試験は数年以上かけて受験する試験ですので、科目合格者である期間も数年以上に及びます。
なお科目合格の間に実務経験を積むことで、税理士試験合格を果たした直後から税理士として働き始められます。

簿記2級以上

税理士補助や会計スタッフとして働く場合に優遇されます。
記帳や税務に携わるためには、最低限の経理の知識が必要です。そのため簿記資格や経理の経験が欠かせません。

しかし最低限の知識しか持っていないと、懸念や疑問が頻繁に発生することになり、税理士や税理士補助の時間を圧迫することにつながります。
そのため会計スタッフであっても、少し高度な経理の証明として簿記2級以上の保有者が優遇されるのです。

人気の高い事務所や税理士法人等では、会計スタッフでも簿記2級以上を求める傾向にあります。より多幸待遇な事務所で働きたいならば、簿記2級に挑戦してみましょう。

社労士資格

社労士の業務は税理士業務と非常に相性が良いため、資格を取得していると優遇される傾向にあります。

社労士は独占業務として、労働や社会保険に関する法令に基づき申請書等の作成や手続き、帳簿書類の作成等が設定されています。
これらの業務は会社設立や会社運営に欠かせない業務なので、主に中小企業をクライアントとする税理士と相性が良いのです。
そのため社労士の資格や実務経験を有する人は、社労士事務所に限らず税理士事務所でも求められています。

なお税理士資格を取得していると、社労士試験を受験せずに社労士資格が取得できます。

FP資格

FP(ファイナンシャルプランナー)は、ライフプランの設計や見直し等を行う資格です。ただし独占業務はありません。ライフプランの設計等も無資格で提供できます。それでもFP資格は有効です。

税理士が税務アドバイスを行うにあたり、節税等の観点からクライアントに保険商品を販売するケースもあります。このような際にFP資格があると説明に納得感が出るため、クライアントを説得しやすくなるのです。
保険商品の販売実績が給与の増減に直結する事務所の場合、FP資格の取得により給与アップにつながる可能性が高まります。

まとめ

会計事務所と税理士事務所は同じものです。優劣もなければ業務内容の違いもありません。
単純に名称が異なるだけです。
転職時に重要なことは、名称ではなく仕事内容や待遇等でしょう。
求人情報をしっかり読み込み、後悔のない選択をしてください。

執筆 ・ 監修

城之内 楊

株式会社ミツカル代表取締役社長

株式会社ミツカル代表取締役社長。 1990年生まれ。20代では士業向けのコンサルティング会社(株式会社アックスコンサルティング)で最年少役員として8年間勤務。これまで、3,000以上の税理士事務所のコンサルティングや士業向けのセミナーに複数登壇。さらにはスタートアップから上場企業まで外部顧問や役員としても活躍する。 退職後、税理士業界を活性化するために、税理士事務所の採用支援サービスを展開する株式会社ミツカルを創業。ミツカルでは年間2,400名以上の税理士事務所の求職者をサポート。審査基準を通過した優良事務所のみを紹介しており、ミスマッチのない転職支援を行っている。